「日本酒って常温保存できるのか知りたい」
「常温保存できるならどういうことに気をつければいいのか知りたい」
この記事はそんな方へ向けて書いています。
日本酒は、常温で保存しても腐ることのないお酒です。ただし、お酒の種類や保存環境によっては、味や香りが変化してしまいます。おすすめは冷蔵庫での保存ですが、日本酒瓶は大きく、庫内にスペースがない場合もあるかもしれません。
今回は、日本酒の常温保存について解説します。日本酒の美味しさをキープするための保存のポイント、熟成に関する情報もぜひ参考にしてくださいね。
目次
1.日本酒は常温で保存しても大丈夫?
高いアルコールを含む日本酒は、常温保存でも腐敗の心配がなく、長期保存に適したお酒です。
そのため、日本酒には賞味期限の表示義務がありません。ラベルに「〇年〇月〇日」というような数字を見ることがあるかもしれませんが、これは賞味期限ではなくお酒が瓶に詰められた日時です。
一方で、日本酒は温度や光の影響を受けやすいお酒でもあります。高温の環境下では、腐ることはなくても品質が変化してしまう可能性があるため注意が必要です。
そもそも、“常温”といっても季節によって温度はさまざま。厚生労働省の「常温保存可能品に関する運用上の注意」では、外気温を超えない温度を“常温”と定義しています。四季の変化を考えると、一般的に15℃~30℃が常温の目安です。
つまり、常温で保存できるとはいえ、夏場の暑い部屋に日本酒を置いていると品質が変化してしまう可能性があるということ。日本酒業界でもさまざまな意見があるものの、可能であれば15℃以下の環境で保存したほうが安心といえるでしょう。
また、次のように「火入れ(ひいれ)」と呼ばれる加熱殺菌処理の有無によっても、常温保存できるケースは異なってきます。
1-1.火入れした日本酒は常温保存が可能なお酒
日本酒の製造工程では、火入れと呼ばれる加熱殺菌処理を2度おこないます。お酒の味を変化させる糖化酵素や、劣化につながる火落ち菌(ひおちきん)などの微生物を除去するためです。
火入れをしたお酒は品質が変化しにくく、常温保存が可能となっています。基本的に、ラベルに「火入れ」と書かれているものや、「生」と表記がないものは火入れしたお酒です。酒販店では冷蔵ケースではなく、常温で販売されていることもあるでしょう。
ただし、火入れしたお酒も、光のあたる場所や温度が高い場所で保存すると品質が変化してしまいます。具体的な常温保存のポイントは、後の章で詳しく解説していきますね。
1-2.生酒は冷蔵保存がおすすめ
「生酒(なまざけ・きざけ)」とは、1度も火入れをしていない日本酒のことです。生酒には、糖化酵素や火落ち菌などが生きた状態で残っています。そのため、生酒は冷蔵保存が基本です。常温で保存すると、生酒ならではの味や香りが損なわれてしまいます。
また、1度だけ火入れをした日本酒は、「生詰め酒」や「生貯蔵酒」などと呼ばれます。これらのお酒も冷蔵保存がおすすめです。香りや味の変化が抑えられ、酒蔵が目指す味わいそのままを楽しむことができます。
ここがPOINT!
- 一般的に常温は15℃~30℃
- 常温保存に適した火入れのお酒も、15℃以上の環境では味や香りが変化する可能性がある
- 火入れをしていない生酒は冷蔵保存が基本
2.日本酒は常温保存で熟成することも
日本酒は、常温で長期間保存すると味や香りが変化していきます。茶色く色づき、複雑な香りと味わいを持つお酒へと変化したものが「古酒(こしゅ)」と呼ばれる日本酒です。
近年は、日本酒を熟成させた熟成古酒(じゅくせいこしゅ)が注目を集めています。ただし、前述したように常温と呼ばれる温度帯は幅広いため注意が必要です。
保存に適切ではない環境下では、美味しく変化する“熟成”ではなく、不快な味や香りが生じる“劣化”につながってしまいます。熟成古酒を推進する「長期熟成酒研究会」では、自宅での熟成に以下の温度を推奨しています。
純米酒・本醸造酒 | 吟醸酒 |
常温 | 初めの1年間は4℃(冷蔵保管) その後は15℃~18℃ |
参照:長期熟成酒研究会
純米酒や本醸造酒、吟醸酒などの種類は、お酒のラベルで確認できます。また、熟成には常温保存に適した火入れのお酒がおすすめです。純米酒や本醸造は7年から8年後、吟醸酒は12年から13年後が飲み頃だといわれています。
3.日本酒の常温保存、美味しく飲める期間の目安は?
