日本酒は、味や香りで薫酒(くんしゅ)、爽酒(そうしゅ)、醇酒(じゅんしゅ)、熟酒(じゅくしゅ)と4つのタイプに分類されます。それぞれの違いを知っていると、日本酒選びがぐんと楽しく簡単になりおすすめです。
今回は、日本酒の4タイプ分類について詳しく紹介します。それぞれの特徴やおすすめの飲み方など、ぜひ参考にしてください。
目次
1.日本酒の4タイプ分類とは
(出典元:NPO法人FBO)
日本酒の4タイプ分類は、味や香りの個性によって日本酒を分類したものです。
- 爽酒(そうしゅ)
- 薫酒(くんしゅ)
- 醇酒(じゅんしゅ)
- 熟酒(じゅくしゅ)
爽酒は、味わいがスッキリとしたキレのあるタイプ。薫酒は、リンゴや洋梨のようなフルーティーな香りを楽しめます。
コクのある日本酒を味わいたいときは、醇酒がおすすめ。熟酒は、熟成による複雑な味と香りが魅力です。
4タイプの個性を知ると、自分好みの日本酒を見つけやすくなります。「こんな味わいの日本酒があったんだ!」と意外な発見もあるかもしれません。さらに、相性のよい料理をあわせれば日本酒×料理のマリアージュを堪能できます。
2.香りの高い薫酒
「薫る酒」と書くように、薫酒は華やかな香りのお酒です。甘さを感じるタイプも多く、飲みやすさから日本酒ビギナーにも好まれています。
2-1.薫酒の特徴
薫酒は、リンゴや洋梨のようなフルーティーな香りが特徴です。華やかな香りは吟醸香(ぎんじょうか・ぎんじょうこう)と呼ばれます。
吟醸香は「吟醸造り」によって生まれる香りです。よりよく精米した米を原料に、低温でゆっくりと発酵させることで香り成分が醪(もろみ)に閉じ込められ、搾ったときに華やかな香りが生じやすくなります。
また、搾りたての「新酒」は、吟醸造りでなくても華やかな香りがたつことがあります。薫酒好きは秋から冬にかけての新酒シーズンも要チェックです。
2-2.薫酒に該当する日本酒
吟醸香が特徴の薫酒は、吟醸造りで造られた以下のお酒に多くみられます。
- 吟醸酒
- 純米吟醸酒
- 大吟醸酒
- 純米大吟醸酒
名前に「純米」とついているのは、米と米こうじのみで造られた日本酒です。また、「大」とつくほど、より小さく精米した米を原料としています。
2-3.薫酒のおすすめの楽しみ方
薫酒を楽しむおすすめの温度帯
- 冷や(15℃前後)
薫酒の華やかな香りを消さないためには、15℃前後の温度帯で楽しむのがおすすめです。冷やしすぎると、せっかくの香りや甘みを感じにくくなってしまいます。
冷やした状態からゆっくりと味わいながら、温度とともに変化する香りを楽しむのもおすすめですよ。
おすすめの酒器
薫酒を飲むときにぜひおすすめしたいのが、ワイングラスに注ぐスタイルです。グラスのぽってりとした形状が香りを包み込み。フルーティーな香りを感じやすくなる飲み方です。
薄いガラス製のグラスを使うことで、シャープな味わいも感じやすくなります。薫酒の香りとともに、スッキリした飲み口を楽しめるでしょう。
相性のいい料理例
華やかな香りの薫酒には、同じように香りが特徴的な料理がマッチします。柑橘系の食材や、ハーブ類とも相性ばつぐんです。シュワシュワと泡立つスパークリングタイプの薫酒は、食前酒として楽しむのもおすすめですよ。
【和食】 ハモの梅肉添え、大根とゆずの甘酢漬け
【その他】 サーモンの香草焼き、ベトナム風サラダ
3.軽快でなめらかな爽酒
爽酒は、軽快でシンプルな香りの日本酒です。スッキリとした味わいは、料理の魅力を引き立ててくれます。食中酒として好まれることの多いタイプです。
