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日本酒の古酒?初心者にもわかりやすく古酒の定義から楽しみ方をご紹介

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日本酒の古酒?初心者にもわかりやすく古酒の定義から楽しみ方をご紹介

執筆者情報

shiho
お酒とねこでできているライター。日本酒、ウイスキー、ワイン…すべてのお酒をこよなく愛す。酒好きが高じて利酒師免許を取得。 blog「わたしの酒棚」 https://sakadana.net/

監修者

日本酒ラボ編集部
日本酒ラボに携わってから日本酒のおいしさ・奥深さを知り、唎酒師の資格を取得。日本酒ラボを通して、日本酒のおいしさ・楽しさを日本酒にもあまり馴染みがない方にもお伝えしていきます。

日本酒のなかには「古酒(こしゅ)」と呼ばれる熟成酒があります。熟成とともに琥珀色に変化する古酒は、近年高い注目を集めているお酒です。

一方で、市場で販売される数が少ないことから口にしたことがないという方も多いかもしれません。

そこで今回は、「古酒」の味や香りついてくわしく解説します!古酒ならではの楽しみ方や劣化との違いなど、ぜひチェックしてみてください。

1.日本酒の古酒(長期熟成酒)とは?

日本酒における「古酒」とは、長期間熟成されたお酒を意味します。琥珀色へと姿を変えた古酒は味わい深く、ハチミツやスパイス類を思わせる複雑な香りが特徴です。

ワインやウイスキーの”ヴィンテージ(古くて上質)”という概念のように、熟成させた古酒もまた、価値あるお酒として人気の広がりをみせています。

1-1.古酒の定義

酒造会社による任意団体「長期熟成酒研究会」によると、”満3年以上蔵元で熟成させた、糖類添加酒を除く清酒”を「熟成古酒」として定義しています。ただし、実際には「古酒」と名乗るための法的な定義はありません。

そのため、酒蔵によっては熟成期間3年未満のお酒を古酒として販売することもあります。一方で、3~10年以上の熟成期間を設け「長期熟成酒」「秘蔵酒」と名付けて販売する酒蔵もあるなど、古酒の定義はさまざまです。

一般的には「古酒」=「一定期間熟成させたお酒」と考えると良いでしょう。

2.長期熟成による古酒の熟成タイプ

「長期熟成酒研究会」では、熟成期間や熟成方法、熟成前のお酒の種類によって古酒を3タイプに分類しています。

タイプ 醸造方法 熟成温度 特徴 相性の良い料理
濃熟タイプ 本醸造酒
純米酒
常温 熟成を重ねるにつれ色が濃くなり、風味も大きく変化。 風味が強いため、中華や揚げ物など、味の濃い料理とあわせるのがおすすめ。
中間タイプ 本醸造酒
純米酒
吟醸酒
大吟醸酒
初期は低温、後半は常温 淡熟タイプにくらべると風味が濃い。 苦みや酸味のある料理、チョコレートや干しブドウなど。
淡熟タイプ 吟醸酒
大吟醸酒
低温熟成 吟醸酒特有のキレの良さを残しつつ、ほのかな苦みも感じられます。クリアな味わいの銘柄も、熟成とともに重厚感が増すのが特徴。 生ハムや塩辛のような塩気の素材とのペアリングがおすすめ。

濃熟タイプ

濃熟タイプの古酒は、本醸造酒・純米酒を常温で熟成させたお酒です。熟成を重ねるにつれ色が濃くなり、風味も大きく変化します。

濃熟タイプの古酒は風味が強いため、中華や揚げ物など、味の濃い料理とあわせるのがおすすめです。料理の味に負けることなく、より食を進ませるお酒といえるでしょう。

中間タイプ

中間タイプの古酒は、本醸造酒・純米酒・吟醸酒・大吟醸酒などを熟成させたものです。初期は低温、後半は常温でと手間暇かけながら熟成させていきます。

中間タイプの古酒は、淡熟タイプにくらべると風味が濃いのが特徴。苦みや酸味のある料理、チョコレートや干しブドウなどのおつまみにも良く合います。

淡熟タイプ

淡熟タイプの古酒は、吟醸酒・大吟醸酒を低温で熟成させたお酒です。吟醸酒特有のキレの良さを残しつつ、ほのかな苦みも感じられます。クリアな味わいの銘柄も、熟成とともに重厚感が増すのが特徴です。

