酒粕は、さまざまな効能が期待できる発酵食品です。血圧を下げる働きや美容効果、便秘予防効果があるといわれています。
今回は、酒粕の効能についてくわしくご紹介。食べるときの注意点も解説します。酒粕のおいしい食べ方もぜひ参考にしてください。
目次
1.酒粕とは?
酒粕は、日本酒造りの工程で生まれる副産物です。蒸した米と米麹、水を発酵させた「醪(もろみ)」と呼ばれる白い液体を搾ると、液体の日本酒と、個体の酒粕とにわかれます。
米由来の栄養をたっぷりと含む酒粕は、料理にも用いられる発酵食品です。主に甘酒や粕汁、粕漬けなどに使用されます。
2.酒粕によって得られる効能
酒粕は、たんぱく質やビタミン、食物繊維などを含む食品です。米由来の成分だけでなく、麹菌や酵母が生成するさまざまな栄養素が含まれ、健康面における効能や美容効果が期待できます。
2-1.ペプチドによる冷え性改善、血圧低下作用
ペプチドは牛乳や魚などに含まれ、効能はそれぞれに異なります。酒粕ペプチドの特徴は、冷え性改善や血圧低下作用があることです。
酒粕ペプチドは、医薬品のように急速に血圧を低下させるのではなく、ゆるやかに血圧の上昇を抑えるといわれています。また、血流を拡張する作用があるため、冷え性改善にも効果的です。
2-2.オリゴ糖や食物繊維による整腸作用
酒粕には、100gあたり5.2gの食物繊維が含まれています。食物繊維には整腸作用があり、便秘予防に効果的です。また、発酵の際に生まれるオリゴ糖は、大腸でビフィズス菌を増殖させ腸内環境を整えてくれます。
2-3.レジスタントプロテインによるコレステロールの低下
レジスタントプロテインとは、胃で消化されにくいたんぱく質のことです。小腸で食べ物の油や脂質をキャッチし、体外へと運び出す働きがあります。
結果、コレステロール値を下げたり、肥満予防につながったりとさまざまな効果が期待できます。酒粕のほか、大豆や米などにも含まれる成分です。
2-4.免疫力を高める作用
日本酒造りに欠かせない麹菌や酵母菌には、免疫力をアップさせる作用があります。
麹菌は日本酒造りのほか、味噌や醤油、みりんといった日本由来の発酵食品に使われるカビの一種です。また、酵母菌には、腸内の免疫細胞に働きかけるβグルカンという成分も含まれています。
2-5.ビタミンB群による美肌効果
酒粕は、ビタミンB群を豊富に含む食品です。皮膚の健康を維持するといわれるビタミンB2の含有量は、100gあたり0.26mg。たんぱく質の代謝を助けるビタミンB6は、100gあたり0.94mg含まれています。
肌のうるおいを保つセラミドの一種、グルコシルセラミドも含まれるため、食品と摂取するほか、パックとして活用すると保湿効果が期待できます。
3.酒粕を加熱すると栄養素はどうなる?食べるときの注意点
栄養豊富な酒粕ですが、食べる時にはいくつか注意が必要です。特に気を付けたいのがアルコール分。妊婦さんや子どもさん、運転前などは摂取を控えましょう。ここでは、加熱して食べる際のポイントもご紹介します。
3-1.酒粕にはアルコールが含まれている
酒粕には、100gあたり8.2gのアルコールが含まれています。そのため、お酒に弱い方や運転前、妊婦さんやお子さんは注意が必要です。
加熱したとしても、少量のアルコールは残ってしまいます。特に、甘酒には米麹由来のノンアルコールタイプと、酒粕を使ったアルコールを含むタイプがあるため気を付けてください。
市販されている酒粕甘酒の多くは、アルコール度数1%以下と非常に少ない量に調整されています。とはいえ、気になるときは控えたほうがよいでしょう。
3-2.酒粕を加熱するときは汁ごと摂取する
酒粕に含まれる栄養素には、加熱すると減少したり、水に溶けだしてしまったりするものがあります。そのため、酒粕を加熱するときは、粕汁のように汁ごと摂取できるメニューがおすすめです。
ただし、加熱したとしてもすべての栄養素が失われるわけではありません。気軽においしく酒粕を楽しんでみてください。
4.酒粕のおいしい食べ方
酒粕は定番メニュー粕汁のほか、粕漬けやスープなどに活用できます。
粕漬けは、酒粕に味噌や砂糖、酒、塩などを加えて魚を漬け込む調理法です。鮭やタラなどを半日漬け込めば、あとは焼くだけでおいしい魚の粕漬け焼きができあがります。
また、洋風のスープ仕立てもおすすめです。酒粕を溶かした出汁で野菜を煮込み、豆乳と味噌で仕上げると、酒粕の栄養素に野菜のビタミンや食物繊維がプラスされたスープになります。
もっと手軽に食べたいときは、板状の酒粕をトースターで焼いてみてください。砂糖醤油やはちみつをかければ、外はこおばしく中はふっくらとしたお菓子のような一品に仕上がります。
5.妊婦さんが酒粕を食すのは注意が必要
栄養満点で美容などにも効果のある酒粕ですが、妊婦さんが食すのは注意が必要です。
なぜなら、酒粕にもアルコールが含まれており、妊娠中にアルコールを摂取すると、胎盤を通じてアルコールがお腹の赤ちゃんに入り、悪影響を及ぼすといわれています。
早産や流産、分娩異常の原因になるほか、胎児性アルコール症候群(FAS)を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
妊娠中に安全なアルコール量は解明されていないため、妊娠中や妊娠を望む時期は酒粕も控えたほうがよいでしょう。
まとめ
日本酒造りの副産物、酒粕は栄養豊富な食品です。おいしいだけでなく、さまざまな効能が期待できます。アルコールを含むことをふまえつつ、ぜひ日々の食事に活用してみてください。