四角い枡(ます)に日本酒を入れて味わう「枡酒(ますざけ)」。お猪口やグラスではなく、枡でお酒を飲むのはなぜ?と疑問に感じたことはないでしょうか。
そこで今回は、枡酒に使う枡の種類や「もっきり」などについてくわしく解説!祝いの席で枡酒が出たときにも安心の、飲み方や楽しみ方もご紹介します。枡酒はまだ未体験という方も、ぜひ参考にしてくださいね。
目次
1.枡でお酒を飲む「枡酒」とは?
「枡酒(ますざけ)」とは、枡にお酒を入れて飲むことです。枡酒に使う枡は木製のものが多く、本来はお米やしょうゆ、お酒などを計る容器として親しまれてきました。
枡酒は、結婚式や開業イベントといったおめでたい席で振る舞われることの多いお酒。神社の建造に使用するヒノキやモミで造られていたり、言葉の響きが「増す」「益す」に通じることから、縁起物として好まれています。
近年は文字やイラストを入れたオリジナル枡を造るサービスも多く、記念品や日本酒好きな方へのプレゼントとして人気です。
2.枡の種類
枡の種類は、素材によって「木枡」と「塗枡」にわかれます。木枡は、主にヒノキやスギ、モミといった素材を使用し、木板を組み合わせて造ったもの。一方、塗枡はプラスチック製のものが多く、表面に黒や朱色の漆塗りを施しているのが特徴です。
2-1.木枡
木枡は祝い事や式典など、おめでたい席で目にすることが多い酒器です。
木枡に使用するヒノキやモミといった木材は、神社の建造にも使用されるとても縁起の良い木。そのため、木枡もまた縁起物の酒器として好まれてきました。
また、木枡が縁起物とされるもうひとつの理由がその形状。木枡の角を見てみると、凸凹にカットされた木板が釘を使用することなく上手に組み合わされているのが分かりますよね。
「入りの字」と呼ばれるこの組み方は、商売繁盛を意味する「大入」や福が「入る」という意味合いが込められたもの。人と人が「気(木)」を合わせる様子にも通ずることから、婚礼や創業、工事の始まりのような場面でも木枡は縁起物として使用されています。
枡という響きが「増す」「益す」にも通じることもまた、祝いの席で枡が好まれる理由のひとつ。酒も塩も神様への供え物としての役割を持つことから、日本では古くから「ふるまい酒」として枡の角に塩を盛り、少しずつ舐めながら飲むという文化が根付いています。
2-2.塗枡
塗枡は、黒と朱のコントラストが美しい酒器です。高級感があり、木枡と同様に縁起が良いことから、結婚式やイベントなどのおめでたい席で好まれています。「日本酒に木の香りを移したくない」というときにもおすすめです。
塗枡は木枡に比べ、アルコール分や塩分に強く、耐水性に優れているというメリットがあります。防腐性も高く、繰り返し使用しても長持ちしやすいことが特徴です。飲食店の「もっきり」スタイルも、多くは塗枡で提供されます。
3.枡の中にグラスを置く「もっきり」の飲み方
「もっきり」とは、枡のなかにグラスを入れ、なみなみと日本酒を注ぐスタイルのことです。もっきりの語源は、江戸時代、樽から徳利や枡などに日本酒を注いで量り売りした「盛り切り」に由来するといわれています。
グラスになみなみと注がれたもっきり。初めて飲むときは「どうやって飲むの?」と戸惑うこともあるかもしれません。そんなときは、以下の手順を参考にしてください。
- 飲みやすくなるよう、グラスの日本酒を少しだけ枡にこぼす。
- グラスを手に取り濡れた底を拭き、日本酒を楽しむ。
- グラスの中の日本酒を半分ほど飲んだら、枡にこぼれた日本酒をグラスの中に戻す。
- グラスに移さず枡のまま飲んでも〇。その場合、枡の角ではなく平らな部分から飲む。
現在は、持ちにくかったり、テーブルが汚れたりといった理由で見かける機会が少なくなったもっきりですが、出会ったときはぜひ独特のスタイルを楽しんでみてくださいね。
4.枡に直接注がれた枡酒の飲み方
前述したように、枡酒は祝いの席で振る舞われることの多いお酒です。居酒屋などではあまり見かけないことから「どこに口を付ければいいの?」「持ち方は?」と疑問に感じることも多いかもしれません。
ここでは、枡酒のマナー的に正しい飲み方のほか、気軽に楽しむおすすめの飲み方をご紹介します。
4-1.枡酒のマナー的に正しい飲み方
四角い枡はついつい角に口を付けたくなりがちですが、マナー的には平らな部分に口を付けるのが正しい飲み方です。日本酒をこぼさないためには、上唇ではなく下唇をあてることもポイント。サイズが大きな枡も、4本の指でしっかり底辺を支えると安定感が増します。
- 4本指で枡の底を支え、親指を縁(ふち)に乗せて持つ。
- 下唇を平らな面の縁に付け、音を立てずにすするように飲む。
- 木枡の場合は、枡から広がる木と日本酒の香りを楽しみましょう。
4-2.枡酒を気軽に楽しむ!おすすめの飲み方
せっかくの美味しい日本酒、できれば肩ひじ張らずに味わいたいですよね。もっと気軽に枡酒を楽しみたい!というときは、枡酒を角から飲んでも大丈夫。マナーを重視しない日常的なシーンでは、ぜひおすすめの飲み方で枡酒ならではの味、香りを楽しんでみてください。
- 持ちやすい方法で枡を持ち、角に口を付ける。
- 木枡であれば、枡の香りとともに日本酒の美味しさを存分に味わいましょう。
4-3.塩は枡の角に
枡酒の飲み方のひとつとして、塩をなめながら楽しむスタイルがあります。
人間が感じる味覚は「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」「旨味」の5種類。米と米麹を原料に造られる日本酒には、塩味以外の4種類が含まれています。つまり、塩をなめながら日本酒を飲めば、5種類すべての味わいを楽しめるというわけです。
枡酒を楽しむときは、枡の角に塩をひとつまみ。粒の大きな粗塩にしたり、風味のあるシーズニングソルトにしたりと、ぜひ好みのスタイルを見つけてみてください。
まとめ
縁起物として親しまれている枡酒は、日本酒ならではの楽しみ方。木の香りを感じる木枡、見た目も美しい塗枡は飲酒シーンをさらに盛り上げてくれます。
スマートな飲み方を知っていれば、ハレの席で枡酒に出会っても安心。肩ひじ張らない飲み会などでは、塩を乗せてツウ好みの味わいを楽しむのもおすすめです。ぜひ難しく考えず、気軽に枡酒にチャレンジしてみてくださいね。