日本酒のラベルで見かける「生酛(きもと)」という文字。「一体何のこと?読み方は?」と疑問に思ったことはないでしょうか。
生酛造りは、手間ひまかかる伝統製法。今回は、生酛造りの特徴や、山廃造りとの違いを紹介します!生酛造りのおすすめ日本酒14選もぜひチェックしてみてくださいね。
目次
1.生酛造り(きもとづくり)とは?
生酛造り(きもとづくり)とは、乳酸菌を育てながら「酒母(しゅぼ)」を造る製造法です。
酒母は、蒸した米と麹、水をタンクに入れ「酵母」を培養した液体のこと。真っ白な酒母は「酛(もと)」とも呼ばれます。
酵母は、ほかの微生物より弱いものの、酸性の環境には強いという特徴があります。酵母が生き残れるよう、タンク内を酸性に保つために必要になるのが、乳酸というわけです。
タンク内に乳酸を入れるには、液体の乳酸を直接添加する方法と、自然に任せて育てる2つの方法があります。後者が生酛造りと呼ばれる手法です。
乳酸菌を直接添加した場合、酒母ができあがるまでの期間は10日から14日ほど。一方、生酛造りでは1ヶ月近い時間を要します。
生酛造りの日本酒は、濃醇でしっかりとした味わいが特徴です。また、自然由来のさまざまな香り成分を持っています。ただ濃いだけではない、幾重にも重なる味と香りのハーモニーを楽しめるお酒です。
2.生酛造りと山廃造りの違いは?
「生酛造り」と「山廃造り(やまはいづくり)」は、乳酸菌を育てて酒母を造るという点では同じ製法です。大きく違うのは、その「育て方」になります。
ここからは、それぞれの違いを解説していきます。「あぁやっぱり日本酒は難しい」と感じがちな点を、スッキリと解決していきましょう!
2-1.生酛造りは「米をすりつぶす山卸し」
生酛造りでは、米と水をすりつぶす作業をおこないます。これは「山卸し(やまおろし)」と呼ばれる手法です。明治時代までは、酒母を造るには山卸しが一般的でした。
当時の米は粒が大きかったため、米が水に溶けるのを待っていては、酵母がほかの微生物に負けてしまいます。そのため、あらかじめ米を細かくすりつぶし、水に溶ける速度を速める必要があったのです。
山卸しには、半切りと呼ばれる桶と、櫂(かい)と呼ばれる木製の長い棒が使われます。酒蔵によっては、蒸米を電動式のドリルで潰したり、足で踏んだりと手法はさまざまです。
2-2.「山卸し」を「廃止」するから「山廃造り」
桶の米を櫂ですりつぶす山卸しは、時間と労力のかかる作業でした。これをなんとか解消できないかと、開発されたのが「山廃造り」です。
山廃造りは、タンクに水と麹を入れることから始まります。米を投入するのは、水に麹の酵素が溶けだした段階です。
その後、タンク内では硝酸還元菌(しょうさんかんげんきん)と呼ばれる菌と乳酸菌が繁殖。酵母が活動しやすい環境を作ってくれます。
つまり、米をすりつぶす「山卸し」を「廃止」したのが山廃造りと呼ばれる製法です。本来、山廃は日本酒造りの専門用語でしたが、商品名として採用されたことから一般にも知られるようになりました。
3.生酛造りでおすすめの日本酒14選
ここからは、生酛造りでおすすめの日本酒14選をご紹介します。生酛ならではの濃醇な酒質と奥深い味わいを、ぜひお楽しみください。
3-1.大七 生もと 純米
「生酛といえば大七。大七といえば生酛」というほどメジャーな1本。力強さを奥深さを兼ね備えた日本酒です。創業以来、生酛一筋の蔵の想いが感じられます。
ふくらみのある豊かな味わいは、ぜひぬる燗や熱燗で。冬の鍋物はもちろん、クリーム系の料理ともよく合います。「生酛ってどんなお酒?」という初心者におすすめの銘柄です。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
3-2.男山 生もと 純米
北海道の大地が生み出す豊かな味わいの辛口酒です。米と米麹のみの純米酒のため、さらに芳醇な旨味が感じられます。
温度による味の変化も特徴です。夏には冷やしてスッキリと。冬には燗でふくらみのある味わいを楽しめます。コストパフォーマンスにも優れ、普段から常備しておきたくなる1本です。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
3-3.岩の井 生もと 純米 神力
大手酒販メーカー「いまでや」オリジナルの純米酒です。タッグを組んだのは千葉県の岩瀬酒造。中生神力(なかてんしんりき)という名の希少米を使用しています。
岩の井は山廃仕込みにこだわるお酒です。過去にはワインの世界的な指標「パーカーポイント」日本酒部門で95点を獲得しました。そんな岩の井の「生酛造り」の「純米酒」。日本酒好きなら見逃せない1本です。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
3-4.月山 生もと 純米 おろち
生酛ならではの複雑味と、さわやかな香りを楽しめる純米酒です。グラスに注ぐと青りんごのようなフルーティーな香りが立ち上ります。
加水をしていない原酒でありながら、アルコール度数は若干低めの16%。食事と合わせてスイスイと楽しめます。スッキリとした酸味が際立ち、飲み飽きしない銘柄です。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
3-5.白隠正宗 純米 生もと 誉富士
