日本酒を味わう中で「磨き」という言葉を耳にしたことはありませんか?海外でも有名な日本酒「獺祭」では、その名の通り「磨き」という名称の純米大吟醸が販売されているほど。でも一体、日本酒が磨かれているってどいうこうことなのでしょう?
今回は、日本酒ならではの表現のひとつである「磨き」の世界についてご紹介します。その意味と内容を知ることで、日本酒を楽しむ幅をより一層広げることができますよ。
目次
1. 日本酒の磨きを意味する精米
日本酒の「磨き」は、日本酒を語る上で欠かす事の出来ない「精米歩合(せいまいぶあい)」に関係しています。まずはその精米歩合について解説していきますね。
1-1.「磨き」とは米の外側を削ること
日本酒の「磨き」とは精米の度合いを表す言葉です。収穫したばかりの米は、外側にもみ殻や汚れがついています。食用はもちろん酒造りに使用する際も、そこからもみ殻を取りさらに外側を削る「精米」をし、白い米粒にしなくてはいけません。
米の外側にはタンパク質や脂質のような栄養素が多く含まれています。食用米の場合にはそれらが旨味のもとになりますが、日本酒を造る際は雑味の原因になる可能性があります。
そのため、食用米であれば外側を削る度合いが1割ほどであるのに対し、酒米の場合は、3割から多いものでは半分以上削るのが一般的です。日本酒用に栽培される酒米は食用米に比べ粒が大きく、心白(しんぱく)と呼ばれる中心部分が大きいなど、より精米に適した特徴を兼ね備えています。
1-2. 精米の度合いを示す精米歩合
精米歩合(せいまいぶあい)とは、米の外側を削った後に残る割合を、パーセンテージで示したものです。例えば「精米歩合60%」は、米の外側を40%を削っていることを意味しています。「磨きの度合いが高い」と表現される日本酒は、外側をより多く削った米で造られたお酒です。
冒頭にご紹介した日本酒「獺祭」では、「磨き三割九分」(39%)や「磨き二割三分」(23%)など、精米歩合をそのまま名称で表したお酒をリリースしています。米をより小さく削るには技術と手間を要するため、磨きの度合いが高いお酒は高価格帯の商品が多いのが特徴です。
ここがPOINT!
- 日本酒における磨きとは、お米の外側を削ること
- 精米歩合とは、米の外側を削った後に残る割合をパーセンテージで示したもの
2. 磨き(精米歩合)による種類や香り、味わいの変化
日本酒の種類は磨き(精米歩合)のほか、製法や原料の違いで分類されます。また、それぞれに味や香りが異なるのが特徴です。
この種類の多さこそが「日本酒選びは難しい」「種類がいっぱいでわかりづらい」と言われる理由のひとつかもしれません。ここからは、磨きによって生まれる種類や香り、味わいの変化について確認していきましょう。
2-1. 磨きや造り、原料による種類の違い
酒税法における日本酒の種類は、磨きの度合いや造り、原料によって以下のように分類されます。これは、特定名称酒(とくていめいしょうしゅ)と呼ばれるものです。
原料 | 精米歩合 | 造り | |
純米酒 | 米、米麹 | ー | ー |
特別純米酒 | 60%以下 | 特別な醸造方法 | |
純米大吟醸酒 | 米、米麹 | 50%以下 | 吟醸造り |
純米吟醸酒 | 60%以下 | ||
吟醸酒 | 米、米麹、醸造アルコール | 60%以下 | |
大吟醸酒 | 50%以下 | ||
本醸造酒 | 70%以下 | ー | |
特別本醸造酒 | 60%以下 | 特別な醸造方法 |
ご覧のように、米と米麹を原料に吟醸造りで造られるお酒は、磨きの度合いの違いで「純米吟醸酒」と「純米大吟醸酒」に分類されます。また「純米酒」は精米歩合の規定はないものの、60%以下かつ特別な醸造方法で造られたものは「特別純米酒」と呼ばれます。
2-2. 日本酒の香りに影響を与える磨きの度合い
米の磨き度合い(精米歩合)は、日本酒の香りに影響を与えます。特に、より磨いた米を原料に吟醸造りで造られる「吟醸酒」は、華やかでフルーティーな香りが特徴です。
米をより磨いて造られた日本酒に出会ったら、ぜひ目を閉じてその香りをかいでみてください。米を原料にした日本酒から、青りんごやバナナ、洋ナシを思わせる香りがすることに驚くかもしれません。
実は、日本酒特有の香り成分「カプロン酸エチル」や「酢酸イソアミル」は、リンゴやメロンといった果物の香り成分と同じもの。この香り成分は、発酵の段階で酵母に与える栄養分を極限まで減らすことで生まれます。
そのため、栄養素を含む米の外側をより多く削って仕込む日本酒ほど、フルーティーな香りのお酒に仕上がる傾向にあります。ワイングラスのような口が広く深いグラスに注げば、その豊かな香りをより一層楽しむことができますよ。
フルーティさが人気の日本酒はこちらの記事でまとめてます!
