口に入れるものが安全かどうかをかんたんに知れる賞味期限。皆さんもよく見て食べるかどうかの判断をしていますよね。そんな賞味期限ですが、日本酒をはじめワインや焼酎などのお酒には表示が無いのをご存知でしょうか?
この記事では、「日本酒に賞味期限の表記がない理由」から、「期限の目安」について。そして、日本酒の寿命を延ばす「保存方法」についてご紹介します!ぜひ、日本酒を保存するときの参考にしてくださいね。
1.日本酒に賞味期限は表示されてない!ラベルに書いてある日付は何?
食品や飲料のボトル・パッケージを確認すると、必ずと言っていいほど記載がある賞味期限ですが、日本酒には賞味期限の表示がありません。日本酒に賞味期限の記載がないと、美味しく呑める期間や商品の品質の安全性が心配に感じますが、表記がないのには、次のような理由があるからなんです。
1-1. 日本酒に賞味期限の表示がない理由
日本酒に賞味期限の表示がないのは、国税庁から消費期限・賞味期限の表記は必要ないと発表されていることが主な要因です。
ー(問 25)酒類において、表示の省略ができる事項はありますか。
酒類については、「保存の方法」、「消費期限又は賞味期限」、「栄養成分(たんぱく質、脂質、炭水化物及びナトリウム)の量及び熱量」※の表示を省略することができます。ただし、これらの事項を表示する場合には、食品表示基準に沿った表示を行う必要があります。(食品表示基準第3条第3項)
(出典元:食品表示法における酒類の表示のQ&A – 国税庁)
日本酒のボトルをよくよく観察してみると、一見賞味期限と同じような日付の表示・記載を確認することができますが、これは「製造年月」。日本酒のこの日付は、賞味期限ではなく「製造年月」のことで、こちらは必ず記載することが義務付けられています。
また、食品表示法では、日本酒をはじめ、ワインやカクテルなどのお酒類全般にも、賞味期限の表示が免除・無記載であることが一般的になっているんですよ。
1-2. 間違いやすい製造年月。絞った日ではなく瓶詰めした日 or 出荷日
では、日本酒に欠かさずに記載されている製造年月には、どんな意味があるのでしょうか?
日本酒の製造年月というと、お酒をしぼった日といったイメージを持つ人が多いかもしれませんが、日本酒の製造年月は、お酒をしぼった日ではなく、その日本酒が製造された年・月の表示のことをいいます。
日本酒が作られるまでには、【「原料をしぼる」→「原料をろ過する」→「火入れをする」→「貯蔵をする」→「熟成をする」】という手順が一般的で、これらの過程を経て瓶詰めされていきます。
そして日本酒の製造年月とは、この過程から容器に詰められた日や、出荷時期につけられることが多いそうです。
製造年月を付けるタイミング
日本酒の製造年月をつけるタイミングは、容器に詰められた日や、出荷時期であることが一般的だといわれています。ただ、小さめの蔵元の場合は、一度にまとめてビン詰めを行うため、ラベルの日付と出荷時期が一致しないことも少なくはありません。
さらに一度ビンに詰められた日本酒で、冷蔵貯蔵されていたものに関しては、蔵元から出荷するときの出荷年月を記載しても問題がないとされているので、ビン詰めをした年月と出荷年月がずれてしまうこともありうるのです。
製造年月が背面に書いてあるケース |
製造年月が表のラベルに書いてあるケース |
ここがPOINT!
- 日本酒の賞味期限は、国税庁から表記は必要ないと発表されている
- ラベルにある日付は「製造年月」
2.日本酒の開栓前と開栓後の飲み頃・期限の目安
日本酒の製造年月ひとつでも、とても奥が深くて複雑であることがわかりましたね。賞味期限の表示がない日本酒は、長い年月が経っても同じような美味しさを維持することができるのでしょうか?
