日本酒の種類のひとつ、純米酒。米と米こうじだけで造られる純米酒は、日本酒の魅力にあふれたお酒です。一方で、純米吟醸や大吟醸との違いは?と疑問を持たれることも多いかもしれません。
「日本酒の種類について知ろう!」第4回となる今回は、純米酒の魅力について詳しく解説。定義や味わい、おすすめおつまみなどを紹介します。種類ごとの違いを知れば、日本酒がもっと美味しく、もっと楽しくなりますよ。
目次
1.純米酒とは?定義や味わいを知ろう
純米酒は、日本酒を原料や製造方法で分類した特定名称(とくていめいしょう)のひとつです。特定名称は、純米酒を含む以下の全8種。純米吟醸酒や本醸造酒なども、特定名称に挙げられます。
- 本醸造酒
- 特別本醸造酒
- 吟醸酒
- 大吟醸酒
- 純米酒
- 特別純米酒
- 純米吟醸酒
- 純米大吟醸酒
純米酒を含む“純米”と付くお酒は、米と米こうじのみを原料に造られるのが特徴です。そのほかのお酒は、醸造アルコールという純度の高いアルコールが用いられます。
1-1.純米酒の定義
「清酒製法品質表示基準」では、純米酒は以下のように定義されています。
・米と米こうじを原料に造られていること(米の等級は3等以上)
・こうじ米の使用割合が15%以上であること
・香味、色沢が良好であること ※色沢=色合いや透明度など
純米酒の主原料である米こうじとは、米に麹菌を繁殖させた発酵食品のことです。日本酒のほか、甘酒や米味噌、みりんといった日本の伝統食に用いられます。
また、純米酒は他のお酒のように精米歩合(せいまいぶあい)の規定のないお酒です。精米歩合とは、米の外側を削った後に残る割合を示す数値のこと。
例えば、純米吟醸酒には「精米歩合60%以下」といった規定があります。これは「外側を40%以上削った米を使わないと、純米吟醸酒とはいえないよ」という意味です。
1-2.純米酒に精米歩合の規定がない理由
純米酒に精米歩合の規定がない理由には、日本酒の製造技術の進歩が関係しています。1989年(平成元年)、特定名称の規定が設けられた当時は、純米酒の精米歩合は70%以下に定められていました。
純米酒の精米歩合の規定がなくなったのは、2004年(平成16年)に入ってからのことです。これは、精米歩合にこだわらなくても“純米酒”と名乗るにふさわしい質の良いお酒が造れるようになったことに関係しています。
また、市場には“米だけのお酒”と表記されている商品もあり、「純米酒とどう違うの?」と消費者に混乱をきたすためともいわれています。
現在、“米だけのお酒”と表記されている商品には、純米酒の定義を満たすものと、それ以外の普通酒と呼ばれるもの2種類が存在します。
特定名称にあたらない普通酒には、“純米酒ではありません”といった注意書きを添えなくてはいけません。普段何気なく目にしているお酒も、さまざまな決まりごとのうえで造られているんですね。
1-2.純米酒の味わい
米と米こうじのみで造られる純米酒は、コクのある豊かな味わいが魅力です。香りはおだやかなタイプが多く、こっくりとした米の旨味が感じられます。一方で、味わいがすっきりとしたものも存在するなど、豊かなバリエーションが魅力です。
温めるとより味に深みが生まれ、燗酒好きにも好まれるタイプです。米から生まれるお酒、日本酒ならではの魅力が詰まった種類といえるでしょう。
1-3.純米吟醸酒、純米大吟醸酒との違いは「吟醸造り」
同じく“純米”と付く特定名称には「純米吟醸酒」や「純米大吟醸酒」が挙げられます。純米吟醸酒も純米大吟醸酒も、米と米こうじのみで造られるお酒。純米酒との違いは「吟醸造り」で製造されることです。
吟醸造りとは、より小さく削った米を使い、低温でゆっくりと発酵させる製造方法のこと。“より小さく削った米”とあるように、純米吟醸酒や純米大吟醸酒には精米歩合が定められています。
吟醸造りで生まれるお酒は、吟醸香(ぎんじょうか・ぎんじょうこう)と呼ばれる華やかな香りが特徴です。純米吟醸、純米大吟醸もまたフルーティーな香りを楽しむことができます。
1-4.何がトクベツ?特別純米酒
特定名称のなかには「特別純米酒」と呼ばれる種類があります。特別純米酒は純米酒の定義に加え「精米歩合60%以下、または特別な製造方法」で造られたお酒です。
何が“特別”にあたるのかは、各蔵の判断にゆだねられています。一定の酒米を100%使用したり、製造方法にこだわったりと基準は蔵によりさまざまです。ただし、何を特別としたのかをラベルに表記する必要があります。
特別純米酒に出会ったら、ぜひラベルと味のなかに蔵のこだわりを探してみてくださいね。
2.冷やでも燗でも。純米酒の楽しみ方
純米酒は、冷たい冷酒から常温の冷や(ひや)、温めた燗酒まで幅広い温度帯で美味しいお酒です。さまざまな温度で楽しめる日本酒ならではの味わいを満喫できます。
7~10℃に冷たく冷やせば、みずみずしい旨味を堪能できます。おだやかな香りを楽しみたいときは、常温の冷やがおすすめです。純米酒ならではのまろやかな口当たりを楽しめます。
寒い季節には、35~40℃前後の燗酒がおすすめです。人肌燗からぬる燗といわれるこの温度帯は、米や米こうじの香りがより際立ちます。シャープな口当たりを楽しみたいときは、45~50℃まで温度を上げてみてください。お酒のキレが引き立ち、純米酒のまた違った個性が感じられます。
3.純米酒のおつまみはご飯におかずのイメージで
米の旨味がたっぷり詰まった純米酒は、ご飯におかずを合わせる感覚でおつまみを選んでみてください。おつまみの定番素材である豆腐も、冷奴よりは揚げ出し豆腐やあんかけ豆腐にするとより美味しく楽しめます。
イカの塩辛やからすみ、漬物のような塩味のあるおつまみとも好相性。煮物やサバ味噌といった定番おかずとのペアリングもおすすめです。
また、山廃や生酛といった昔ながらの製法で造られた純米酒は、チーズやクリーム系の料理とも良く合います。ぜひ、米から生まれるお酒、日本酒の魅力を体感してみてくださいね。
まとめ
純米酒は、米と米こうじのみを原料とすることが大きな特徴です。また、冷やから燗まで、幅広い温度帯で美味しく楽しめます。
塩辛や煮物など、なじみのあるおつまみや料理と相性が良いことも魅力のひとつ。日本の國酒(こくしゅ)、日本酒ならではの魅力を堪能できます。吟醸造りで生まれる純米吟醸酒なども含め、ぜひ日本酒の奥深い世界を楽しんでみてくださいね。