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【2023年最新版】日本酒の山廃(やまはい)仕込みとは?山廃仕込みのおすすめ日本酒12選!

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【2023年最新版】日本酒の山廃(やまはい)仕込みとは?山廃仕込みのおすすめ日本酒12選!

執筆者情報

shiho
お酒とねこでできているライター。日本酒、ウイスキー、ワイン…すべてのお酒をこよなく愛す。酒好きが高じて利酒師免許を取得。 Instagramはこちら https://www.instagram.com/ushinaaa/

監修者

日本酒ラボ編集部
日本酒ラボに携わってから日本酒のおいしさ・奥深さを知り、唎酒師の資格を取得。日本酒ラボを通して、日本酒のおいしさ・楽しさを日本酒にもあまり馴染みがない方にもお伝えしていきます。

「山廃(やまはい)」仕込みとは、日本酒造りに必要な酒母(しゅぼ)造りの技法のひとつです。「具体的な意味は?」「生酛とはどう違うの?」と疑問に感じることも多いのではないでしょうか。

そこで今回は、山廃仕込みについて徹底解説!山廃仕込みの味わいや飲み方も紹介します。おすすめ銘柄も登場するので、ぜひ日本酒選びの参考にしてくださいね。

1.「山廃仕込み」は酒母造りの技法のひとつ

「山廃(やまはい)仕込み」とは、日本酒造りに欠かせない酒母(しゅぼ)造りの技法のひとつです。お酒の母と書くように、酒母は日本酒造りのベースとなる役割を担っています。

山廃仕込みでは、昔ながらの技法で手間ひまかけて酒母を育てていきます。また、山廃仕込みは、「生酛(きもと)」と呼ばれる同じように手間のかかる技法が変化したものです。

山廃仕込みについて理解するために、まずは酒母造りや生酛仕込みについて解説していきますね。

1-1.日本酒造りに欠かせない「酒母」

酒母は、米麹(こめこうじ)と蒸した米、水を主原料に造られます。酒母造りの目的は、アルコール発酵に必要な「酵母(こうぼ)」を育てること。一般的に、酒母は酒母室と呼ばれるひんやりとした部屋のタンクで造られます。

酒母
酒母タンク(佐々木酒造)/筆者撮影

酵母を育てようと変化を続ける、白くふわふわとした酒母。しかし、実は酵母はとてもデリケート。酒母がいくらがんばっても、他の雑菌が入り込むとうまく育ってくれません。

ここで活躍するのが「乳酸」です。酒母に乳酸を加えると、酒母のなかは酸性の状態に変化します。

酸性は、雑菌にとって繁殖しづらい環境。一方で、酵母は酸性に強く、乳酸を含む酒母のなかでどんどん育つことができるのです。

この、酒母に乳酸を加える技法は「速醸酛(そくじょうもと)」と呼ばれます。1910年(明治43年)に国立醸造試験所によって開発された、約2週間で酒母が完成する技法です。

「では速醸酛が開発される前は、一体どうやって乳酸を生み出し、酒母を酸性の状態にしていたの?」という疑問が生まれますよね。

その答えこそが、手間ひまかかる製法の「生酛仕込み」。今回ご紹介する、山廃仕込みのもととなった技法です。

1-2.自然の乳酸菌の力を借りる「生酛仕込み」

生酛仕込みは、自然界に存在する乳酸菌の力を借りて酒母を酸性へと導く技法です。「え、乳酸菌って普通に存在しているの?」とふしぎに感じることもあるのではないでしょうか。人の腸内に住むイメージが大きな乳酸菌は、自然界のあらゆる場所に存在するといわれています。

ただし、酒造りをおこなう蔵内にいるのは乳酸菌だけではありません。酒母に悪影響を及ぼす雑菌たちも、数多く存在しています。

生酛仕込みは手間ひまがかかるぶん、酒母が雑菌にさらされるリスクも高まります。そこで、なるべく早く酒母ができるようにおこなわれるのが、米をすりつぶす「山卸し(やまおろし)」と呼ばれる作業です。

底の浅い桶(おけ)に蒸した米を入れ、柄の長い櫂(かい)のような道具で米をすりつぶす山卸しは重労働。寒い時期の深夜から早朝にかけておこなうため、蔵人たちにとっては過酷な作業でした。

1909年(明治42年)、国立醸造研究所は、山卸しをしなくても酒母を造ることができる製法を開発します。山卸しをしない。つまり、山卸しを廃止=「山廃仕込み」の誕生です。

