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知ると日本酒がもっと楽しくなる!基礎知識から雑学まで日本酒まとめ

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知ると日本酒がもっと楽しくなる!基礎知識から雑学まで日本酒まとめ

執筆者情報

shiho
お酒とねこでできているライター。日本酒、ウイスキー、ワイン…すべてのお酒をこよなく愛す。酒好きが高じて利酒師免許を取得。 blog「わたしの酒棚」 https://sakadana.net/

監修者

日本酒ラボ編集部
日本酒ラボに携わってから日本酒のおいしさ・奥深さを知り、唎酒師の資格を取得。日本酒ラボを通して、日本酒のおいしさ・楽しさを日本酒にもあまり馴染みがない方にもお伝えしていきます。

「大好きな日本酒、もっとくわしく知りたい」「ラベルに表記されている文字の意味は?」と思ったことはないでしょうか。

知れば知るほど奥が深い日本酒の世界。今回は、思わず誰かに教えたくなる雑学を紹介します!知るともっと楽しくなる基礎知識をベースに、日本酒の世界をさらに広げていきましょう。

1.知るともっと楽しくなる日本酒の基礎知識

種類や原料、製造方法などでさまざまな表情を見せる日本酒。基礎知識を知っておくと、日本酒の世界はもっと楽しくなります。

まずは、日本酒の種類を表す特定名称酒や、ラベルから読み取れる情報についておさえていきましょう。

1-1.特定名称酒について

「特定名称酒」とは、日本酒の原料や製法を表す基準のことです。「純米酒」「本醸造酒」「吟醸酒」の大きく3つのグループに分類されます。

グループ 特徴
純米酒 米と米麹だけを原料にしたもの
本醸造酒 米と米麹、醸造アルコールを使用したもの
吟醸酒 精米歩合60%以下の米を使用したもの

日本酒のラベルを見ていると「大吟醸」や「純米吟醸」などの文字を見かけることがありますよね。これは、3つのグループをさらに細かく分類したものです。

特定名称酒の具体的な分類は以下の8つ。これらの条件に加え「こうじ米の使用割合15%以上」「1等から3等に該当する米を使う」などの条件を満たしていなければ、特定名称酒を名乗ることはできません。

吟醸酒はフルーティーな香り、純米酒はふくよかな味わい、本醸造酒はスッキリ辛口系など、それぞれの個性と合わせて覚えると日本酒選びがぐっと楽しくなりますよ。

特定名称 原料 精米歩合
吟醸酒 米、米麹
醸造アルコール
60%以下
大吟醸酒 米、米麹
醸造アルコール
50%以下
純米酒 米、米麹
純米吟醸酒 米、米麹 60%以下
純米大吟醸酒 米、米麹 50%以下
特別純米酒 米、米麹 60%以下
または特別な製造方法
本醸造酒 米、米麹
醸造アルコール
70%以下
特別本醸造酒 米、米麹
醸造アルコール
60%以下
または特別な製造方法

醸造アルコールとは?

原料欄にある「醸造アルコール」は、サトウキビなどを原料にした純度の高いアルコールのことです。醸造アルコールを入れたお酒は、スッキリとしたドライテイストに仕上がります。

吟醸香(ぎんじょうか・ぎんじょうこう)と呼ばれる華やかな香りが引き立ちやすいことも特徴です。

醸造アルコールを添加する理由など、醸造アルコールについて詳しくはこちらの記事で解説しています。

日本酒に「醸造アルコール」を入れる理由とは?醸造アルコール添加に悪いイメージがついてしまった理由も解説!

特別純米酒、特別本醸造酒の「トクベツ」とは?

特別純米酒や特別本醸造酒の「特別な製造方法」には、はっきりとした基準はありません。各蔵で自社製品と比較し「よし、これは特別だ」と判断した際に表記できます。

例えば「酒造好適米(酒米)を100%使用」も特別な製造方法の一例です。この場合、「山田錦100%使用」とラベルに何が特別なのか表記する必要があります。

飲食店や酒販店で「特別」の文字を見つけたら、特別なポイントを探し当ててみるのも楽しいですよ。

1-2.日本酒のラベルから分かる基礎知識

松の司 ラベル

日本酒のラベルはお酒の情報がギュッと詰まった、いわば自己紹介文のようなもの。原材料だけでなく、味の目安を知る手がかりにもなります。

日本酒のラベルについてはこちらの記事でより詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

日本酒のラベルから何がわかるの?ラベルの読み方を解説!

原材料名

水以外の原材料名が、使用量の多い順に記載されています。

精米歩合

精米歩合(せいまいぶあい)とは、一粒の米の外側をどれくらい削ったかを示す割合のことです。「精米歩合40%」とあれば、米の外側を60%削っているということ。米の中心部分40%だけを使って仕込んだお酒になります。

日本酒の精米歩合について詳しく解説!精米歩合が高い=良いお酒?

