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【2023年最新版】宮城県のお土産におすすめの日本酒10選
宮城県の日本酒は、淡麗辛口タイプが多く食事にあわせるお酒におすすめです。「伯楽星」や「一ノ蔵」など、日本酒ファンにも支持される銘柄が数多く揃います。 今回は、お土産にもおすすめの宮城県の日本酒をご紹介!宮城のお酒の歴史や特徴も解説します。宮城県の日本酒を飲みたいときやお土産選びに迷うときは、ぜひ参考にしてくださいね。 1.宮城県の日本酒の歴史や特徴 東北地方に位置する宮城県には、およそ24の酒蔵が存在します。いずれも宮城の豊かな自然の恵みを活かし、質の良い日本酒を生み出す蔵ばかりです。 宮城県の酒造りは、独眼竜正宗の名で知られる戦国武将「伊達政宗」からスタートしました。また、多くの蔵では日本三大杜氏のひとつ南部杜氏が活躍し、純米酒や吟醸酒といった特定名称酒を造り上げています。 1-1.お酒をこよなく愛した伊達政宗 伊達政宗は、仙台藩初代藩主となった人物です。独眼竜正宗とも呼ばれ、仙台城跡には勇敢な姿を模した騎馬像が建設されています。 食通だった伊達政宗は、お酒をこよなく愛する武将でもありました。1608年(慶長13年)には仙台藩の御用酒屋をスタートさせ、自らが縄張りしたといわれています。 御用達酒屋の酒造りが発展するとともに、仙台城下には多くの町酒屋が誕生しました。現在も宮城には300年以上の歴史を誇る酒蔵が存在し、伝統の技と味を守り続けています。 1-2.酒蔵で活躍する南部杜氏 宮城県の酒蔵では、多くの南部杜氏が活躍しています。杜氏とは、酒造りのリーダーとなる人物のことです。南部杜氏は、岩手県石鳥谷町で生まれた杜氏集団。新潟生まれの「越後杜氏」、兵庫生まれの「丹波杜氏」に並ぶ日本三大杜氏に数えられます。 南部杜氏の手がける酒は、厳しい寒さが生む端麗辛口の味わいが主流です。その酒質は世界でも高く評価され、「全米日本酒鑑評会」や「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)」などで数々の受賞歴を誇ります。 1-3.宮城の酒は約9割が「特定名称酒」 「特定名称酒」とは、原料や製造方法など一定の基準を満たしたお酒のことです。純米酒や吟醸酒、本醸造酒などが特定名称酒にあたり、それ以外のお酒は「普通酒」と呼ばれます。 国税庁によると、国内の清酒の課税移出少量に占める特定名称酒の割合は、全体の約3割です。そんななか、宮城県で製造されるお酒は約9割を特定名称酒が占めます。 1986年(昭和61年)には「みやぎ・純米酒の県宣言」をおこなっていることからも、宮城県は高品質のお酒が揃う地域といえるでしょう。 参考:国税庁「酒レポート」 2.宮城県の日本酒選び2つのポイント 宮城県の日本酒を選ぶときは、以下のポイントに着目してみましょう。 味わいや香りで選ぶ エリアごとの特徴で選ぶ 米と米麹を原料に造られる日本酒は、土地の個性が現れやすいお酒です。味や香り、エリアの特徴に着目すれば、より自分好みの味わいに出会うことができます。 2-1.味わいや香りで選ぶ 前述したように、宮城のお酒はスッキリとした味わいの淡麗辛口タイプが主流です。そのなかでも、香り高いものやコクがあるもの、甘く感じられるものなど各蔵ではさまざまなお酒が造られています。 「大吟醸」と名前にあるお酒は、華やかな香りが特徴です。また、「純米酒」や「特別純米酒」と表示されたお酒はしっかりとしたコクも楽しめます。 「甘口のお酒が好き」「辛口タイプが好き」と自分の好みがはっきりしている場合は、ラベルに書かれた日本酒度の数値を参考にするのもおすすめです。一般的に、日本酒度がプラスであるほど辛口、マイナスであるほど甘口のお酒にあたります。 ただし、甘辛の味わいは酸度やアミノ酸度といったさまざまな成分で構成され、人によって感じ方は異なります。フルーツのように華やかな香りのお酒は、辛口でも甘く感じられることがあるでしょう。 2-2.エリアごとの特徴で選ぶ 宮城県内は、以下の4つのエリアに分類されます。「お土産にしたい」「地酒の個性を楽しみたい」というときは、エリアにこだわって日本酒を選ぶのもおすすめです。 仙台エリア 宮城県の中心部、仙台エリアには歴史ある蔵が点在します。なかでも内ヶ崎酒造店は、宮城県最古の酒蔵です。また、勝山酒造は仙台に現存する唯一の伊達家御用蔵として知られています。宮城の日本酒ルーツ、歴史を感じたい方におすすめのエリアです。 県北エリア 仙台エリアの北に位置する県北エリアでは、伝統の技で生まれる端麗辛口のお酒を楽しめます。なかでも一ノ蔵は、古くから発酵食の文化が根付く大崎地域に建つ酒蔵です。中心部にはお酒の史料館が経つなど、観光にもおすすめのエリアといえるでしょう。 県南エリア 仙台より南に位置する県南エリアには、淡麗辛口のお酒を中心に、バラエティ豊かな銘柄が揃います。もっとも南に位置する蔵王酒造が造るのは、「花撫子(はななでしこ)」という名のピンク色の日本酒。アルコール度数も控えめでほんのり甘く、日本酒を飲み慣れない方にもおすすめです。 三陸エリア 石巻や気仙沼といった三陸エリアには、新鮮な魚介類とあわせて美味しい銘柄が揃います。「墨廼江(すみのえ)」は、地元の水と酵母、米を使ったみずみずしい味わいが特徴。『魚でやるなら日高見だっちゃ!』のキャッチフレーズで知られる「日高見(ひたかみ)」も三陸生まれの日本酒です。 3.宮城県のお土産におすすめの日本酒10選 ここからは、「宮城県のお土産に美味しい日本酒を持ち帰りたい!」そんなときにおすすめの10銘柄をご紹介します。 宮城の日本酒の歴史を感じるお酒やコクのあるお酒、スッキリタイプのお酒と日本酒通から愛される銘柄が揃いました。お酒好きへのお土産はもちろん、自分用にもぜひチェックしてみてくださいね。 3-1.あたごのまつ 特別純米 酒蔵創業時から長きにわたり地元で愛されるお酒「あたごのまつ」。香り穏やかでスッキリとした味わいは、全国の日本酒通からも支持されています。 特別純米はしっかりとしたコクもあり、燗酒を好む方にもおすすめです。冷やしたり温めたりと、料理にあわせてさまざまな表情を楽しめます。 (出典元:新澤醸造店) 3-2.伯楽星 純米吟醸 「伯楽星(はくらくせい)」は、「あたごのまつ」と同じ新澤醸造店が手がける日本酒です。テーマは『究極の食中酒』。食事とあわせて美味しいお酒は、海外のコンペティションでも多くの受賞歴を誇ります。魚介類とも相性が良く、寿司や刺身はもちろん、カルパッチョのようなメニューとのペアリングもおすすめです。 (出典元:新澤醸造店) 3-3.日高見 芳醇辛口 純米吟醸 弥助 『魚でやるなら日高見だっちゃ!』が合言葉の三陸生まれの日本酒「日高見(ひたかみ)」。芳醇辛口と書かれたこちらは、スッと消え行く余韻がたまらない1本です。 白身魚や貝類、イカやエビなどと相性抜群。お寿司のパートナーにぜひにとおすすめしたい宮城県のお土産です。 (出典元:矢島酒店) 3-4.勝山 純米吟醸 「鴒」 サファイア 高級感ある日本酒をお土産にしたいときはこちら「勝山 鴒(かつやま れい)」はいかがでしょうか。 金字が輝く外箱も美しく味わいはふくよか。仙台名物牛タンをはじめとする肉料理やデザートにもマッチします。酒蔵は伊達家御用蔵と、宮城の日本酒の歴史も感じられる1本です。 (出典元:勝山オンラインショップ) 3-5.墨廼江 特別本醸造 本辛 本醸造酒は、スッキリとした味わいが特徴の日本酒です。なかでも本辛と記されたこちらの「墨廼江(すみのえ)」は、スパッとしたキレの良さが感じられます。 しっかりと米の旨味が残るのも、宮城のお酒ならでは。冷酒に常温、燗酒と幅広い温度帯で楽しめ、日本酒好きに喜ばれるお土産になるでしょう。 (出典元:はせがわ酒店) 3-6.浦霞 生一本 「浦霞(うらかすみ)」を造る佐浦は、1724年(享保9年)創業と長い歴史を誇る酒蔵です。生一本(きいっぽん)と名付けられた特別純米酒は、宮城県産のササニシキを100%使用。温めるとよりふくよかな旨味が広がり、心をほっと癒してくれる1杯になるでしょう。 (出典元:株式会社佐浦) 3-7.一ノ蔵 特別純米酒 辛口 伝統的な酒造りの技法から生まれる「一ノ蔵(いちのくら)」。特別純米酒辛口は、飲み飽きしないクリアな味わいが魅力です。繊細な味わいの和食はもちろん、旨味の強い洋食メニューとも好相性。持ち運びしやすい180ml容量が販売されているのもうれしいポイントです。 (出典元:株式会社一ノ蔵) 3-8.勝山 戦勝政宗 純米吟醸 現在の伊達家当主、伊達泰宗公に献上された日本酒です。きらびやかなラベルも美しく、しっかりとした外箱も付いています。ネーミングにコンセプト、確かな酒質と宮城土産にふさわしい一品。香り豊かで味わい深く、お酒好きへの贈り物にもおすすめです。 (出典元:勝山オンラインショップ) 3-9.乾坤一 純米吟醸原酒 超辛口 宮城産の米にこだわりぬいたお酒「乾坤一(けんこんいち)」は、地酒ファンからも広く支持されている日本酒です。 純米吟醸原酒 超辛口は原酒ならではの味わいに、お米の優しい旨味を残しつつ心地よくキレる後味の良さは食中酒を得意とする乾坤一ならではです。海の幸との相性がとにかく抜群なので、ぜひおいしい海の幸とともにお楽しみください。 (出典元:さぶん酒店) 3-10.山和 燗純米 宮城の米と酵母を使い、伝統的な手法で造られた日本酒です。燗純米とあるように、温めるとより魅力が花開きます。香りは穏やかで口当たりはまろやか。燗酒好きはもちろん、燗酒を飲み慣れない方にもおすすめしたい宮城の日本酒です。 (出典元:さぶん酒店) まとめ 武将、伊達政宗公からスタートした宮城の日本酒の歴史。酒造りの技法と味わいは、現在も各蔵へ受け継がれています。 三陸沖の魚介類や仙台発祥の牛タンなど、海の幸山の幸とあわせて美味しい銘柄が揃うことも魅力のひとつ。お気に入りの1本を見つけたら、ぜひお土産に連れて帰ってくださいね。
日本酒と焼肉は相性最高!相性がいい理由とは?