1-3.山卸を廃止したから「山廃仕込み」

米をすりつぶす山卸しをしない山廃仕込みは、米麹の酵素の力を借りて米を溶かしていきます。重労働の山卸しはないものの、自然の乳酸菌の力を活かして酒母づくりをおこなうため、完成までは約1カ月の期間が必要です。

生酛、山廃ともに現在取り入れている蔵は決して多くはありません。一方で、伝統的な製法で生まれる生酛、山廃のお酒は濃醇な旨味を持ち、多くの日本酒ファンを魅了し続けています。

2.山廃仕込みの日本酒の楽しみ方

山廃仕込みの日本酒は、しっかりとした旨味が感じられる濃醇な味わいが特徴です。蔵ごとにさまざまな個性があるものの、適度な酸味を持つお酒も多くみられます。

自然の力でじっくり時間をかけるからこそ生まれる、複雑かつ繊細な味わいが山廃仕込みのお酒の大きな魅力です。

2-1.山廃仕込みのおすすめの飲み方

山廃仕込みの日本酒は、常温または燗酒で味わうのがおすすめです。特に、適度に温めると山廃の魅力がより花開きます。どっしりとした骨太の旨味がやわらかに変化し、シャープな後口も楽しめるでしょう。

一方で、近年は山廃仕込みの味わいも多様化をみせています。冷やしてスッキリ感を楽しむタイプもあれば、シュワシュワ泡立つスパークリング酒もあるなど種類は豊富です。山廃のお酒に出会ったら、ぜひさまざまな温度で異なる味わいを感じてみてください。

2-2.山廃仕込みに合わせるおすすめおつまみ

濃醇な味わいの山廃仕込みのお酒には、旨味の強いおつまみがマッチします。おすすめは、塩辛やスルメなどの定番おつまみです。いぶりがっこやカニ味噌、からすみなどもよく合います。

料理と合わせるなら、チーズを使ったメニューもおすすめです。チーズのクセやコクを、山廃の懐の深い味わいがしっかりと受け止めてくれます。寒い時期には、グラタンや鮭のクリーム煮などと合わせても美味しいですよ。

3.山廃仕込みのおすすめ日本酒12選

ここからは、山廃仕込みのおすすめ日本酒12選をご紹介します。有名蔵の山廃から、山廃といえばといわれる有名銘柄まで登場。「山廃仕込みのお酒を飲んでみたい」というときの参考にしてくださいね。

3-1.雪の茅舎 山廃純米大吟醸

製造工程の仕上げにおこなわれる「ろ過」や加水をしていない無濾過生原酒。山廃の魅力をそのまま体感できる1本です。上品な香りとともに、繊細な酸味、山廃のこっくりとした旨味を堪能できます。

雪の茅舎 山廃純米大吟醸
雪の茅舎 山廃純米大吟醸

(出典元: さかや栗原

 

3-2.農口尚彦研究所 山廃雄町 2020vintage

農口尚彦(のぐちなおひこ)氏は、能登杜氏四天王の一人といわれ、山廃仕込み復活の立役者ともなった人物です。「山廃雄町」には、岡山県産の酒米・雄町が100%使用されています。

完熟フルーツのように甘い香り、ふくよかな旨味を持つ山廃は、どこかやさしさを感じさせる味わい。適度に冷やし、スッキリとした飲み口を楽しむのもおすすめです。

農口尚彦研究所 山廃雄町 2020vintage

(出典元: 農口尚彦研究所 ONLINE STORE

 

3-3.吉田蔵 u 百万石乃白

「吉田蔵 u」は、自然に寄り添うナチュラル志向の山廃シリーズ。百万石乃白(ひゃくまんごくのしろ)は、石川県のオリジナル酒米です。

地元の酒米、自社培養酵母で醸したお酒は、スッと体に染み渡る美味しさ。「あなたへ(you)」を意味する「u」の名のとおり、自分のスタイルでカジュアルに楽しむことができます。

吉田蔵 u 百万石乃白
吉田蔵 u 百万石乃白

(出典元: さかや栗原

 

3-4.手取川 山廃仕込 純米大吟醸

「手取川(てどりがわ)」は、「吉田蔵 u」と同じ吉田酒造店が造る日本酒です。こちらの山廃は、ぐぐっと旨味が押し寄せる濃醇タイプ。みずみずしい香りも楽しめます。ぬる燗にして和食の定番と合わせたくなる味わいです。

