
お酒でよくある疑問なのが、日本酒と清酒の違いについてです。言葉の雰囲気は似ていますが、それぞれに違いはあるのでしょうか。お酒に詳しい人も、日本酒と清酒の違いについてはよく知らないことが多いです。
今回は日本酒と清酒の違いが気になっている人のために、それぞれの定義について解説していきます。
目次
1. 日本酒と清酒は一緒?それぞれの定義
日本酒と清酒は厳密には一緒といわれています。いっぽうで、人によっては別物と認識している場合も。厳密な定義は存在するのでしょうか。
以下では、日本酒、清酒が法的にはどのように定義されているかを解説していきます。
1-1. 「清酒」の酒税法での定義
酒税法では清酒を以下のように定義しています。
イ 米、米こうじ及び水を原料として発酵させて、こしたもの
ロ 米、水及び清酒かす、米こうじその他政令で定める物品を原料として発酵させて、こしたもの(イ又はハに該当するものを除く。)。但し、その原料中当該政令で定める物品の重量の合計が米(こうじ米を含む。)の重量をこえないものに限る。
ハ 清酒に清酒かすを加えて、こしたもの
上記の内容が清酒の法的な定義です。まとめると、米、米こうじ、水を発酵させて作られたお酒が清酒ということになります。しかし、これはいわゆる日本酒にも当てはまる原料、製造方法です。酒税法の内容だけでいえば、清酒=日本酒と解釈しても問題ないといえるでしょう。
ただ、酒税法をさらに細かく定義した酒税法施行令では、麦、あわ、とうもろこしなど、米以外の作物も清酒の原料としています。これらは日本酒の原料としては一般的ではありません。完全に清酒=日本酒とするには、無理があるように思えます。
では、日本酒自体に定義はあるのでしょうか。詳しくは次の項目で解説していきます。
にごり酒、どぶろくは清酒?
日本酒の中には、「にごり酒」や「どぶろく」と呼ばれるお酒もあります。
かつて「にごり酒」は濁ったお酒、清酒は透明度の高いお酒という意味で使われていましたが、現在は酒税法の定義を満たすものは濁っていても清酒に分類されるので「にごり酒」は清酒の一種であると言えます。
一方で「どぶろく」は清酒ではありません。
酒造法による清酒の定義では、醪(もろみ)を「濾す」という工程が必要ですが、どぶろくには濾すという工程がないため、清酒ではないのです。
1-2. 酒税法に日本酒の定義は無い!?
実は酒税法においては、日本酒の定義は存在しません。他の食品にまつわる定義でも同様です。言葉の意味としては、各辞典によって異なります。清酒を意味する、日本古来の酒を称して日本酒という、といった具合に日本酒の意味はまちまちです。
ただし、国税庁発信資料によれば、以下の記載があります。
平成27年(2015)、国レベルの地理的表示として指定。原料の米・米麹(こめこうじ)に日本国内産米のみを使用し、日本国内で製造された清酒だけが「日本酒」(英語ではJapanese Sake)を独占的に名乗れる。
上記の発信内容は国内産の米のみを使い、国内で製造された清酒のみ「日本酒」と名乗れるようにしたという発表。つまり、日本酒の定義は国内産の米を使い、国内で製造された清酒のことになります。
身近なスーパー、コンビニで売られている清酒はほぼ国産です。つまり、基本的には清酒=日本酒として使っても問題ないといえます。
2. 日本酒と清酒は、ほぼ同じ
先ほどまでの解説で清酒=日本酒の解釈で問題ないことがわかりました。実際に公的機関、各メーカーの広報でも日本酒と清酒は同じ意味で使われることが多いです。以下では具体的な例を紹介していきます。
2-1. 公的にも日本酒は清酒として扱われている
国税庁や、その他食品にまつわるデータを扱う機関では、日本酒を清酒と同一に扱っています。表記も「日本酒(清酒)」と書かれていることが珍しくありません。
また、日本酒には吟醸酒、純米酒、本醸造酒といった種類があります。これらは特定名称酒という原料と製造法による日本酒の分類。日本酒を作っている蔵元も、同様の説明をしていることが多いです。
国税庁の「清酒の製法品質表示基準」では、吟醸酒、純米酒、本醸造酒を清酒の特定名称酒としています。
以上のことから、行政機関も酒造メーカーも日本酒と清酒を同一の意味として使っているといえます。
2-2. 基本、日本酒のラベルには「清酒」と書いてある
一般的な日本酒の多くはラベルに「清酒」の記載があります。近隣のスーパー、コンビニに行って確かめてみると、実際に確認できるでしょう。
これは生産者、メーカーが日本酒と清酒を同一のものと認識している証拠。広告では日本酒、ラベルでは清酒と媒体で言葉を使い分けていることもあります。
日本酒と清酒という言葉に違いがないことがわかる事例です。
2-3. 国産だけが「日本酒」を名乗れる
先にも触れましたが、国税庁は国内原料を使った国産の清酒のみが日本酒と名乗れるように「地理的表示」に指定しています。地理的表示とは原産地がわかる名称を名乗っていいという規定。原産地特有の原料、製造法などがあった場合に適用されます。
日本酒は国税庁の指定により、国内産の米を使い、国内で製造されたものしか日本酒を名乗ることができなくなりました。つまり、海外産の米で作った清酒、海外で製造された清酒は日本酒と名乗ることができません。
ただし、海外でも日本酒と同じ製法で作られているお酒は多くあります。これらは日本酒とは名乗れないため、「Sake」の表記で流通。日本由来のお酒として親しまれています。
まとめ
日本酒と清酒における定義について解説してきました。どちらの言葉も基本的に同じ意味で使われています。厳密には、日本酒とは国産の原料を使い、国内製造された清酒のことです。海外で作られた清酒は日本酒と名乗れない可能性があるため、注意しましょう。
日本酒と清酒の違いはお酒を飲むときには話題となりやすいテーマです。もし、周囲の人が疑問を感じていたら、本記事で学んだことを思い出してみてください。話が盛り上がることかと思います。