ホーム 日本酒を知る 「吟醸酒」とは?定義やおすすめの飲み方を解説【日本酒の種類を知ろう!第2回】

「吟醸酒」とは?定義やおすすめの飲み方を解説【日本酒の種類を知ろう!第2回】

0
「吟醸酒」とは?定義やおすすめの飲み方を解説【日本酒の種類を知ろう!第2回】

執筆者情報

shiho
お酒とねこでできているライター。日本酒、ウイスキー、ワイン…すべてのお酒をこよなく愛す。酒好きが高じて利酒師免許を取得。 blog「わたしの酒棚」 https://sakadana.net/

監修者

日本酒ラボ編集部
日本酒ラボに携わってから日本酒のおいしさ・奥深さを知り、唎酒師の資格を取得。日本酒ラボを通して、日本酒のおいしさ・楽しさを日本酒にもあまり馴染みがない方にもお伝えしていきます。

吟醸酒は、日本酒を原材料や造り方で分類した種類のひとつです。日本酒を飲み始めると「純米吟醸や大吟醸など、似た名前のお酒とどう違うの?」と疑問に感じることもあるのではないでしょうか。

そこで今回は、吟醸酒の定義や歴史について詳しく解説。おすすめの飲み方やあわせるおつまみも紹介します。味や香りの違いなど、選び方のポイントもぜひ参考にしてください。

1.吟醸酒とは?定義や歴史

吟醸酒

吟醸酒(ぎんじょうしゅ)とは、日本酒を原料や製法で分類した特定名称(とくていめいしょう)のひとつです。特定名称には、吟醸酒を含む以下の8種が挙げられます。

  • 本醸造酒
  • 特別本醸造酒
  • 吟醸酒
  • 大吟醸酒
  • 純米酒
  • 特別純米酒
  • 純米吟醸酒
  • 純米大吟醸酒

吟醸酒や純米吟醸酒のように、“吟醸”と付くお酒は吟醸造り(ぎんじょうづくり)で造られるのが特徴です。まずは、吟醸酒の歴史、味わいや香りについてみていきましょう。

1-1.吟醸酒の定義

清酒製法品質表示基準」では、吟醸酒は以下のように定義されています。

  • 米と米こうじ、醸造アルコールを原料に造られること(米の等級は3等以上)
  • 精米歩合が60%以下であること
  • こうじ米の使用割合が15%以上であること
  • 吟醸造りで造られ、固有の香味を持ち色沢が良好であること ※色沢=色合いや透明度など

「米こうじ」や「醸造アルコール」など、耳慣れない言葉が多い日本酒の世界。「吟醸造り」も含め、それぞれについて紹介していきますね。

米こうじ

米こうじとは、蒸した米に麹菌を繁殖させた発酵食品のことです。米こうじは、古くから和食の身近な存在。味噌やみりんなどの調味料も米こうじから生まれています。

日本酒造りでは、米こうじを造る工程は「製麹(せいぎく)」と呼ばれます。昔から、“一麹、二酛、三造り”(いちこうじ、にもと、さんつくり)といわれるほど、麹造りは重要な工程です。米こうじの出来が、お酒の仕上がりを左右するといわれています。

醸造アルコール

醸造アルコールとは、糖蜜やトウモロコシなどを主原料にした純度の高いアルコールのことです。アルコール度数は約95度と高く、酒造りでは30度前後になるまで加水して使用されます。

醸造アルコールを添加した日本酒は、アルコールの刺激を感じるドライテイストに仕上がりやすいといわれています。また、製造過程で引き出される豊かな香りも特徴です。

精米歩合

精米歩合(せいまいぶあい)とは、米の外側を削り残った割合を数字で示したものです。精米歩合60%とは、外側を40%削っていることを意味しています。

つまり、吟醸酒の定義「精米歩合60%以下であること」とは、「外側を40%以上削った米を使わないと、吟醸酒とは名乗れないよ」という意味です。

白米として食べる米の場合、精米歩合は約90%といわれています。日本酒造りでは、米の外側に含まれる栄養分が雑味の原因になり得るため、より小さく削った米を使うのが一般的です。