アルコール度数

日本酒の平均的なアルコール度数は15度~16度です。この数字を下回る低アルコール日本酒は、口当たりが軽く日本酒初心者にもおすすめです。

日本酒度

「甘い」「辛い」といわれる味の目安になるものです。標準はマイナス1.4度~プラス1.4度。マイナスになるほど甘口、プラスになるほど辛口タイプのお酒です。

日本酒の甘辛度合いは、酸度やアミノ酸度によっても左右されます。あくまでも味の目安のひとつとして参考にしてくださいね。

ラベルの日本酒度からテイストがわかるかも!?「日本酒度」を解説

酸度

日本酒の酸度は、「すっぱさ」ではなく「キレ」を表します。日本酒度が同じ場合、酸度が高いほど辛く、低いほど甘く感じるのが特徴です。

日本酒の酸度について解説!酸度は「すっぱさ」ではなく「キレ」の指標!

原料米

ラベルには「山田錦(やまだにしき)」「雄町(おまち)」など、使用した酒米の名前を記載する場合があります。各蔵が酒米の種類にこだわるのは、酒米によって日本酒の味わいに個性が生まれるからです。山田錦の特徴やおすすめ銘柄については、こちらからもチェックできます。

【2021年最新版】酒米の王様「山田錦」とは?山田錦で造られたおすすめの日本酒20選も紹介!

BY(Brewing Year)

「Brewing Year(ブリューイングイヤー)」つまり、日本酒の醸造年度を表す数字です。日本酒のBYは、7月1日から翌年の6月30日までを基準としています。

例えば、画像「松の司」の「2019 R1BY」は「2019年(令和元年)の7月1日から6月30日の間に仕込んだお酒ですよ」ということ。

では製造年月日はというと、こちらは仕込んだお酒を「瓶詰めした時期」を表しています。製造年月日は必ず表示しなくてはいけない項目ですが、BYは各蔵の判断で記載するものです。

「去年仕込んだ新酒なんだな」「しばらく熟成させてから瓶詰めしたのか」など、BYが表す違いも楽しんでみてくださいね。

1-3.「生酛」や「山廃」とは?

「生酛(きもと)」や「山廃(やまはい)」は、日本酒造りに必要な乳酸菌を自然に任せて育てる製法です。味わい濃く、繊細な香りの日本酒に仕上がります。

「速醸酛(そくじょうもと)」は乳酸菌を添加する製法です。それぞれ手間ひまやコスト、仕上がりの味わいも異なります。

生酛(きもと)

蒸した米と麹を桶に入れ、水を加えてすりつぶす製法です。すりつぶす作業は「山卸し(やまおろし)」と呼ばれます。

市場に出回る日本酒のうち、生酛造りのお酒はわずか1%と少ないものの、近年は各蔵、日本酒ファンから高い注目を集める製法です。

山廃酛(やまはいもと)

生酛のように米をすりつぶさない手法です。山卸しをしない、つまり廃止することから「山廃酛」と呼ばれるようになりました。燗酒に適した銘柄が多いのが特徴です。

山廃仕込みについては

日本酒の「山廃(やまはい)仕込み」とは?味わいの特徴やおすすめの楽しみ方も解説!

速醸酛(そくじょうもと)

醸造用の乳酸を添加する、日本酒シェアのおよそ90%を占める製法です。タンク内がすぐに酸性になり、安全に効率よく日本酒造りが進められます。生酛や山廃酛に比べ、軽やかな味わいに仕上がるのが特徴です。

2.知っていますか?日本酒の雑学あれこれ

ここからは日本酒の雑学8選を紹介します!日本の歴史や文化とともに育まれた日本酒は、目からウロコの雑学の宝庫。友人と日本酒を楽しむ際の話のネタにもなりますよ。

2-1.「10月1日」が日本酒の日の理由

10月1日、日本酒の日は1978年に日本酒造組合中央会が制定したものです。近年は、SNSで日本酒の日をアピールする酒蔵や酒販店も多く見受けられるようになりました。

ではなぜ、10月1日が日本酒の日になったのか?その理由は12種類の動物で例える「十二支」に関係しています。

干支の10番目にあたる「酉(とり)」の字は、壺を表す象形文字で「酒」を意味しています。また「酉の月」にあたる9月から10月はちょうど新米が収穫され、お酒の仕込みが始まる時期です。同時に「ひやおろし」と呼ばれるひと夏熟成させた日本酒が出回る時期でもあります。

さらに、10月といえば秋の味覚と日本酒のペアリングを楽しめる季節。実りの多い時期、日本酒の文化や伝統を多くの人に引き継いでほしいという日本酒業界の想いが「10月1日、日本酒の日」には込められています。

2-2.酒税法上、「リキュール」に分類される日本酒がある

リキュールとは、蒸留酒や醸造酒に果実や香草などの香り成分を溶かしたお酒のことです。カクテルに使う「カンパリ」、焼酎に梅を漬け込んだ「梅酒」もリキュールに分類されます。

