日本三大杜氏「南部杜氏」発祥の地である岩手県では、良質な水と米を使った日本酒が造られています。キレのある辛口酒やフルーティーな香りの甘口のお酒など、幅広いタイプが揃うエリアです。
今回は、岩手の日本酒の魅力をたっぷりとご紹介します。おすすめ銘柄もぜひ参考にしてください。
目次
1.岩手の酒造りを支える「南部杜氏」
「南部杜氏(なんぶとうじ)」は、岩手県花巻市石鳥谷町を拠点とする杜氏集団のひとつです。
そもそも杜氏とは、酒造りの大きな責任を担う最高責任者のこと。岩手の「南部杜氏」と新潟の「越後杜氏(えちごとうじ)」、兵庫の「丹波杜氏(たんばとうじ)」は日本三大杜氏と呼ばれています。
かつて農家の副業として誕生した南部杜氏の技は、現在まで脈々と受け継がれてきました。全国でも評価の高い岩手の日本酒は、美しい自然が育む米と水、南部杜氏の技によって生み出されています。
2.岩手で日本酒を醸す酒蔵
岩手県には、北は二戸市から南は一関市までおよそ21の酒蔵が存在します(令和4年12月時点)。200年近い歴史を誇る老舗蔵から、若き蔵人が活躍する蔵まで個性はさまざま。各蔵で南部杜氏の伝統を受け継いだ酒造りが続けられています。
2-1.赤武(あかぶ)酒造
1896円(明治29年)創業の蔵を率いるのは古舘杜氏。2014年(平成26年)、東日本大震災で被災した蔵を引き継ぎいだ当時、古舘氏は若干22歳でした。
全国最年少杜氏として立ち上げた「AKABU」ブランドは、初の全国新酒鑑評会で金賞を受賞。今では岩手を代表する日本酒として幅広い層に親しまれています。
2-2.南部美人(なんぶびじん)
2022年(令和4年)に120周年を迎える南部美人は、「日本酒でKANPAI」をコンセプトに岩手から世界へと日本酒文化を発信する酒蔵です。
国内外のコンペティションでは、ゴールドをはじめとする数々の賞を受賞。香り良くほんのり甘い「あわさけスパークリング」は、G7広島首脳会議のワーキングディナーに採用されています。
2-3.紫波(しわ)酒造店
「南部杜氏発祥の里」として知られる紫波町の酒蔵です。原料米は岩手県産。仕込みには、神社境内の清涼な湧水と同じ水系の水が用いられています。
酒造りを率いる小野杜氏は、南部杜氏初の女性杜氏です。岩手の自然と人が育む日本酒は口当たりなめらかで、やさしい味わいに満ちています。
2-4.川村酒造店
南部杜氏のふるさと、花巻市石鳥谷町の老舗蔵です。創業者の川村酉与右衛門氏は、南部杜氏組合の設立に尽力した人物でもあります。
醸すのは、醸造アルコールを用いない純米酒のみ。まろやかなコクとキレを併せ持ち、冷やして、常温で、温めてと幅広い温度帯で楽しめることが魅力です。
2-5.あさ開(あさびらき)
南部杜氏、藤尾杜氏は2005年度の厚生労働大臣賞「現代の名工」に選出。杜氏の手によって丁寧に醸される「あさ開」は、全国新酒鑑評会にて平成以降30回の入賞を果たしています。
純米酒をベースとした「和のリキュール」も手掛けるなどラインナップも豊富です。受け継がれてきた伝統を基調に新たなジャンルを切り開いています。
2-6.喜久盛(きくざかり)酒造
1894年(明治27年)、岩手県の北上市に設立された喜久盛酒造の蔵は、東日本大震災により半壊。その後は花巻市で廃業する酒蔵を間借りする形で、喜久盛酒造の酒造りが再開されます。
2014年(平成26年)からは南部杜氏を迎え、岩手県産米を原料とする全量純米酒の酒造りを開始。再興を支えた日本酒「タクシードライバー」は、知る人ぞ知る銘酒として日本酒ファンからの注目を集めています。
2-7.浜千鳥(はまちどり)
釜石市の酒蔵、浜千鳥が目指すのは自然とひとつになった酒造り。仕込み水には、北上山地系仙磐山の伏流水が用いられています。
やわらかな軟水で仕込まれるお酒は、口当たりやさしくクリアな味わい。社員は南部杜氏協会に所属し酒造りの基本を学ぶなど、伝統を継承しながら丁寧な酒造りが続けられています。
2-8.月の輪(つきのわ)酒造店
「企業としてではなく家業として」を理念に、南部杜氏の伝統を継承する酒蔵です。技術の革新を目指し、酒造りには不向きといわれる、もち米を100%用いた純米酒も醸しています。
直売店では、原料に米こうじを用いたジェラートを販売。トマトやいちごなど季節の地元食材と組み合わせたメニューは、地元のみならず観光客からも人気です。
2-9.吾妻嶺(あづまみね)酒造店
岩手県内でもっとも古く、南部杜氏発祥のきっかけとなった酒蔵です。製造するのは、あえて香りを抑えた純米酒と純米吟醸酒のみ。仕込みのすべてに目が届くよう、製造量は年間3万本に限られています。
