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【佐々木酒造】朝の仕込蔵見学体験レポ!五感で感じる日本酒造り【京都】

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【佐々木酒造】朝の仕込蔵見学体験レポ!五感で感じる日本酒造り【京都】

執筆者情報

shiho
お酒とねこでできているライター。日本酒、ウイスキー、ワイン…すべてのお酒をこよなく愛す。酒好きが高じて利酒師免許を取得。 blog「わたしの酒棚」 https://sakadana.net/

(画像出典元:佐々木酒造

日本酒を楽しむようになると「日本酒はどうやってできるの?」「酒蔵ってどんなところ?」と感じることもあるのではないでしょうか。そんなとき、ぜひおすすめしたいのが酒蔵体験です。

今回は、京都市中心部に位置する酒蔵「佐々木酒造」さんの酒蔵見学におじゃましました!

佐々木酒造は、京都市中心部に位置する酒蔵。「KALDI」との人気コラボ商品『酒蔵のネコ』の蔵、でピンと来る方もいらっしゃるかもしれませんね。

温度、迫力、香り、音…そしてお楽しみの試飲と、五感で感じる魅力がたっぷりと詰まった佐々木酒造の酒蔵見学。早速その様子をお伝えします!

1.京都洛中の酒蔵「佐々木酒造」

「佐々木酒造」は、平安時代の京城内を意味する洛中(らくちゅう)に位置する酒蔵です。蔵が建つのは、かつての豊臣秀吉の邸宅「聚楽第(じゅらくだい)」跡地の南端にあたる場所。近くには二条城が建つなど、周辺は実に京都らしい風情にあふれています。

実は洛中は、日本造りに欠かすことのできない良質な「水」に恵まれた地域。地下には豊富な水をたたえる水瓶があり、佐々木酒造もまた、井戸から湧き出る銘水「銀明水(ぎんめいすい)」を仕込み水として使用しています。

佐々木酒造の創業は1893年(明治26年)。代々続く日本酒製造はもちろん、リキュール製造やスイーツ店とのコラボレーションといった多彩な事業展開は、各方面から高い注目を集めています。

「洛中酒蔵ツーリズム」と題したさまざまな地域経済活性事業もそのひとつ。今回参加させていただいた『冬季限定!佐々木酒造酒仕込み早朝見学』も洛中酒蔵ツーリズムの一環です。

見学の感想をはじめにお伝えするならば…「想像以上に大満足!蔵人さんたちがカッコイイ…そして今すぐ、お酒が飲みたい」のひと言。

人気を受け見学日の追加も設けられた早朝の酒蔵見学コース、早速スタートです!
(2022年3月1日現在)

2.7時10分、酒蔵見学スタート!

佐々木酒造酒蔵見学

酒蔵の朝は、早い。見学開始時間は7時10分。すでに日本酒の原料となる酒米が蒸されている時間です。曇り空のため画像では分かりにくいものの、屋根からはもうもうと白い湯気が立ち上っていました。

準備していただいた上着とシャワーキャップを着用し、いざ蔵内へ!見上げる湯気に見学への期待も高まります。

佐々木酒造酒蔵見学
手前:酒米を蒸している甑(こしき)奥:出番を待つ放冷機

蔵内で見学者を迎えてくれたのは、中央にドーンと鎮座する大きな甑(こしき)。先ほど外で見上げていた湯気は、この甑から放たれていたもの。温かさとともに、お米の炊ける甘い香りが鼻腔をくすぐります。

日本酒造りに使う米は、雑味を取り除くために外側を削り、水を吸収させ、蒸してから使用します。

小さく精米されキラキラと光る酒米「五百万石(ごひゃくまんごく)」。佐々木酒造ではこのほか「山田錦」や「祝米」などを使用。

日本酒造りでは、米に水を吸収させる「浸漬(しんせき)」という工程が麹(こうじ)の仕上がりを大きく左右するそう。水の管理のため、蔵人さんはときに5時前から仕事を開始するとか。

酒造りがおこなわれるのは、秋から春先の寒い時期。京都の冬はひどく冷え込むことも珍しくありません。早朝の酒蔵見学で早起きしたつもりになっている場合ではなかった…。蔵人の方々、本当に頭が下がります。

