
富士山や南アルプスなど、山々が連なる山梨県では酒蔵こだわりの美味しい日本酒を購入できます。
キリッとした辛口タイプから甘口のスパークリング日本酒など、味のバリエーションは実に豊富。それぞれに地元の名水が用いられているのが大きな特徴です。
今回は、山梨県の日本酒の特徴をご紹介します。11の蔵が造る日本酒銘柄やおすすめポイントも解説するので、ぜひ参考にしてくださいね。
目次
1.キーワードは「水」山梨の日本酒の特徴
富士山をはじめ、八ヶ岳や南アルプスなど高い山々が連なる山梨県。豊かな自然を有する山梨県は美味しい水の宝庫でもあります。ミネラルウォーターの生産量は日本一。県内の多くの河川や湧水は、国の名水百選に指定されています。
原料はもちろん、製造に多くの水を必要とする日本酒にとって、良質は水は欠かせない存在です。山梨県では、11の蔵が清らかな水を原料に個性豊かな日本酒を生み出しています。
1-1.6つの水系が生み出す多様な味わい
山梨県には、富士山や南アルプスなどの山々がもたらす清らかな6つの水系が存在します。
- 八ヶ岳山麓水系
- 南アルプス山麓水系
- 富士山麓水系
- 富士山麓伏流水
- 秩父山麓水系
- 瑞牆山(みずがきやま)・金法山麓水系
山梨県の山々に降り注いだ雨や雪は、長い年月をかけ地中を巡り、ゆっくりと磨かれながらミネラル豊富な名水へと生まれ変わります。
例えば、八ヶ岳山麓水系の伏流水は、ミネラル成分がバランス良く含まれているのが特徴です。20年以上の時を経てゆっくり自然濾過される南アルプス山麓の伏流水は、味わいがスッキリとしています。
各蔵の伝統の技と水の掛け合わせによって、県内ではさまざまな日本酒が生まれています。甘口に辛口、フルーティーなタイプなど、多様な味わいを楽しむことができるでしょう。
1-2.美味しい日本酒選びのヒント「GI山梨」
山梨県の日本酒は、国税庁からお酒の地理的表示(GI)に認定されています。地理的表示(GI)とは、地域の共有財産である産地名を保護する取り組みのことです。高品質なお酒を生む産地であることを示し、認定には一定の生産基準が求められます。
山梨県で地理的表示(GI)を名乗れるのは、南アルプス山麓や八ヶ岳山麓など、6つの水系で採取した水を原料とする日本酒です。GIで水系を限定した例は、山梨県が国内初とされています。
山梨県酒造協同組合では、GI山梨認定酒の飲み比べセットをリリース。また、GI山梨認定酒には、独自のロゴマークが貼付されています。山梨ならではの美味しい日本酒を飲みたいときは、GIマークをチェックしてみるのもおすすめです。

(出典元:山梨県酒造協同組合「GI認定酒飲み比べセットのご紹介」)
1-3.こだわりの山梨スパークリング日本酒
山梨県の酒蔵では、こだわりのスパークリング日本酒が製造されています。山梨県産の米を100%使用し、山梨県内で採水した水で仕込まれるお酒です。
シュワシュワッとした泡感は、シャンパンと同じ瓶内二次発酵製法で生まれるもの。ガス圧など厳しい基準をクリアしたものだけが「山梨県原産地呼称日本酒認定」のスパークリング日本酒として販売されています。
ボトルデザインも華やかなスパークリング酒は、ギフトやパーティーの差し入れなどにおすすめです。こちらも山梨県酒造協同組合のホームページから購入できます。

