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【唎酒師が解説】日本酒のアルコール度数は15度前後。日本酒のアルコール度数が高い理由とは?

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【唎酒師が解説】日本酒のアルコール度数は15度前後。日本酒のアルコール度数が高い理由とは?

執筆者情報

shiho
お酒とねこでできているライター。日本酒、ウイスキー、ワイン…すべてのお酒をこよなく愛す。酒好きが高じて利酒師免許を取得。 blog「わたしの酒棚」 https://sakadana.net/

監修者

日本酒ラボ編集部
日本酒ラボに携わってから日本酒のおいしさ・奥深さを知り、唎酒師の資格を取得。日本酒ラボを通して、日本酒のおいしさ・楽しさを日本酒にもあまり馴染みがない方にもお伝えしていきます。

日本酒は、アルコール度数の平均が15度前後のお酒です。ウイスキーや焼酎より低いものの、ビールやワインに比べ度数は高くなります。

今回は、日本酒のアルコール度数が高い理由について紹介します。度数が高い日本酒をおいしく楽しむポイントや、低アルコール日本酒の情報もぜひチェックしてみてくださいね。

1.日本酒のアルコール度数の平均は15度前後

日本酒のアルコール度数は、15度前後が一般的です。実際の度数は、ラベルで確認できます。

ただし、なかにはアルコール度数20度の日本酒や、10度に満たない日本酒もあります。一方で、アルコール度数40度といった日本酒は見かけません。これは、酒税法で日本酒のアルコール度数が決められているためです。

まずは、日本酒の定義を確認しつつ、日本酒とほかのお酒のアルコール度数を比較してみましょう。

1-1.酒税法の規定は22度未満

酒税法では、日本酒のアルコール度数は22度未満に定められています。原料の主な定義は、米と米麹、水などです。つまり、原料の条件をクリアしても、アルコール度数22度を超えるお酒は日本酒として販売できないことになります。

一般的に、市場に出回る日本酒のアルコール度数は15~16度です。原酒と呼ばれる加水調整をしていない日本酒の場合は、19度近くになることもあります。

また、近年は低アルコール日本酒も登場するなど、日本酒のアルコール度数は銘柄によって幅広いのが特徴です。

1-2.高い?低い?ほかのお酒とアルコール度数を比べてみよう

平均度数15~16度の日本酒は、ほかのお酒と比べて度数は高いのでしょうか?ビールやワインなどと平均的な度数を比較してみましょう。

ビール 5~7度
ワイン 12度
日本酒 15~16度
焼酎 20~25度
ウイスキー 40度

 

グイッと飲むようなビールと比較すると、日本酒のアルコール度数はずいぶん高いことがわかります。焼酎、ウイスキーなどは日本酒より度数が高いですが、ロックにしたりソーダ割りにしたりして飲むことが多いお酒です。

ちなみに、ビール・ワイン・日本酒は原料を酵母で発酵させる「醸造酒」、焼酎・ウイスキーは醸造酒を蒸溜する「蒸留酒」にあたります。

醸造酒のなかでも、日本酒のアルコールが特に高いのはなぜなのでしょうか?次の章で詳しく掘り下げていきますね。

ウイスキー

2.日本酒のアルコール度数が高い理由「並行複発酵」

日本酒は「並行複発酵(へいこうふくはっこう)」と呼ばれる方法で造られます。並行複発酵とは、醸造酒造りに欠かせない「アルコール発酵」と「糖化」を同時におこなう方法です。

そもそもアルコールは、酵母が糖分を食べるアルコール発酵によって生成されます。ところが、日本酒の主原料である米には、糖分がほとんど含まれていません。糖分を生み出すため、日本酒造りでは麹菌の力で米のデンプン質を糖分へと糖化させます。

このアルコール発酵と糖化をひとつのタンクの中で同時におこなう並行複発酵は、世界でもめずらしい醸造方法です。同時に、高いアルコールを生み出す手法でもあります。使用する酵母にもよるものの、一連のアルコール発酵が完了した時点でのアルコール度数はおよそ20%前後です。

その後、仕込み水を加える「加水」と呼ばれる工程により、日本酒の香りや味わい、アルコール度数は調整されます。なかには加水をすることなく、発酵の具合を調整しながら低アルコールに仕上げる日本酒もあります。

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3.度数の高い日本酒には「和らぎ水」も一緒に

「日本酒を飲むといつも悪酔いしてしまう」そんなふうに感じたことはありませんか?

