今回は、福島県西白河郡で1865(慶応元)年創業の大木代吉本店「楽器正宗 SESSION5」です。既成概念にこだわらずさまざまな挑戦を行っていく「SESSIONシリーズ」の第5弾となりますね。
大木代吉本店について
西白河郡は福島県のなかでも栃木県に接した南部にあります。現在は自社で無農薬栽培をしている酒米を使った無農薬純米酒「自然郷」をメインの銘柄として醸していて、現在の5代目蔵元大木雄太さんは四代目大木代吉蔵元から引き継いでチャレンジを続けています。
四代目が始めたチャレンジが「越の寒梅」にインスピレーションを得て醸し始めた「自然郷」。そして、酒の級別廃止がきっかけで米と製法にこだわり、ナショナルブランドとの差別化を図った本醸造「さわやか」。さらに「こんにちは料理酒」という、料理酒に使ったら料理がおいしくなり、そのまま飲んでもOKという純米酒。そして、五代目がチャレンジしたのが「楽器正宗」のリニューアルです。しばらく使っていなかった「楽器正宗」の名前を復活させました。
「楽器正宗」という酒名の由来
「正宗が付く酒」の中でも「名前の由来がわからない1位」の「楽器正宗」ですが、大木代吉本店のHPに「楽器正宗」の名前の由来がアップされましたので、引用させていただきます。
「明治期より矢吹が原周辺は、御料地が多く点在し渡り鳥が飛来する御猟場として皇族や軍人が頻繁に訪れていました。『楽器正宗』の名前は、大正年間二代目代吉の時、朝香宮様が当地を来訪した際、大木代吉本店の酒を所望され大変気に入り、その時随行していた宮内庁の雅楽師で君が代の作曲者とされる奥好義(おく よしいさ)が「酒造りも楽器を奏でることも、元は同じく神様への捧げ物」と言われたことに由来しています。」
ということで、皇族ゆかりの名前だったわけですね。
「楽器正宗 SESSION5」
福島県産福の香100%使用で50%精米の純米吟醸です。「楽器正宗」定番の「夢の香」のようなグレープフルーツの香りはなく、エステル香を含んだマスカットのような香り、若干のガスを感じる酸味とジューシーな甘味があります。少し苦みがあってキレがあり、後味スッキリです。SESSION1でも「福乃香」を使った60%精米の純米吟醸でしたが、そちらよりも甘味控えめな感じです。
SESSION4は低アルコール度数のアル添原酒、SESSION3は夢の香を時間をかけて搾ったアル添本醸造、SESSION2は日本酒度10の辛口でありながらジューシーな仕上がりのアル添、SESSION1は5と同様の福乃香を使った60%精米純米吟醸となっています。4と2は国産米となっているので、夢の香、福乃香ではないのでしょう。
確実にファンを広げている銘柄だけに、新たなチャレンジには興味がわきますね。