(出典元:山梨の酒「山の酒 スパークリング日本酒3本セット」)
2.山梨を代表する酒造好適米(酒米)
山梨県では、酒米の王様といわれる山田錦(やまだにしき)をはじめ、地域の特色を生かした酒造好適米が栽培されています。
酒造好適米は酒米(さかまい)とも呼ばれ、酒造りに適した特性を持つ米のことです。酒米によりお酒の味わいも変化するため、日本酒選びに迷ったらぜひ酒米の名前も参考にしてみてください。
2-1.夢山水(ゆめさんすい)
夢山水は、愛知で開発された酒米です。山梨では、2010年に県の奨励品種(特定品種)に指定されました。香り高い吟醸酒(ぎんじょうしゅ)に用いられることが多く、お酒はライトな味わいに仕上がるといわれています。
大月市の笹一酒造は、夢山水と山田錦を中心に酒造りをおこなう酒蔵です。地元産夢山水100%の純米吟醸は、香りとコクのバランスがほどよく食中酒として親しまれています。
2-2.ひとごこち
長野生まれの酒米ひとごこちは、寒さに強く倒れにくいことから、八ヶ岳など標高の高い場所での栽培に適しているといわれています。
北杜市の山梨銘醸は、地元の契約農家とともにひとごこちの栽培を手がける酒蔵です。お酒はふくよかな味わいに仕上がるといわれ、ひとごこちを使った代表銘柄「風凛美山」は海外のコンペティションでも数々の受賞歴を誇ります。
2-3.玉栄(たまさかえ)
玉栄は、主に山梨県南部の平坦地で栽培される酒米です。富士川町の萬屋醸造店(よろずやじょうぞうてん)では、地元で栽培された玉栄を使用した純米吟醸をリリースしています。
3.山梨の日本酒11銘柄!おすすめポイント
山梨では、11の酒蔵が名水を用いた日本酒を製造しています。ここからは、各蔵が造る日本酒の特徴や、おすすめポイントをご紹介。山梨は直営店を構える酒蔵も多く酒蔵巡りもおすすめです。山梨のお酒を飲みたい、山梨へ足を運びたいというときは、ぜひ参考にしてください。
3-1.七賢(しちけん)【山梨銘醸】
創業は1750年(寛延3年)と実に250年以上の歴史を持つ酒蔵です。仕込み水は白州の清らかな天然水。2014年(平成26年)に一新されたブランド「七賢」は、香り高くスッキリとした味わいが多くの日本酒ファンを魅了しています。
蔵は試飲可能なショップのほか、郷土資料を展示する蔵やレストランも併設。スタッフ同行の見学コースも設けられるなど、山梨観光にもおすすめです。

(出典元:山梨銘醸株式会社)
3-2.太冠(たいかん)【太冠酒造】
太冠酒造は、南アルプス市に建つ酒蔵です。より酒造りに適した環境を求め、2007年(平成19年)に甲府市内から現在の場所へと移転しました。
仕込み水は南アルプス山系の伏流水。スッキリとした辛口タイプが多く、食事にあわせるお酒におすすめです。ワイン酵母仕込みのスパークリング日本酒はバナナのような甘い香りが魅力的。ほんのり甘く、軽やかな味わいを楽しめます。

(出典元:太冠愛好倶楽部「乱波」)
3-3.榊正宗(さかきまさむね)【横内酒造店】
南アルプスの大自然に囲まれる土地で、地元に愛され続けてきた銘柄です。蔵が建つのは、かつて榊村という地名があった南アルプス市上宮地。「榊」の名は、神様の世界と人の世をつなぐ境の木を意味しています。
米の旨味を残しつつ、味わいは端麗でスッキリ。直売所では、試飲をしながらお気に入りの銘柄を選ぶことができます。

(出典元:(株)横内酒造店「榊正宗商品案内」)
3-4.春鶯囀(しゅんのうてん)【萬屋醸造店】
原料米の約8割が、地元富士川町を中心とした地元産の酒米。美味しい日本酒を造るため、酒米栽培にも取り組む酒蔵です。
春鶯囀という名は、明治から昭和にかけて活躍した歌人・与謝野晶子が蔵を訪れたときに詠んだ歌に由来しています。温めて美味しい純米酒から香り高い大吟醸酒まで、受賞歴を誇る銘柄は多数。蔵に併設するギャラリーでは、お酒の試飲や購入を楽しめます。

(出典元:株式会社萬屋醸造店)
3-5.甲斐の開運(かいのかいうん)【井出醸造店】
酒造りに用いるのは、霊峰・富士の伏流水。井出醸造店は、富士五湖地域で唯一の酒蔵です。冬の厳しい寒さのなかじっくりと低温発酵させた大吟醸は、全国新酒鑑評会をはじめとする数々の受賞歴を誇ります。
直営店では日本酒のほか、酒器や食品などを購入できます。なかでも100%オリジナルの日本酒アイスは、直営店でしか味わえない一品。蔵見学時にはオリジナルラベルも作成できるなど、さまざまな楽しみ方を提供してくれるスポットです。

