大吟醸酒は、日本酒の種類のひとつです。読み方は?よく似た純米吟醸酒との違いは?と気になることもあるのではないでしょうか。
「日本酒の種類を知ろう!」第3回となる今回は、大吟醸酒について詳しく解説。おすすめのおつまみも紹介します。バリエーションの多さこそ、日本酒の特徴であり大きな魅力。大吟醸酒について知り、日本酒をもっと美味しく楽しみましょう。
目次
1.大吟醸酒とは?定義や味わい
大吟醸酒(だいぎんじょうしゅ)とは、日本酒を原料や製法で分類した特定名称(とくていめいしょう)のひとつです。特定名称には、大吟醸酒を含む以下の全8種が存在します。
- 本醸造酒
- 特別本醸造酒
- 吟醸酒
- 大吟醸酒
- 純米酒
- 特別純米酒
- 純米吟醸酒
- 純米大吟醸酒
これらうち“吟醸”と付くお酒は、吟醸造りで製造されるのが大きな特徴です。まずは、大吟醸酒の定義や味わい、吟醸酒との違いなどについて紹介します。
1-1.大吟醸酒の定義
「清酒製法品質表示基準」では、大吟醸酒は以下のように定義されています。
- 米と米こうじ、醸造アルコールを原料に造られること(米の等級は3等以上)
- 精米歩合が50%以下であること
- こうじ米の使用割合が15%以上であること
- 吟醸造りで造られ、固有の香味を持ち色沢が特に良好であること ※色沢=色合いや透明度など
米こうじや醸造アルコールなど、耳慣れないワードが多い日本酒の世界。それぞれひとつずつ確認していきましょう。
米こうじ
米こうじとは、米に麹菌を繁殖させた発酵食品です。日本酒だけでなく、甘酒や米味噌、みりんなども米こうじを原料に造られます。
醸造アルコール
醸造アルコールとは、主に糖蜜やトウモロコシなどを原料にした純度の高いアルコールのことです。アルコール度数約90度の醸造アルコールは、加水をして30度前後まで度数を下げてから添加されます。
醸造アルコールは、江戸時代には腐敗予防、戦後はコスト削減を目的に使用されていました。現在は、香りや味わいの調整を目的にごく少量が添加されています。醸造アルコールを添加することで、醪(もろみ)のなかの香り成分が引き出され大吟醸の特徴である華やかな香りが生まれます。
精米歩合
精米歩合(せいまいぶあい)は、米の外側を削った後に残る割合を数値で示したものです。「精米歩合50%以下」と定められている大吟醸は、米の外側を半分以上削った米を使う必要があります。米を小さく削る工程は手間と時間を要するため、大吟醸は高価格帯の商品が多くなります。
吟醸造り
吟醸造りとは、より小さく削った米を使い低温でゆっくりと発酵させる製法のことです。また、発酵の過程で吟醸香(ぎんじょうこう・ぎんじょうか)と呼ばれる華やかな香りが生まれます。
吟醸造りの大吟醸酒や吟醸酒は、米の精米技術の進歩とともに誕生。1980~1990年前後のバブル期には高級志向も相まって「吟醸酒ブーム」を生み出しました。
1-2.大吟醸酒の香りや味わい
大吟醸酒は、フルーティーな香りとすっきりした味わいが大きな魅力です。添加された醸造アルコールが、吟醸香とともに適度なキレ味を生み出します。
1-3.吟醸酒との違いは「精米歩合」
大吟醸酒と吟醸酒の大きな違いは、精米歩合の定義です。大吟醸酒の精米歩合が50%以下であるのに対し、吟醸酒は60%以下に定められています。つまり、大吟醸のほうがより小さく削った米を原料に造る必要があるというわけです。
一般的に、小さく削った米を使用するほど、お酒は雑味のないクリアな味わいに仕上がるといわれています。同じ蔵、同じ米から生まれる吟醸酒と大吟醸酒の違いを比べてみるのもおすすめです。
吟醸酒についてはこちらの記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください。
「吟醸酒」とは?定義やおすすめの飲み方を解説【日本酒の種類を知ろう!第2回】
2.大吟醸酒の選び方3つのポイント
「ひとくちに大吟醸酒といっても種類はいっぱい。どれを飲むか迷ってしまう」そんなときは、以下のポイントを参考にお酒を選んでみてください。
- 香りの個性で選ぶ
- 米の個性で選ぶ
- 甘口と辛口の違いで選ぶ
大吟醸酒の大きな特徴である香りは、成分によってタイプがわかれます。また、酒米に注目して選ぶのも日本酒の楽しみ方のひとつです。酒販店や飲食店で大吟醸酒を見つけたら、ぜひこれらのポイントを意識してみてくださいね。
2-1.香りの個性で選ぶ
大吟醸は、フルーティーで華やかな香りが魅力的なお酒です。また、香りは「カプロン酸エチル」や「酢酸イソアミル」といった成分により、次のように表情を変えます。