日本酒は、焼肉と相性の良いお酒です。それぞれが持つうま味成分の相乗効果で、美味しさがよりアップします。 今回は日本酒と焼肉の相性が良い理由や、焼肉におすすめの日本酒をご紹介します。これまで焼肉にはビールだったという方も、ぜひ日本酒とのペアリングを試してみてくださいね。 1.日本酒と焼肉は相性抜群!その理由は? 日本酒は焼肉と相性が良いお酒です。その理由は、双方が持つ「うま味成分」にあります。 うま味は、甘味や酸味、塩味、苦味といった基本味のひとつです。うま味成分はさまざまな食品に含まれ、大きく以下の3種にわかれます。 うま味成分 うま味成分を含む食品 グルタミン酸 昆布、チーズ、白菜、トマト、醤油、味噌 イノシン酸 鶏肉、牛肉、豚肉、かつお節 グアニル酸 干ししいたけ、乾燥ポルチーニ うま味成分は単独で使うより、複数を組み合わせたほうが美味しさがアップします。昆布のグルタミン酸と、かつお節のイノシン酸を組み合わせた出汁(だし)もその一例です。 日本酒×焼肉も、うま味の相乗効果が期待できるペアリング。日本酒はグルタミン酸、肉はイノシン酸を含むため理にかなった組み合わせといえます。 2.焼肉と合う日本酒の種類や温度帯 日本酒は、フルーティーな香りのものや旨味の強いものなど、さまざまな種類があります。また、冷やしたり温めたりと幅広い温度帯で楽しめるお酒です。 焼肉と合わせるときは、種類や温度にもこだわってみましょう。より美味しさが引き立つペアリングが生まれます。 2-1.焼肉に合う日本酒の種類 焼肉に合うのは、しっかりとした旨味が感じられる日本酒です。米と米麹のみで造られる「純米酒」は深いコクがあり、タレの濃い味にも負けることがありません。 ラベルに「生酛(きもと)」や「山廃(やまはい)」と書かれた日本酒もおすすめです。複雑かつ繊細な香りと味わいが、肉の旨味と絶妙にマッチします。 また、スッキリ感のある「本醸造酒」は、口内の脂分を洗い流してくれます。焼肉とも相性が良く、お箸を次へと進めてくれるお酒です。 2-2.焼肉に合う日本酒の温度帯 焼肉におすすめの「純米酒」は、温めると味わいがふくよかに変化します。「生酛」や「山廃」も同様です。どっしりとした旨味が焼肉の旨味とマッチし、お酒が進むペアリングができあがるでしょう。 アツアツ、ジューシーな焼肉に冷たいお酒を合わせたいときは、ロックスタイルもおすすめです。ラベルに「原酒」と書かれたタイプは味がしっかりしているため、ロックにしても味がぼやけません。BBQのおともには、冷たさと爽快感を味わえるソーダ割も美味しいですよ。 3.焼肉におすすめの日本酒5選 ここからは、焼肉におすすめの日本酒をご紹介します。純米酒や山廃、原酒などさまざまなタイプを取り揃えました。ぜひ好みのスタイルで日本酒×焼肉のペアリングを楽しんでみてくださいね。 3-1.貴 特別純米 米の旨味とキレを兼ね備えた「貴(たか)」は、冷やでも燗でも美味しいお酒です。後口に爽やかな香りが広がり、ついついもう一杯とグラスが進みます。魚介類とも相性が良く、肉や海鮮を楽しむBBQにもおすすめです。食中酒として幅広いシーンで活躍してくれます。 (出典元:IMADEYA ONLINE STORE) 3-2.天狗舞 山廃仕込 純米酒 昔ながらの製法、山廃の魅力を存分に感じられる日本酒がこちら。石川県の「天狗舞(てんぐまい)」です。山吹色のお酒をそっと口にすれば、深い旨味がじんわりと広がっていきます。 焼肉はもちろん、すき焼きやジビエのような肉料理にもおすすめです。常温にぬる燗、熱燗と好みの温度でお肉とのペアリングを楽しめます。 (出典元:IMADEYA ONLINE STORE) 3-3.農口尚彦研究所 YAMAHAI GOHYAKUMANGOKU 無濾過生原酒 「無濾過生原酒」とは、ろ過や加熱処理、加水をしていないお酒のことです。酒米・五百万石(ごひゃくまんごく)を使った山廃仕込みのお酒はキレが良く、口内の脂分をさらりと洗い流してくれます。.農口尚彦氏は、酒造りの神さまともいわれる杜氏のひとり。外箱付きのこちらのお酒は、贈答用にもおすすめです。 (出典元:IMADEYA ONLINE STORE) 3-4.七田 純米 七割五分磨き 雄町 無濾過生 ふくよかな味わいをもたらす酒米、雄町(おまち)の魅力あふれる1本です。ろ過や加熱処理をしていないため、深い旨味を楽しめます。焼肉のおとも、キムチやナムルなどの個性もしっかりと受け止めてくれる美味しさ。焼肉好き、お酒好きにはこたえられない銘柄です。 (出典元:IMADEYA ONLINE STORE) 3-5.豊潤 大分三井 白麹仕込み 日本酒造りには、黄麹を使うのが一般的です。こちらのお酒は、焼酎造りに用いることが多い白麹で仕込まれています。白麹由来の甘酸っぱい味わいは、グレープフルーツのような爽やかさ。ロックやソーダ割にしてライムを浮かべれば、焼肉のおともにぴったりの1杯ができあがります。 (出典元:IMADEYA ONLINE STORE) まとめ 日本酒と焼肉は、うま味の相乗効果が期待できるペアリングです。お互いの良さが引き立ち、肉もお酒もより美味しく楽しめます。燗酒にしたり、ロックやソーダ割にしたりと味わい方は無限大。ぜひその日の気分にあわせたペアリングを楽しんでみてくださいね。
「地酒」の定義とは?日本酒や清酒との違いを解説
日本各地で造られている地酒(じざけ)。見聞きする機会は多いものの「地酒とは?」と聞かれると答えに迷う方も多いのではないでしょうか。 今回は、地酒の定義や日本酒との違いについて解説します。さらに、日本各地の地酒の特徴やおすすめ銘柄もご紹介。地酒の世界を知れば、日本酒がもっと美味しく楽しいものになりますよ。 1.地酒とは?定義や日本酒との違い 地酒とは、特定の地域で造られたその土地ならではのお酒のことです。昭和後期には地酒ブームが巻き起こり、新潟の淡麗辛口のお酒が人気を博しました。まずは、地酒の定義や日本酒との違い、地酒ブーム誕生の背景についてみていきましょう。 1-1.地酒の定義は2つ 「精選版 日本国語大辞典」では、「地酒」は以下のように定義されています。 〘名〙 その土地でつくられる酒。その土地独特の酒。いなか酒。 参考:コトバンク「地酒とは」 “その土地でつくられる酒”という定義でみた場合、日本酒以外にも地酒は存在するといえます。近年は、小さな醸造所が造るクラフトビールや国産ワインも人気です。 また、デジタル大辞泉では地酒を以下のように定義しています。 その地方でつくられる清酒。特に、灘(なだ)や伏見(ふしみ)を除いた地方のものをさす。 参考:weblio辞書「地酒の意味・解説」 ここでいう清酒とは、いわゆる日本酒のことです。灘は兵庫県、伏見は京都府に位置します。江戸時代、灘や伏見は日本酒の主要産地でした。その他の地域のお酒は地酒と呼ばれ、別の物として扱われていたのです。 現在は、大手酒造メーカーが手がけるような、全国流通するお酒以外も地酒と呼ばれています。一般的には、灘や伏見を除いた地域で、小規模生産されるお酒を指すことが多いでしょう。 1-2.地酒と清酒、日本酒の違いとは? “その地方でつくられる清酒”と定義されているように、地酒は清酒のひとつです。清酒とは、米と米麹、水を原料に発酵させてこしたお酒のこと。国税庁の酒税法では、清酒は以下のように定義されています。 ・米、米こうじ及び水を原料として発酵させて、こしたもの ・米、水及び清酒かす、米こうじその他政令で定める物品を原料として発酵させて、こしたもの(イ又はハに該当するものを除く。)。但し、その原料中当該政令で定める物品の重量の合計が米(こうじ米を含む。)の重量をこえないものに限る。 ・清酒に清酒かすを加えて、こしたもの 参考:国税庁「酒税法における「清酒」の定義」 これらの条件を満たしていれば、海外で造られたお酒も清酒に該当します。一方で、「日本酒」という呼び名は、国産米を使用し国内で醸造されたお酒のみに用いられるものです。海外産の米を使っていたり、海外で醸造し輸入されたりしたお酒は、日本酒を名乗ることができません。 近年は、フランスやアメリカなどでも清酒が製造されています。地酒の世界は日本国内だけでなく、海外にも広がっているといえるでしょう。 1-3.地酒ブームが生まれた理由 地酒という言葉が全国に広まったのは、昭和後期の地酒ブームがきっかけです。地酒ブーム誕生の背景には、昭和初期から続いた「級別制度」の廃止がありました。 級別制度とは、「特級」「一級」「二級」のように日本酒をランク分けした制度のことです。品質ではなく、酒税額の違いを基準としていた級別制度は、消費者に「高額なお酒ほど美味しい」という誤った認識を与えていました。 長年続いた級別制度が廃止されると、大手が造る特級酒から、地方の小さな蔵が造る地酒へと消費者の注目が移っていきます。なかでも、新潟のスッキリとした味わいのお酒は人気を呼び、淡麗辛口ブームとともに地酒ブームを世に生み出しました。 2.地域別!地酒の特徴とおすすめ日本酒 ここからは、北は北海道、南は沖縄まで全国の地酒の特徴をご紹介します。米と米麹、水というシンプルな原料から生まれる日本酒は、土地の個性が現れやすいお酒です。「どんなお酒を飲もうかな」と迷ったら、おすすめ銘柄もぜひ参考にしてください。 2-1.北海道 豊かな自然と広大な土地に恵まれた北海道。寒さ厳しい北の地では『吟風(ぎんぷう)』や『彗星』、『きたしずく』といった北海道生まれの酒米を使った酒造りがおこなわれています。 道内に3つの蔵を持つ「上川大雪(かみかわたいせつ)」が造るのは、北海道弁でついつい飲んでしまうことを意味する“飲まさる酒”。蔵のひとつ五稜乃蔵は、帯広畜産大学のキャンパス内に位置します。 ほかにも、日本最北端の酒蔵「国稀(くにまれ)」、公設民営型の酒蔵「三千櫻(みちざくら)」、旭川の名水を仕込み水にする「男山(おとこやま)」とどれも人気の蔵ばかり。地酒は後味がスッキリとしたタイプが多く、食の宝庫といわれる北海道の味覚と良く合います。 (出典元:IMADEYA ONLINE STORE) 2-2.東北 青森の「田酒(でんしゅ)」に岩手の「赤武(あかぶ)」、秋田の「新政(あらまさ)」と日本酒ファンに支持される銘柄が勢揃いする東北地方。なかでも福島は、9年連続『全国新酒鑑評会』での金賞受賞数日本一を誇ります(令和4年時点)。 また、山形にはプレミア日本酒「十四代(じゅうよんだい)」を造る高木酒造も存在します。「浦霞(うらかすみ)」で知られる佐浦酒造は、1724年(享保9年)に宮城県に創業した老舗蔵です。 フルーティーな香りのお酒、深い旨味のあるお酒など味わいも多種多様。どれもクオリティが高く、いろいろな銘柄を試しながら自分の好みのお酒を見つけたい方におすすめです。 2-3.中部 日本海に面する新潟から太平洋に面する愛知まで、エリアが広い中部地方にはさまざまな地酒が集まります。 新潟を代表するのは、かつて淡麗辛口ブームを巻き起こした地酒の数々です。「久保田(くぼた)」や「八海山(はっかいさん)」、「越乃寒梅(こしのかんばい)」など、旨味がありつつスッキリとした味わいのお酒が並びます。 富山の「勝駒(かちこま)」や石川の「加賀鳶(かがとび)」は、海の幸にベストマッチのキレ味鋭い後口が魅力。福井の地酒「黒龍(こくりゅう)」は、香り高い大吟醸の代表銘柄です。 また、アルプスの山々が連なる長野は酒造りが盛んで約80を超える蔵が存在します。愛知の「醸し人九平次(かもしびとくへいじ)」は、日本から世界へ羽ばたく地酒の代表種です。エレガントな味わいは海外でも評価が高く、パリのレストランで採用されています。 2-4.関東 関東地方にも人気銘柄が勢揃い。埼玉の「花陽浴(はなあび)」、神奈川の「いづみ橋(いづみばし)」と、日本酒ファンから愛される地酒が並びます。 