「純米酒に吟醸酒…日本酒って種類が多いなぁ」と思ったことはありませんか?味や香り、価格などそれぞれの違いがわかりづらい一面もあるかもしれません。
今回は、日本酒の種類をわかりやすく解説!本醸造酒や吟醸酒、純米酒などの特徴をご紹介します。種類の豊富さは日本酒の魅力のひとつです。それぞれの違いがわかれば、日本酒の世界がもっと楽しくなりますよ。
目次
1.日本酒の種類は大きく3タイプにわかれる
日本酒の種類は、大きく以下の3タイプにわかれます。
- 本醸造酒
- 吟醸酒
- 純米酒
それぞれの主な違いは、酒造りに使用する原料や製法などです。味わいにも変化が生まれるため、特徴を知れば日本酒選びに役立てられます。まずは、3タイプの違いについて確認していきましょう。
1-1.米、米麹、水と醸造アルコールで造られる本醸造酒
本醸造酒(ほんじょうぞうしゅ)の大きな特徴は、原料に「醸造アルコール」が含まれることです。醸造アルコールとは、主にトウモロコシを原料にした純度の高いアルコールのこと。本醸造酒に用いる醸造アルコールの量は、米の総重量の10%未満と定められています。
醸造アルコールを使用する本醸造酒は、スッキリとした香りと味わいが特徴です。求めやすい価格帯の商品が多く、普段の料理に合わせる日常酒としても親しまれています。
本醸造酒についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてみてください。
1-2.吟醸造りで造られる吟醸酒
吟醸酒(ぎんじょうしゅ)は、吟醸造りで造られるお酒です。国税庁によると、吟醸造りは『吟味して醸造することをいい、伝統的に、よりよく精米した白米を低温でゆっくり発酵させ、かすの割合を高くして、特有な芳香(吟香)を有するように醸造すること』と定義づけられています。
「よりよく精米した白米」とあるように、吟醸造りでは、外側を4割以上削った「精米歩合60%以下」の米を使用します。「特有な芳香」とは、吟醸香(ぎんじょうこう・ぎんじょうか)とも呼ばれる華やかな香りのことです。その香りはメロンやパイナップル、バナナなどに例えられることもあります。
吟醸造りのお酒にも吟醸酒や大吟醸酒などがあります。これらのお酒の違いについてはこちらの記事を参考にしてみてください。
「吟醸」と「大吟醸」の違いとは?唎酒師が飲み比べて違いを解説!
1-3.米と米麹、水だけで造られる純米酒
純米酒(じゅんまいしゅ)は、米と米麹、水だけで造られる日本酒です。米の旨味やコク、ふくよかな味わいを楽しめます。温めると香りや味がより一層ふくらむため、燗酒好きにも好まれるタイプです。「米本来の旨味をたっぷり味わいたい」というときは、純米酒をキーワードにお酒を選んでみてください。
純米酒についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてみてください。
「純米酒」とは?味わいやおすすめの飲み方も【日本酒の種類を知ろう!第4回】
2.清酒と日本酒の違いとは?
「清酒」も「日本酒」も、米と米麹、水を原料にしたお酒を指す言葉です。酒税法では「清酒」は以下のように定義づけられています。
- 米、米こうじ及び水を原料として発酵させて、こしたもの(アルコール分が22度未満のもの)
- 米、米こうじ、水及び清酒かすその他政令で定める物品を原料として発酵させて、こしたもの(アルコール分が22度未満のもの)
「こしたもの」とあるように、清酒は醪(もろみ)をこし、液体と酒粕とに分けたものに限られます。醪をこしていない、白くどろどろとした状態のお酒が「どぶろく」です。
また、「日本酒」という呼び名は、日本産の米を使用し、日本国内で醸造したお酒に限られています。海外産の米を使用していたり、海外で醸造されたりしたお酒の場合は、日本酒と表示することはできません。
これは「地理的表示」という制度に基づくものです。地理的表示の制度では、ある特定の産地において、特徴的な原料や製法などによって作られた商品だけが、その産地名を独占的に名乗ることができます。
フランスの「ボルドーワイン」、スコットランドの「スコッチウイスキー」なども、地理的表示に基づく呼び名です。清酒や日本酒の表示は、ラベルの「品目」という項目で確認できます。
3.日本酒の種類にかかわる精米歩合
精米歩合(せいまいぶあい)とは、米粒の外側を削った後に残った割合を、パーセンテージで示したものです。
一般的に、日本酒造りに使う米は、食用米より多く外側が削られます。炊いて食べるときは旨味のもとになる栄養素も、日本酒造りでは雑味の原因になる可能性があるからです。
一概には言えないものの、精米歩合が高い、つまり米をあまり削っていない日本酒は米本来の味わいが強く現れます。ふくよかで濃醇なタイプが多く、燗酒にしたり、旨味の強い料理と合わせたりしても味のバランスが崩れにくいのが特徴です。
一方、精米歩合が低い、つまり米をより削ったお酒はよりクリアな味わいに仕上がります。華やかでフルーティーな香りを持ち、ワイングラスに注いだり、洋食と組み合わせたりして楽しむ銘柄が多いのが特徴です。また、製造には高度な技術と時間を要するため、高価格帯の商品が多くなります。
精米歩合についてはこちらの記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
日本酒の精米歩合について詳しく解説!精米歩合が高い=良いお酒?