3-1.爽酒の特徴
爽酒は、「淡麗」「シャープ」「キレがある」などと表現される、スッキリとした味わいが特徴です。香りはシンプルで穏やか。料理とともに飲み飽きせずに楽しめます。
3-2.爽酒に該当する日本酒
爽酒に該当する日本酒には、主に以下の2種類が挙げられます。
- 普通酒
- 本醸造酒
普通酒は、流通する日本酒全体の約65%を占めるお酒です。コンビニやスーパーなどで手軽に購入できます。
また、本醸造酒は米と米こうじ、醸造アルコールを原料とする日本酒です。アルコール度数の高い醸造アルコールにより、キリッとした味わいが生み出されています。
より爽やかな個性を楽しみたいときは、「生酒」もおすすめです。通常の日本酒造りでおこなう加熱殺菌処理をしていないため、よりフレッシュな飲み口を堪能できます。
3-3.爽酒のおすすめの楽しみ方
爽酒を楽しむおすすめの温度帯
- 冷や(5~15℃)
- 燗(45~50℃)
爽酒は、幅広い温度帯で楽しめる日本酒です。シャープなキレ味を楽しみたいときは、ぜひ冷やしてみてください。加水調整をしていない「原酒」であれば、ロックやソーダ割にするのもおすすめです。
また、普通酒や本醸造酒は、温めるとキレのある味わいが引き立ちます。ぐんと温度を上げ、冷める間の変化を楽しめるスタイルも、冷やでも燗でも楽しめる日本酒ならではの飲み方です。
おすすめの酒器
スッキリとした味わいの爽酒には、ガラス製や磁器製の酒器がおすすめです。特に、ガラス製のぐい呑みは涼やかさを演出してくれます。
普通酒や本醸造酒はコストパフォーマンスに優れ、日常酒として気軽に楽しめることが魅力です。お気に入りの酒器を用意すれば、家飲み時間がより充実したものになりそうですね。
相性のいい料理例
香り控えめ、ドライテイストの爽酒は食中酒にぴったりのお酒です。味わいが繊細な和食の良きパートナーとなってくれます。
口内のリフレッシュ作用もあるため、油ものと合わせるのもおすすめです。ロックやソーダ割、ジュース割にすれば、唐揚げや焼き鳥にも絶妙にマッチします。
【和食】 冷奴、刺身、そば、天ぷら、鶏のから揚げ、焼き鳥
【その他】 タコのマリネ、冷製パスタ
4.コクのある醇酒
味の濃い酒、という意味をもつ「醇」という文字。その名のとおり、醇酒はコクのあるお酒です。米と米こうじのみで造られる「純米酒」に多く、燗酒にするとより魅力がアップします。
4-1.醇酒の特徴
醇酒は旨味成分を多く含み、味の余韻が長く続くお酒です。口当たりまろやかで、ゆったり味わいたくなる魅力にあふれています。和食とマッチする銘柄も多く、日本酒本来の魅力を堪能できるタイプです。
4-2.醇酒に該当する日本酒
醇酒には、米と米こうじのみを原料とする以下の2種類が該当します。
- 純米酒
- 特別純米酒
また、ラベルに「生酛(きもと)」や「山廃(やまはい)」とある日本酒も、醇酒タイプのお酒が多いです。昔ながらの製法で造られるこれらの日本酒は、繊細かつ深みのある味わいを堪能できます。
4-3.醇酒のおすすめの楽しみ方
醇酒を楽しむおすすめの温度帯
- 冷や(15~20℃)
- 燗(40~45℃)
醇酒のコクは、冷やしすぎると感じづらくなってしまいます。温めるときは、ほどよいぬる燗がおすすめです。湯気とともに広がるやわかな香りが、心をほっと和ませてくれます。
おすすめの酒器
味に深みのある醇酒は、ぜひ陶磁器で楽しんでみてください。温かみのある材質が、醇酒の魅力を引き立ててくれます。