自社田で栽培した酒米をはじめ、岩手県産の酒米を使用するなど地元にこだわった酒造りが特徴です。
2-10.菊の司(きくのつかさ)酒造
蔵が建つのは、冬場の冷え込みが厳しい盛岡市。真冬には日中でも氷点下になるという寒さが「菊の司」の酒造りを支えています。
清らかな軟水を仕込み水に、じっくり低温発酵させた日本酒は香り華やかでメリハリある味わい。なかでも看板商品「てづくり七福神」は、吟醸酒の先駆けとなったお酒です。濾過や加熱処理をしていない「innocent-無垢-」は、搾りたてのフレッシュな味わいを楽しめます。
2-11.酔仙(すいせん)酒造
酔仙酒造は、東日本大震災により壊滅的な被害を被った酒蔵です。蔵は「日常を取り戻したい」「歴史を繋ぎたい」という想いを胸に、震災後わずか半年で新しい酒の醸造をスタートさせました。
震災前から変わることなく受け継がれているのは、「地元の風土に合った美しい酒」「芳醇にして飲み飽きしない酒」を目指す酒造りの精神。軽快でありながら奥深い味わいは、全国の日本酒ファンに愛されています。
3.岩手オリジナルの酒造好適米・麹菌・酵母
日本酒造りに欠かせないのが、原料となる米、米麹、酵母の存在です。岩手県ではオリジナルの酒造好適米(酒米)や米麹、酵母が開発され、各蔵では「オール岩手産」の日本酒が造られています。
3-1.岩手のオリジナルの酒造好適米「結の香」「吟ぎんが」「ぎんおとめ」
岩手県を代表する酒造好適米(酒米)が以下の3種です。
- 吟ぎんが
- ぎんおとめ
- 結の香(ゆいのか)
吟ぎんが、ぎんおとめの特性は、代表的な酒米・美山錦に匹敵するといわれています。また、結の香は香り高い大吟醸酒用の酒米です。「岩手で最上級の酒米」を目指し研究が重ねられ、交配から10年を経て誕生しました。
結の香を用いた日本酒は、酒米の王様・山田錦と比較しても雑味が少なくクリアな酒質に仕上がるといわれています。
3-2.吟ぎんがに合う麹菌として開発された「黎明平泉」
「黎明平泉」(れいめいひらいずみ)は、2011年(平成23年)に誕生した岩手県独自の麹菌です。岩手県産米の特性に合う麹を目指し、29種類の麹菌から2種類がブレンドされています。
特に酒米・吟ぎんがと相性が良く、県内の各蔵では、岩手県産酒米と「黎明平泉」、オリジナル酵母を用いた日本酒が造られています。
3-3.岩手オリジナル酵母「ジョバンニの調べ」「ゆうこの想い」
米と米麹からお酒を造るには「酵母」の力が必要です。酵母の個性は日本酒の味や香りに影響するため、酵母選びは蔵の腕の見せ所でもあります。
岩手のオリジナル酵母「ジョバンニの調べ」は、華やかで繊細な味と香りを生み出す酵母です。また「ゆうこの想い」を用いた日本酒は、やわらかで温かみのある味わいに仕上がるといわれています。
4.青森の日本酒おすすめ人気ランキングTOP14
ここからは、青森の日本酒おすすめ人気ランキングをご紹介!南部杜氏の技で生まれる銘酒の数々をぜひチェックしてみてください。ランキングはさけのわの順位を元に作成しております。(9月4日時点)
1位.赤武(あかぶ)
若き蔵人の情熱と愛情で生まれる「AKABU」は、清涼感あふれるフレッシュな味わい。口当たりやさしく、米の旨味も存分に引き出されています。フルーティーな香りで飲み疲れせず、日本酒ビギナーにもおすすめです。
2位.南部美人(なんぶびじん)
「淡麗できれいな酒を」とその名が付けられた「南部美人」は、するりと喉を通り抜けるクリアな酒質が魅力です。後口はほんのり甘く、やさしい余韻が残ります。
なかでも世界初、マイナス30度で瞬間冷凍された「スーパーフローズン 瞬間冷凍 純米大吟醸 生原酒」は、生まれたての味わいがぎゅっと詰まった逸品。飲む前に流水などで溶かせば、自宅でも酒蔵で飲む日本酒の味わいを楽しめます。
(出典元:南部美人ネットショップ)
3位.紫宙(しそら)
「紫宙(しそら)」は、紫波酒造店の新ブランドです。岩手県産酒米を中心に、南部杜氏の伝統の技でそれぞれの米の個性が引き出されています。
「純米 無濾過原酒 金色の風」は、豊かな甘みが特徴的な1本。ふんわりとやさしい香りが心地よい酔いへといざなってくれます。
(出典元:紫波酒造店)
4位.酉与右衛門(よえもん)
南部杜氏のふるさと、石鳥谷町生まれの日本酒です。おだやかな香りと奥深い味わいは、三陸の魚介類や山菜料理、肉料理と絶妙にマッチします。