製造年月からかなりの期間が経過している日本酒であっても、開栓前の状態であれば健康上は問題なく呑めるといわれています。ただ、日本酒の味わいには多少なりとも変化が出てくることも。ここからは、日本酒の開栓前と開栓した後の状態・美味しい期間についてお伝えしていきます。
2-1.開栓前の日本酒の賞味期限
日本酒の開栓前が美味しい期間は、一般的には製造年月からおよそ1年であれば問題なく美味しく呑めるといわれていますが、製造技術の進歩や保管についてのノウハウによって、今ではきちんと保管してあげれば、数年たった日本酒でも美味しさをキープできると言われています!
2-2. 開栓後の日本酒の賞味期限
日本酒の開栓後は、一般的にはできるだけ早く飲み切ることがおすすめされています。日本酒は開栓したあとは味の変化が大きく、開封後は3日~5日で酒質が変化してきます。
ただ、酒質は変わってきますが、これが必ず悪いとも言えないのが日本酒の奥深いところです。硬かったり少し渋い印象だった日本酒が、時間の経過で柔らかくなったり、丸くなってくれることもしばしば。適切な環境で保存すれば数ヶ月と酒質の変化を香りと舌で楽しむことが可能なので、ぜひその変化も楽しんでいただきたいです。
とはいえ、日本酒セラーなどのしっかりとした環境が無いと、数ヶ月ほどで火落ち菌が発生して飲めなくなってしまうこともあるので、なるべく早く飲み切るのが良いでしょう。
「生酒」や「生貯蔵酒」「生詰め酒」は開栓後は特に注意です。
生酒はとてもフレッシュでおいしいのが特徴ですが、「火入れ」という加熱処理をしていません。そのため、火入れを行っている日本酒に比べ菌が繁殖しやすく、味の変化がはやいため開栓から1〜2週間以内には飲みきりましょう。
2-3. 結局、日本酒の飲み頃って?
日本酒の美味しい時期についてですが、日本酒メディア「日本酒ラボ」の編集をしている私が思うに日本酒の一番美味しいタイミングは、お酒と人の数だけ存在します!
答えになっていなくてすみません。日本酒は、もちろん開封後すぐが美味しいのは間違いないです。ですが、少し開栓後に時間をおいて角の取れた味わいに変わり、より飲みやすくなり美味しく感じる日本酒もありますし、それは飲んだ人の感覚にもよってきます。
なので、「このタイミングじゃないとダメ」などは決めつけずに日本酒を楽しんでみてくださいね。
ここがPOINT!
- 開栓前の日本酒:冷暗所なら1年は安心(生酒以外)。日本酒セラーなら安定して数年飲めます!
- 開栓後の日本酒:3日~5日で酒質が変化。早いと数ヶ月で火落ち菌が発生し飲めなくなる。
- 開栓後でも、冷暗所で保管すれば酒質の変化を楽しみながら数ヶ月楽しめます。
3. 日本酒の3つの弱点 + 正しい保存方法
ここからは、日本酒を保存するときの方法別に、味にどんな影響があるのかを参考にしてみましょう。
1-1.日本酒は光に弱い
日本酒の大敵は光。詳しくいうと紫外線に弱いです。紫外線が出ているのは日光だけではなく、蛍光灯などからも出ているので、室内でも安心してはいけません。
たった数分でも日向香(ひなたか)という、匂いの原因になってしまうため要注意。どうしても光を遮ることができないときは、新聞紙で日本酒の瓶を巻くといいでしょう。未開封でも開封後でもとにかく日本酒は光から守ることが大切なのです。
1-2.温度の変化で劣化する
温度も紫外線と同じくらい日本酒の味などに影響します。急激な温度変化にも弱い日本酒は、一定の温度に保たれた場所で保管するのが基本です。高温になると、老香(ひねか)という劣化した匂いがしてきます。温度と同じく湿度も保たれた場所で保管しましょう。
1-3.空気に触れると劣化する
日本酒を開けたあとに劣化する理由は酸化するからです。酸化は空気に触れるたびに起こります。日本酒が瓶に詰められるときは真空状態ですが、開けると気をつけても空気に触れないというのは無理です。空気に触れることで、香りや旨味が生まれる種類の日本酒もありますが、開けてから1週間以上経つと酸化してしまうので開封後はなるべく早く飲みきりましょう。
1-4.正しい保管方法
一番の理想は、日本酒セラーなどの専用の設備を用意したり、冷暗所となる冷蔵庫に入れること。それが難しい場合でも基本的に冷暗所で保管するのがポイント。冷暗所とは、一定に低い温度で保たれた、日の当たらない暗い場所のこと。
ご家庭だと、床下や流しの下などです。ちょうどいい冷暗所がないときには、発泡スチロールの容器を使う人もいます。
例外として火入れ処理が行われていない「生酒」や「生詰め酒」「生貯蔵酒」は冷蔵での保管が必須となります。
保存方法について、詳しくは下の記事で解説していますので、ぜひ見てくださいね!