蔵が目指したのは「長くだらだらと飲める酒」。毎日の晩酌にぴったりの生酛造りの日本酒です。香りはあくまでもおだやか。口に含むとじんわりと生酛らしい旨味が広がります。
冷やでも燗でも楽しめるのもうれしいポイント。その日の気分、その日の料理にやさしく寄り添います。決して派手ではないが、そばにないと寂しい。日本酒好きのパートナーともいえる存在です。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
3-6.フモトヰ 生もと 純米吟醸 備前雄町
「麓井(ふもとい)」は、酒造りの大半を生酛造りでおこなっています。仕込み水は、飲料水としても人気の地元の湧き水です。酒米「雄町(おまち)」を使用し、豊かな味わいを生み出しています。
生酛ならではのしっかりとした旨味、香り、酸味のバランスは絶妙。お寿司と合わせたくなるようなエレガントな味わいが際立ちます。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
3-7.南部美人 生もと 純米 美山錦 にごり
「にごり」とあるように、うっすらと白くにごった日本酒です。スッキリとしたシャープなキレ味を楽しめます。南部美人の常務、久慈雄三氏が究極の食中酒を目指した「雄三スペシャル・シリーズ」の1本です。
より美味しさを追求するなら、熱めの燗酒がおすすめ。徐々に温度が下がるにつれ、豊かな旨味が広がります。寒い冬、美味しい日本酒でじんわり体を温めたいときにぴったりです。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
3-8.五人娘 純米 生もと 自然酒
自然酒とあるように、自然の恵み、エネルギーを生かすことを目指して造られたお酒です。自然が生み出す濃醇な味わいを堪能できます。
口に含むと感じるのは、発酵由来の独特な酸味。やがてじんわりと米の旨味、甘みが広がっていきます。日本酒は発酵食品であることをしみじみ感じさせてくれる1本です。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
3-9.天狗舞 生もと仕込 純米
「天狗舞(てんぐまい)」は山廃仕込みで知られる銘柄。こちらは生酛造りのめずらしい1本です。天狗舞ファンからも高い人気を得ています。
味に厚みがありつつも決して重たくなく、むしろ品の良さを感じるのは天狗舞ならでは。独特の苦みが後口を引き締めます。少し熱めの燗酒で味わうのもおすすめです。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
3-10.クラシック仙禽 雄町
日本酒が生まれる風土、ドメーヌを貴重とする「仙禽(せんきん)」。クラシックシリーズは「古くて新しい」をコンセプトにした生酛造りのお酒です。
香りは甘く、実にフレッシュ。超軟水仕込みならではのやわらかな口当たりです。ジュワッと広がる甘酸っぱさは、仙禽ならでは。冷やしてワイングラスに注いでも美味しい日本酒です。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
3-11.にいだしぜんしゅ 純米吟醸
農薬や化学肥料を一切使わない自然米を使い、自然派の生酛造りで仕込んだ1本。自然本来のやさしい旨味が感じられる日本酒です。酵母は蔵に住み着く無添加酵母を使用しています。
口当たりはやわらかく、スーッと体に染みわたるような美味しさ。毎日飲んでも飽きない味わいです。洋食とも相性が良く、食中酒として楽しめます。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
3-12.穏(おだやか) 純米吟醸 冷やおろし
冬から春にかけて仕込んだお酒をひと夏寝かせ、秋に火入れをした純米吟醸です。ほどよく熟成し、味わいがよりまろやかに変化しています。
とろりとた甘みも感じるやさしい生酛仕込み。冷やから常温の温度帯で楽しむのがおすすめです。「穏(おだやか)」の名前のとおり、日々の疲れをそっと癒してくれますよ。
(出典元:矢島酒店)
3-13.貴 特別純米 ふかまり
10月1日、日本酒の日に販売されるひやおろしです。使用しているのは酒米、雄町(おまち)。生酛で仕込むことで、よりふっくらと深みのある味わいを生み出しています。
秋の味覚、サンマやキノコとも好相性。冷やで、燗でと好みに合わせて楽しめます。うっすら黄色く色づいているのもポイント。色、味、香りともに秋の深まりを感じさせる1本です。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
3-14.五凛 純米吟醸 生もと
「天狗舞」を造る車多酒造の限定流通商品です。「五凛(ごりん)」には、米の生産者、蔵元杜氏、酒販店、飲食店、そして飲み手が凛として酒を楽しめるようにとの想いが込められています。
キリッとした酸味がありつつ、口当たりなめらか。自然由来の苦み、かすかな渋みも感じられます。ふわっと広がる香りも心地よく、食中酒におすすめの銘柄です。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
まとめ
生酛造りは自然の力を最大限活かした製法です。日本酒造りの原点でありながら、古くて新しい手法として再び注目を集めています。力強く、それでいてやさしい味わいはクセになる美味しさ。ぜひ日常酒のラインアップに加えてみてはいかがでしょうか。