飲み口に厚みがあり、まろやかな旨味や甘みを感じやすくなるのも特徴です。燗酒で楽しめるよう、とっくりとおちょこをセットで揃えるのも良いですね。
相性のいい料理例
ごはんがおかずの良きパートナーであるように、醇酒もペアリングの幅が広いお酒です。相手が風味の強い発酵食品でも、旨味成分が上手に調和し新たなハーモニーが生まれます。
また、生酛造りや山廃造りの日本酒は、チーズや生クリームと好相性。乳酸菌由来のクリーミーな風味が、グラタンやラザニアのような洋食メニューと絶妙にマッチします。
【和食】 ぶり大根、おでん、筑前煮、鮭のホイル焼き、カラスミ、イカの塩辛
【その他】 サイコロステーキ、グラタン、ラザニア、チーズフォンデュ
5.熟成された熟酒
熟酒は、一定年数熟成させたお酒です。時間を重ねることで、味や香りだけでなく見た目も変化します。市場に出回る数は少ない、希少性の高いタイプです。
5-1.熟酒の特徴
熟成を重ねた熟酒は、見た目が茶色や黄色、琥珀色に変化します。通常の日本酒に比べ、トロリと粘性があるのが特徴です。
複雑な香りは、ナッツやドライフルーツのよう。甘み、苦味、旨味とさまざまな要素が凝縮し、ブランデーやウイスキーをたしなむように、少しずつ楽しみたくなる味わいです。
日本酒は、温度や光の影響を受けやすいお酒です。美味しい熟酒に育てるためには、適切な環境で管理する必要があります。
そのため、年数を重ねた熟酒ほど価格帯は上がるものの、希少性の高さと個性的な味わいから、近年は海外でも注目を集めています。
5-2.熟酒に該当する日本酒
熟酒タイプの日本酒の多くは、ラベルに以下のような表記があります。
- 古酒
- 熟成酒
- 秘蔵酒
どれほど熟成させたお酒を「古酒」や「熟成酒」とするのか公的な定義はないものの、熟酒を飲みたいときはこれらの表記を参考にするとよいでしょう。
5-3.熟酒のおすすめの楽しみ方
熟酒を楽しむおすすめの温度帯
- 冷や(常温20~25℃)
- 燗(35℃前後)
熟酒は、常温やぬる燗で味わうのがおすすめです。温めすぎても冷やしすぎても、複雑かつ魅力的な香りが飛んでしまいます。グラスを手で温めれば、温度による香りの変化も楽しめますよ。
おすすめの酒器
少しずつじっくりと味わいたい熟酒には、小さめの酒器が適しています。飲み干すまでの時間も短く、コンディションが良い状態で楽しめるでしょう。
香りを楽しむお酒、ブランデー用のブランデーグラスや、小さなショットグラスもおすすめです。年数を重ねた熟酒の雰囲気にマッチするよう、風情のある素材やデザインの酒器を選ぶのも良いですね。
相性のいい料理例
複雑で重厚感のある味わいの熟酒には、味の濃い料理やスパイスをきかせた料理が良く合います。食後酒としてデザートと合わせるのもおすすめです。
意外性のあるおすすめデザートは、和菓子の羊羹(ようかん)。小豆の甘さとつるりとした舌ざわり、熟酒の濃密な味わいが、なんともいえないハーモニーを生み出します。
【和食】 西京漬け、山椒をきかせたウナギのかば焼き、豚の角煮、羊羹
【その他】 ブルーチーズのハチミツ添え、ドライフルーツ、ナッツ、チョコレートケーキ
まとめ
ひとくちに日本酒といっても、個性はさまざま。香りのあるものからコクのあるものまで、多くのタイプが存在します。
温めたり冷やしたりと、飲用スタイルの幅の広さも日本酒ならではの魅力です。ぜひ、日本酒4タイプを参考に、自分好みの味わいや、日本酒の楽しみ方を見つけてみてくださいね。