なかでも栃木の「鳳凰美田(ほうおうびでん)」は、フルーツを思わせる華やかな香りが魅力的。ほんのり甘く清らかな味わいで、日本酒を飲み慣れない方にもおすすめの地酒です。 2-5.近畿 伏見のある京都をはじめ、奈良や和歌山など2府5県を含む近畿地方。自然豊かな地域も多く、近年は新たな人気銘柄が続々と登場しています。 「紀土(きっど)」は和歌山の豊かな自然が育む地酒です。酒蔵は稲作が盛んな地域に建ち、清らかな井戸水が酒造りに使われています。 また、日本酒発祥の地ともいわれる奈良の「風の森(かぜのもり)」は、ほのかな発泡感と複雑味のある味わいが人気の地酒です。地元の米をなるべく削らず使った酒からは、自然の豊かさ、力強さを感じることができます。 2-6.中国 中国地方は日本海に面した山陰地方と、瀬戸内海に面した山陽地方にわかれます。冬の寒さが厳しい山陰地方の地酒は、燗酒にするとより美味しく味わえるのが特徴です。鳥取の「千代むすび(ちよむすび)」、島根の「十旭日(じゅうじあさひ)」など地酒の魅力を堪能できる銘柄が揃います。 広島県の西条は、日本有数の酒どころとして知られる地域です。銘酒のひとつ「白牡丹(はくぼたん)」を造る蔵は、300年以上の歴史を誇ります。 また、瀬戸内近くの酒蔵では、牡蠣に合うさまざまな地酒が造られています。富久長(ふくちょう)の「シェルラバーズ」もそのひとつです。シュワシュワッとした発泡感とキレのある酸味が牡蠣の旨味を引き立ててくれます。 2-7.四国 四国地方のなかでも、特にお酒好きが多い地域として知られるのが高知県です。観光スポット『ひろめ市場』には地元の屋台が集結し、明るいうちから地酒と料理を楽しめます。 「酔鯨(すいげい)」や「船中八策(せんちゅうはっさく)」など、高知の地酒はキリッとした辛口タイプが多いのが特徴です。瀬戸内の恵みがもたらす魚介類とあわせれば、スイスイと盃が進みます。 2-8.九州・沖縄 焼酎の名産地である九州でも、数多くの日本酒が製造されています。特に、稲作が盛んな北九州は米どころであり酒どころです。福岡には50以上の蔵が存在し、「庭のうぐいす」や「若波(わかなみ)」、「田中六十五(たなかろくじゅうご)」などの地酒が人気を博しています。 また、大分の地酒はスッキリした味わいとほんのりとした甘さが魅力です。さわやかな香りの「ちえびじん」は、和食だけでなくイタリアンにも良く合います。 沖縄の泰石(たいこく)酒造は、沖縄唯一の蔵であり、日本最南端の酒蔵。代表酒「黎明(れいめい)」は、ふくよかな旨味とキレの良さをあわせ持ち、沖縄のお土産にもおすすめです。 3.地酒をより楽しむためのポイント ここまでご紹介したように、地酒にはその土地ならではの個性が現れます。より楽しみたいときは、土地の風土が感じられる地元の食材とあわせるのがおすすめです。また、実際に蔵へ足を運べば、地酒の魅力をより身近に感じることができます。 3-1.酒蔵に足を運んでみる 地酒に興味を持ったら、ぜひ実際に蔵へ足を運んでみてください。地酒が生まれる土地の風土をよりはっきりと感じられるはずです。蔵によっては試飲や販売スペースが設けられています。酒蔵の多い地域に足を運び、酒蔵めぐりを楽しむのもおすすめです。 また、蔵によっては見学を受け付けており、見上げるほど大きなタンクや、日本酒造りに使う道具を間近に眺めることができます。見学時は、蔵のホームページなどで見学の有無を確認してから出かけるのがおすすめです。 酒造り期間中であれば、蔵人たちが働く姿やもろみが発酵する様子を見学できます。蔵内には甘い香りが広がり、お酒好きにはたまらない体験となるでしょう。 https://sake-5.jp/sasaki-sake-brewery-tour-experience-report/ 3-2.地酒と名産品のペアリングを楽しむ 日本酒は食事とあわせて楽しめるお酒です。自宅で地酒を味わうときは、ぜひ地酒が造られた土地の名産品を合わせてみてください。 秋田のお酒にはいぶりがっこ、広島のお酒には牡蠣など、料理とのペアリングを考えると日本酒選びがより楽しくなります。コクとキレを兼ね備えた北海道のお酒には、魚介類やチーズ、ラム肉のような旨味の強い食材もおすすめです。 燗酒で美味しい山陰のお酒は、カニ料理のベストパートナー。旨味と旨味の相乗効果がたまらないペアリングができあがりますよ。 まとめ 日本各地で造られる個性豊かな地酒。その土地の風土を感じられる地酒には、日本酒の魅力がたっぷりと詰まっています。 合わせる料理を工夫したり、実際に蔵に足を運んだりすればいつもの一杯もより美味しく感じられるはず。ぜひ各地を旅するように、さまざまな地酒を味わってみてくださいね。
日本酒を-5度で保存するためのおすすめのセラーはこれ!
日本酒の保存には-5度がいいというのはわかったけど、-5度で保存できるセラーやケースってどういうのがあるのかわからないと思うこともあるのではないでしょうか。 今回は日本酒を最適に保存できる-5度の設定ができる日本酒セラーを紹介します。 1. 日本酒をマイナス5度で保管できるアクアの「SAKE CABINET CSR-15H」 特徴1.マイナス10度~プラス10度で5段階の温度設定が可能 SAKE CABINETは-10℃、-5℃、0℃、5℃、10℃の5段階で温度設定が可能です。 マイナス5度で開封したあとの日本酒も長期保存したり、0度や5度に設定して熟成させる楽しみ方もできます。 5段階で設定できるので、日本酒のストックが無いときは普通の飲み物を入れておくなどもできますね。 特徴2.四合瓶は最大12本、一升瓶は9本まで縦置き可能 上段では最大12本の四合瓶、中段では最大9本の一升瓶が縦置き可能となっています。 たくさんの本数が入るのもメリットですが、ポイントは「縦置き」ができることです。 日本酒は横置きにすると空気に触れる面積が増え、酒質が落ちていってしまいます。 冷蔵庫では縦置きはドアポケットにしか縦置きできるスペースがないため、日本酒にとってあまりいい環境とは言えません。 特徴3.リビングでの使用も考慮したサイズとデザイン性 幅50.3cm×奥行59.8cm×高さ131cmとコンパクトなサイズ感なのでご家庭に難なく置いておくことができます。 また庫面には七宝柄が施され和を感じるスタイリッシュなデザインでインテリアとして生活に溶け込むため、リビングにも問題なく置くことができます。 【SAKE CABINET CSR-15Hまとめ】 温度設定:-10℃、-5℃、0℃、5℃、10℃ (5段階で設定可) 収納本数:四合瓶 約12本(上段) + 一升瓶 9本(中段) + 二合瓶 4本(BOX) 紫外線防止:密閉型 縦置き:可能 サイズ:幅50.3cm×奥行59.8cm×高さ131cm その他:コンパクトなので家庭にも置ける まとめ 家庭用ならSAKE CABINET, がおすすめ! コンパクトで十分な機能が備わっているSAKE CABINETは家庭用で日本酒を楽しむのにうってつけです。 日本酒をたくさん買うけど、ストックしておく場所がないという方に、ぜひいかがでしょうか?
日本酒からリンゴやバナナのようなフルーティーな香りがするのはなぜ?
米を原料とする日本酒から、なぜフルーティーな香りがするの?と疑問に感じたことはないでしょうか。リンゴやバナナのような香りの正体は、吟醸香と呼ばれるものです。 今回は、日本酒からフルーティーな香りがする理由についてご紹介します。甘い香りのお酒は飲みやすく、日本酒ビギナーにもおすすめです。香りの種類も解説するので、ぜひ日本酒選びの参考にしてくださいね。 1.日本酒のフルーティーな香りの正体「吟醸香」 日本酒から感じるフルーティーな香りは「吟醸香(ぎんじょうこう・ぎんじょうか)」と呼ばれます。リンゴや洋梨、バナナといったフルーツや花などに例えられる香りです。 吟醸香のあるお酒は、和食だけでなくイタリアンやフレンチなどにもよく合います。香りが華やかで、日本酒ビギナーでも飲みやすい銘柄が多いことが特徴です。また、吟醸香は「吟醸造り」と呼ばれる製法によって生まれます。 2.フルーティーな吟醸香が生まれる理由「吟醸造り」 吟醸香は、吟醸造りと呼ばれる製法で生まれます。吟醸造りとは、より小さく削った米を原料に、低温でゆっくりと発酵させる製造方法のことです。 日本酒の主原料である米と米麹は、目に見えない微生物「酵母」の働きによってお酒へと変化します。吟醸香は、酵母がアルコール成分と同時に生成するものです。 米を小さく削ること 低温でゆっくりと発酵させること 吟醸造りの特徴であるこれらの要素は、酵母の働きに影響し以下のような理由で吟醸香を生み出します。 2-1.米を小さく削る吟醸造り 日本酒の原料となる米は、外側を削ってから使用します。米の表面に含まれる脂質やタンパク質などは、酵母の栄養素となる一方で、多すぎると雑味の原因となり得るからです。 米を削ることは「磨く」とも表現され、その度合いは精米歩合(せいまいぶあい)と呼ばれます。 吟醸造りに用いられるのは、精米歩合60%以下と外側を4割以上削った米です。精米歩合50%以下と、より磨いた米を用いた日本酒は「大吟醸酒」と表示されます。 吟醸造りによって、低栄養かつ低温の環境に置かれた酵母は、通常のアルコールのほかに「高級アルコール」にあたる成分を発生させます。 この高級アルコールが、リンゴや洋梨といったフルーツに例えられる吟醸香の正体です。香り成分は米を磨くほど生まれやすく、大吟醸酒は華やかな香りの銘柄が多く見られます。 2-2.低温でゆっくり発酵させる吟醸造り 低温で長期間発酵させる吟醸造りは、冬の寒い時期におこなうのが一般的です。低温でゆっくりと発酵させることで、酵母が生成した香り成分は蒸発することなく醪(もろみ)にとどまってくれます。 より磨いた米を原料に低温で長期発酵させる大吟醸酒は、コストがかかるぶん高価格帯が主流です。なかでも、米と米麹のみを原料とする「純米大吟醸酒」は、贈答用にも適した銘柄が揃います。 3.フルーティーな香り「吟醸香」の種類 フルーティーな香りの吟醸香は、「サッパリとした香り」と「濃醇な香り」の2タイプにわかれます。これは、香りを生成する成分の違いによるものです。 日本酒を選ぶときは「リンゴみたいな香り」「甘いバナナの香り」など、香りに着目してみるのもおすすめです。自分好みの香りや味をより見つけやすくなりますよ。 3-1.リンゴや洋梨のようなサッパリとした吟醸香 リンゴや洋梨のようなサッパリとした吟醸香は、「カプロン酸エチル」と呼ばれる成分に由来するものです。カプロン酸エチルを含む日本酒は、適度に冷やすと香りがより引き立ちます。香りを包み込むワイングラスで味わうのもおすすめです。 近年は、カプロン酸エチルを生成するさまざまな酵母が開発されています。清酒鑑評会の出品酒に採用されることも多く、フルーティーな香りの代表種といえるでしょう。 3-2.バナナやメロンのような濃醇な吟醸香 バナナやメロンのような濃醇な甘さを思わせる吟醸香は、「酢酸イソアミル」に由来します。伝統的な吟醸香でもある酢酸イソアミルは、「きょうかい9号」や「きょうかい14号」といった古くから存在する酵母によって多く生成されるものです。 酢酸イソアミルを含むお酒は、適度に温めると香りがふくよかに変化します。常温やぬる燗などでゆったりと楽しむお酒におすすめです。 まとめ フルーティーで華やかな香りのお酒は、日本酒を飲み慣れない方にもおすすめです。より磨いた米を使っているぶん雑味がなく、スッキリとした味わいも楽しめます。 リンゴやバナナなど、香りの違いに着目すれば日本酒選びの幅がより一層広がります。ぜひ、香りも含めた日本酒のさまざまな個性を感じてみてくださいね。
日本酒は横置きしてもいいの?そんな疑問を解決!
