ホーム 日本酒を知る 【唎酒師が解説】日本酒の「薫酒」「爽酒」「醇酒」「熟酒」とは?4タイプの特徴について解説!

【唎酒師が解説】日本酒の「薫酒」「爽酒」「醇酒」「熟酒」とは?4タイプの特徴について解説!

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【唎酒師が解説】日本酒の「薫酒」「爽酒」「醇酒」「熟酒」とは?4タイプの特徴について解説!

執筆者情報

shiho
お酒とねこでできているライター。日本酒、ウイスキー、ワイン…すべてのお酒をこよなく愛す。酒好きが高じて利酒師免許を取得。 blog「わたしの酒棚」 https://sakadana.net/

監修者

日本酒ラボ編集部
日本酒ラボに携わってから日本酒のおいしさ・奥深さを知り、唎酒師の資格を取得。日本酒ラボを通して、日本酒のおいしさ・楽しさを日本酒にもあまり馴染みがない方にもお伝えしていきます。

日本酒は、味や香りで薫酒(くんしゅ)、爽酒(そうしゅ)、醇酒(じゅんしゅ)、熟酒(じゅくしゅ)と4つのタイプに分類されます。それぞれの違いを知っていると、日本酒選びがぐんと楽しく簡単になりおすすめです。

今回は、日本酒の4タイプ分類について詳しく紹介します。それぞれの特徴やおすすめの飲み方など、ぜひ参考にしてください。

1.日本酒の4タイプ分類とは

日本酒の4つの香味特性分類

(出典元:NPO法人FBO

日本酒の4タイプ分類は、味や香りの個性によって日本酒を分類したものです。

  • 爽酒(そうしゅ)
  • 薫酒(くんしゅ)
  • 醇酒(じゅんしゅ)
  • 熟酒(じゅくしゅ)

爽酒は、味わいがスッキリとしたキレのあるタイプ。薫酒は、リンゴや洋梨のようなフルーティーな香りを楽しめます。

コクのある日本酒を味わいたいときは、醇酒がおすすめ。熟酒は、熟成による複雑な味と香りが魅力です。

4タイプの個性を知ると、自分好みの日本酒を見つけやすくなります。「こんな味わいの日本酒があったんだ!」と意外な発見もあるかもしれません。さらに、相性のよい料理をあわせれば日本酒×料理のマリアージュを堪能できます。

2.香りの高い薫酒

「薫る酒」と書くように、薫酒は華やかな香りのお酒です。甘さを感じるタイプも多く、飲みやすさから日本酒ビギナーにも好まれています。

2-1.薫酒の特徴

薫酒は、リンゴや洋梨のようなフルーティーな香りが特徴です。華やかな香りは吟醸香(ぎんじょうか・ぎんじょうこう)と呼ばれます。

吟醸香は「吟醸造り」によって生まれる香りです。よりよく精米した米を原料に、低温でゆっくりと発酵させることで香り成分が醪(もろみ)に閉じ込められ、搾ったときに華やかな香りが生じやすくなります。

また、搾りたての「新酒」は、吟醸造りでなくても華やかな香りがたつことがあります。薫酒好きは秋から冬にかけての新酒シーズンも要チェックです。

薫酒

2-2.薫酒に該当する日本酒

吟醸香が特徴の薫酒は、吟醸造りで造られた以下のお酒に多くみられます。

  • 吟醸酒
  • 純米吟醸酒
  • 大吟醸酒
  • 純米大吟醸酒

名前に「純米」とついているのは、米と米こうじのみで造られた日本酒です。また、「大」とつくほど、より小さく精米した米を原料としています。

2-3.薫酒のおすすめの楽しみ方

薫酒を楽しむおすすめの温度帯

  • 冷や(15℃前後)

薫酒の華やかな香りを消さないためには、15℃前後の温度帯で楽しむのがおすすめです。冷やしすぎると、せっかくの香りや甘みを感じにくくなってしまいます。

冷やした状態からゆっくりと味わいながら、温度とともに変化する香りを楽しむのもおすすめですよ。

おすすめの酒器

薫酒を飲むときにぜひおすすめしたいのが、ワイングラスに注ぐスタイルです。グラスのぽってりとした形状が香りを包み込み。フルーティーな香りを感じやすくなる飲み方です。