酒米の蒸し具合は、湯気の出方や匂いなどで判断するそうです。甑の回りでほかほかと暖をとっていたのも束の間。蒸し上がりの合図とともに、蔵人さんたちが一斉に甑の周りへ駆け寄ります。

ゴゴゴゴという機械音とともに、甑の後ろで出番を待ち構えていた放冷機も稼働。いっきに緊張が高まる瞬間です。クレーンで吊り上げられた大量の蒸米は、そのまま放冷機へと運ばれていきます。

コンベアー状になっている放冷機

放冷機は、アツアツの蒸米を冷ましていく機械。と同時に、蒸米にはこの段階で「モヤシ」と呼ばれる種麹(たねこうじ)が振りかけられます。

重たい米を持ち上げて放冷機に移し、冷ましていくこの工程は、見た目以上に危険を伴う作業だそう。またもや蔵人のすごさを目の当たりにした瞬間でした。

3.暑くて寒い?米麹と酒母が眠る2階へ

2階の温かな麹室

放冷機で冷まされた蒸米は、ホースのなかを通り、2階の麹室(こうじむろ)へと運ばれていきます。見学者も靴にカバーをかぶせ、昔ながらの急階段を上り麹室へ。

外気の冷たさを感じる1階と違い、麹室はむわっと温かさを感じる空間です。麹菌が元気に活動できるよう、室温は30~40度、湿度は60%に保たれています。

蔵人さんが指差しで伝えているのは、運ばれてきた蒸米の温度のあんばい。指を上へ、下へ、ちょうど良いときは頭上で大きく丸。その様子がカメラのモニター越しに1階へと伝えられます。

大吟醸酒の仕込みの際は、蒸米を床(とこ)と呼ばれる台に広げて種麹を振りかけるそう。それから蒸米をまんべんなく混ぜる作業は、暑さの中の重労働だとか。麹をふりかけた蒸米は棚に広げられ、適度に乾くと米麹の完成です。

「それでは次は酛部屋(もとべや)に行きましょう。途中、足元が危ないので気を付けてくださいね」

この日、案内を担当されていたのは蔵人の疋田(ひきた)さん。ていねいに案内していただいた先にあったのは、1階を下に見渡す狭い階段!

動揺で思わず写真がブレる(笑)

今はホース内を通って運ばれる米麹も、以前はこの上を蔵人が抱えて運んでいたとか…いやいや、絶対無理(笑)すごい。すごすぎる。

左から3日目、7日目、11日目の酒母用タンク

酛部屋(もとべや)と呼ばれる「酒母(しゅぼ)」を育てる部屋は、麹室とは打って変わってひんやりとした空間。

酵母が活発に活動し、温度が高いまんなかのタンクではぷくぷくと小さな泡がたっていました。より日にちが経過したいちばん右側のタンクには、酵母の働きを抑えるため、氷の入った銀色の樽が吊るされています。

佐々木酒造が主力としているのは、「京の琴」という名の香り高いお酒が生まれる酵母。こうして温度管理をしながら、13日ほどかけて酒母を育てていくそうです。ふわふわと泡立つ酒母からは、ほんのりと甘くやさしい香りがしていました。

左:3日目、右:11日目

4.いよいよ搾りたてのお酒と対面

奥に見えるはお話上手な疋田さん

階段を下り1階へ戻ると、見学もいよいよクライマックス!ふわっと甘い香りを感じたかと思うと、そこには見上げるほど大きなタンクがズラリ並んでいました。

佐々木酒造トレードマークのねこちゃんがここにも。カワイイ。

タンクのなかには、先ほどの酛部屋で見た酒母、温かい麹室で造られていた米麹、そして蒸米が入っています。

これらを3回にわけて加えていくのが「三段仕込み」と呼ばれる日本酒の一般的な造り方。「並行複発酵」ともいわれる、世界でも珍しいお酒の醸造法です。

蔵内を巡るホースを通り、天井から降って来る蒸米(掛米)