(出典元:甲斐の開運)
3-6.旦(だん)【笹一酒造】
仕込み水は、富士山を起点とする天然水。不純物が少ない清涼な水は、かつて江戸城でお茶会が開かれる際、飛脚が江戸まで運んだといわれています。
「笹一」は、山形県産米を100%使用した日本酒です。また、同蔵の「旦(だん)」は究極の食中酒ともいわれ、国内外で高い評価を得ています。2020年(令和2年)には、直営店「酒遊館」をオープン。開放的で空間には試飲カウンターやカフェが設けられ、例年多くの観光客が訪れています。

(出典元:佐野屋)
3-7.櫂(かい)【養老酒造】
やわらかな秩父山系の伏流水を用いながら、伝統製法を守り続ける酒蔵です。米は和釜で蒸し、醪(もろみ)は大きな木枠で2日間じっくりと時間をかけて搾られます。
手間ひまかかるぶん少量生産の商品は、加熱処理や加水をしない生原酒がメインです。「櫂(かい)」は、搾ったままの力強い味わいが魅力的。敷地内に設けられた古民家カフェは、観光客のみならず地域の人々の癒しスポットとして知られています。
(出典元:山梨県酒造協同組合「養老酒造株式会社」)
3-8.福徳長(ふくとくちょう)【福徳長酒類株式会社】
す~っと飲めておいしいお酒、略して「す~飲め」は、福徳長酒類の韮崎工場で製造される日本酒です。原料には、丁寧に磨き上げた国産米を100%使用。天然水を使い、すっきりとした味わいのを生み出しています。
品質とコストパフォーマンスに優れた「福德長」は、日々の疲れを癒す晩酌におすすめです。やさしい味わいの純米酒のほか、華やかな香りの純米吟醸酒もリリースされています。
(出典元:オノエングループ福徳長「米だけのす~っと飲めてやさしいお酒 純米酒」)
3-9.甲斐男山(かいおとこやま)【八巻酒造店】
創業以来約150年、地域に根差す酒として愛され続ける銘柄です。仕込みはもちろん、洗米や瓶の洗浄など、酒造りのあらゆる場面で八ヶ岳の伏流水が用いられます。
純米酒はしっかりとしたコクがありつつ、飲み飽きしない辛口タイプ。温めるとより豊かな旨味が広がり、温度帯による変化を楽しめます。趣ある木造建築の店内では、試飲をしながらお気に入りのお酒を購入できますよ。
(出典元:八巻酒造店「商品紹介」)
3-10.青煌(せいこう)【武の井酒造】
「武の井」の大きな特徴は、花酵母を用いた日本酒であること。自然の花々から採取した酵母を使い、個性豊かな香りと味わいを生み出しています。
「青煌(せいこう)」は、つるばらの酵母で造られたお酒。スッキリとしたさわやかな味わいを楽しめます。さらに、椿や桜、ヒマワリ、コスモスなど、季節の花酵母を用いた「武の井 四季シリーズ」などもリリース。蔵では日本酒のほか、本格焼酎の製造も手がけています。
(出典元:武の井酒造公式オンラインショップ【NIHON屋】)
3-11.谷櫻(たにざくら)【谷櫻酒造】
地元に根付く酒を目指し、自然にやさしい酒造りを続ける酒蔵です。手間ひまかかる伝統製法「生酛造り(きもとづくり)」で味わい深い酒を生み出しています。
大吟醸は、槽(ふね)と呼ばれる木枠でゆっくりと時間をかけて搾られます。和食はもちろん、洋食や揚げ物などにもマッチするキレのある味わいが特徴です。敷地内には全商品を購入できる直営店も設けられています。

(出典元:谷櫻オンラインショップ)
まとめ
霊峰・富士をはじめ、連なる山々が良質な水を生み出す山梨県。県内の蔵では、それぞれの水系の水を用いたこだわりの酒造りがおこなわれています。
風土が色濃く現れる地酒の数々は、お土産やギフトにおすすめです。実際に蔵に足を運べば、お酒もより美味しく感じられるのではないでしょうか。オンライン販売なども利用しつつ、ぜひ気軽に山梨の日本酒を楽しんでみてください。