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日本酒造りの副産物「酒粕」とは?酒粕の使い方や保存方法を解説

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日本酒造りの副産物「酒粕」とは?酒粕の使い方や保存方法を解説

執筆者情報

shiho
お酒とねこでできているライター。日本酒、ウイスキー、ワイン…すべてのお酒をこよなく愛す。酒好きが高じて利酒師免許を取得。 blog「わたしの酒棚」 https://sakadana.net/

酒粕とは、日本酒を造る過程で生まれる食品のことです。甘酒や粕汁などのイメージがあっても、酒粕ができるまでの流れはわからないことも多いのではないでしょうか。

今回は、酒粕の元となる醪(もろみ)や、お酒の搾り方などについて解説。酒粕の種類や保存方法なども紹介します。

美味しい日本酒とともに、酒粕も身近な存在としてぜひ日常生活に取り入れてみてくださいね。

1.酒粕は日本酒を搾るときに生まれる副産物

「酒粕(さけかす)」とは、日本酒の製造工程で生まれる副産物のことです。日本酒は、白い醪(もろみ)を搾ることでできあがります。

搾った液体が「日本酒」、あとに残る固形物が「酒粕」です。お酒を搾る工程は上槽(じょうそう)と呼ばれ、上槽法は主に3種類あります。

1-1.醪は酒粕と日本酒のもと

醪は、蒸した米と米麹、酒母(しゅぼ)と呼ばれるお酒の元と、水を発酵させた液体です。発酵途中はぷくぷくと泡立ち、見た目は白くにごっています。

日本酒は、酒税法で「清酒」と呼ばれます。清酒を名乗るためには、醪は必ずこさなくてはいけません。

醪をこさず、そのまま製品化したものは「どぶろく」にあたります。醪をこす、つまりお酒を搾る工程は上槽と呼ばれ、この段階で醪は清酒と酒粕とにわかれます。

1-2.上槽の方法は主に3種類

上槽には、主に以下の3つの種類があります。一般的な方法は「自動圧搾機」や「槽搾り(ふなしぼり)」ですが、鑑評会に出品するようなお酒には「袋吊り」と呼ばれる、より手間のかかる手法が用いられることがあります。

1.自動圧搾機

自動圧搾機は、大きなアコーディオン状の機械です。醪が入った袋を両側からぎゅーっと圧縮しお酒を搾り出します。自動圧搾機の特徴は、効率よく、質の良いお酒が搾れることです。お酒を搾ったあとの酒粕は、板状になって残ります。

2.槽搾り

槽搾りは、槽(ふね)と呼ばれる大きな長方形の容器を用いる手法です。醪を入れた袋を槽のなかに積み重ね、自然の重みでゆっくりとお酒を搾っていきます。

機械で圧力をかけるのは最後のみと、自動圧搾機に比べ時間と手間を要する作業です。大量生産は難しいものの、お酒は雑味のないフレッシュな味わいに仕上がります。

3.袋吊り

醪を入れた袋を吊るし、自然の重力でポタポタとこぼれる雫を集める方法です。雫取り(しずくどり)とも呼ばれ、槽搾り以上に手間と時間がかかります。そのため、袋吊りのお酒は高価格帯の商品が主流です。

酒粕

2.形状、日本酒の種類による酒粕のちがい

酒粕には、板状のものやバラバラとしたものなど、さまざまな形状があります。また、吟醸酒や純米酒など、搾るお酒の種類によって味にちがいが生まれるのが特徴です。

2-1.「板・バラ・練り」形状によるちがい

板粕

板粕(いたかす)は、板状になった酒粕です。自動圧搾機で搾ったあとの酒粕は、板粕が主になります。板粕は適度に硬く、水に溶けにくいのが特徴です。水にしばらくつけてから料理に使うほか、そのまま焼いて食べることもできます。

バラ粕

板粕がバラバラに崩れたものは、バラ粕と呼ばれます。板粕に比べ、料理などに使いやすい形状です。

バラ粕

練り粕

練り粕は、ペースト状になった酒粕です。板粕をタンクに入れ、踏み込んで熟成させたものは「踏込粕(ふみこみかす)」と呼ばれます。ペースト状のため料理に使いやすく、魚や野菜の粕漬けなどにも利用できるタイプです。