ここがPOINT!
- 日本酒は「光(紫外線)」「温度の変化」「空気」が弱点
- 日本酒は「1:日本酒セラーや冷蔵庫」「2:冷暗所」で保管しましょう
4. 日本酒の賞味期限について、よくある質問
4-1. 一年以上経過しても美味しい?
一年以上経過した日本酒は、保管環境にもよりますが、冷暗所で未開封のままであれば、そこまで酒質も変わらず美味しく呑むことができるといわれています。
開封済みの場合は、冷暗所といえど5度程度の環境であれば、良し悪しはわかりませんが酒質はかなり変わっていると思われます。鼻にツンとくるような異常な香りなどがなければ問題なく飲めますが、今から長期で熟成も考えられているならぜひ日本酒セラーのご用意をオススメします。
4-2. 10年以上前の日本酒でも健康に影響はない?
10年以上も経過していても、未開封のままきちんと保管していた日本酒であれば、健康には悪い影響がないといわれています。熟成された古酒は、黄色味がまし深く豊かな香りを感じる傾向にあり、熟成酒として高値で取引されることも多いように、希少なお酒として扱われますので、可能であればぜひ飲んでみてください。
ですが、時間が経過してもしアルコール度数が極端に下がっている場合、雑菌が繁殖して食中毒などにかかるリスクは上がってしまうので、1口含んで判断するか、心配があるのであれば捨ててしまった方がよいでしょう。
4-3.劣化して飲めない日本酒の使いみちは?
劣化して飲んでもおいしく感じないというときもあるかと思います。そのようなときはどうすればいいのでしょうか。
捨ててしまうのはもったいないです。おすすめの使いみちは「料理酒として使う」のと「お風呂に入れる」のがおすすめです。
料理酒として使うことで、炒め物や煮物がさらに美味しくなります。日本酒に含まれるアミノ酸が甘みや苦味、旨味をより複雑にしてくれるので、味の深みが増します。味噌や醤油との相性も良く、肉にも魚にもぴったりですね。
日本酒をお風呂に入れる場合は、コップ1〜4杯分いれるだけ。日本酒に含まれるアミノ酸などで肌がすべすべになります。
気をつけるべき点は肌が弱い方などは刺激が強くなってしまうことがあるので少量にしましょう。お子様や妊婦さんなどが日本酒をいれたお風呂に入るのは、やはりアルコールなので非推奨です。
6.まとめ
温度や保存の環境によって、味わい・風味に大きな変化が出る日本酒。いつも新鮮で味わい深い日本酒を美味しく呑むために、製造年月や保管の方法、環境の在り方などをもう一度見直してみてくださいね。
ここがPOINT!
- 日本酒の賞味期限は、国税庁から表記は必要ないと発表されている
- ラベルにある日付は「製造年月」
- 開栓前の日本酒:冷暗所なら1年は安心(生酒以外)。日本酒セラーなら安定して数年飲めます!
- 開栓後の日本酒:3日~5日で酒質が変化。早いと数ヶ月で火落ち菌が発生し飲めなくなる。
- 開栓後でも、冷暗所で保管すれば酒質の変化を楽しみながら数ヶ月楽しめます。
- 日本酒は「光(紫外線)」「温度の変化」「空気」が弱点
- 日本酒は「1:日本酒セラーや冷蔵庫」「2:冷暗所」で保管しましょう
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飲めなくなった日本酒の見極め方や「老ねと熟成」の違いについても触れてます!
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