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酒蔵で行われている伝統行事「呑切り」とは?

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酒蔵で行われている伝統行事「呑切り」とは?

「呑切り(のみきり)」は、酒蔵に伝わる伝統行事です。杜氏や蔵人たちが集い、熟成途中の日本酒の出来をチェックします。一般的に知られることの少ない呑切りも、蔵にとっては一大イベント。今回は、呑切りの内容や由来についてお伝えします!

1.呑切りとは

「呑切り(のみきり)」とは、熟成中の日本酒の質をチェックすることです。日本酒は冬に仕込み、春から夏へと熟成させ、1年をかけて新酒の季節を迎えます。

酒造技術が発達していないころは、熟成中に日本酒が腐敗してしまう恐れがありました。日本酒が白く濁り、酸味を帯びる「火落ち」と呼ばれる現象です。

火落ちを防ぎ、熟成度合いを見極めるため、各蔵では夏に唎酒がおこなわれるようになります。これが呑切りのはじまりです。

貯蔵技術が発達した現在は、季節を問わず日本酒が出荷できるようになりました。そのため、呑切りは出荷のつどおこなうのが一般的です。

しかし、夏場の呑切りだけは今も酒蔵にとって特別なもの。冬に仕込んだ日本酒と初対面する緊張の瞬間です。

色あい、味、そして香り。呑切りでは、数値化できない繊細な味わいを人の五感で判断していきます。

1-1.呑切りの由来

呑切りという呼び名は「栓を切る」ことに由来しています。日本酒を熟成させる貯蔵タンクには「吞み口」と呼ばれる栓が付いています。栓を切ると、中から日本酒がこぼれだす仕組みです。

呑切りは「栓を切る」、つまり「呑み口を切る」が転じて生まれました。シーズン初めての吞切りは「初呑切り」、合間におこなうものは「間呑切り」と呼ばれています。

1-2.呑切りに使う「蛇の目の唎猪口」

蛇の目の唎猪口

呑切り当日、蔵には「蛇の目の唎酒猪口(じゃのめのききちょこ)」がズラッと並びます。蛇の目の唎猪口は、唎酒用に造られたお猪口です。

底にブルーの二重丸が描かれているのは、細かな浮遊物を見えやすくするため。白と青のコントラストにより、日本酒の色合いも確認しやすくなります。ぽってり丸く、適度な高さのある形は香りを包み込むためです。

ちなみに「蛇の目」とは、古くは和傘や家紋に用いられた模様を意味します。第1回目の全国新酒鑑評会より、お猪口の模様として採用されました。

2.6~8月のタイミングでおこなう「初呑切り」

冬から続く酒造りがひと段落するころ、蔵では「初呑切り」がおこなわれます。時期としては、温度が高くなる6月から8月。酒造技術が向上した現在は、日本酒の熟成度合いをチェックするのが主な目的です。

初呑切りは、その年の日本酒の出来を把握し、出荷時期を調整するための大切な行事です。杜氏や蔵人はもちろん、蔵によっては関係者を招いて呑切り酒を振る舞います。

2-1.初呑切りの際におこなう「切り鼻」

片口

「切り鼻」は、日本酒の香りを吟味するためにおこなう行事です。「片口(かたくち)」と呼ばれる、縁の片側にくちばしのような注ぎ口がある器を使います。

切り鼻に使う片口は、両手で持つような大きめサイズ。タンクから日本酒を注ぎ、顔を近づけて香りを確認します。飲食店では見ることのできない、酒蔵ならではの伝統行事です。

2-2.夏の楽しみ「呑切り酒」

蔵によっては、初呑切りのお酒をそのまま「呑切り酒」として出荷しています。貯蔵途中の呑切り酒は、アルコール度数がやや高く、しっかりした味わいが特徴です。

飲みごたえのある呑切り酒は、暑い夏のロックやソーダ割りにぴったり。冷暗所で1年近く寝かせ、味わいの変化を楽しむのもおすすめです。

まとめ

日本酒は、時間や温度で味が変化する繊細なお酒です。よりベストな状態で出荷するためにも、呑切りは欠かせません。夏の訪れを感じるころ「そろそろ呑切りの季節だな」と日本酒を傾けるのもまたオツなもの。夏限定の呑切り酒を見つけたら、ぜひ一度試してみてくださいね。