日本酒が残ってしまい冷蔵庫を開けると、置くスペースがなかったという経験がある人もいるのではないでしょうか。 日本酒を縦に置くスペースが取れない場合、横置きにしてもいいのでしょうか。 今回は冷蔵庫で横置きにしたときに、日本酒にはどのような影響があるのか、また正しい日本酒の保管方法を学んでいきましょう。最後に飲み切れなかった日本酒の活用方法もご紹介しているので参考にしてみてくださいね。 1. 日本酒って冷蔵庫で横置き保存していいの? 日本酒を冷蔵庫に保管しようと思ったら、置けるスペースがないなんてことありませんか?一升瓶の縦置きはなかなか難しいこともあるでしょう。横置きならなんとか置ける場所を発見したら、横向きに保管してもいいのでしょうか。 1-1. 日本酒を保管するときは縦置きが基本。 実は日本酒を保管するときは縦置きがいいのです。横置きにすることで、キャップの部分に日本酒が触れ、味や風味が変化してしまうことがあるのです。また、横に置くと縦に置いたときよりも空気に触れる面積が多くなるので、これも味や風味を損なう原因となります。 さらに、日本酒の栓がしっかりと閉まっていなかったときや、元々打栓が安定していない場合、横置きにすると漏れてしまうこともあるため、縦置きが基本なのです。 https://sake-5.jp/sake-how-to-save/ 1-2.冷蔵庫の場合は、どの部屋で保管するかが重要! 冷蔵庫はご存知のとおり場所によって温度が違います。日本酒の保存は「-5度」がベストといわれていますが、家庭用の冷蔵庫に保存する場合どの部屋がいいのかおすすめ順にご紹介します。 肉や魚、生鮮食品に適している「パーシャル室」の温度は約-3度。縦置きできるのであればパーシャル室がおすすめです。 次におすすめなのが「チルド室」。約0度なのでこちらも日本酒の保存には適しています。 パーシャル室やチルドが狭い場合におすすめなのは「冷蔵庫」。こちらは約3度。一番縦置きしやすい場所です。ただしドアポケットなど入り口近くは5~7度くらいになることも多いので、日本酒は奥の方に入れるのが◎。 冷蔵庫の次に温度が低いのは「野菜室」。こちらは約5度ですが、大きい瓶でも縦置きできるのが魅力的。 ちなみに冷凍庫は-18度。冷凍するともつイメージがありますが、凍らせるときは瓶のまま凍らせると割れることがあるので、ちょっとした工夫が必要です。 https://sake-5.jp/sake-store-in-the-refrigerator/ 1-3. 紫外線や温度変化の高いところよりは、冷蔵庫で横置き! 日本酒は「紫外線」・「温度変化」・「空気」からの刺激を受けると劣化してしまいます。 そのため、直射日光が当たる場所や温度が高い・変化が激しい場所よりは、縦置きができなくとも冷蔵庫などの冷暗所で横置きで保管した方がいいといえます。縦に置けないからといって常温のまま部屋に放置するのはやめましょう。 ここがPOINT! 日本酒は「縦置き」での保管が基本 冷蔵庫内でのおすすめ順はパーシャル室>チルド室>冷蔵庫 紫外線が当たる場所や温度変化の高い場所よりは冷蔵庫内で横置きしたほうがいい 2. 冷蔵庫で横置きの場合、どれくらい持つ? 2-1. 未開封なら、そこまで期限は気にしなくてOK!10年後でも飲めるケースも。 日本酒は食品表示法でも賞味期限の表示は免除されており、適切な環境で保存した未開封のものであればいつまでも飲むことができます。そのため、正しく保管すれば保存期間を気にしなくてもOKです。 しかし、横置きの場合、スクリューキャップの金属部分に触れることにより、味や風味が変化する可能性が考えられます。化学的な数値としてみると多少変化があるくらいで、人が飲んでわかるくらい味が変わるわけではありませんが、気になる人は早めに飲みましょう。 また、未開封でも“生酒”や”生貯蔵酒”の日本酒は賞味期限が短いので、最初から冷蔵庫で保管し、早めに飲み切りましょう。 2-2. 開封後の日本酒は3日~5日で酒質が変化。数ヶ月で変化を楽しみつつ飲みきろう! 日本酒の開封後は、どんなにしっかり栓をしても、空気に触れるので3~5日で酒質が変化してきます。5日以内を目安に飲み切る方がいいですが、酒質が変化することで、決して飲めなくなるわけではないので数ヶ月で味の違いを楽しむのもあり。開けたばかりのものより、少し時間が経った方が美味しかったという日本酒も人によってはあるようです。 ここがPOINT! 未開封であれば保存期間は気にしなくてもOK!ただ、横置きすると味が変わったのがわかるくらいではないが味は落ちる 未開封でも“生酒”や”生貯蔵酒”の日本酒は賞味期限が短いので、最初から冷蔵庫で保管し、早めに飲み切ろう。 日本酒の開封後は、どんなにしっかり栓をしても、空気に触れるので3~5日で酒質が変化してきます。ただ、味の違いを愉しむというのもあり。 3. もし飲みきれなかった日本酒は? 時間が経ってしまいあまり美味しくない、一升瓶でもらったけど好みの味ではなかったなどの理由で飲み切れなかった日本酒は、そのまま捨ててはいけません。日本酒は飲めなくてもさまざまなシーンで活躍します。 3-1. 料理酒として使える! 日本酒は料理酒として使えます。料理の味に影響することはほとんどないので、自分が苦手な味の日本酒を料理に使っても問題ありません。煮物を作るときやスープなど、和食には欠かせないものです。 https://sake-5.jp/sake-cuisine/ 3-2. 日本酒風呂として使える! かなり劣化してしまった日本酒は、飲むのも料理に使うのも気が引けますよね。そんなときは入浴剤代わりに日本酒を入れてみましょう。身体が温まるので寒い季節にもぴったりです。 https://sake-5.jp/sake-bath/ ここがPOINT! 飲みきれなかった日本酒は料理酒としてや入浴剤代わりにお風呂に入れて有効活用! まとめ 日本酒は基本的には「縦置き」が正しい保管方法です。しかしどうしても縦置きできないときは、環境が悪い場所に縦置きするよりも、冷蔵庫に横置きの方がおすすめです。また、一升瓶で縦に置けないときは他の容器に移し替えるという手もあります。 縦置きする場所が常にないけど日本酒が大好きという人は、ワインセラーならぬ日本酒セラーを購入するという手もあります。縦置き保管はもちろんのこと、日本酒の保管に適した「-5度」を保つことができますよ。 日本酒の保存に関しての完全版はこちら! https://sake-5.jp/sake-preservation-complete-version/
大きい日本酒は容器で小分けの保管がおすすめ!冷蔵庫保存のポイントも解説
日本酒が好きな人は、好きな銘柄を一升瓶で買うことが珍しくありません。しかし、一升瓶は大きすぎて置き場所に困ってしまうものです。冷蔵庫に入らず、せっかくの高級銘柄でも保管に困ってしまいすぐに飲み切ってしまいます。 そんなときに思いつくのが別の容器に小分けすることです。みなさんも日本酒を小分けにする方法が気になっていると思います。 そこで今回は日本酒を小分けする方法を具体的に解説します。移し替えのポイントも解説しているので、参考にしてみてください。 1.一升瓶が大きすぎるときは小分けにして保存しよう 一升瓶が大きすぎて困る!という場合は、小分けにして保存するのがおすすめです。小分けにすれば、空いたスペースに収納しやすくなります。小分けする方法は以下を参考にしてください。 1-1.一升瓶の量は1800ml 一升瓶は具体的な数値に換算すると1800mlになります。市販の大型ペットボトルと同じくらいの容量ですね。ペットボトルは横にして置いておきやすいですが、一升瓶はそうはいきません。丸みがあるため、横にすれば不安定になります。縦にすれば、大きすぎて収まらないことが多いです。 現状、一升瓶の置き場所に困っている人は、次の項目で説明する容器を用意してみてください。 1-2.用意するもの 一升瓶を小分けする場合、容器なら何でもいいわけではありません。基本的には、以下で解説する容器を選んでください。 煮沸消毒してある密閉可能な瓶やボトル 一升瓶の小分けに最適なのは「煮沸消毒してある密閉可能な瓶やボトル」です。おすすめなのはスイングボトル。ガラス瓶ですが、密閉用のフタがついています。BARなどで見かけることも多いでしょう。 スイングボトルには250ml、500mlとサイズが豊富にあります。大きいものだと、1Lサイズもありますね。量販店や通販サイトから購入できます。安いものはワンコインで買えるので、気に入ったものを探してみてください。 「わざわざ瓶のボトル買うのは...」と抵抗があるときは、匂いのない飲料のボトルで代用しましょう。身近なものでいえば、ミネラルウォーターや炭酸水です。ジュースなどのボトルは日本酒の香りが落ちるため、使わないようにしましょう。 (出典元:amazon) 煮沸消毒のやり方 小分け用の容器を用意したら、事前に煮沸消毒をしましょう。消毒をしないと、雑菌によって日本酒が傷んでしまいます。煮沸消毒のやり方は以下のとおりです。 洗い桶やタライに熱湯を溜める 溜めた熱湯に容器を数分沈める 容器を自然乾燥させる 以上が煮沸消毒のやり方です。基本的には熱湯に容器を沈めておけば問題ありません。注意点は消毒したあとに水分をふき取らないことです。布巾などを使うと、再び雑菌が付着する可能性があります。取り出した容器はキッチンペーパーの上などに置いて、自然乾燥させてください。 漏斗(ロート) 一升瓶を小分けするときは、漏斗があると便利です。一升瓶は重量があるため、ボトルにキレイに注ぐのは難しいです。漏斗があれば、日本酒がこぼれるのを防ぐことができます。