日本で古くから親しまれてきた天ぷらと日本酒。ふたつを組み合わせれば、食事がより楽しくなるペアリングができあがります。
今回は、唎酒師が天ぷらとのペアリングにおすすめの日本酒をご紹介。美味しさが引き立つペアリングのポイントも解説します。ぜひ天ぷらと一緒に日本酒を楽しむ際の参考にしてください。
目次
1.ペアリングとは?
「ペアリング」とは、料理と飲み物の相性の良い組み合わせのことです。日本酒だけでなく、ワインやビールなどさまざまなお酒にペアリングは存在します。
和食の代表「天ぷら」と日本の国酒「日本酒」は、国内で古くから親しまれてきた組み合わせです。ペアリングを意識すれば、お互いの良さがより一層引き立ちます。
2.天ぷら×日本酒ペアリングのポイント
素材に衣をつけ油で揚げる天ぷらには、スッキリとした味わいの日本酒がマッチします。
具体的には、「キレがある」「ドライテイスト」といわれるような淡麗辛口タイプがおすすめです。口内の脂分が洗い流されリフレッシュし、食を進める効果が期待できます。
また、食事がより楽しくなるのが素材との組み合わせを意識したペアリングです。
例えば、舞茸のように旨味の強い天ぷらには、同じく味わい豊かなお酒がマッチします。繊細な味わいの白身魚の天ぷらには、スッキリとした味わいの日本酒がおすすめです。
山菜のように独特の香りやクセをもつ天ぷらには、フルーティーな香りの日本酒を選んでみてください。香りと香りの相乗効果で新たなハーモニーが生まれます。
また、日本酒は味や香りの個性で以下のような4タイプにわかれます。より詳しい記事も含め、ぜひペアリングの参考にしてください。
タイプ | 特徴 | |
薫酒 (くんしゅ) | ・リンゴやメロンのようなフルーティーな香り ・シュワシュワとした微発泡感がある銘柄も ・日本酒ビギナーも飲みやすいタイプが多い | ・純米大吟醸 ・吟醸酒 などに多い |
爽酒 (そうしゅ) | ・比較的おだやかな香り ・「ドライテイスト」「キレがある」などと呼ばれる淡麗辛口の味わい | ・本醸造酒 などに多い |
醇酒 (じゅんしゅ) | ・米麹の豊かな香り ・まろやかな口当たり ・温めるとよりふくよかな味わいに | ・純米酒 ・生酛造り ・山廃 などに多い |
熟酒 (じゅくしゅ) | ・ナッツやスパイス、ハチミツなどに例えられる香り ・熟成による複雑で重厚な味わい ・黄金色、琥珀色の見た目 | ・ラベルに長期熟成酒、古酒と書かれたもの |
3.天ぷら×日本酒ペアリング!おすすめ銘柄6選
揚げたてアツアツで衣はサクサク、素材の旨味があふれる天ぷら。ここからは、そんな天ぷらとのペアリングにおすすめの日本酒をご紹介します。好みのお酒とともに天ぷら×日本酒の競演をお楽しみください。
3-1.風の森 ALPHA(油長酒造)
アルコール度数14%と、日本酒では比較的低アルコールでありながら旨味はしっかり。綿あめのような甘さがふわりと広がったかと思うと、スッと静かに消えていく。『次章への扉』と名付けられた「風の森 ALPHA」は、日本酒ビギナーにぜひおすすめしたい1本です。
天ぷらと相性がよい理由は、独特の微発泡感。ちりちりと舌をなでる小さな泡が脂分をやさしく包み込んでくれます。
時間と共に空気と調和し、香りは甘く、やわらかに。ほっくりとしたカボチャや繊細な味わいのハモなど、さまざまな天ぷらとのペアリングを楽しんでほしい日本酒です。
(公式サイト:油長酒造株式会社)