日本酒もリキュールのもととなる醸造酒にあたるお酒です。近年は、日本酒を使ったおしゃれで飲みやすい「日本酒リキュール」を製造する蔵も見受けられます。

度数が高い日本酒リキュールは、ソーダ割りやロックなど、さまざまなスタイルで楽しめるのが大きな魅力です。

久保田ゆずリキュール

(参考:朝日酒造株式会社「久保田ゆずリキュール」

2-3.日本酒の銘柄名に一番使われている漢字は「山」

「日本酒の名前は漢字がたくさん!」と思ったことはありませんか?そのなかでも一番使われている漢字はズバリ、「山」。

平成11年度の日本酒造組合中央会のデータによると、2位以下には次のような漢字が続いています。

ランキング 漢字 使用銘柄数
1 247
2 191
3 177
4 164
5 157
6 156
7 146
8 131
9 131
10 125

(参考:日本酒造組合中央会「日本酒FAQ」

秋田県の「山本」、山形県の「月山」、新潟県の「八海山」など「山」が付く銘酒は多数。「鶴」や「菊」、「宗」といった漢字も、たしかに日本酒を連想させる漢字ですよね。

2-4.日本酒の造り手さん達は仕込みシーズン中、納豆が食べられない

日本酒造りには「納豆」が天敵だといわれています。なぜなら、ネバネバのもとである納豆菌が、酒造りに必要な微生物の成長をじゃましてしまうから。仕込みシーズン中は、納豆を食べることを禁止する酒蔵もあるほどです。

ところが、この「日本酒×納豆」のありえない組み合わせで評判を呼んでいる日本酒があるのをご存じでしょうか?

宮城県「金の井酒造」が造るその名も「川口納豆」は、ラベルもまさに納豆そのもの!の異色の銘柄。原料には、地元の納豆製造会社「川口納豆」が自社栽培した酒米を使用しています。

2021年の予約販売時には、わずか1週間で完売したという人気ぶり。見つけたときにはぜひ一度試してみたいですね。

2-5.日本酒の製造は世界でも最先端の技術だった

日本酒造りでは「火入れ」と呼ばれる低温加熱殺菌をおこないます。火入れの目的は2つ。搾ったお酒に残る糖化酵素の働きを抑えることと、乳酸菌の一種である火落ち菌などの微生物を除去することです。

糖化酵素が働いてしまうと、瓶内のデンプンが糖化され味が甘く変化してしまいます。また、火落ち菌などの微生物は、日本酒の味を劣化させてしまう要因のひとつです。

火入れの手法は、室町時代からすでに存在していたといわれていますこれは、フランスの科学者が低温加熱殺菌法を開発する300年も前のこと。日本酒の製造法は、はるか昔から世界で最先端の技術だったのです。

2-6.日本酒は他の酒よりも体温が2度高くなる

日本酒造組合中央会によると、日本酒は、他のお酒を飲んだときより体温が2度高くなるといわれています。燗酒に限らず、常温の日本酒でも同様です。血液循環が良くなり、冷え性改善の効果も期待できます。米と米麹を発酵させて造る日本酒は、体に良い成分がたくさん含まれているお酒なのです。

日本酒って健康に悪い?実は女性に嬉しい成分がたっぷり♪

2-7.「角打ち」の名前の由来

「角打ち(かくうち)」とは、酒屋の一角に設けられたスペースで日本酒を楽しむことです。飲食店のように料理を提供する店舗もあれば、店内で販売しているおつまみを自分で購入して楽しむ店舗もあります。

角打ちは、本来は「升(ます)」からお酒を飲むことを表していました。升の角に口をつけるから「角打ち」というわけです。

かつて、日本酒は店頭で升を使い、量り売りするスタイルが一般的でした。ところが、自宅まで持ち帰る間が待ちきれないのんべえ達が現れたのです。

「今すぐ飲みたい!」という要求に応え、升で量った酒をそのまま提供したのが現在の角打ちスタイルの始まり。升で飲むことではなく、店頭で日本酒を飲むことを「角打ち」と表すようになった由来といわれています。

角打ちの歴史や角打ちができるお店など、詳しくはこちらの記事で解説しています。

日本酒を気軽に楽しめる「角打ち」を知っていますか?

2-8.酒造りにおいて、唄を歌っていた文化がある

かつて、酒蔵では「酒造り唄(さけづくりうた)」と呼ばれる唄を仕込み中に歌ったといわれています。酒造り唄は作業時間の長さを計る目安になるほか、寒い冬に仕込みを続ける蔵人たちの心を癒すものでした。

唄の歌詞やメロディは、全国各地でさまざまに異なります。以下は、丹波杜氏の酒造り唄の一節です。

アー寒や北風 ア今日は南風
明日は浮名のたつみ風
アー今日の寒さに 洗い番はどなた
可愛いや殿サの声がする

 

大手酒造メーカー「大関株式会社」の公式HPでは、メロディ付きの酒造り唄が紹介されています。厳寒期にお酒を仕込む杜氏たちに想いをはせながら、ぜひ耳を傾けてみてはいかがでしょうか。(参考:大関株式会社「酒造り唄」

まとめ

日本酒の基礎知識と雑学あれこれ、いかがでしたか?難しそうに思われる漢字ばかりの表記も、意味がわかると日本酒の楽しみ方がさらに広がります。近年はリキュールのようなニュータイプの商品もぞくぞく登場。常に進化を続ける日本酒から、ますます目が離せなくなりそうですね。