純米大吟醸のオススメ銘柄をこの記事でまとめてます!
2-3. 磨きが進むとよりクリアな味わいに
より磨いた米を原料に造る日本酒は、手間ひまがかかるだけでなくできあがる量が少ないため、価格も高くなりがちです。また、造りによって香りが華やかで、雑味のないクリアな味わいのお酒に仕上がります。
一方、米の外側をより多く残した状態で仕込む日本酒は、米本来の香りやコク、旨味が特徴的です。ふくよかな味わいは、燗酒にするとより一層広がります。
どちらが良いかというのは、あくまで飲む人の好みの問題です。また、精米歩合は同じでも、原料の米や水、仕込まれる環境によって日本酒の味わいは大きく異なります。それこそが、日本酒のおもしろさであり魅力といえるかもしれません。
現在は、精米歩合をあえてラベルに記載しない蔵や、磨きの度合いの少ない米でクオリティの高いお酒を生み出す蔵も少なくありません。精米歩合はあくまでも味の指標を示す数字のひとつ。基本をおさえたうえで、ぜひ自分好みの日本酒を見つけてみてください。
ここがPOINT!
- 磨きや造り、原料の違いによって「純米酒、本醸造酒、吟醸酒、純米大吟醸酒」と名称が変わる
- よく磨かれた米を使った吟醸酒は、フルーティーな香りが特徴
- 磨きが進むとより雑味の少ないクリアな味わいに変化する
3.精米歩合1%と99%の日本酒が存在する!
ここからは、精米歩合1%と99%の日本酒をご紹介します。どちらも蔵のこだわりと技術によって生まれたお酒。「精米歩合の違いが気になる」という方は、ぜひチェックしてみてくださいね。
3-1.精米歩合1% 純米大吟醸 光明 山田錦
精米歩合1%。つまり、米の外側99%を削り、中心部分のみを使用した贅沢で貴重な日本酒です。原料米には、兵庫県産の山田錦が使用されています。
直径1mmの大きさになるまで米を磨くには、およそ75日間もの時間を要するそう。
「前例のない挑戦によって新境地への扉が開き、これから先の 『日本酒の世界』 に明るい希望の光がさすように」という願いを込めて命名されたという「光明」。贈り物や、特別な日の1杯のお酒にもおすすめの日本酒です。
(出典元:楯の川酒造 公式オンラインショップ)
3-2.精米歩合99% 陸奥八仙 レイメイ99
「レイメイ99」は、青森県の有名蔵「八戸酒造(はちのへしゅぞう)」が生み出した日本酒です。精米歩合は99%。つまり、外側の1%しか削られていません。
通常であれば雑味が生まれやすい磨き度合いでありながら、透明感のある旨味、香りは八戸酒造のこだわりと技術があってこそ。数量限定で製造販売された商品のため、出会えた際はぜひその味わいを確かめてみてください。
(出典元:佐野屋 JIZAKE.COM)
まとめ
日本酒の「磨き」は、米の磨き度合いを表す精米歩合と深く関係していることがお分かりいただけたでしょうか。
こだわりの米と水、そして蔵人の洗練された技術で生まれる日本酒は、精米歩合に関わらずどれも「磨きがかった味」と表現できるのかもしれません。
お気に入りのお店の料理と一緒に、自宅でほっと一息つけるひと時に、ぜひこだわりの日本酒をより一層美味しく楽しんでくださいね。
ここがPOINT!
- 日本酒における磨きは、お米の外側を削ること
- 精米歩合とは、米の外側を削った後に残る割合をパーセンテージで示したもの
- 磨きや造り、原料の違いによって「純米酒、本醸造酒、吟醸酒、純米大吟醸酒」と名称が変わる
- よく磨かれた米を使った吟醸酒は、フルーティーな香りが特徴
- 磨きが進むとより雑味の少ないクリアな味わいに変化する