手取川 山廃仕込 純米大吟醸
手取川 山廃仕込 純米大吟醸

(出典元: 吉田酒造店

3-5.上川大雪 山廃もと 特別純米 吟風

「上川大雪(かみかわたいせつ)」は、北海道に位置する酒蔵です。吟風(ぎんぷう)は、芳醇な酒質を引き出すという北海道生まれの酒米。北海道弁で「ついつい飲んでしまう」ことを意味する「飲まさる酒」に仕上がった山廃は、ぜひ好みの料理とともに楽しんでみてください。

上川大雪 山廃もと 特別純米 吟風
上川大雪 山廃もと 特別純米 吟風

(出典元: オンターブル

3-6.貴 山廃純米大吟醸 2018

「貴(たか)」は、土地の風土を重視し米栽培から手がける山口県の酒蔵。黒箱に包まれた山廃は、年に1度だけ、冬季限定で販売される商品です。

どっしりとした旨味がありつつ、後口はさらり。やさしい酸味が食欲を刺激します。年末年始の料理とともに、じっくりと味わいたくなる美味しさです。

貴 山廃純米大吟醸 2018
貴 山廃純米大吟醸 2018

(出典元: 矢島酒店

3-7.天狗舞 山廃仕込 純米酒

古くから山廃仕込みにこだわり、伝統の技を受け継いでいる車多酒造(しゃたしゅぞう)。「天狗舞(てんぐまい)」は、手造りで丁寧に醸される山廃仕込みのお酒です。

じっくり熟成させるため、お酒は山吹色に色づいています。「ぬる燗で料理と一杯」のニーズを存分に満たしてくれる日本酒です。

天狗舞 山廃仕込 純米酒
天狗舞 山廃仕込 純米酒

(出典元: 日本酒といえば地酒 天狗舞

 

3-8.花巴 スプラッシュ活性にごり 無濾過生原酒

「スプラッシュ」の名のとおり、シュワシュワと泡が弾ける日本酒です。加熱処理をせずに仕上げることで、フレッシュな味わいを生み出しています。

仕込みは山廃のため、野性味あるしっかりとした飲みごたえも魅力的。山廃の新たな一面を見せてくれる1本です。

花巴 スプラッシュ活性にごり 無濾過生原酒
花巴 スプラッシュ活性にごり 無濾過生原酒

(出典元: かがた屋酒店

 

3-9.加賀鳶 山廃純米 超辛口

「粋なキレ味」をコンセプトにする「加賀鳶(かがとび)」の山廃は、後口がスパッとキレる超辛口。山廃らしい適度な酸味も感じられます。ただ辛いだけではない、濃醇な旨味も魅力的。地元金沢の味覚、ホタルイカの沖漬けとベストマッチな味わいです。

加賀鳶 山廃純米 超辛口

(出典元: 福光屋ONLINE SHOP

 

3-10.久保田 雪峰

「雪峰(せっぽう)」は、アウトドアシーンで楽しむ日本酒として、誕生したお酒です。山廃の滋味深い味わいが、屋外の風、温度、木々の香りと相まって心地よい酔いをもたらします。ボトルごと燗に付けられる設計になっているため、焚火を囲んで仲間と1杯というシーンにもおすすめです。

久保田雪峰
久保田雪峰

 

3-11.真澄 真朱(AKA)

「真朱(AKA)」は、長野県の老舗蔵・真澄(ますみ)の「こだわりの真澄」シリーズのひとつ。角のないまろやかな酸味、旨味が際立つ1本です。常温や燗酒はもちろん、冷やして味わうのもおすすめ。その日の気分で異なる表情を楽しめます。

真澄 真朱(AKA)
真澄 真朱(AKA)

(出典元: 宮坂醸造株式会社

 

3-12.飛良泉 飛轉スパークリング

秋田の雄大な自然に包まれた老舗酒蔵「飛良泉(ひらいずみ)」。「飛轉(ひてん)」は、27代目蔵元が新たに立ち上げたブランドです。

山廃仕込みのお酒を使ったスパークリング酒は、アルコール度数控えめのライトな味わい。リンゴを思わせる甘酸っぱさが心地よく、ゴクゴクっと飲めてしまう爽快感あふれる仕上がりです。

飛良泉 飛轉スパークリング
飛良泉 飛轉スパークリング

(出典元: さかや栗原

まとめ

自然の力にまかせ酒母を造る製法、山廃仕込み。山廃で生まれるお酒は、奥深い魅力に満ちています。

ひと口に山廃といっても、味や香りのタイプは蔵によって実にさまざま。酒販店や飲食店で「山廃」の文字を見かけたら、お酒が生まれる工程に想いを馳せながら、ぜひその味わいを楽しんでみてくださいね。