なくても問題はありませんが、できれば用意したほうがいいでしょう。 漏斗は一般的なホームセンターで購入することができます。100円ショップなどでも取り扱いがあるので、探してみてください。 ここがPOINT! 一升瓶など冷蔵保に入らない日本酒は小分けにして保存がおすすめ 一升瓶の小分けに最適なのは「煮沸消毒してある密閉可能な瓶やボトル」。おすすめなのはスイングボトル。 「わざわざ瓶のボトル買うのは...」と抵抗があるときは、匂いのない飲料のボトルで代用も可。(身近なものでいえば、ミネラルウォーターや炭酸水) 煮沸消毒の手順①洗い桶やタライに熱湯を溜める→②溜めた熱湯に容器を数分沈める→③容器を自然乾燥させる 2.移し替えと冷蔵庫保存するときのポイント 一升瓶を小分けは、ただ別の容器に移し替えればいいわけではありません。いくつかのポイントがあります。詳しくは以下で解説していきます。 2-1.口元ギリギリまで入れる 一升瓶を小分けするときは、新たな容器の口元ギリギリまで入れるのが大事です。日本酒は空気に触れることで劣化が早まります。そのため、口元近くまで満たすことで、容器内部に空気が溜まらないようにするのです。 ただし、小分けしていくと、最後だけ口元まで満たす量には足りないことがあります。できれば、事前にサイズの小さな容器も用意しておくと、キレイに小分けすることができるでしょう。 2-2.冷蔵庫の中では縦置き 日本酒を冷蔵庫で保存するときは、なるべく縦置きにしてください。キャップに触れて雑味が混ざる可能性があります。横にすれば、空気に触れる面積が広がる点にも注意が必要です。日本酒の劣化が早まります。 日本酒を冷蔵庫で保存する予定があるときは、事前にスペースの幅と高さを測っておくといいでしょう。保存に適切な容器を探すことができます。 2-3.マイナス5度で保存できると理想 日本酒はマイナス5度で保存するのが理想といわれています。ただし、マイナス5度の環境を簡単に用意するのは難しいです。最もカンタンなのは冷蔵庫のパーシャル室に保存すること。パーシャル室の平均温度はマイナス3度です。マイナス5度に近い環境なので、日本酒の保存に適しています。 一升瓶のままなら入らないかもしれませんが、小分けすればパーシャル室で保存するのもカンタンです。日本酒の冷蔵保存については、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください。 冷蔵庫の各部屋の温度について詳しくはこちら。 https://sake-5.jp/vegetable-room-in-refrigerator/ https://sake-5.jp/sake-how-to-save/ ここがPOINT! 一升瓶を小分けするときは、新たな容器の口元ギリギリまで入れるのが大事 日本酒を冷蔵庫で保存するときは、なるべく縦置き 日本酒はマイナス5度で保存するのが理想 まとめ 一升瓶に入った日本酒を小分けする方法を解説しました。大きくて邪魔になりがちな一升瓶も、小分けすることで収納がラクになります。冷蔵庫に入れることができれば、日本酒の品質を長く保つことができるでしょう。 ぜひ、一升瓶の置き場所に困っている人は本記事を参考に小分けしてみてください。キッチンや物置きが片付き、スペースに余裕が生まれるはずです。
日本酒の正しい保存方法を学ぶ!マイナス5度が最適って知ってた?
美味しいものも保存方法を間違うと台無しになってしまいます。日本酒も例外ではなく、保存方法には気をつけなくてはいけません。 日本酒には賞味期限が書かれておらず、長期保存に向いている飲み物であることが知られています。 しかし正しい保存方法でなければ長期保存に向いている日本酒でさえ飲めない状態になってしまうこともあります。しっかりと保存の仕方を学んでいきましょう! 1.日本酒の保存のポイントは「光・温度・空気」 日本酒は種類によって保存方法が少し変わってきますが、基本的に冷暗所で保管するのがポイント。冷暗所とは、一定に低い温度で保たれた、日の当たらない暗い場所のことです。1~15℃くらいの場所のことをいいます。 よく冷暗所と呼ばれる場所は、床下や流しの下などです。ちょうどいい冷暗所がないときには、発泡スチロールの容器を使う人もいます。日本酒の保存に冷暗所が適している理由を見ていきましょう。 1-1.日本酒は光に弱い 日本酒の大敵である光。それは紫外線が出ているからなのです。紫外線が出ているのは日光だけではなく、蛍光灯などからも出ているので、室内に置いてあるからといって安心してはいけません。 日本酒の専門店などで冷蔵庫のライトが消えているのは、つけ忘れているのではなく、紫外線を防ぐためだったのですね。たった数分でも日向香(ひなたか)という、匂いの原因になってしまうため要注意。どうしても光を遮ることができないときは、新聞紙で日本酒の瓶を巻くといいでしょう。未開封でも開封後でもとにかく日本酒は光から守ることが大切なのです。 瓶に色がついている理由 日本酒の瓶は緑や茶など濃い色が多くなっています。このように濃い瓶の場合は、紫外線の吸収率がいいため、劣化しにくいといえます。しかし最近は透明や薄い青などでフレッシュな日本酒の印象を与えたり、女性人気の高い日本酒はピンクなど可愛らしい色で売り出したりしているものもあります。このように、薄い色の瓶は光から守ってくれるものがないため、劣化しやすくなっているので、より慎重に保存しなくてはなりません。 1-2.温度の変化で劣化する 温度も紫外線と同じくらい日本酒の味などに影響します。急激な温度変化にも弱い日本酒は、一定の温度に保たれた場所で保管するのが基本です。高温になると、老香(ひねか)という劣化した匂いがしてきます。温度と同じく湿度も保たれた場所で保管しましょう。 日本酒のキャップは金属製のことが多いため、湿度が高いと錆びる原因になります。まれにコルクの栓がしてあることがあります。コルクの場合は乾燥しすぎると、よくないため湿度が高めの場所で保存する方がいいでしょう。 1-3.空気に触れると劣化する 日本酒を開けたあとに劣化する理由は酸化するからです。酸化は空気に触れるたびに起こります。日本酒が瓶に詰められるときは真空状態ですが、開けると気をつけても空気に触れないというのは無理です。空気に触れることで、香りや旨味が生まれる種類の日本酒もありますが、開けてから1週間以上経つと酸化してしまうので開封後はなるべく早く飲みきりましょう。 ここがPOINT! 日本酒の保存は冷暗所(1~15℃くらいの場所)が基本 日本酒は「紫外線」「温度変化」「空気」に弱い飲み物 2.日本酒は縦に置く?横に置く? 日本酒を保管するときは縦置きが基本です。サイズによっては横向きにしないと入らないなんてこともあるかもしれませんが、横向きにするとキャップに日本酒が触れることで味が変化してしまう可能性が。 また縦に置いたときよりも、横の方が空気に触れる面積が増えるため、酸化が早くなってしまうのです。ちなみにワインの空気抜きは日本酒にも使えることがあります。酸化を防ぎたいときは使ってみてはいかがでしょうか。 ここがPOINT! 日本酒を保管するときは縦置きが基本 3.日本酒は冷蔵庫に入れる 生酒や吟醸酒、開封後の日本酒は冷蔵庫で、生貯蔵酒と記載がない純米酒・本醸造酒・古酒などは常温でもOKといわれることがありますが、実は日本酒はマイナス5度が最適な環境なのです。 そのためできれば常に冷蔵庫で縦置きにして保存するのがおすすめ。冷蔵庫ではマイナス5度にはなりませんが、常温よりも良い状態を保つことが可能です。 また「光を防ぐ」効果もあるため、可能な限り冷蔵庫で保存しましょう。 ここまで紹介した保存方法を簡単にまとめてみます。 保存方法 理由など 光を避ける 紫外線で劣化するため 温度差を避ける 急激な温度変化で劣化するため 空気を避ける 空気に触れると劣化するため 縦置きにする キャップに触れると劣化するため 最適な温度 マイナス5度が日本酒に最適です! 4. マイナス5度保管にこだわるなら日本酒セラーが最高! マイナス5度が日本酒の保管に適していることはわかりましたが、冷蔵庫の温度をご存知ですか? 冷蔵庫の種類によって差はありますが、冷蔵室は3~5度、ドアポケット部分は6~9度、チルドは0度前後、野菜室は3~7度、冷凍室は-20~-18度となっています。 こうして温度をみると日本酒にぴったりのマイナス5度の空間が冷蔵庫にはないことがわかります。 いったいどこに保管すればいいのかと悩んでいる日本酒通の皆さん!実は日本酒専用のセラーが発売されています。たくさんの日本酒をそろえている人や、日本酒にこだわりのある飲食店の皆さんには日本酒セラーをおすすめします。 https://sake-5.jp/sake-cellar/ https://sake-5.jp/sake-cabinet-review-2/ ここがPOINT! 日本酒を大事に保管するなら、紫外線を遮断できて温度管理も完璧な日本酒セラーがベスト! 5.まとめ 日本酒はただ置いておくだけではダメなのです。せっかく購入してきた日本酒ですので、美味しく飲めるように保存方法にも気を配りましょう。紫外線から守り、温度や湿度にも気を配ります。 そして日本酒の保管は-5度が最適。 冷蔵庫には-5度という環境が残念ながらありません。美味しい状態で常に日本酒を楽しみたい人は、日本酒セラーも考えてみてはいかがでしょうか。 ここがPOINT! 日本酒の保存は冷暗所(1~15℃くらいの場所)が基本 日本酒は「紫外線」「温度変化」「空気」に弱い飲み物 日本酒を保管するときは縦置きが基本 日本酒を大事に保管するなら、紫外線を遮断できて温度管理も完璧な日本酒セラーがベスト!