ハシゴに登り、タンク内を長時間かき混ぜる作業はかなりの重労働だそう。こんなにも間近で見せていただけるなんて…。佐々木酒造さんの見学体験、本当にぜいたく&素晴らしすぎる…。

それぞれのタンクを覗かせていただきましたが、6日目の醪(もろみ:タンク内の液体)は、ヨーグルトやミルクを思わせる甘くやわらかい香り。明後日に搾られるという醪はさらに進化を遂げ、お酒の甘さ、芳醇さを感じさせる香りへと変化していました。

これが今生きているお酒の香り…と感激していると、ガタタンガタタンと隣の部屋から物音が。

「あ、ちょうど搾っている音ですね。行ってみましょう」と案内された部屋では「ヤブタ式」と呼ばれる機械がお酒を搾っているところでした。

ヤブタ式圧搾機

この機械で醪をぎゅぅっと搾ったあと、アコーディオンのような部分に残る固形物が、スーパーなどで目にする「酒粕」です。

タンクのなかには、まさに搾りたての日本酒が!美しい!そして飲みたい!(笑)

朝早く、この搾りたてのお酒をいただけるのは蔵人だけ。それはもう、ここまでの数々の工程を見たらそれだけの特権も当然です。

ちなみに、佐々木酒造ではヤブタ式圧搾機のほか、遠心分離機も使用されています。圧力をかけない遠心分離機を使ったお酒は、雑味のない、実にきれいな味わいに仕上がるそう。

また、醪を入れた袋を吊るし、こぼれる雫を斗瓶(とびん)というガラス瓶に集める「斗瓶囲い」は蔵人総出の大仕事だとか。とれる量が少ないぶん、袋吊りのお酒は高価なもの。理屈でわかっていることも、これだけの設備を目の当たりにすると納得ですね。

5.佐々木酒造のお酒を味わう!お楽しみ試飲タイム

左から:「古都 しぼりたて」「聚楽第 吟醸あらばしり」「西陣 特別 純米しぼりたて」

お酒が貯蔵されている倉庫や瓶詰め・包装エリアを抜け、大満足の蔵内見学は終了!ですが…まだまだツアーは終わりではありません。

集合場所の部屋に戻ると、いよいよお楽しみの試飲タイムのスタート!

事前案内には「試飲(軽く)」と記載されていましたが、なんと佐々木酒造とっておきのお酒が3種類も用意されていました。

お酒の説明をしてくださったり、見学者からの質問に答えたりしてくださるのは佐々木晃社長。この後、じんわり温かな甘酒まで自ら振る舞ってくださいました。

とても気さくなお人柄の佐々木社長。見学後はお酒や酒粕、オリジナルグッズも購入できます。

「古都 しぼりたて」は、ロックやソーダ割にしても楽しめるお酒だそう。蔵人・疋田さんいわく、ライムやレモンをキリッと搾っても美味しいのだとか。「日本酒=むずかしい」というイメージから開放され、楽しみの幅がより広がりそうなお酒ですよね。

当初は3月上旬まで開催予定だったこちらのツアー。平日のみにも関わらず、人気を受け2022年3月17日(木)まで設定日が追加されています。

また、今回の見学以外にも、佐々木酒造ではさまざまなツアーが企画されているそう。詳細は佐々木酒造公式HPのほか、京都観光オフィシャルサイト京都観光Naviで確認できます。

佐々木酒造「京都洛中酒蔵ツーリズム」https://www.jurakudai.com/#tourism
京都観光オフィシャルサイト京都観光 Navi https://ja.kyoto.travel/

京都という歴史ある土地で、日本文化のひとつである酒造りを守り、そして次世代へとつないでいく蔵「佐々木酒造」。酒蔵見学は、まさに日本酒造りの「歴史」と「熱」を間近で感じる体験でした。

酒蔵に興味のある方、日本酒好きな方は、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

佐々木社長、そして蔵の皆様方、今回は本当にありがとうございました!

佐々木酒造株式会社
[所在地]京都府京都市上京区北伊勢屋町727
[電話番号]【TEL】075-841-8106 【FAX】075-801-2582
[従業員数]25名(ネコ含む)※ネコはリモートワーク中
[公式URL]https://www.jurakudai.com/