薄いガラス製のグラスを使うことで、シャープな味わいも感じやすくなります。薫酒の香りとともに、スッキリした飲み口を楽しめるでしょう。

ワイングラスで亀齢テイスティング

相性のいい料理例

華やかな香りの薫酒には、同じように香りが特徴的な料理がマッチします。柑橘系の食材や、ハーブ類とも相性ばつぐんです。シュワシュワと泡立つスパークリングタイプの薫酒は、食前酒として楽しむのもおすすめですよ。

【和食】 ハモの梅肉添え、大根とゆずの甘酢漬け
【その他】 サーモンの香草焼き、ベトナム風サラダ

サーモンの香草焼き
サーモンの香草焼き

3.軽快でなめらかな爽酒

爽酒は、軽快でシンプルな香りの日本酒です。スッキリとした味わいは、料理の魅力を引き立ててくれます。食中酒として好まれることの多いタイプです。

3-1.爽酒の特徴

爽酒は、「淡麗」「シャープ」「キレがある」などと表現される、スッキリとした味わいが特徴です。香りはシンプルで穏やか。料理とともに飲み飽きせずに楽しめます。

爽酒

3-2.爽酒に該当する日本酒

爽酒に該当する日本酒には、主に以下の2種類が挙げられます。

  • 普通酒
  • 本醸造酒

普通酒は、流通する日本酒全体の約65%を占めるお酒です。コンビニやスーパーなどで手軽に購入できます。

また、本醸造酒は米と米こうじ、醸造アルコールを原料とする日本酒です。アルコール度数の高い醸造アルコールにより、キリッとした味わいが生み出されています。

より爽やかな個性を楽しみたいときは、「生酒」もおすすめです。通常の日本酒造りでおこなう加熱殺菌処理をしていないため、よりフレッシュな飲み口を堪能できます。

3-3.爽酒のおすすめの楽しみ方

爽酒を楽しむおすすめの温度帯

  • 冷や(5~15℃)
  • 燗(45~50℃)

爽酒は、幅広い温度帯で楽しめる日本酒です。シャープなキレ味を楽しみたいときは、ぜひ冷やしてみてください。加水調整をしていない「原酒」であれば、ロックやソーダ割にするのもおすすめです。

また、普通酒や本醸造酒は、温めるとキレのある味わいが引き立ちます。ぐんと温度を上げ、冷める間の変化を楽しめるスタイルも、冷やでも燗でも楽しめる日本酒ならではの飲み方です。

おすすめの酒器

スッキリとした味わいの爽酒には、ガラス製や磁器製の酒器がおすすめです。特に、ガラス製のぐい呑みは涼やかさを演出してくれます。

普通酒や本醸造酒はコストパフォーマンスに優れ、日常酒として気軽に楽しめることが魅力です。お気に入りの酒器を用意すれば、家飲み時間がより充実したものになりそうですね。

爽酒

相性のいい料理例

香り控えめ、ドライテイストの爽酒は食中酒にぴったりのお酒です。味わいが繊細な和食の良きパートナーとなってくれます。

口内のリフレッシュ作用もあるため、油ものと合わせるのもおすすめです。ロックやソーダ割、ジュース割にすれば、唐揚げや焼き鳥にも絶妙にマッチします。

【和食】 冷奴、刺身、そば、天ぷら、鶏のから揚げ、焼き鳥
【その他】 タコのマリネ、冷製パスタ

冷奴
冷奴

4.コクのある醇酒

味の濃い酒、という意味をもつ「醇」という文字。その名のとおり、醇酒はコクのあるお酒です。米と米こうじのみで造られる「純米酒」に多く、燗酒にするとより魅力がアップします。

4-1.醇酒の特徴

醇酒は旨味成分を多く含み、味の余韻が長く続くお酒です。口当たりまろやかで、ゆったり味わいたくなる魅力にあふれています。和食とマッチする銘柄も多く、日本酒本来の魅力を堪能できるタイプです。

4-2.醇酒に該当する日本酒

醇酒には、米と米こうじのみを原料とする以下の2種類が該当します。

  • 純米酒
  • 特別純米酒

また、ラベルに「生酛(きもと)」や「山廃(やまはい)」とある日本酒も、醇酒タイプのお酒が多いです。昔ながらの製法で造られるこれらの日本酒は、繊細かつ深みのある味わいを堪能できます。

醇酒

4-3.醇酒のおすすめの楽しみ方

醇酒を楽しむおすすめの温度帯

  • 冷や(15~20℃)
  • 燗(40~45℃)