火入れしたお酒は、常温保存に適しているとお伝えしました。ただし、味や香りは時間と共に徐々に変化していきます。「美味しく飲める期間」=「蔵が目指す味わいを楽しめる期間」とするのであれば、なるべく早く飲むのがおすすめです。
とはいえ、「なるべく早くってどのくらいなの?」と具体的な期間が気になるものですよね。この判断は、お酒によって実にさまざま。たとえ火入れをしていても「半年以内には飲んでほしい」というお酒もあれば、「もっと期間を置いても味や香りは変わりませんよ」というお酒もあります。
そのため、具体的な期間を知りたいときは、酒蔵や酒販店などに相談してみるのがおすすめです。次で紹介するように、適切な環境で常温保存できているかによっても美味しく飲める期間は異なります。
4.日本酒を常温保存するときのポイント4つ
日本酒を常温保存するには、以下の4つのポイントをおさえておきましょう。美味しい状態をより長くキープできます。
- 光のあたらない場所に保存する
- 低温で温度変化の少ない場所を選ぶ
- 匂いが強いものを近くに置かない
- 横置きではなく、縦置き
熟成古酒を作りたいときも、これらのポイントを意識してみてください。日本酒を劣化させることなく、古酒として育てることができます。
4-1.光のあたらない場所に保存する
日本酒は、光の影響を受けやすいお酒です。保存するときは、光のあたらない場所を選びましょう。紫外線に長時間あたると、日光香(にっこうしゅう)と呼ばれる木が焦げたような香りが生じる可能性があります。
家の中であれば、押し入れや扉付の戸棚の中などの冷暗所に保存するのがおすすめです。スペースがない場合は、段ボールに入れて涼しい場所に置くという方法もあります。
ちなみに、日本酒の瓶が茶色や緑に色付けされているのも光の影響を抑えるためです。箱入りの商品であればそのまま保存できますが、箱がない場合は新聞紙で包んでおくと安心ですよ。
4-2.低温で温度変化の少ない場所を選ぶ
光と同様に、日本酒に変化をもたらすのが温度です。日本酒は高温の環境で保管すると、老香(ひねか)と呼ばれる不快な香りが生じます。フルーティーな心地よい香りも、徐々に減少してしまうでしょう。
日本酒を保存するのであれば、なるべく低温の温度変化の少ない場所を選んでください。前述した押し入れや戸棚の中も、夏場に暑くならないか確認しておくのがおすすめです。
4-3.匂いが強いものを近くに置かない
日本酒を保存するときは近くに匂いの強いものを置かないようにしましょう。近くに匂いが強いものがあると、未開封であってもお酒に匂いが移る可能性があります。
特に、石鹸や漬物樽のような匂いの強いものは注意が必要です。棚に保存するときは、一緒にしまうものにも気を配ってみてくださいね。
4-4.横置きではなく、縦置き
日本酒は、横置きではなく縦置き保管が基本です。横置きにするとお酒と空気が触れる面積が大きくなり、酸化が進んでしまいます。
酸化とは、お酒の成分が酸素と結合し、味や香りが変化することです。特に、飲みかけのお酒は横にすると空気と触れる面積が多くなるため、なるべく縦置きにするよう心がけましょう。
日本酒の繊細な味わいを変化をさせないためには、「温度(−5℃)・縦置き・紫外線対策」が整った最適な保管環境が必要です。 蔵元も実践している環境を”美味しいお酒体験を届ける日本酒セラー SAKE CABINET”で実現しました。
5.日本酒の常温に関するQ&A
5-1.日本酒を持ち運ぶ際って常温になるけど大丈夫ですか?
日本酒の持ち運びはずっと常温の環境に置いておくというわけではないので特に問題ありません。ただ、キンキンに冷やした日本酒を持ち運ぶ際は温度変化をなるべく抑えるために保冷バッグのようなものを用紙するのがおすすめです。詳しくは下記の記事を参考にしてみてください。
日本酒は外に持ち運びできる?日本酒を持ち運ぶときは保冷バッグがおすすめ!
5-2.例えば3年経った日本酒は飲めますか?
3年の保管状況によって大きく左右されます。未開封で冷蔵保存をしていれば問題なく飲むことができますが、開封済みで暑い環境に置いていれば劣化している可能性があります。
わかりやすいのは日本酒の香りを確認してみてください。もし普通の日本酒とは違うツンと鼻をつくようなニオイがするときは、老香(ひねか)という劣化臭がする場合は味わいも落ちているため、あまり飲むのはおすすめできません。
まとめ
高いアルコール分を含む日本酒は、長期保存に適したお酒です。適切な環境で保存すれば、熟成による味の変化も期待できます。
ただし、火入れをしていない生酒は、冷蔵保存が基本です。早めに飲み切ったほうが、生酒ならではのフレッシュな旨味を楽しめます。日本酒を最高の状態で飲むためにも、適切な管理と飲むタイミングをぜひ意識してみてくださいね。