ホーム 日本酒を知る 「吟醸」と「大吟醸」の違いとは?唎酒師が飲み比べて違いを解説!

「吟醸」と「大吟醸」の違いとは?唎酒師が飲み比べて違いを解説!

0
「吟醸」と「大吟醸」の違いとは?唎酒師が飲み比べて違いを解説!

執筆者情報

shiho
お酒とねこでできているライター。日本酒、ウイスキー、ワイン…すべてのお酒をこよなく愛す。酒好きが高じて利酒師免許を取得。 blog「わたしの酒棚」 https://sakadana.net/

日本酒のラベルに書いてある「吟醸」「大吟醸」という文字。いったいどんな違いがあるの?とふしぎに感じたことはないでしょうか。特に、酒販店でお酒を購入したり、飲食店で銘柄を選ぶときは迷ってしまいますよね。

そこで今回は、吟醸酒と大吟醸酒の違いについて解説します。味わいの違いなども紹介するため、ぜひ日本酒選びの参考にしてくださいね。

1.「吟醸酒」と「大吟醸酒」の違いとは?

吟醸酒(ぎんじょうしゅ)、大吟醸酒(だいぎんじょうしゅ)は「特定名称酒(とくていめいしょうしゅ)」に分類されるお酒のひとつです。

特定名称酒とは、日本酒を原料と製法で分類した基準のこと。「こうじ米の使用割合が15%以上」「3等以上の原料米を使用する」などの基本的な基準をふまえたうえで、以下の8種類に分類されています。

特定名称 使用原料 精米歩合 こうじ米
使用割合
香味などの要件
吟醸酒 米、米こうじ
醸造アルコール
60%以下 15%以上 吟醸造り、固有の香味、色沢が良好
大吟醸酒 米、米こうじ
醸造アルコール
50%以下 15%以上 吟醸造り、固有の香味、色沢が特に良好
純米酒 米、米こうじ 15%以上 香味、色沢が良好
純米吟醸酒 米、米こうじ 60%以下 15%以上 吟醸造り、固有の香味、色沢が良好
純米大吟醸酒 米、米こうじ 50%以下 15%以上 吟醸造り、固有の香味、色沢が特に良好
特別純米酒 米、米こうじ 60%以下又は特別な製造方法(要説明表示) 15%以上 香味、色沢が特に良好
本醸造酒 米、米こうじ
醸造アルコール
70%以下 15%以上 香味、色沢が良好
特別本醸造酒 米、米こうじ
醸造アルコール
60%以下又は特別な製造方法(要説明表示) 15%以上 香味、色沢が特に良好

参照:国税庁「特定名称酒の表示

1-1.吟醸酒と大吟醸酒の定義について

前述した表からもわかるように、吟醸酒と大吟醸酒は「米」「米こうじ」「醸造アルコール」という同じ原料で造られています。

米こうじとは、蒸した米に麹菌(こうじきん)を繁殖させたもの。醸造アルコールは、糖蜜やとうもろこしなどを原料にした蒸留酒のことです。

醸造アルコールを添加したお酒は、キレのある端麗辛口の味わいに仕上がりやすい傾向にあります。また、吟醸香(ぎんじょうこう・ぎんじょうか)と呼ばれる華やかな香りが生まれやすいことも特徴です。

1-2.違いは精米歩合にある

特定名称酒の基準によると、吟醸酒の精米歩合(せいまいぶあい)は60%以下、大吟醸酒の精米歩合は50%以下に定められています。

精米歩合とは、玄米を削り、残った割合をパーセントで示した数字のこと。日本酒の原料となる米は、玄米を削って白米にする「精米」をする必要があります。

炊いて食べる米の場合は、玄米を削る割合は8%程度です。一方、日本酒の場合は、外側に含まれる栄養素が雑味の原因となるため、外側を30%以上削り取ることが多くなります。

吟醸酒と大吟醸酒の精米歩合を比較すると、大吟醸酒のほうが精米歩合が低いですよね。つまり、大吟醸酒は吟醸酒に比べ、より多く削った米を原料に造られたお酒、ということになります。

一般的に、米をより多く削るほど、日本酒の味わいは軽く、吟醸香を感じやすくなるといわれています。また、精米には技術と時間を要することから、大吟醸酒は吟醸酒よりも価格帯が高いものが多いことも特徴です。

2.吟醸酒・大吟醸酒はどんな味わい?

吟醸酒と大吟醸酒

吟醸酒と大吟醸酒、一体どんな味なんだろう?と気になりますよね。今回は「栄冠菊勇 吟醸 秘伝」と「初孫 秘蔵酒 大吟醸 」を用意しました。どちらも山形県生まれの吟醸酒、大吟醸酒です。

菊勇吟醸秘伝

「栄冠菊勇(えいかんきくいさみ)」を造るのは、山形県の菊勇株式会社。「吟醸 秘伝」には、精米歩合55%の山田錦を使用しています。

開栓するとふわりと広がるのは、やさしく甘い米の香り。口当たりはとてもやわらかく、静かに広がる米の甘みがなんとも心地よい余韻を残します。

とがったクセのないクリアな味わいは、日本酒を飲みなれない方にもぴったり。後口のスッとしたキレもよく、飲みやすい吟醸酒です。

初孫秘蔵酒大吟醸

「初孫(はつまご)秘蔵酒 大吟醸」は東北銘醸株式会社が手がけた日本酒。地元の老舗フランス料理店のために造られたという特別なお酒です。

香りは上品でおだやか。1度だけ加熱処理をした「生詰」の状態で、3年以上熟成させた深い味わいが広がります。

ほのかな苦みとしっかりとしたコクがありつつ、後味はあくまでもスッキリ。一粒の米を半分まで精米した、大吟醸ならではの仕上がりといえるかもしれません。クリーミーなソース、肉料理、山菜の天ぷらなどとあわせたくなるこだわりの味わいです。

まとめ

吟醸酒、大吟醸酒は特定名称酒のひとつです。原料は同じものの、精米歩合の違いによってそれぞれに分類されています。

とはいえ、その味わいは画一的なものではなく、使用する米の種類や加熱処理の有無、熟成期間などによってさまざまに変化します。それこそが日本酒の魅力のひとつといえるかもしれません。

特定名称酒の基準は日本酒選びの目安のひとつとして、ぜひ自分好みの味わいを見つけてみてくださいね。