なかでも吟醸酒は小さく削った米を原料に、華やかな香りとクリアな味わいを生み出しています。

吟醸造り

吟醸造りとは、より小さく精米した米を原料に、低温でゆっくりと発酵させる醸造方法のことです。使用する米や米こうじ、造り方にも蔵のこだわりがあふれています。吟醸造りで仕込んだ吟醸酒は、果物や花に例えられる華やかな香りが特徴です。

1-2.精米技術の進歩で生まれた吟醸酒

前述したように、吟醸酒にはより小さく削った米が必要です。精米歩合60%以下の吟醸酒は、竪型精米機(たてがたせいまいき)と呼ばれる精米機の登場により誕生しました。

米粒を崩さないよう小さく削るのは難しく、竪型精米機が登場するまでは、外側を10~30%削り取るのが精いっぱいだったといわれています。

昭和初期、竪型精米機が開発されると精米技術は著しく向上。吟醸酒や、さらに小さい米を使う大吟醸酒は高額だったものの、バブル期の高級志向とあいまって「吟醸酒ブーム」が巻き起こりました。

時代が平成に入るとさまざまな吟醸酵母が開発され、フルーティーな香りの日本酒が一躍話題に。日本酒のファン層を広げ、その人気は海外へも広まっています。

1-3.吟醸酒の味わいや香り

吟醸酒の味わいは、使用する米や製造方法によりさまざまに変化します。スッキリとした淡麗タイプもあれば、コクを感じる芳醇なタイプもあるでしょう。

大きな特徴は、吟醸造りによるフルーティーな香りです。お米生まれの日本酒から広がる、リンゴや洋梨、バナナのような香りを堪能できます。

日本酒 フリー素材

2.純米吟醸酒・大吟醸酒との違い

吟醸酒とよく似た名前の「純米吟醸酒」や「大吟醸酒」。吟醸酒とこれらの違いは、原料や精米歩合にあります。

純米吟醸酒との違いは「原料」

吟醸酒と純米吟醸酒との違いは、原料です。吟醸酒が醸造アルコールを使うのに対し、純米吟醸酒は米と米こうじのみで造られています。

純米吟醸酒についてはこちらの記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。

「純米吟醸酒」とは?おすすめの飲み方や精米歩合を紹介【日本酒の種類を知ろう!第5回】

大吟醸酒との違いは「精米歩合」

吟醸酒と大吟醸酒との違いは、精米歩合です。吟醸酒の精米歩合が60%以下であるのに対し、大吟醸酒は50%以下と定められています。より小さな米を使って造られる大吟醸酒は高価格帯の商品が多く、なかには精米歩合30%前後のお酒も存在します。

大吟醸酒についてはこちらの記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。

「大吟醸酒」とは?おすすめおつまみや飲み方も【日本酒の種類を知ろう!第3回】

3.吟醸酒の選び方3つのポイント

種類の多い吟醸酒、どれを選んでよいかわからない!そんなときは、次の3つのポイントを参考にしてみてください。

  1. 酒米の個性で選ぶ
  2. リンゴ?バナナ?香りの個性で選ぶ
  3. 甘口や辛口の好みで選ぶ

日本酒の味わいには、酒米の個性が色濃く現れます。フルーティーといわれる香りは、主に2タイプあるのが特徴です。ここでは、よく見聞きする「甘口」、「辛口」の違いもあわせてみていきましょう。

3-1.酒米の個性で選ぶ

酒造りに適した個性を持つ米は、酒造好適米(しゅぞうこうてきまい)と呼ばれます。日本酒選びに迷ったら、ぜひ酒米の違いに注目してみてください。日本酒の奥深さをより感じられるはずです。

山田錦

山田錦(やまだにしき)は、王様とも呼ばれる酒米の代表種。小さく削りやすく、質の良い麹ができやすいといわれています。鑑評会などで受賞歴を持つ銘柄に使われることも多く、日本酒選びに迷ったらまずおすすめしたい酒米です。

五百万石

五百万石(ごひゃくまんごく)は、米どころ新潟生まれの酒米です。米を小さく削る製法には向かないものの、各蔵では工夫を凝らした五百万石の吟醸酒、大吟醸酒が造られています。比較的ライトな味わいのお酒に仕上がりやすく、他の酒米との飲み比べを楽しむのもおすすめです。