淡熟タイプの古酒は、生ハムや塩辛のような塩気の素材とのペアリングがおすすめです。味の幅が広く、グラタンのような洋食と合わせても美味しく味わえます。

3.古酒の楽しみ方

古酒の魅力は、時間の経過がもたらすお酒の変化だといえます。古酒を味わうときは、その変化を次のように楽しんでみてください。

  • 色合いを楽しむ
  • 香りを楽しむ
  • なめらかな口当たりを楽しむ
  • 濃密な味わいを楽しむ

また、古酒の魅力をぞんぶんに引き出すには、常温から少し冷たいくらいの温度、ぬる燗などで味わうのがおすすめです。

3-1.色合いを楽しむ

熟成させた日本酒は、黄金色から琥珀色、ルビーのような紅色へと色の変化を遂げていきます。初めて古酒を目にしたときは「これがあの日本酒?」と驚くこともあるかもしれません。

この、美しい色合いこそが古酒の魅力のひとつ。古酒を楽しむときはぜひ透明のグラスに移し、古酒が育った時間の流れを感じてみてください。

3-2.香りを楽しむ

古酒はハチミツのように甘く、それでいてどこか刺激的な、複雑な香りを持つお酒です。熟成前のフルーティーな香りもギュッと濃縮され、奥深い香りへと生まれ変わります。

古酒を注いだグラスに鼻を近づければ、ワインやウイスキーの熟成とはひと味違う、独特の熟成香を堪能できるでしょう。

3-3.なめらかな口当たりを楽しむ

長期間熟成させた古酒は、新酒とはひと味違うなめらかな口当たりが特徴です。グイグイ飲むお酒というよりは、少量ずつゆったりと楽しむお酒といえます。

少量口に含めば、独特の香りや味わいがゆっくりと舌の上でほどけていくよう。ぜひ熟成前とは違う、トロリとしたテクチャーを楽しんでみてください。

3-4.濃密な味わいを楽しむ

濃縮された深い甘味や苦味、そして酸味。古酒はさまざまな表情を持つお酒です。濃密な旨味があり、チョコレートのようなスイーツにも良く合います。

意外なところでは、あんこを使った和菓子とのペアリングもおすすめ。バニラアイスにトロリとかければ、古酒の魅力あふれる大人のデザートができあがります。

熟成古酒とアイス

4.おうちに置いておいたお酒、熟成?それとも劣化?

古酒には明確な定義がなく、一定期間熟成させたお酒を表すと紹介しました。

「ん?ということは…おうちに置いたままの日本酒。これも古酒?」と疑問に感じた方もいらっしゃるかもしれませんね。

熟成酒の人気の高まりを受け、近年は自宅で古酒を育てる方も増えています。美味しい古酒を育てるためには、紫外線を避け、涼しい環境で保管することが大切です。

紫外線に長期間あたったり、温かい環境で保管されたりした日本酒は、熟成ではなく「劣化」が進んでしまいます。

劣化したお酒はうっすら黄色く色づき、見た目は古酒と変わらないように感じられます。しかし、老香(ひねか)と呼ばれる不快な香りや強い苦みが生まれるど「美味しいお酒」とはいえない状態になってしまうのです。

近年は、各酒蔵から熟成用の日本酒も販売されています。家庭でのくわしい熟成方法は、こちらもぜひ参考にしてみてくださいね。

日本酒の熟成と劣化の違いは?熟成をするうえでのポイントを解説!

 

まとめ

時間の流れが作り出すお酒「古酒」。美しい色合いに香り、味わいと、古酒は新酒にはない魅力にあふれています。

自宅で古酒を育てるときは、紫外線を避け涼しい場所で保管するのがおすすめです。酒販店や飲食店などで「古酒」の文字を見つけたら、ぜひ一度その魅力を堪能してみてくださいね。