【唎酒師が解説】日本酒の賞味期限は?賞味期限の目安や劣化した日本酒の特徴を解説
日本酒には、実は賞味期限がないことをご存じですか?「え!ということは、何年も味が変わらないの?」と驚く方も多いのではないでしょうか。 日本酒には賞味期限の表記はありませんが、未開封な状態と開封後とでは、美味しく飲める期間が異なります。今回は、日本酒の賞味期限や保存のポイントについてご紹介!余ったお酒の使い道も、ぜひ参考にしてくださいね。 1.日本酒に賞味期限の表示はない 食品などに必ずと言って良いほど記載がある賞味期限ですが、日本酒には賞味期限の表示がありません。日本酒はアルコール度数が高いぶん腐敗しにくく、国税庁から消費期限・賞味期限の表記は必要ないとされているからです。 ー(問 25)酒類において、表示の省略ができる事項はありますか。 酒類については、「保存の方法」、「消費期限又は賞味期限」、「栄養成分(たんぱく質、脂質、炭水化物及びナトリウム)の量及び熱量」※の表示を省略することができます。ただし、これらの事項を表示する場合には、食品表示基準に沿った表示を行う必要があります。(食品表示基準第3条第3項) (出典元:食品表示法における酒類の表示のQ&A – 国税庁) また、食品表示法では、ワインなどのお酒類全般も賞味期限の表示が免除されています。 ラベルに記載されているのは「製造年月」 日本酒のラベルに、賞味期限と似たような日付を見かけたことはありませんか?これは、賞味期限ではなく「製造年月」を表しています。 製造年月とは、日本酒を瓶に詰めた月または日にちのことです。画像のように年数と月のみの表示もあれば、日にちまで含めたものもあります。賞味期限の表示義務がないのに対し、製造時期は法的に記載が定められています。 ここがPOINT! ・ 日本酒の賞味期限は、国税庁から表記は必要ないと発表されている ・ラベルに記載するのは製造年月 2.開封前の日本酒の賞味期限の目安 そもそも賞味期限とは、「袋や容器を開けないまま、美味しく食べられる期限」のことです。日本酒は賞味期限のないお酒ですが、5年、10年たっても品質が変わらないわけではありません。 開封しなければ腐敗のリスクは少ないものの、美味しく楽しむには一定の期間があると考えられます。特に「生酒」は以下のように飲み頃が短いお酒です。 2-1.加熱処理をした日本酒は1年がひとつの目安 加熱処理をした日本酒の賞味期限は、製造時期からおよそ1年間がひとつの目安になります。 日本酒は、お酒を絞ったあとと瓶に詰める前の2回「火入れ」と呼ばれる加熱処理をおこなうのが一般的です。加熱処理をした日本酒は、ラベルに火入れと書かれていたり、酒販店で常温で並べられたりしています。 ただし、近年は製造技術の進歩や保管のノウハウにより、数年たった日本酒でも美味しさがキープできるといわれています。味や香りがよりまろやかに変化した日本酒は「熟成酒」として人気です。日本酒の熟成については、後の章で詳しくご紹介します。 2-2.生酒・生貯蔵酒や生詰め酒は約6~7カ月 「生酒」や「生貯蔵酒」などは、製造時期から約6~7カ月の間に飲むのが良いといわれています。 「生酒」とは、1度も加熱処理をしていない日本酒のことです。出荷前に1度だけ加熱処理した日本酒は「生貯蔵酒」、貯蔵前に1度だけ加熱処理をした日本酒は「生詰め酒」と呼ばれます。 火入れの目的のひとつとして挙げられるのが、日本酒の保存性を高めることです。火入れをしていない生のお酒は、そのぶん品質が変化しやすい状態にあります。これらのお酒は冷蔵保管を心がけ、なるべく早めにフレッシュな味わいを楽しみましょう。 生酒についてさらに詳しい内容を知りたい方はこちらを参考にしてみてください。 日本酒の生酒とは?火入れをした日本酒との違いや楽しみ方を解説! 3.開栓後は早めに飲み切る 日本酒は、開栓して空気に触れると「酸化」と呼ばれる現象が始まります。酸化が進むと、香りが不快に感じられたり、味わいが変化したりするため注意が必要です。 食品や飲料は、賞味期限があっても開封後は早めに食べたり飲んだりしたほうが良いといわれています。賞味期限がない日本酒も同様に、開栓後は早めに飲み切るように心がけましょう。 特に生酒や生貯蔵酒といったお酒は味の変化も早いため、開栓後は1週間以内に飲み切るのがおすすめです。 開栓後の日本酒がおいしく飲める期間などのついてはこちらを参考にしてみてください。 開封後の日本酒はいつまで飲める?保存方法から劣化の見分け方まで解説! 4.日本酒の保存方法3つのポイント 日本酒の美味しさをキープするためには、保管時に次のポイントを意識してみてください。賞味期限のない日本酒の飲み頃を逃すことなく、酒蔵が目指す味わいを楽しめます。 冷暗所か冷蔵庫で保管する 縦置きで保管する 紫外線に当てないようにする ここでは保管のポイントとあわせ、温度や光が日本酒に与える影響も確認していきましょう。 4-1.冷暗所か冷蔵庫で保存する 日本酒は、冷暗所か冷蔵庫で保管するのが基本です。温度の高い場所で保管すると、色合いが茶色く変化するほか「老香(ひねか)」と呼ばれる劣化臭が生じるリスクが高まります。 特に、火入れをしていない生酒は冷蔵庫で保管してください。酒販店でも、生酒は冷蔵庫に入れられています。ネットショップなどで日本酒を購入するときは、必要に応じてクール便を選択できるかなども確認してみてくださいね。 4-2.縦置きをする 日本酒は、なるべく縦置きで保管しましょう。キャップが金属製の場合、お酒が金属に触れることで味が変化してしまうと言われています。特に、飲みかけの日本酒は縦置き保管が基本です。横置きにすると空気と触れる面積が増え酸化が進んでしまいます。 冷蔵庫に縦置きできるスペースがないときは、小さな容器に移し替えるのもおすすめです。その際は、清潔で乾燥した容器を使用してくださいね。 日本酒を小分けに保存するやりかたはこちらを参考にしてみてください。 大きい日本酒は容器で小分けの保管がおすすめ!冷蔵庫保存のポイントも解説 4-3.紫外線や光には当てないようにする 紫外線に当たった日本酒は、色が茶色く変化し「日光臭(にっこうしゅう)」と呼ばれる劣化臭が生まれます。そのため、日本酒は日に当たらない場所に保管することが大切です。常温で保管する際も、光の差し込まない場所を選びましょう。 5.未開封で5年10年と保存すれば熟成酒に 近年、日本酒ファンの間で注目を集めているのが「熟成酒」です。 そもそも熟成とは、年月を経て食品の旨味や風味が増すこと。熟成させた日本酒は「古酒」とも呼ばれ、複雑な香りと濃醇な味わいを持ちます。 前述した保存方法を心がけ、未開封の状態で適切に保存すれば自宅でも熟成酒を楽しめます。人生の節目に購入した日本酒を熟成させ、5年後、10年後の記念日に開けるのもおすすめです。 日本酒の熟成と劣化の違いは?熟成をするうえでのポイントを解説! 6.風味が落ちてしまった日本酒の色や香り、味わいの変化 時間が経ち風味が落ちてしまった日本酒は、色や香り、味わいに変化が生まれます。「まだ美味しく飲めるかな?」と気になる日本酒があるときは、以下の項目を確認してみてくださいね。 6-1.日本酒の色や見た目の変化 5年、10年と適切な環境下で保管された「熟成酒」は、透明から琥珀色、赤茶色へと色合いが変化します。紫外線や光を浴びた日本酒も同様です。 ただし、紫外線を浴びた場合は同時に風味が落ち、香りも不快なものへと変化してしまいます。日本酒の色が変わったときは、香りも含めて状態を判断するのがおすすめです。 6-2.日本酒の香りの変化 日本酒は、開栓してから時間が経過したり、光や紫外線に当てたりしていると「老香」や「日光臭」と呼ばれる香りが生じます。これらは、ツンと鼻をつくような不快感を生じる香りです。この場合、日本酒は風味が落ち、蔵の目指す味わいとは異なるものになってしまったと考えられます。 6-3.日本酒の味の変化 日本酒の味わいは、時間の経過とともに徐々に変化していきます。なかには、熟成させることでまろやかな味わいに変化することもあるでしょう。 ただし、お酒が空気に触れて酸化した場合は、苦味や酸味が生じてしまいます。決して飲めないお酒になってしまったわけではありませんが、その際は次に紹介する使い道も検討してみてください。 7.開封後に時間が経った日本酒の使い道 「飲みかけの日本酒、うっかりいつまでも置いたままにしてしまった」という経験はありませんか? 「なんだか香りも味も美味しいとは言えないけど、捨てるのはもったいない…」というときは、料理やお風呂に使うのもひとつの方法ですよ。 7-1.料理酒として使う 日本酒を使った料理は、香りが上品に仕上がります。また、素材がふっくらとやわらかくなったり、コクがプラスされたりと、さまざまなメリットが生まれるのが特徴です。料理酒の代わりに活用するほか、汁物や鍋に加えるのもおすすめですよ。 さらに詳しい内容を知りたい方はこちらを参考にしてみてください。 日本酒は料理酒としても使える!日本酒と料理酒の違いなどについて解説 7-2.お風呂に入れて日本酒風呂に 飲み頃を過ぎた日本酒がたくさんあるときは、日本酒風呂はいかがでしょうか?日本酒風呂は、美肌効果や発汗作用が期待できるといわれています。 日本酒を入れる目安は、コップに1~3杯程度。肌が弱い方は少量にするほか、子どもや妊婦の方などは避けたほうがベターです。問題ない方は、初めは少量ずつ試しながら自分に合う量を見つけてみてくださいね。 日本酒風呂の効能や注意点などさらに詳しい内容を知りたい方はこちらを参考にしてみてください。 日本酒風呂で美肌をGET!日本酒はデトックス効果も期待できる優秀な入浴剤 8.ベストな保存環境をキープできる日本酒セラー 日本酒専用のセラーがあれば、一定の温度帯で日本酒の味や香りをキープできます。 通常の冷蔵庫では難しい縦置き保管ができることも魅力です。日本酒用に設計されているため、保管場所を気にすることなく日本酒との出会いを楽しめます。 その日の気分、料理に合わせて日本酒を選べば、自宅でも居酒屋気分を満喫できます。「いろいろな銘柄を少しずつ楽しみたい」「酒蔵から届く味わいそのままに美味しさをキープしたい」という方におすすめですよ。 日本酒選びがもっと楽しくなった。唎酒師が導入した日本酒セラーとは? まとめ 日本酒は賞味期限のないお酒ですが、美味しさを楽しむには早めに飲み切るのがおすすめです。一方で、近年はあえて長期間保存する「熟成酒」も注目を集めています。 日本酒を熟成させたい場合も含め、保存時はいくつかのポイントを心がけることが大切。涼しく紫外線の当たらない場所で保管しつつ、酒蔵が届けてくれた味わいを楽しみましょう!
日本酒は冷凍すると瓶が割れる可能性有り!保存方法〜みぞれ酒の作り方を解説!
