
日本酒には様々な飲み方・楽しみ方がありますが、冬になると日本酒の燗酒が飲みたい!という人が珍しくありません。お店で飲むのもいいですが、なかには自宅で作りたいこともあるでしょう。
日本酒は、温度で味わいが変化するお酒です。燗酒にすれば、その魅力をより一層堪能できます。
「お家でおいしい燗酒が飲みたい」「でも、なんだかハードルが高そう」と思った方も大丈夫!今回は手軽でおいしい燗酒の作り方をご紹介します。
温度による味の特徴も紹介するので、ぜひ気軽にチャレンジしてみてくださいね。
目次
1.温度で変わる燗酒の特徴
温めた日本酒「燗酒」は、温度で呼び方が変わるのが特徴です。それぞれの呼び名や違いを覚えておくと、飲食店などで燗酒をオーダーするときに役立ちます。自分の好みの温度帯を知る目安にもなりますよ。
温度帯 | 呼び方 | 特徴 |
30℃前後 | 日向燗(ひなたかん) | やわらかな香りと口当たり。お酒本来の味わいを感じやすい温度帯。 |
35℃前後 | 人肌燗(ひとはだかん) | 人肌を感じさせるほんのりとした温かさ。米のコクや旨味を感じやすい。 |
40℃前後 | ぬる燗 | 酒器からも温もりが感じられる温度帯。口に含むと温かさと共にお酒の旨味がじんわり広がる。 |
45℃前後 | 上燗(じょうかん) | 酒器から湯気が出る温度帯。引き締まった香りと味わいを楽しめる。 |
50℃前後 | 熱燗(あつ燗) | 熱さとともにキリッとシャープな旨味が際立つ。おつまみ片手にちびりちびりと楽しみたい温度帯。 |
55~60℃ | 飛びきり燗 | 日本酒の違った個性が引き出される温度帯。飛び切り燗から温度が下がるにつれて、徐々に変化する味わいを楽しむのもおすすめ。 |
2.湯煎でおいしい燗酒の作り方
温度による違いを知ったら早速実践!ここからは、手軽でおいしい燗酒の作り方をご紹介します。
燗酒の「おいしい」に正解はありません。最初は途中で味見をしながら、自分好みの温度帯を見つけてみてくださいね。
1.徳利の8分目ほどまで日本酒を注ぐ
日本酒は温まると容量が若干増えます。徳利ぎりぎりまで入れると溢れてしまうため気を付けてください。慣れないうちは一度軽量カップなどに移し、少しずつ注ぐのがおすすめです。
2.鍋に徳利を入れ水の量を調整する
徳利が肩まで浸かるよう、水の量を調整します。ちょうどいい高さまで水を入れたら、徳利を一度取り出しましょう。
3.鍋の水を沸騰するまで温める
しっかりとお湯を沸かしたら、一度火を止めます。
4.鍋に徳利を浸す
取り出しておいた徳利を静かにお湯に沈めます。ぬる燗であれば2分半、熱燗の場合は3分を目安に温めてください。鍋や徳利のサイズ、素材により温まるまでの時間は変化します。
5.鍋から取り出して完成!

熱さに気を付けつつ、鍋から徳利を取り出します。底を触って温かく感じるくらいができあがりの目安です。「熱すぎたかも?」と思っても大丈夫。アツアツの状態から徐々に温度が下がる間の、味や香りの変化を感じてみてください。
温度でがらりと変わる個性こそ燗酒の醍醐味です。温めておいしい日本酒の魅力をぞんぶんに堪能してくださいね。
3.電子レンジで燗酒を作るときのポイント
燗酒をより手軽に楽しみたいときは、電子レンジを使う方法があります。その際は、電子レンジ対応の徳利を使ってください。口をラップで覆い、1合(180ml)約40秒(500w)を目安に温めます。
電子レンジでおいしく作るためのポイントは、途中で一度徳利を取り出し、軽く振ることです。中身の温度が均一になり味ムラを防げます。加熱しすぎるとお酒がこぼれる恐れもあるため、少しずつ加減しながら温めてくださいね。
4.燗酒におすすめの日本酒のタイプ
日本酒には、吟醸酒や純米酒などさまざまなタイプがあります。燗酒におすすめなのは、ラベルに「純米酒」とあるタイプです。米と米麹のみで作られた純米酒は、温めるとより一層、米の旨味とコクが引き立ちます。
名前に「山廃(やまはい)」「生酛(きもと)」などとある日本酒もおすすめです。山廃や生酛は、日本酒の造り方を意味しています。昔ながらの手間ひまかかる製法で造られ、複雑かつ奥深い味わいが特徴です。温めることでさらに魅力が増し、おいしさがじんわりと体に染み渡ります。
5.燗酒の豆知識
燗酒の歴史は古く、縄文時代から飲まれていたといわれています。また、お酒を温める文化は世界的にも珍しいものです。その歴史や魅力を知れば、燗酒がさらに味わい深く感じられます。
5-1.燗酒の始まりは縄文時代の後期から
燗酒は、縄文時代にはすでに存在していたといわれています。平安時代になると、貴族たちの間で親しまれるようになりました。ただ、この時代の燗酒は寒い時期に飲むものだったようです。1年を通し庶民が燗酒を楽しむようになったのは、江戸時代に入ってからとされています。
今でも「燗酒=冬」のイメージが一般的ですが、燗酒好きのなかには「暑い夏こそ燗酒」というファンも少なくありません。現代はアウトドアで燗酒を楽しむというスタイルも広がり、軽く保温性に優れたチタンのおちょこなどが販売されています。

5-2.お酒を温める文化は世界的に珍しい
お酒を温めるという文化は、世界的にも珍しいものです。ワインを温める「グリューワイン」もありますが、こちらはスパイスなどを使ったホットカクテルのひとつといえるでしょう。
温かな燗酒は消化吸収が早く、血行を促すともいわれています。もちろん飲みすぎは厳禁ですが、日本の国酒「日本酒」を温めるという文化を大切にしていきたいですね。
まとめ
燗酒は、冷やしても温めてもおいしい日本酒ならではともいえる飲み方です。温度でがらりと変わる味や香りを楽しめます。
沸騰したお湯に浸ける作り方なら、お酒が沸き立つ心配もありません。浸ける時間で温度を調整できます。
「このお酒は燗にしてもいいの?」「○℃にしなくては」と難しく考えなくても大丈夫。好みの酒器を用意して、まずは気軽にチャレンジしてみてください。普段飲んでいたお酒の違った一面に出会え、日本酒がもっと楽しくおいしいものになりますよ。