純米吟醸酒とは、日本酒を原料や製法で分類した特定名称のひとつです。米と米こうじのみを原料に、吟醸造りと呼ばれる製法で造られています。
日本酒は、原料や製法でさまざまに表情を変えるお酒です。種類ごとの違いがわかれば、楽しみ方、選び方の幅がより一層広がります。
「日本酒の種類を知ろう!」第5回の今回は、純米吟醸酒の定義や味わい、香りについて解説。おすすめのおつまみなど、純米吟醸酒の魅力についてたっぷりとお伝えします。
目次
1.純米吟醸酒とは
純米吟醸酒(じゅんまいぎんじょうしゅ)は、日本酒の特定名称(とくていめいしょう)のひとつです。特定名称とは、日本酒を原料や製法で分類した呼び名のこと。純米吟醸酒をはじめ、本醸造酒や純米酒など全8種が存在します。
1-1.純米吟醸酒の定義
「清酒製法品質表示基準」では、純米吟醸酒は以下のように定義されています。
- 米と米こうじを使用していること(米の等級は3等以上)
- 精米歩合が60%以下であること
- こうじ米を全体の15%以上使用していること
- 吟醸造りで造られ、固有の香味を持ち色沢が良好であること ※色沢=色合いや透明度など
ここで「?」と思われがちなのが「米こうじ」、「精米歩合」、「吟醸造り」などのワードではないでしょうか。
米こうじとは、日本酒づくりに欠かせない原料のこと。目に見えない麹菌を米に繁殖させて造られます。
また、精米歩合(せいまいぶあい)とは、米粒の外側を削り、残った割合を示した数字のことです。「精米歩合60%以下であること」とは、外側を40%以上削った米を使わないと、純米吟醸酒とは名乗れないことを意味しています。
ちなみに、普段炊いて食べるお米の精米歩合はおよそ90%。純米吟醸酒は、より小さく削った米を原料に造られていることがわかります。
吟醸造りとは、このより小さく削った米を原料に、ゆっくりと発酵させ香りを生み出す醸造法のことです。この吟醸造りこそが、純米吟醸酒の大きな特徴。吟醸造りが生み出す味わいや香りについては、次で詳しく紹介していきます。
1-2.純米吟醸酒の味わいや香り
純米吟醸酒は、吟醸造りによる華やかな香りが特徴です。香りは吟醸香(ぎんじょうこう・ぎんじょうか)と呼ばれ、リンゴやバナナ、洋ナシなどに例えられます。
味わいは、雑味のないクリアなタイプが主流です。米の適度な旨味も感じられ、味と香りの絶妙なバランスを楽しめます。
1-3.吟醸酒・純米大吟醸酒との違い
純米吟醸酒と似た名称として、吟醸酒や純米大吟醸酒などを見かけることもありますよね。それぞれの大きな違いは、原料や精米歩合です。味や香りにも次のような変化が生まれます。
吟醸酒との違いは「原料」
吟醸酒の純米吟醸酒との大きな違いは、吟醸酒は原料に「醸造アルコール」が使われていることです。醸造アルコールとは、主にトウモロコシを原料にした純度の高いアルコールのこと。お酒にすっきりとしたキレ味を生み出します。
吟醸酒についてはこちらの記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください。
「吟醸酒」とは?定義やおすすめの飲み方を解説【日本酒の種類を知ろう!第2回】
純米大吟醸酒との違いは「精米歩合」
純米大吟醸酒と純米吟醸酒の違いは、精米歩合です。純米吟醸酒の精米歩合が60%以下であるのに対し、純米大吟醸酒は50%以下に定められています。
つまり、純米大吟醸酒はより小さく削った米を原料に造られているということ。なかには、精米歩合30%前後のお酒も存在します。
一般的に、精米歩合の数字が小さなお酒ほど、クリアな味わいと華やかな香りが生まれやすいといわれています。純米大吟醸酒も、香りや味の個性が魅力的なお酒です。また、製造にはより多くの米と時間を必要とするため、高価格帯の商品が主流となります。
純米大吟醸酒についてはこちらの記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください。
「純米大吟醸酒」とは?精米歩合やおすすめおつまみも【日本酒の種類を知ろう!第6回】
2.純米吟醸酒の選び方3つのポイント
自分好みの純米吟醸酒を見つけたい!そんなときは、以下の3つのポイントを意識してみてください。
- 酒米の個性で選ぶ
- 香りで選ぶ
- 甘口や辛口の好みで選ぶ
日本酒は種類が多く、選び方には迷ってしまうもの。一方で、そのバリエーションの豊富さが日本酒の魅力ともいえます。ここでは、酒米ごとに異なる味の個性もみきましょう。