3-2.にいだしぜんしゅ 生酛 純米原酒(仁井田本家)
春を告げる山菜の天ぷらのペアリングには、自然の旨味が凝縮された「にいだしぜんしゅ」を。山菜のほろ苦さとお酒の旨味が重なり合い、より奥深い世界が広がります。
ほんのり黄色いお酒の原料は、すこやかな田んぼから生まれた自然米です。温めると米と麹の香りが引き立ち、炊き立てご飯をいただくときのように心がホッと和みます。
昔ながらの生酛造り(きもとづくり)を採用し、加水をしていない「純米原酒」は、天つゆで天ぷらを味わうときにもおすすめです。しぜんしゅの濃醇な旨味が、出汁のきいた天つゆと絶妙にマッチします。
(公式オンラインショップ:仁井田本家)
3-3.七本槍 生酛純米2019(富田酒造)
燗酒で天ぷらを楽しみたいときにおすすめしたいのがこちら。生酛造り(きもとづくり)と呼ばれる昔ながらの製法で生まれたお酒です。
湯気からふわりと立ち上るのは、ほのかに甘くやわらかな香り。温度によりキリッと立つ酸が、天ぷらがまとう衣の旨味、素材そのものの魅力をより一層引き立てます。
揚げたての天ぷらをほおばりながら、燗酒をクイッと1杯。和食の醍醐味を堪能できるペアリングです。
(公式オンラインショップ:富田酒造)
3-4.千歳 Hyogo Sake 85(山名酒造)
「千歳(せんさい)」は、江戸時代と同じように木製の桶(おけ)で仕込まれたお酒です。さらに、一般的に用いる乳酸菌は添加せず、自然の微生物の力によって醸されています。
香りはあわせる料理を引き立てるかのように、奥ゆかしく実に爽やか。心をぐっとつかむ美味しさは、一気に押し寄せたかと思うと穏やかな波のように引いていきます。
旬のネタを楽しみながら、1杯また1杯。そのたびに至福のペアリングを実感できるおすすめ銘柄です。
(公式オンラインショップ:山名酒造)
3-5.磯自慢 特別本醸造(磯自慢酒造)
(出典元: 磯自慢酒造株式会社)
静岡県の「磯自慢(いそじまん)」は、さまざまな料理とのペアリングが楽しめるお酒です。なかでも魚介類と相性が良く、ハモやイカ、エビといった天ぷらの美味しさを引き立ててくれます。
蔵のスタンダード「本醸造酒」は、優れたコストパフォーマンスも魅力です。自宅に1本常備しておけば、天ぷらにお寿司、カルパッチョなどその日の気分にあわせた料理とのペアリングを満喫できます。
3-6.香住鶴 生もと からくち(香住鶴)
(出典元および公式オンラインショップ:香住鶴株式会社)
スッキリ辛口タイプの日本酒が好み、という方はぜひこちらのお酒「香住鶴(かすみつる)」を。味の濃い料理とのペアリングに優れ、天ぷらと合わせれば味の相乗効果が生まれます。
香住鶴のこだわりは、蔵すべてのお酒に手間ひまかかる「山廃(やまはい)」または生酛造りを採用していること。普通酒にあたるこちらの辛口酒も同様です。
ひとたび口にすれば、パックで手軽に購入できる普通酒のイメージがガラッと変わるはず。2022年「全国燗酒コンテスト お値打ち熱燗部門」では金賞を受賞と、燗酒好きにもおすすめの日本酒です。
4.まとめ
天ぷらとあわせる日本酒は、味わいがスッキリとしたタイプを選ぶのがおすすめです。山菜やキノコなど、香りや味に個性があるネタの場合は、旨味がぎゅっと濃縮されたタイプや香りある日本酒もマッチします。
温めたり冷やしたりと、飲用スタイルが幅広いことも日本酒の大きな魅力。ぜひお気に入り銘柄を見つけて、日本酒ペアリングの世界を楽しんでみてくださいね。