保存のため、またはみぞれ酒を作るために、日本酒をそのまま冷凍庫に入れてもいいのか不安ですよね。冷凍庫で瓶が割れていたら、他の食材にも影響してしまいます。 また、日本酒にはさまざまな飲み方・楽しみ方ができるお酒でもあり、その楽しみ方の一つにみぞれ酒があります。 今回は日本酒を冷凍したい人に、日本酒の凍る温度や凍らせるときの注意点、みぞれ酒の作り方もご紹介します。 1. 日本酒は、冷凍庫で保存できる? 日本酒は-5度で保存するのがいいといわれていますが、実は冷凍保存も可能です。一般的な家庭用冷蔵庫でも冷凍保存は可能なのでしょうか? 1-1. 日本酒は-10度以下で凍り始める 日本酒は温度が-10度以下になると凍り始めます。アルコールが凍る温度は-114.5度といわれているため、アルコール度数が高ければ高いお酒ほど凍りにくくなります。 正確な計算方法ではないですが、アルコール度数にマイナスをつけた温度がそのお酒が凍る温度といわれています。つまりビールはアルコール度数が5度くらいなので、-5度程度で凍ります。ワインは14度前後、日本酒は15度前後、焼酎は35度前後、ウォッカは40度以上のアルコール度数になるので、冷凍庫で完全に凍るのはビールやカクテルなどアルコール度数が10度以下の低いものだけです。 1-2. 冷凍庫の温度は-20度〜-18度 一般的な家庭用の冷蔵庫の冷凍室は、日本工業規格によって-18度以下とするよう決められています。そのため家庭用の冷凍室はだいたい-20~-18度に設定されています。 そのため冷凍庫で日本酒を保存することは可能です。しかし日本酒も完全には凍りません。焼酎などアルコールが高いお酒もシャーベット状にはなります。ブランデーなどもアルコール度数が高いので凍ることはありませんが、とろっとした状態になり、冷やして飲むのとはまた違った楽しみ方ができます。 1-3. 中途半端に凍った日本酒は、みぞれ酒として人気 中途半端にシャーベット状に凍ったお酒をみぞれ酒といいます。日本酒のみぞれ酒は純米酒がおすすめ。味の変化が少なく、凍らせても風味を損なう可能性が低く美味しい日本酒のみぞれ酒を楽しむことができます。 ここがPOINT! 日本酒は、冷凍庫で保存できるが、凍りづらい特性をもっている!(-10度以下で凍り始める) 冷凍庫の温度は-20度〜-18度なので、日本酒は凍り始めるが完全には凍らない 中途半端に凍った日本酒は、シャーベット状のみぞれ酒として人気! 2. 冷凍庫で日本酒を凍らせると瓶が割れる可能性がある 買ってきた日本酒をそのまま冷凍庫で凍らせてしまうと、瓶が割れてしまう可能性があります。日本酒を凍らせるときにどうしたらいいのでしょうか? 2-1. 水は凍らせると体積が増える 通常であれば固体、液体、気体の順に体積が増えますが、水は液体の状態よりも固体である氷の方が、体積が大きいのです。氷の方が10%ほど体積は増えるため、そのまま凍らせると膨張してしまい、瓶が割れる可能性があるのです。 2-2. 凍らせる場合は、別の容器に移し替えましょう 日本酒を凍らせると体積がかなり増えるので、瓶が割れる可能性があります。膨張しても余裕のある紙パックやペットボトル、かなり厚手のガラスの瓶はそのまま凍らせることもできますが、それ以外は危ないので別の容器に移し替えましょう。 日本酒は匂いが移りやすく、空気に触れれば触れるほど劣化するので、しっかり密閉できる容器が◎。そのためキッチン用品が豊富なホームセンターなどで、冷凍可能なガラス容器などを購入するのがおすすめです。 2-3. 日本酒を凍らせると、酒質に変化はある? 日本酒を凍らせると、味や香りが変化するという種類もあれば、全く変わらないというものもあります。こればかりは好みもあるので凍らせてみないとわからないですが、冷凍して保存する場合は、何度も解凍〜冷凍が繰り返されないように温度が安定した状態になるようにしましょう。溶けたり、凍ったりを繰り返すと風味が落ちてしまう可能性があります。 ここがPOINT! 【注意】日本酒をそのまま冷凍庫で凍らせると、瓶が割れてしまう可能性がある! 凍らせる場合は、瓶以外の容器に移し替えるようにしましょう 何度も溶けたり凍ったりを繰り返すと、風味が落ちてしまう可能性があります 3. 暑い夏に試してみたいみぞれ酒の作り方! 暑い夏にぴったりの日本酒のみぞれ酒は、家の冷蔵庫でも簡単に作れます。作り方をチェックしていきましょう。 3-1. 用意するもの 日本酒(アルコール度数 15度以下) 200~300ml グラス アルコール度数が高すぎると凍らないので、15度以下がおすすめ。瓶の日本酒だと忘れてそのまま凍らせてしまった場合、割れる可能性があり危ないので、別の容器に移すか、ふなぐち菊水一番しぼりのように缶の日本酒の方が安全です。 3-2. 作り方 日本酒をまずは冷蔵庫で冷やします。冷蔵庫の温度は約5度。しっかりと冷やしたいので、開け閉めするときに温度変化が起こるドアポケットなどではなく、なるべく奥の方へ入れ4時間以上冷やしましょう。 冷蔵庫でしっかり冷やしたら、日本酒とグラスを一緒に冷凍庫(-18度)に入れ90分待ちます。 90分経ったら日本酒をゆっくりと衝撃を与えないよう静かに冷凍庫から取り出し、一緒に冷やしたグラスに50cmくらいの高さから注ぎます。日本酒がグラスにぶつかる衝撃でシャーベット状になり、みぞれ酒の完成です。 まとめ 日本酒は冷凍保存も可能ですが、凍らせるときは容器に気をつけましょう。またみぞれ酒は暑い夏に日本酒を飲みたいときにぴったりです。味の変化は日本酒によるので、さまざまな日本酒でみぞれ酒を試してみては? ここがPOINT! ...
玉川・木下酒造│日本酒は楽しく、自由だ【京都府京丹後市】
京都の北部、京丹後市に位置する酒蔵「木下酒造」。江戸時代から建つ蔵では、時間と温度による変化を楽しむ酒『玉川(たまがわ)』が醸されています。 業界初の外国人杜氏、フィリップ・ハーパー氏が教えてくれたのは、日本酒本来の楽しさであり素晴らしさ。今回は、ハーパー杜氏から伺った酒造りのこだわり、木下酒造の魅力をたっぷりとお伝えします。 1.「木下酒造」江戸から180年の歴史を受け継ぐ蔵 竹林が静かに揺れる小さな無人駅。京丹後鉄道かぶと山駅から少し下った先にあるのが、今回訪問する酒蔵「木下酒造」です。 創業は江戸後期の1842年(天保13年)。銘酒『玉川(たまがわ)』の名は、蔵のそばを流れる上川谷川の“玉のような”美しさに由来しています。酒造りが本格化する冬の時期、笑顔で出迎えてくれたのは、フィリップ・ハーパー杜氏です。 杜氏(とうじ)とは、酒造りのリーダーとなる人のこと。奈良や茨城、大阪の蔵で数々の経験を重ねたハーパー杜氏は、2007年(平成19年)に木下酒造の杜氏に就任します。当時、木下酒造は長年蔵を支えた中井杜氏が逝去され、廃業をも視野に入れている状況でした。 蔵元・木下 善人氏とともに“新生 玉川”を掲げたハーパー杜氏は、江戸時代の製法で造る『Time Machine(タイムマシーン)』、夏酒『Ice Breaker(アイスブレーカー)』と新たな銘柄を次々と世に送り出します。 また、杜氏となったその年から“家付き酵母”による酒造りに着手。現在も蔵全体の約4割のお酒が、江戸時代から蔵に棲みつく酵母の力によって生まれています。 2.酵母無添加 自然仕込の酒 目に見えない微生物“酵母”は、酒造りに欠かせない存在です。酵母がなければ、米と米麹、水からお酒は生まれません。多くの蔵は、日本醸造協会から頒布される“きょうかい酵母”を酒造りに使用しています。 また、酵母がすくすく育つ環境を作るためには“乳酸菌”が必要です。乳酸菌を人の手で加えず、自然に任せて酵母を育てる手法は「生酛(きもと)」、「山廃(やまはい)」と呼ばれます。 木下酒造が自然仕込と呼ぶお酒には、乳酸菌も酵母も添加されていません。 材料は米と米麹、そして裏山から流れる水だけ。蔵に棲みつく多様な微生物が複雑に働き合い、最後に酵母が生き残る。神秘的な営みによって自然仕込のお酒は育まれていきます。 生酛や山廃の経験はもちろんあったものの、ハーパー杜氏にとって酵母無添加の酒造りは初の試みでした。江戸時代から建つ分厚い土壁がむき出しの蔵は、自然仕込の酒をイメージしやすい環境だったといいます。 近年、遺伝子レベルで蔵の酵母を分析したところ、きょうかい酵母とは全く縁のない、別の酵母であることが判明したそう。およそ180年ものあいだ、土壁に、梁に棲みつく酵母たちが現代の『玉川』を生み出しているのです。 「この仕事は微生物との会話です。目に見えないものが、酒を造る」 そう語るハーパー杜氏のもうひとつのこだわりが、時。時間の対話のなかから生まれる熟成酒です。 3.「時」を楽しむ熟成酒 玉川を語るうえで欠かせないのが「時間」です。商品の多くは、蔵内で一定期間眠りについた後、世界へと羽ばたきます。 搾りたての段階で、5~10年の古酒と同じ色合いのお酒『Time Machine』は、さらに寝かせることで美しいルビー色に。10年以上の時を経ると、色はコーヒーのように濃く、複雑かつやさしい味わいへと変化していきます。 令和元年には、10年以上の時を重ねた自然仕込のお酒『燻銀(いぶしぎん)』をリリース。4合瓶3万円台という従来の蔵にはない価格帯だったにも関わらず、各方面で好評を博しました。 一方で、熟成酒を育てるためには、もとのお酒を造る技術力とともに一定の資金力が求められます。できたお酒を売ることなく、在庫として維持管理する必要があるからです。 ハーパー杜氏が就任した頃、貯蔵能力が500石以下だった蔵は、増築を重ねながら貯蔵設備を増やしてきました。現在は、4~5年の時を経た熟成酒が通年商品として数多く販売されています。 「それができるのも、蔵元自身が熟成酒に魅せられているから。すきじゃないと、できないことです」 高級品だけにしたくないとハーパー杜氏が続けるように、熟成酒の多くが、他のお酒と変わらない価格帯であることに驚きます。瓶には酒造年度(BY)を示すシールが貼られ、ビンテージを意識しながら購入できることも魅力です。 「造るのも飲むのも楽しいから、種類がどんどん増えてしまって」 苦笑交じりに教えてくれるハーパー杜氏。飲むのが楽しいという言葉は、温度にも時間にも左右されない『玉川』の美味しさに裏打ちされたものでした。 4.温度や時間に縛られない「玉川」の魅力 日本酒は、冷やしたり温めたりと幅広い温度帯で楽しめるお酒です。一方で、飲み慣れない方には、自分で燗を付けるのは難しいと思われがちな一面もあります。 温めすぎると旨味が消えてしまったり、一度温めてから冷めると風味が抜けてしまうお酒が多いこともまた事実。ハーパー杜氏に相談したところ、木下酒造の燗酒には55℃以下は存在しないという驚きの答えが返ってきました。 55℃は、飛び切り燗と呼ばれる燗酒で一番高い温度帯です。木下酒造の燗酒は、その上を行く65℃や70℃が当たり前。