2-1.酒米の個性で選ぶ
日本酒の主原料である米は、お酒の仕上がりを左右する大きな要素です。特に酒造りに適したものは酒造好適米(しゅぞうこうてきまい)と呼ばれ、種類ごとに以下のような特徴を持ちます。
山田錦
山田錦(やまだにしき)は、「酒米の王様」と呼ばれる品種です。米がやわらかく、上質な麹ができやすいといわれています。また、米を小さく削りやすいため吟醸造りに適していることが特徴です。
兵庫県の一部は「特A地区」と呼ばれ、特に質の良い山田錦を栽培する地として知られています。山田錦を使ったお酒は、ふくよかな旨味と品の良い香りが魅力です。
五百万石
五百万石(ごひゃくまんごく)は、米どころ新潟県で誕生した酒米です。米を小さく削るのは難しいものの、米を蒸したときの粘り気が少なく、麹が造りやすいといわれています。五百万石を使った日本酒は、おだやかな香りと軽やかな味わいが特徴です。
雄町
雄町(おまち)は、岡山県を中心に栽培されている品種です。栽培の難しさから数は減少し、一時は幻ともいわれていました。米質はやわらかく、雄町を使った日本酒は濃醇な香りが生まれやすいといわれています。
美山錦
美山錦(みやまにしき)は、長野県で誕生した酒米です。寒い地域でも育ちやすく、東北地方などでも栽培されています。美山錦を使った日本酒は、ライトな香りが魅力です。料理とあわせて楽しめる銘柄も数多くみられます。
2-2.香りの個性で選ぶ
吟醸香の個性は、香りの成分により主に以下の2つに分類されます。
- リンゴ・洋梨系の爽やかな吟醸香
- バナナ・メロン系の濃厚な甘さの吟醸香
これらは見た目では判断できないものの、酒販店などでお酒を選ぶときは、ぜひスタッフにキーワードとして伝えてみてください。自分好みの1本を見つける手がかりになりますよ。
リンゴ・洋梨系の爽やかな吟醸香
リンゴや洋梨を思わせる爽やかな吟醸香は「カプロン酸エチル」と呼ばれる成分で生まれます。タンパク質が少ない米や、より小さく精米した米を原料にしたお酒に生まれやすく、甘さと酸味を感じさせる香りです。
バナナ・メロン系の濃厚な甘さの吟醸香
2-3.甘口や辛口の好みで選ぶ
日本酒の味わいは「甘口」、「辛口」で表現されることがあります。これは、日本酒度と呼ばれる数値を目安にしたものです。
日本酒度は、+(プラス)と-(マイナス)で表記されます。一般的に、プラス寄りであるほど辛口、マイナス寄りであるほど甘口です。
また、日本酒の味わいは日本酒度だけでなく、酸度やアミノ酸度などで構成されています。そのため、日本酒度が必ずしもお酒の味わいを決めるわけではありません。
一方で、日本酒度+10以上の “大辛口”をうたう銘柄もあります。日本酒選びに迷ったら、ぜひ味の目安のひとつとして活用してみてください。
3.純米吟醸酒のおすすめの楽しみ方
米と米こうじのみを原料に造られる純米吟醸酒は、米の旨味を感じやすいお酒です。吟醸造りによるフルーティーな香りも楽しめます。
リンゴやバナナを思わせる吟醸香は、適度に冷やした状態で楽しむのがおすすめです。また、純米吟醸酒のなかには、ワイングラスに注いで美味しいタイプも多くみられます。グラスの深さが香りを包み込み、より魅力を堪能できるのが特徴です。
香りと旨味のバランスが良いことから、食事とあわせるお酒にも好まれています。和食はもちろん、フレンチやイタリアンとあわせるお酒にも良いでしょう。料理にあわせてぬる燗にすれば、また違った個性を楽しむことができます。
4.純米吟醸酒に合わせるおつまみ
吟醸香が魅力の純米吟醸酒には、香りがある食材を使ったおつまみがおすすめです。和食であれば、梅肉やしその葉、柚子などを使ったメニューがマッチします。大根で梅肉やしその葉を挟んだおつまみや、柚子ポン酢でいただく湯豆腐なども手軽で美味しいメニューです。
白身魚やタコ、貝類などとも好相性。ワイングラスで美味しい純米吟醸酒は、白身魚のムニエルやカルパッチョ、シーフードサラダ、牡蠣などにも良く合います。日本酒×おつまみのバリエーションをより豊かに広げてくれるお酒です。
まとめ
純米吟醸酒は、米と米こうじのみで造られたお酒です。また、吟醸造りで生まれる華やかな香りを楽しめます。
香りと旨味のバランスが魅力的な純米吟醸酒は、料理とあわせるお酒におすすめです。和食に限らず、幅広いジャンルのメニューにマッチします。
日本酒の楽しみ方を広げてくれるお酒、純米吟醸酒。酒販店や飲食店で見つけたらぜひその味わいを体感してみてくださいね。