雄町

雄町(おまち)は、オマチストと呼ばれるファンを持つ品種です。栽培の難しさから生産量が減少し、一時は幻ともいわれました。雄町で造る日本酒は、濃醇な香り、旨味が魅力です。飲食店などで見つけたら、ぜひその味わいを体感してみてください。

美山錦

美山錦(みやまにしき)は、長野県で開発された酒米です。美山錦で造る日本酒は、比較的香りがおだやかで、ライトな味わいに仕上がるといわれています。料理とあわせて美味しい銘柄も多く、晩酌用の吟醸酒を選びたいときにもおすすめですよ。

酒米

3-2.リンゴ?バナナ?香りの個性で選ぶ

吟醸香の個性は、香りの成分により主に以下の2つに分類されます。

  • リンゴ・洋梨系の爽やかな吟醸香
  • バナナ・メロン系の濃厚な甘さの吟醸香

これらは見た目では判断できないものの、酒販店などでお酒を選ぶときは、ぜひスタッフにキーワードとして伝えてみてください。自分好みの1本を見つける手がかりになりますよ。

リンゴ・洋梨系の爽やかな吟醸香

リンゴや洋梨を思わせる爽やかな吟醸香は「カプロン酸エチル」と呼ばれる成分で生まれます。タンパク質が少ない米や、より小さく精米した米を原料にしたお酒に生まれやすく、甘さと酸味を感じさせる香りです。

バナナ・メロン系の濃厚な甘さの吟醸香

バナナやメロンのような、濃厚な甘さを感じる吟醸香は「酢酸イソアミル」に由来します。香りが甘いぶん、お酒の味わいも濃く、甘く感じられることがあるでしょう。お酒単体で味わうだけでなく、食前酒や食後酒にも好まれるタイプです。

3-3.甘口や辛口の好みで選ぶ

日本酒の味わいは「甘口」、「辛口」で表現されることがあります。これは、日本酒度と呼ばれる数値を目安にしたものです。

日本酒度は、+(プラス)と-(マイナス)で表記されます。一般的に、プラス寄りであるほど辛口、マイナス寄りであるほど甘口です。

また、日本酒の味わいは日本酒度だけでなく、酸度やアミノ酸度などで構成されています。そのため、日本酒度が必ずしもお酒の味わいを決めるわけではありません。

一方で、日本酒度+10以上の “大辛口”をうたう銘柄もあります。日本酒選びに迷ったら、ぜひ味の目安のひとつとして活用してみてください。

4.吟醸酒のおすすめの楽しみ方

吟醸酒は、魅力のひとつである香りを楽しめる飲み方がおすすめです。そのためには、飲む温度帯に気を付けてみてください。

冷やして味わうときの理想の温度は、花冷えと呼ばれる10℃前後です。また、20℃前後の常温でもふくよかな旨味、香りを楽しめます。温めて味わいたいときは、35~40℃を目安にしてみましょう。米こうじの豊かな香りを感じやすくなります。

冷酒でも燗酒でも、好みの温度で楽しめるのが日本酒の大きな魅力です。ぜひ、温度による吟醸酒の香り、味わいの変化を感じてみてください。

5.吟醸酒には香りの良いおつまみを

フルーティーな香りの吟醸酒には、同じく香りの良いおつまみを合わせてみましょう。夏には薬味たっぷりの冷奴、冬には柚子味噌を乗せたふろふき大根などがおすすめです。

バナナやメロンのように甘い香りの吟醸酒は、デザートとのペアリングも楽しめます。適度にコクのある吟醸酒であれば、出汁をきかせた椀物や煮物に合わせても美味しく味わえますよ。

冷奴

まとめ

吟醸酒は、吟醸造りによるフルーティーな香りが特徴です。精米歩合や原料の違いで、大吟醸酒や純米吟醸酒などに分類されます。

吟醸酒をきっかけに、「もっと米を削った大吟醸はどんな香り?」「米と米こうじのみの純米吟醸酒の味わいは?」と、日本酒の世界を広げてみるのもおすすめです。冷やしたり温めたりしながら、ぜひ自分好みの味わいを見つけてみてくださいね。