前述したように、日本酒はビールやワインと比べアルコール度数が高いお酒です。焼酎やウイスキーのように、何かで割って飲むことも少ないですよね。

アルコール度数の高い日本酒を飲むときは「和らぎ水(やわらぎみず)」を添えるのがおすすめです。度数の高いお酒は酔いやすいことをふまえたうえで、ぜひ日本酒をおいしく楽しんでください。

3-1.アルコール度数の高いお酒で悪酔いする理由

そもそも、お酒を飲むと「酔っぱらった」と感じるのは、血液に入ったアルコールが脳に到達し神経細胞に作用するためです。

胃や小腸から吸収されるアルコール量は、度数が高いお酒ほど多くなります。純アルコール20gをお酒の容量に換算すると、ビールは500mlであるのにに対し、日本酒は180mlです。つまり、ビールと同じようにグイグイと日本酒を飲むと、そのぶん多くアルコールを摂取してしまうということですね。

また、アルコールは通常であれば、肝臓で無害な酢酸へと分解されます。ただし、一度に多くのアルコールを摂取すると分解が追い付かず、体に有害な「アセトアルデヒド」として残ってしまうのです。体内に残ったアセトアルデヒドは、悪酔いや二日酔いといった症状を引き起こしてしまいます。

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3-2.「和らぎ水」で悪酔いや脱水症状を防ごう

「和らぎ水」とは、日本酒を飲む合間に口にする水のことです。洋酒にあわせるときは「チェイサー」とも呼ばれます。

和らぎ水には「悪酔いや二日酔い予防」、「脱水予防」といった2つの効果が期待できます。日本酒はアルコール度数が高めなお酒ですが、割って飲むよりもストレートな飲み方が一般的です。日本酒を飲むときは、ぜひ和らぎ水を添えるように意識してみてください。

和らぎ水

二日酔いや深酔いを予防する

アルコール度数の高いお酒を大量に飲むと、悪酔いしてしまいがちです。日本酒の合間に和らぎ水をはさむめば、体内のアルコール濃度を下げる効果が期待できます。

和らぎ水の効果は、日本酒と同じ分量を飲むことで得られるといわれています。飲食店などで日本酒を楽しむときは、和らぎ水もあわせてオーダーしてみてください。

飲酒による脱水症状を防ぐ

アルコールには利尿作用があるため、お酒を飲むとトイレに行く回数が増えやすくなります。そのため、たくさん飲むほど脱水症状を招きやすくなってしまうのです。

日本酒を飲む合間に和らぎ水を飲めば、アルコールによる脱水症状を防ぐことができます。特に、汗をかきやすい夏場はお酒と水をセットで楽しむのがおすすめです。

4.低アルコールの日本酒も登場

近年は、アルコール度数の低い日本酒も続々と登場しています。「アルコール度数の高いお酒は苦手」「もっと気軽に日本酒を楽しみたい」という方におすすめです。なかには、白ワインのように楽しめるライトな味わいの銘柄もあります。

シュワシュワッとしたスパークリング日本酒も、低アルコール酒が多いのが特徴です。また、とろりと白く濁る「にごり酒」は、ヨーグルト酒のような感覚で楽しめます。

低アルコール日本酒は、ロックにしたり、ソーダやビールで割ってもおいしいお酒です。日本酒はむずかしいという枠にとらわれず、ぜひいろいろなバリエーションを楽しんでみてくださいね。

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5.まとめ

日本酒の高いアルコール度数は、世界でもめずらしい並行複発酵によって生まれるものです。酒蔵では、生き物である酵母の働きを管理しながらお酒の発酵度合いを見極めていきます。

日本酒のアルコール度数が気になるときは、低アルコール酒からチャレンジしてみるのもおすすめです。日本酒選びに迷ったら、ぜひラベルのアルコール度数も参考にしてみてください。「こんな日本酒があったんだ!」とうれしい驚きに出会えるかもしれませんよ。