アツアツなほど、ふわっとやわらかな味わいに変化するといいます。一度ドーンと温度を上げてから、徐々に常温に戻るまでの味の変化もまた、玉川ならではの醍醐味なのだそう。 「この変化が、めちゃくちゃ楽しいんです」 ロックで提案されている夏酒『Ice Breaker』でさえ、温めるとまた美味しく楽しめるというハーパー杜氏。ハーパー杜氏が日本酒に魅せられるきっかけになったという温度による味の変化を、玉川であれば存分に堪能できます。 十人十色、人に個性があるように、日本酒の個性も実にさまざまです。フレッシュさが持ち味のお酒は、なるべく早く飲んであげたほうがその個性を活かしきることができます。 玉川は、時間とともに変化する美味しさが個性であり、何よりの魅力。飲食店などで「玉川は最初の1杯より、最後の1杯が美味しい」といわれる所以です。 また、世界への販路拡大を考えた際、温度や時間で品質が変わりやすいお酒はどうしてもリスクを抱えがちです。海外では、要冷蔵のお酒が常温の棚に並べられてしまうことも少なくありません。 その点、玉川であれば行く先々で異なる魅力を花開かせることができます。その土地の風土によって、唯一無二の存在へと姿を変えられる。木下酒造では、玉川が旅だった先での変化を「第2の酒造り」と呼んでいます。 「日本酒は嗜好品だから、どうぞ好きに遊んでほしい。難しく考えず遊びの道具として楽しんで」 ハーパー杜氏の口から何度もこぼれた「楽しんで」という言葉。かつて、22歳で来日したハーパー氏は、出会った日本酒好きの友人とともに、音楽や日本酒と戯れる日々を過ごしたといいます。 青春ともいえるその時間は、どんなに楽しく豊かなものだったろう。思いをはせると同時に、日本酒の魅力、すばらしさを再認識させてもらえたひと時でした。 5.京丹後の久美浜から、世界へ 一つひとつ手作業で貼られていく、小さなシールたち。蔵人をはじめ、店頭に立つ方、販売に携わる方、多くの人々の手によって玉川は世界へと送り出されていきます。 蔵が創業した天保13年。江戸時代の人々にとって、酒は日々の疲れを癒し心和ませるアイテムだったはず。令和となったこの時代、玉川は世代も性別も、国籍さえも自由に飛び越え、人と人とを繋いでいます。 そして、蔵で眠る熟成酒たちは、時間を越えた先にある未来の人との出会いを待っている。 「日本酒って難しそう」そう感じる方こそ、ぜひ自由に『玉川』を味わってみてください。ハーパー杜氏がかつて日本酒の扉を開いたように、新たな日本酒の楽しさ、おもしろさがそこから広がっていくはずだから。 木下酒造有限会社 [所在地] 京都府京丹後市久美浜町甲山1512 [電話番号] 0772-82-0071 [酒蔵直営店 営業時間]9:00~17:00(1月1日を除く) [公式URL] https://www.sake-tamagawa.com/
熊本で造られるおすすめ日本酒銘柄10選!熊本の日本酒の特徴なども解説
豊かな水源に恵まれ、およそ10の酒蔵が存在する熊本県。県内では、調味料として活用される赤酒のほか、全国にファンを持つ日本酒が多数製造されています。 熊本のお酒は、辛口酒からフルーティーなお酒までバリエーション豊かなことが魅力です。今回は、おすすめ銘柄や熊本のお酒の歴史についてお伝えします。 1.熊本の酒造りの歴史は「赤酒」から 熊本の酒造りの歴史を語るうえではずせないのが「赤酒(あかざけ)」の存在です。赤酒は、古くから熊本地方に伝わるお酒。製造工程で木灰を使うことから「灰持酒(あくもちざけ)」とも呼ばれています。 日本酒の製造が主となった現在も、地元では御神酒(おみき)や御屠蘇(おとそ)の酒として親しまれています。素材の味を引き出すことから、料理酒としても活用されるお酒です。 1-1.赤酒はどんなお酒? 「赤酒」は、その名のとおり赤く色付いたお酒です。その歴史は古く、平安時代にはすでに存在したといわれています。 赤酒の大きな特徴は、製造工程に木灰を用いることです。現在のような加熱殺菌処理が確立されていなかった時代、木灰の使用はお酒の保存性を高めることが目的でした。熊本城を築城させた加藤清正は、赤酒を熊本の名産として豊臣家に献上したといわれています。 日本酒の普及とともに一時は姿を消した赤酒は、戦後に復活。上品な甘みと香りは調味料としても重宝され、現在は熊本のみならず、全国の飲食店などでも赤酒が活用されています。 1-2.熊本の酒が「赤酒」から「清酒」に転換したのは明治時代 熊本で現在のような清酒が造られるようになったのは、明治時代に入ってからのこと。市場の需要に伴い清酒製造は活発化し、1879年(明治12年)には「熊本県酒造人組合」が設立されます。 「熊本県酒造研究所」初代技師長の野白 金一氏は、「熊本酵母」を分離、培養させた人物です。酵母(こうぼ)は、酒造りに欠かせない微生物。熊本酵母は、のちに日本醸造協会で「きょうかい9号酵母」に採用され、現在全国の蔵で使用されています。 https://sake-5.jp/history-of-red-wine-and-how-to-drink-it/ 2.熊本の日本酒の特徴 熊本の日本酒の大きな特徴が、ミネラルを豊富に含む湧水で仕込まれていることです。県内には1000ヶ所以上の湧水源が存在し、その周辺には酒蔵が点在しています。 熊本酵母を維持管理する蔵、若き蔵人が活躍する老舗蔵、赤酒発祥の蔵など、蔵の個性も実にさまざまです。その多くが熊本の米や酵母を使いながら、地元から全国へと愛される地酒を造り続けています。 3.熊本で作られている酒米(酒造好適米) 酒造りに適した特性を持つ米は、酒米(正式名称 酒造好適米)と呼ばれます。水と同じく、米も日本酒の仕上がりを大きく左右する原料です。熊本県では、復活米「神力(しんりき)」のほか、オリジナル酒米「華錦(はなにしき)」が栽培されています。 3-1.神力(しんりき) 神力は、明治20年代から西日本で広く栽培されていた品種です。大正時代に酒造好適米として評価されていた熊本の神力は、昭和に入ると様々な品種が出てきたことで生産が途絶えてしまいます。 平成に入ると、熊本県で再び神力が復活。幻の酒米とも呼ばれる神力で作った日本酒は、奥深い味わいに仕上がるといわれています。 3-2.華錦(はなにしき) 華錦は、およそ14年の月日を経て開発された熊本県初のオリジナル酒米です。酒米の王様「山田錦」と、県の育成品種「夢いずみ」を掛け合わせています。草丈が低いため倒れにくく、栽培しやすいことが特徴です。県内の酒蔵では、華錦を使ったバリエーション豊かな酒が製造されています。 4.熊本の日本酒おすすめ銘柄10選 熊本では、自然の豊かさを活かした日本酒が数多く製造されています。熊本酵母が生み出す品の良い香りも魅力です。流通数が少ない銘柄、特約店は熊本のみの銘柄もあるため、出会えたときはぜひその味わいを確かめてみてくださいね。 4-1.熊本県酒造研究所 香露(こうろ) 熊本県酒造研究所は、熊本酵母の維持管理の役割を担う酒蔵です。「香露」もまた熊本酵母で醸されています。長年蓄積されたデータをふまえ、計算されたうえで生まれる味わいは“吟醸酒のお手本”と称されるほど。希少性も高く、多くの日本酒ファンに愛される熊本の地酒です。 (出典元: お酒のひょうたん屋) 4-2.通潤酒造 蛍丸(ほたるまる) 熊本県に伝わる、宝刀「蛍丸」の逸話から生まれたお酒です。やわらかな旨味は刀を癒した蛍を、後口にキレの良さは、刀の切れ味をイメージしています。地元の米と水、そして人を大切にした酒造りから生まれるのは、日々に寄り添う食中酒。蔵のラインナップには、リキュールや甘酒など幅広い商品が揃います。 (出典元: 通潤酒造) 4-3.千代の園酒造 産山村(うぶやまむら) 「産山村」は、無農薬栽培された酒米「五百万石」を原料としたお酒です。害虫対策のため田んぼに鯉を放す鯉農法で育てられています。自然の恵みが育む米、名水百選に選ばれた池山水源の名水で生まれる酒は、スッキリと清らかな味わい。熊本の豊かさを実感できる銘柄です。 (出典元:千代の園ウェブショップ ) 4-4.山村酒造 れいざん 創業は1762年(宝暦12年)と、260年余りの歴史を誇る蔵で生まれるお酒です。「れいざん」の名は、神が宿る山「阿蘇山」に由来しています。地元で古くから愛されてきた「れいざん」は、飲み飽きしない穏やかな味わいが魅力です。地元名産辛子レンコンをおともにすれば、すいすいと盃が進みます。 (出典元:阿蘇の酒 れいざん ) 4-5.室原 和田志ら露 小さな蔵で仕込まれる地域に根付いた日本酒です。加水をしていない原酒は、甘味と旨味がギュッと濃縮されています。おすすめの飲み方は、氷をたっぷり入れたグラスに注ぐロックスタイル。流通数は少なく、旅先で出会えた際はぜひおすすめしたい銘柄です。 (出典元:児玉酒店 ) 4-6.瑞鷹 瑞鷹(ずいよう) 瑞鷹は、赤酒が主流だった熊本でいち早く清酒製造に乗り出した酒蔵です。熊本県酒造研究所、誕生の地でもあります。1951年(昭和26年)には、生産が途絶えつつあった赤酒を復活させました。米の魅力を活かした酒は、国内外で数多くの受賞歴を誇ります。 (出典元: 瑞鷹株式会社) 4-7.花の香酒造 花の香(はなのか) 花のように品の良い香りが立ち上る日本酒「花の香」。特約店は熊本県内のみでありながら、国内から世界へとその名が知られるお酒です。自然栽培の米を使った「産土(うぶすな)」も蔵の代表酒。自然の循環のなかから生まれる複雑かつ豊かな味わいを堪能できます。 (出典元:大和屋酒舗) 4-8.美少年 美少年(びしょうねん) 株式会社美少年が蔵を構えるのは、菊池水源小学校の跡地です。かつての給食室では米が蒸され、校長室や保健室で麹が造られます。地元の米と水、そして人で造られる日本酒は、香りフルーティーでスッキリとした味わい。和食はもちろん、洋食とのペアリングもおすすめの銘柄です。 (出典元:熊本県の日本酒通販 美少年 公式オンラインストア) 4-9.河津酒造 花雪(はなゆき) 「花雪」は、毎年売り切れになるほどの蔵の人気商品です。極甘口でありながらキレが良く、スッと喉を通る飲み口を楽しめます。蔵の新時代を切り拓く3代目蔵元は、地元に根付く銘柄を残しつつ新たな商品開発に着手。小さな蔵の醸す酒は、多くの日本酒ファンを生み出しています。 (出典元:amazon) 4-10.亀萬酒造 亀萬(かめまん) 大量の氷を使う「南端氷仕込み」で造られるお酒です。酒蔵は、鹿児島県との県境にほど近い熊本県の南に位置します。温かい地域ならではの手法で生まれる「亀萬」は、地酒の魅力に満ちています。ぜひ土地ごとに異なる日本酒の味わいを感じてみてください。 (出典元:亀萬酒造合資会社 ) まとめ 赤酒から清酒製造、熊本酵母の培養と独自の発展を続けてきた熊本の日本酒。温暖な気候が育む酒は、蔵ごとに豊かな表情を見せてくれます。飲食店や旅先で出会ったらぜひ手にとって、熊本の美味しい日本酒を楽しんでくださいね。