2-2.「吟醸・純米」日本酒の種類によるちがい

日本酒の種類は、原料や製法で「吟醸酒」や「純米酒」にわかれます。吟醸酒を搾ったあとの酒粕は、芳醇な風味が特徴です。米と米麹のみで造られる純米酒を搾ったあとの酒粕は、米本来の風味が残り、料理に適しています。

3.栄養満点!酒粕を摂取するメリット

酒粕には、タンパク質や食物繊維をはじめとするさまざまな栄養素が含まれています。栄養素のひとつ「フェルラ酸」は、化粧品分野でも活用されている成分です。メラニンの生成を抑制する「コウジ酸」も含まれていることから、美肌効果が期待できます。

また、酒粕に含まれる「レジスタントプロテイン」には、食物繊維のような作用があります。便秘解消や肥満抑制効果が期待できるなど、酒粕は健康にも美容にもうれしい栄養豊富な食品です。

酒粕

4.酒粕の賞味期限と保存方法

一般的に、酒粕の賞味期限は常温保存で3カ月ほどといわれています。より長期間保存したいのであれば、冷蔵保存や冷凍保存がおすすめです。酒粕は時間と共に熟成が進むため、味わいや風味の変化を楽しむことができます。

4-1.酒粕の常温保存

常温保存は、もっとも早く熟成が進む保存法です。保存場所は、直射日光のあたらない涼しい場所を選びましょう。未開封であれば3カ月ほど保存可能です。開封後は2~3週間を目安に使い切るようにしてください。

4-2.酒粕の冷蔵保存

冷蔵保存では、酒粕の熟成スピードがゆるやかになります。色や風味の変化が抑えられるため、常温より長期保存が可能です。冷蔵庫内で乾燥しないよう、酒粕は密閉できる容器や袋に入れましょう。

4-3.酒粕の冷凍保存

酒粕をしばらく使う予定がないときは、冷凍保存がおすすめです。熟成が進まず、およそ1年間は風味をキープできます。

板粕の場合は、あらかじめ水や日本酒を加え、弱火で煮てからペースト状にしておくと便利です。小分けにしてラップに包み、フリーザーバックなどで冷凍すれば、必要なぶんだけ自然解凍し利用できます。

5.料理や美容に「酒粕活用法」4選

体にうれしい栄養素がたっぷり含まれている酒粕は、料理だけでなく美容面でも活用できます。注意したいのは、酒粕にはアルコール分が含まれていることです。加熱である程度アルコールは飛ぶものの、運転前や妊娠中の方、子どもは飲食を控えたほうが良いでしょう。

5-1.粕汁

粕汁は、酒粕を加えた味噌汁です。大根や人参などの根菜類、魚のアラや豚肉などを具にした味噌汁に酒粕を使うと、より風味がアップします。冬の体をポカポカと温めてくれるおすすめメニューです。

粕汁

5-2.酒粕甘酒

甘酒には、米麹で作るノンアルコールタイプと、酒粕で作るアルコールを含むタイプがあります。酒粕で作る甘酒は、お酒の香りをより感じられるのが魅力です。香り高い吟醸酒を搾ったあとの酒粕を使えば、より風味豊かな甘酒ができあがります。

酒粕甘酒

5-3.粕漬け

肉や魚を酒粕に付けた粕漬けは、日本に古くからある保存食です。酒粕にみりんや酒、味噌を加え、材料を半日~数日漬け込みます。肉や魚だけでなく、野菜を漬け込んでも美味しい粕漬けができあがります。

粕漬け

5-4.美容パック

美肌効果が期待できる酒粕は、パックとしても活用できます。肌質によりアルコール分が刺激になるため、使用前は腕の内側などに塗り、必ず反応を見てから使用してください。

酒粕は、精製水を加えながら顔に乗せてもたれないくらいの固さに調整します。肌に塗り5~10分ほど置き、ぬるま湯で流したらパック完了。余った酒粕パックは冷蔵保存できますが、1週間以内を目安に使い切りましょう。

美容パック

まとめ

酒粕は、日本酒を搾るときに生まれる副産物。醪が発酵する過程で生まれる栄養素がたっぷり含まれています。

賞味期限が長く、冷凍保存できることもうれしいポイント。肉や魚を粕漬けにすれば、素材そのものを保存食として活用できます。スーパーや酒蔵などで酒粕を見つけたら、ぜひ手にとってその魅力を体感してみてくださいね。