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日本酒の「上撰」や「特撰」、「佳撰」とは?由来や読み方を解説

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日本酒の「上撰」や「特撰」、「佳撰」とは?由来や読み方を解説

執筆者情報

shiho
お酒とねこでできているライター。日本酒、ウイスキー、ワイン…すべてのお酒をこよなく愛す。酒好きが高じて利酒師免許を取得。 blog「わたしの酒棚」 https://sakadana.net/

日本酒のラベルに「上撰」、「特撰」などと書かれているのを見たことはないでしょうか?漢字表記や種類が多い日本酒。一体何のこと?とふしぎに感じてしまいますよね。

そこで今回は、「特撰」「上撰」「佳撰」の読み方や意味について詳しくお伝えします。種類の豊富さこそ、日本酒の魅力であり奥深さ。違いを知ると、日本酒選びがもっと楽しくなりますよ。

1.「特撰」「上撰」「佳撰」とは?読み方と意味

「特撰」「上撰」「佳撰」とは、蔵が独自に設けた日本酒のランクのことです。「佳撰」から「特撰」に行くほどランクは高くなります。まずは、それぞれの読み方や具体的な意味について確認していきましょう。

1-1.「特撰」「上撰」「佳撰」の読み方

「特撰」「上撰」「佳撰」は、それぞれ以下のように読みます。

  • 特撰(とくせん)
  • 上撰(じょうせん)
  • 佳撰(かせん)

「撰」は、書物を書き記したり、多くのなかから良いものを選び取ることを意味する漢字です。「特」は、とりわけ抜きんでていることを表します。漢字の意味を考えても、「特撰」が3つのなかで特に優れていることがわかりますね。

1-2.「特撰」「上撰」「佳撰」は蔵独自のお酒のランク付け

「特撰」「上撰」「佳撰」には、法的な基準は設けられていません。あくまでも、蔵独自が設けたお酒のランクです。使う材料や製造方法などによって、ランクはわかれます。「特撰」に比べ、「佳撰」のお酒はリーズナブルなものが多くなるでしょう。

「特撰」「上撰」「佳撰」が生まれる以前、日本酒は「級別制度」でランクわけされていました。「特撰」「上撰」「佳撰」が蔵独自のランクであるのに対し、級別制度は酒税を課すために国が定めた基準です。

級別制度がいつ頃廃止され、なぜ「特撰」「上撰」「佳撰」が生まれたのか、次の章で詳しく解説していきますね。

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2.かつての級別制度のなごり「特撰」「上撰」「佳撰」

日本酒級別制度は、1940年(昭和15年)の戦争のさなかに生まれました。食糧難により原料の米が不足し、水でかさ増ししたような質の悪い酒が横行しはじめたからです。

政府が流通を認める基準となった級別制度は、当初は「特級」から「五級」までの6分類でした。太平洋戦争後は、「特級」「一級」「二級」の3つのランクが主流となっていきます。

1990年(平成2年)になると、級別制度に代わる基準として「特定名称酒」が登場します。その後約2年間は、級別制度も併用されていました。

突然呼び名が変わるとなっても、市場も蔵も困惑してしまいます。そこで、「特級」「一級」「二級」に代わる名称として誕生したのが「特撰」「上撰」「佳撰」の呼び名でした。

級別制度のなごりである3つの呼び名は、特定名称酒が主流となった現在も各蔵で広く用いられています。

3.級別制度から「特定名称酒」へ

現在主流となっている「特定名称酒」の基準では、日本酒は以下の8つに分類されます。

  1. 本醸造酒(ほんじょうぞうしゅ)
  2. 特別本醸造酒(とくべつほんじょうぞうしゅ)
  3. 吟醸酒(ぎんじょうしゅ)
  4. 大吟醸酒(だいぎんじょうしゅ)
  5. 純米酒(じゅんまいしゅ)
  6. 純米吟醸酒(じゅんまいぎんじょうしゅ)
  7. 純米大吟醸酒(じゅんまいだいぎんじょうしゅ)
  8. 特別純米酒(とくべつじゅんまいしゅ)

これらの呼び名は、お酒の原料や製造方法などで分類されたものです。「特撰」「上撰」「佳撰」は、特定名称酒に該当しない「普通酒」にあたります。特定名称酒については、こちらの記事もぜひ参考にしてくださいね。

知ると日本酒がもっと楽しくなる!基礎知識から雑学まで日本酒まとめ

4.おすすめ「上撰」3選

「特撰」「上撰」「佳撰」は、特定名称酒ではない普通酒にあたるお酒とお伝えしました。普通、と聞くとなんだか特別名称酒のほうが特別で美味しいというイメージを持ってしまいがち。ところが、流通する日本酒の約7割は普通酒が占めるなど、実は普通酒はとても身近な存在なんです。

実際に、蔵自慢の普通酒「特撰」「上撰」「佳撰」も数多く存在します。こちらでは、なかでもおすすめの「上撰」3選を紹介していきますね。

4-1.上撰 松竹梅

大手酒造メーカー、宝酒造の代表酒「上撰 松竹梅」。常温でも温めても変わらないクオリティは、長年多くのファンに愛されています。春には山菜、夏は冷奴、秋の秋刀魚に冬の鍋物と、季節をとおした旬の味わいに寄り添う美味しさです。

上撰松竹梅

(出典元:宝酒造株式会社

4-2.上撰 白鶴

旨味とキレを兼ね備えた「上撰 白鶴」は、燗酒好きにおすすめの1本です。温度帯に関わらず、適度な香りとコクが日本酒好きの心を満たしてくれます。200ml容量のカップ酒も販売されているため、美味しいお酒を気軽に楽しみたいときにおすすめです。

上撰白鶴

(出典元:白鶴酒造株式会社

4-3.上撰 月桂冠

酒どころ伏見の酒造メーカー「月桂冠」。上撰は昭和の時代から長年親しまれてきたお酒です。月桂冠オリジナルの酵母を使用し、ふくよかな旨味を生み出しています。よりすっきり軽やかな味わいを楽しみたいときは、「佳撰」もおすすめです。

上撰月桂冠

(出典:月桂冠株式会社

まとめ

日本酒の基準変更にともない生まれた呼び名「特撰」「上撰」「佳撰」。普通酒にあたるこれらのお酒は、今でも多くのお酒好きに愛されています。肩書にこだわらずにお酒を選べば、日本酒の世界がさらに広がるはず。酒販店や飲食店などでその名前を見つけたら、ぜひ手にとって味わいを確かめてみてくださいね。