南部杜氏の手により、米の旨味が存分に引き出された純米酒は、冷酒に常温、燗酒と幅広い温度帯で楽しめることが魅力です。あわせる料理、温度を選ばずさまざまなシーンで活躍してくれます。
(出典元:くるみや)
5位.あさ開
平成以降、全国新酒鑑評会にて25回金賞を受賞。厚生労働大臣賞「現代の名工」に選出された南部杜氏が手掛ける「あさ開」は、透明感のあるなめらかな飲み口が魅力です。
木箱入りの大吟醸酒は贈答用にもふさわしく、研ぎ澄まされた上質な味わいを堪能できます。
(出典元:あさ開)
6位.タクシードライバー
喜久盛酒造の5代目蔵元、藤村氏が新たに立ち上げたブランドです。名作映画をもとに誕生し、被災後の蔵を支える酒となりました。
インパクトのあるラベルとネーミング、そして確かな酒質はまさに唯一無二の存在。飲みごたえのある骨太な味わいとキレの良さを堪能できます。
(出典元:佐野屋)
7位.浜千鳥
岩手県の豊かな自然が育くむ浜千烏は、後口のきれいな余韻が魅力です。新鮮な海の幸、山の幸とマッチし食中酒として料理の味わいを引き立てます。
なかでも「浜千鳥 大吟醸」は、キレが際立つ蔵の自信作。酵母・ジョバンニの調べが生み出す上品で繊細な香りを堪能できます。
(出典元:浜千鳥)
8位.月の輪
口当たりまろやかで後口はすっきり。「月の輪」は、コクとキレを兼ね備えた日本酒です。
その個性が特に光るのが「大辛口純米 月の輪」。超辛口でありながら、やわらかな米の旨味がいきています。冷やはもちろん、燗酒にしてふくよかな味わいを楽しむのもおすすめです。
(出典元:月の輪酒造 わかさやネットショップ)
9位.あづまみね
製造するのは純米酒と純米吟醸酒のみ。岩手の食材とのマリアージュを楽しめるよう、あえて香りはおだやかに設計されています。
蔵のスタンダード「あづまみね 純米」は、適度な甘さと酸味が心地よいお酒です。蔵元の兄と杜氏の弟、兄弟蔵で醸される「あづまみね」は生産本数が限られ、蔵のオンラインストアと特約店でのみ購入できます。
10位.菊の司(きくのつかさ)
「菊の司」は地元で古くから愛され続ける日本酒です。日々に寄り添う本醸造酒から贈答用にふさわしい純米大吟醸酒まで幅広いラインナップが揃います。
おすすめは「菊の司 純米酒 吟ぎんが仕込」。米に麹、酵母に水とオール岩手産の日本酒です。ぬる燗にすると香りがまろやかに変化し、米のふくよかな旨味を堪能できます。
(出典元:菊の司酒造)
11位.廣喜(ひろき)
「廣(ひろ)く多くの人々に喜ばれる酒を」と誕生した「廣喜」は、紫波酒造店の代表銘柄です。「米のうまみ」をテーマとしたラインナップには、岩手県産米を使用した日本酒が並びます。
なかでも「廣喜 純米大吟醸原酒 磨き三割五分」は、酒米・結の香の魅力にあふれる1本。上品な香りと甘み、雑味のないクリアな飲み口を楽しめます。
(出典元:紫波酒造店)
12位.酔仙(すいせん)
「酔仙」の大きな魅力は、飲み飽きしないきれいな酒質。好みのつまみをおともにすれば、1杯また1杯と盃が進みます。
数あるラインナップのなかでも注目したいのが、冬季限定の「雪っこ」です。とろりとした口当たりの白い活性原酒で、180mlから購入できます。その味わいは、一度口にすれば次の冬が心待ちになるほど。リピーターも多く、例年10月前後から予約販売がスタートしています。
(出典元:酔仙酒造)
13位.浜娘(はまむすめ)
「AKABU」を醸す赤武酒造の日本酒です。岩手産米や岩手のオリジナル酵母などを原料に、爽やかな香りが生み出されています。
「浜娘 純米酒 弐歳」には、40%まで磨いた岩手県産の吟ぎんがを使用。適度に冷やしてワイングラスに注げば、フルーティーな香りをより一層堪能できます。
(出典元:CRAVITON)
14位.水神(すいじん)
あさ開の「水神」は、大辛口の純米酒です。日本酒の甘辛の目安となる日本酒度は+10。一般的に+6.0からが大辛口であることを考えると、そのキレ味がよくわかります。
すっと引いていくその味わいは、肉料理や中華料理などと好相性。ぜひご飯におかずをあわせる感覚で食中酒として楽しんでみてください。
(出典元:楽天市場)
まとめ
清涼な水に良質な米、冷涼な気候と日本酒造りに適した条件が揃う岩手県。自然の恵みと南部杜氏の技の出会いにより、岩手のおいしい日本酒は生まれます。
寒さが厳しい東北地方で、古くから人々に温もりを与えてきた岩手の日本酒は、今や全国で笑顔の花を咲かせています。出会えた際はぜひ手に取って、岩手の地を思いながらその味わいを楽しんでみてはいかがでしょうか。