醇酒のコクは、冷やしすぎると感じづらくなってしまいます。温めるときは、ほどよいぬる燗がおすすめです。湯気とともに広がるやわかな香りが、心をほっと和ませてくれます。

おすすめの酒器

味に深みのある醇酒は、ぜひ陶磁器で楽しんでみてください。温かみのある材質が、醇酒の魅力を引き立ててくれます。

飲み口に厚みがあり、まろやかな旨味や甘みを感じやすくなるのも特徴です。燗酒で楽しめるよう、とっくりとおちょこをセットで揃えるのも良いですね。

相性のいい料理例

ごはんがおかずの良きパートナーであるように、醇酒もペアリングの幅が広いお酒です。相手が風味の強い発酵食品でも、旨味成分が上手に調和し新たなハーモニーが生まれます。

また、生酛造りや山廃造りの日本酒は、チーズや生クリームと好相性。乳酸菌由来のクリーミーな風味が、グラタンやラザニアのような洋食メニューと絶妙にマッチします。

【和食】 ぶり大根、おでん、筑前煮、鮭のホイル焼き、カラスミ、イカの塩辛
【その他】 サイコロステーキ、グラタン、ラザニア、チーズフォンデュ

ぶり大根
ぶり大根

5.熟成された熟酒

熟酒は、一定年数熟成させたお酒です。時間を重ねることで、味や香りだけでなく見た目も変化します。市場に出回る数は少ない、希少性の高いタイプです。

5-1.熟酒の特徴

熟成を重ねた熟酒は、見た目が茶色や黄色、琥珀色に変化します。通常の日本酒に比べ、トロリと粘性があるのが特徴です。

複雑な香りは、ナッツやドライフルーツのよう。甘み、苦味、旨味とさまざまな要素が凝縮し、ブランデーやウイスキーをたしなむように、少しずつ楽しみたくなる味わいです。

日本酒は、温度や光の影響を受けやすいお酒です。美味しい熟酒に育てるためには、適切な環境で管理する必要があります。

そのため、年数を重ねた熟酒ほど価格帯は上がるものの、希少性の高さと個性的な味わいから、近年は海外でも注目を集めています。

熟酒

5-2.熟酒に該当する日本酒

熟酒タイプの日本酒の多くは、ラベルに以下のような表記があります。

  • 古酒
  • 熟成酒
  • 秘蔵酒

どれほど熟成させたお酒を「古酒」や「熟成酒」とするのか公的な定義はないものの、熟酒を飲みたいときはこれらの表記を参考にするとよいでしょう。

5-3.熟酒のおすすめの楽しみ方

熟酒を楽しむおすすめの温度帯

  • 冷や(常温20~25℃)
  • 燗(35℃前後)

熟酒は、常温やぬる燗で味わうのがおすすめです。温めすぎても冷やしすぎても、複雑かつ魅力的な香りが飛んでしまいます。グラスを手で温めれば、温度による香りの変化も楽しめますよ。

おすすめの酒器

少しずつじっくりと味わいたい熟酒には、小さめの酒器が適しています。飲み干すまでの時間も短く、コンディションが良い状態で楽しめるでしょう。

香りを楽しむお酒、ブランデー用のブランデーグラスや、小さなショットグラスもおすすめです。年数を重ねた熟酒の雰囲気にマッチするよう、風情のある素材やデザインの酒器を選ぶのも良いですね。

熟酒

相性のいい料理例

複雑で重厚感のある味わいの熟酒には、味の濃い料理やスパイスをきかせた料理が良く合います。食後酒としてデザートと合わせるのもおすすめです。

意外性のあるおすすめデザートは、和菓子の羊羹(ようかん)。小豆の甘さとつるりとした舌ざわり、熟酒の濃密な味わいが、なんともいえないハーモニーを生み出します。

【和食】 西京漬け、山椒をきかせたウナギのかば焼き、豚の角煮、羊羹
【その他】 ブルーチーズのハチミツ添え、ドライフルーツ、ナッツ、チョコレートケーキ

ドライフルーツ
ドライフルーツ

まとめ

ひとくちに日本酒といっても、個性はさまざま。香りのあるものからコクのあるものまで、多くのタイプが存在します。

温めたり冷やしたりと、飲用スタイルの幅の広さも日本酒ならではの魅力です。ぜひ、日本酒4タイプを参考に、自分好みの味わいや、日本酒の楽しみ方を見つけてみてくださいね。