4.日本酒の種類(特定名称酒)一覧
酒税法における日本酒の種類は、原料や精米歩合、製法によって8つに分類されます。これは特定名称酒(とくていめいしょうしゅ)と呼ばれ、前述した3タイプをさらに細かくわけたものです。日本酒選びに迷うときは、それぞれの特徴を参考にしてみてくださいね。
4-1.本醸造酒
原料 | 精米歩合 |
米、米こうじ、醸造アルコール | 70%以下 |
本醸造酒は香りはおだやかでスッキリした飲み口が持ち味のお酒です。比較的リーズナブルな商品が多く、自宅に常備しておく1本としても好まれています。
4-2.特別本醸造酒
原料 | 精米歩合・製法 |
米、米こうじ、醸造アルコール | 60%以下または特別な製造方法(要説明表示) |
より外側を削った米を使用した本醸造酒、または特別な製法で製造した本醸造酒は「特別本醸造」に分類されます。ドライな味わいとキレの良い飲み口が魅力です。
4-3.吟醸酒
原料 | 精米歩合・造り |
米、米こうじ、醸造アルコール | 60%以下・吟醸造り |
吟醸酒は酵母から生まれる、華やかな香りが持ち味のお酒です。「吟醸造り」と呼ばれる、より小さく精米した米を低温でじっくり発酵させる方法で造られています。
4-4.大吟醸酒
原料 | 精米歩合・造り |
米、米こうじ、醸造アルコール | 50%以下・吟醸造り |
大吟醸酒は精米歩合は50%以下と、外側を半分以上削った米を原料にした吟醸酒です。雑味のないクリアな味わいと、吟醸酒ならではのフルーティーな香りを楽しめます。
4-5.純米酒
原料 | 精米歩合 |
米・米こうじ | ー |
純米酒は米本来の、ふくよかな旨味を堪能できる日本酒です。かつては精米歩合70%以下と定められていましたが、技術の進歩により、精米歩合に関係なく質の良い純米酒ができるようになったため、平成16年より規定が撤廃されました。
4-6.特別純米酒
原料 | 精米歩合・製法 |
米・米こうじ | 60%以下または特別な製造方法(要説明表示) |
米の外側をより削った米で仕込んだ純米酒、または特別な製造方法で仕込んだ純米酒は「特別純米酒」に分類されます。特別な製造方法とは「酒造好適米100%」のようにこだわりを持った製法のことです。味の余韻が長く、お酒だけでじっくり楽しめるタイプが多く見受けられます。
4-7.純米吟醸酒
原料 | 精米歩合・製法 |
米・米こうじ | 60%以下・吟醸造り |
純米吟醸酒は適度な香りと味のバランスを楽しめる日本酒です。米のリッチな味わいとともに、果実のように華やかな香りを堪能できます。「純米大吟醸酒」に比べ価格が抑えられているものが多く、ちょっと特別なお酒を楽しみたいというときにおすすめです。
4-8.純米大吟醸酒
原料 | 精米歩合・製法 |
米・米こうじ | 50%以下・吟醸造り |
純米大吟醸酒は米の外側を半分以上削った米と米こうじを原料に、吟醸造りで造られたお酒です。高価格帯の商品が多く、大切な贈り物や目上の方へのプレゼントなどに適しています。なかには精米歩合30%前後の銘柄もあり、雑味のないクリアな味わいが特徴です。
5.火入れのタイミングによって、名称が加えられることも
一般的に、日本酒の製造過程では「火入れ」と呼ばれる加熱殺菌処理が2度おこなわれます。この火入れのタイミングによって加えられるのが「生貯蔵酒」や「生詰め酒」といった名称です。また、火入れを一切しないお酒は「生酒(なまざけ)」と呼ばれます。
呼び名 | 1回目の火入れ | 2回目の火入れ |
生酒 | なし | なし |
生貯蔵酒 | なし | あり |
生詰め酒 | あり | なし |
火入れをしていない生酒は、フレッシュな香りと旨味が持ち味です。それぞれの細かな違いや生酒の楽しみ方については、ぜひこちらもチェックしてみてください。
まとめ
日本酒は、種類の多さと幅広い味のバリエーションが魅力です。好みの味わいの日本酒を、好みの温度帯で楽しむことができます。
「種類が多くて難しい」というときは、本醸造酒や吟醸酒、純米酒など、ざっくりしたタイプを参考にお酒を選んでみてください。「華やかな香りの吟醸酒が好き」、「コクのある純米酒が好み」など、自分好みの味わいが見つけられます。ぜひ種類の違いを知ることをきっかけに、日本酒の奥深い世界を楽しんでんでみてくださいね。