カプロン酸エチルのリンゴや洋梨のような香り
カプロン酸エチルを主成分とする吟醸香は、リンゴや洋梨のような甘くさわやかな香りが特徴です。大吟醸酒で感じられる香りの多くは、カプロン酸エチルを主成分にしています。タンパク質の少ない米や、より小さく削った米を原料に造られるお酒に現れやすい香りです。
酢酸イソアミルのバナナやメロンのような香り
酢酸イソアミルを主成分にするお酒からは、バナナやメロンを思わせる甘い香りが漂います。香りが濃厚で甘いぶん、味わいも甘く感じられることがあるでしょう。「きょうかい9号」、「きょうかい14号」といった酵母を使ったときに生まれやすい香りです。
2-2米の個性で選ぶ
日本酒の原料である酒米には、山田錦をはじめとするさまざまな種類があります。それぞれ、より小さく削りやすかったり、香りを引き出す製法に適していたりなど個性はさまざま。各酒蔵では、酒米を使い分けながらこだわりのお酒が造られています。
山田錦
山田錦(やまだにしき)は、吟醸酒ブームとともに一躍その名が知られた酒米です。タンパク質が少なく、米質がやわらかいことから質の良い麹が造りやすいといわれています。鑑評会で金賞を受賞するような大吟醸酒にもよく用いられる品種です。
五百万石
五百万石(ごひゃくまんごく)は、新潟県を中心に栽培される品種です。米を小さく精米するのが難しく、一般的に、吟醸酒造りには不向きとされています。一方で、各蔵からは工夫を凝らした大吟醸酒が五百万石で生み出されています。比較的香りが穏やかでライトな酒質が多いため、ぜひ酒米による違いを体感してみてください。
雄町
雄町(おまち)は、栽培の難しさから一時は幻ともいわれた酒米です。雄町で造るお酒は深い旨味にあふれ、“オマチスト”と呼ばれるファンも生み出しています。雄町をより小さく精米し、低温でゆっくり発酵させた大吟醸酒は豊かな香りと力強いコクが持ち味です。
美山錦
美山錦(みやまにしき)は、長野県や東北地方で栽培されている品種です。美山錦を使ったお酒は、比較的おだやかな香りに仕上がります。大吟醸酒もまた、心地よい香りとまろやかな味わいが魅力です。料理とあわせて美味しい銘柄も数多く見られます。
2-3.甘口と辛口の違いで選ぶ
日本酒を飲むようになると「甘口」、「辛口」といったワードを耳にすることもあるのではないでしょうか。辛口の日本酒はピリリと辛いわけではなく、キレのあるドライな味わいが特徴です。
日本酒の甘辛度合いは、日本酒度と呼ばれる数値で示されます。一般的に、数値がプラス寄りであるほど辛口、マイナス寄りであるほど甘口のお酒です。
また、日本酒の味わいは日本酒度や酸度、アミノ酸度などで構成されています。必ずしも日本酒度だけで味が決まるわけではありませんが、目安のひとつとしてお酒を選ぶときの参考にしてください。
3.大吟醸酒のおすすめの楽しみ方
香りが特徴的な大吟醸酒は、常温からやや冷たい温度で味わうのがおすすめです。理想の温度帯は、冷やと呼ばれる常温の20℃、または花冷えと呼ばれる7~10℃あたり。冷やしすぎると吟醸香が飛んでしまうため気を付けてください。
シャープなキレ味を楽しみたいときは、温めて味わうのもおすすめです。特に、50℃以上の熱燗にするとキリッとした味わいが引き立ちます。
大吟醸酒を楽しむときは、グラスにもひと工夫。「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」の受賞酒を見つけたら、ぜひ、ワイングラスに注いで味わってみてください。吟醸香がグラスのなかで豊かに膨らみ、大吟醸酒の醍醐味を堪能できます。
4.大吟醸酒には香るおつまみを
華やかな香りを持つ大吟醸酒には、同じく香りが個性的なおつまみをあわせるのがおすすめです。柚子やレモンなど柑橘系の香りで仕上げた料理や、しそや梅などを使ったメニューも良く合います。レモングラスを使った鶏肉のソテーや、バジルとトマト、モツァレラチーズのカプレーゼなどハーブを使ったおつまみも良いでしょう。
また、シャープなキレ味が光る燗酒の大吟醸酒は、少し濃い目の味付けのおつまみと好相性。油揚げのネギ味噌焼きや焼き魚など、味に深みのある料理とも美味しく楽しめます。
おうちでかんたんに作れるおすすめのおつまみはこちらでレシピを紹介しているのでぜひ参考にしてみてください。
まとめ
大吟醸酒は、吟醸造りによる華やかな香りが特徴です。使用する米や米を削る度合いには、各蔵のこだわりが現れています。
味わう温度帯によって、さまざまに表情を変えることも魅力のひとつです。ぜひ、好みのおつまみを用意して、大吟醸酒を選ぶ楽しみ、味わう楽しみを体感してみてくださいね。