“世界一美味しい市販日本酒”が決まる品評会「SAKE COMPETITION」が4年ぶりに開催!2023年5月9日(火)の予審会を皮きりに、10日(水)・11日(木)と決審会が行われました。
2012年開催以来、日本酒のトレンドを牽引してきたともいえる「SAKE COMPETITION」。今回は、10日の決審会の模様に加え、審査員へのインタビューをお伝えします。
目次
市販日本酒の品評会「SAKE COMPETITION 2023」
「SAKE COMPETITION」は、市販されている日本酒を対象とした品評会です。
「ブランドによらず消費者が本当に美味しい日本酒にもっと巡り会えるよう、新しい基準を示したい」という理念のもと、2012年にスタート。
規模は年々拡大し、2019年の出品数は1919点と世界最大級のコンペティションとなりました。
大きな特徴は、完全に銘柄を隠したブラインド審査であること。ブランドや知名度といった背景に頼ることなく、審査では純粋に日本酒の品質のみが評価されます。
公平性を保つため、飲む順番はパソコンでシャッフルして決定するという徹底ぶりです。
「SAKE COMPETITION」では、1位受賞をきっかけに、地元から全国へと羽ばたく酒が数々誕生してきました。下記は、2019年度各部門で1位に輝いた銘柄です。
純米酒部門 | 宝剣酒造株式会社「宝剣 純米酒 レトロラベル」 |
純米吟醸部門 | 合資会社廣木酒造本店「飛露喜 純米吟醸」 |
純米大吟醸部門 | 清水清三郎商店株式会社「作 朝日米」 |
吟醸部門 | 株式会社中勇酒造店「天上夢幻 大吟醸 山田錦」 |
SUPER PREMIUM部門 | 高木酒造株式会社「十四代 龍泉」 |
スパークリング部門 | 秋田清酒株式会社「出羽鶴 awa酒 明日へ」 |
海外出品酒部門 | Sequoia Sake Company「Coastal Ginjo」 |
今年は4年ぶりの開催ということもあり、出品数を1000点に制限。日本酒、そして“日本酒業界の精鋭”とされる審査員20名が各地から東京へと集結しました。
総数1000銘柄から各部門の1位が決定
2023年度の審査は「純米酒部門」「純米吟醸部門」「純米大吟醸部門」「SUPER PREMIUM部門」の計4部門で行われます。
「SAKE COMPETITION 2023」出品数(計1000点、335蔵) | ||
部門 | 出品数 | 予選通過数 |
純米酒部門 | 273 | 138 |
純米吟醸部門 | 343 | 175 |
純米大吟醸部門 | 333 | 171 |
SUPER PREMIUM部門 | 51 | ※決審のみ |
膨大な数の日本酒を審査するのは、著名な技術指導者やその推薦で選出された蔵元、日本酒業界などで活躍する有識者です。
日本酒業界を牽引する各蔵の杜氏、酵母開発を手がける技術者などでチーム編成されていることからも、審査員のレベルの高さが伺えます。
5月9日(火)の予審会では、全審査員が1,000銘柄をテイスティング。決審会では、10名の審査員により各部門の審査が行われました。
今年は、継続開催に向けての検証の観点から審査スタイルも変更。以前のように日本酒が並べられたテーブルを審査員が回るのではなく、着席した各審査員のもとへと日本酒が運ばれていきます。
半日で約200点以上の日本酒を審査
5月10日(水)の決審会で審査されたのは「純米吟醸部門」と「SUPER PREMIUM部門」の日本酒です。
全343点だった「純米吟醸部門」は、前日の予審会で175点まで絞られていました。
それでも「SUPER PREMIUM部門」51点とあわせると、半日で200点以上の銘柄を審査する計算です。
審査の会場は、ザ・ペニンシュラ東京の一室。各のテーブルには審査用紙が用意され、4年ぶりということもあり、審査員の気合がこちらまで伝わってくるようです。
一斉に審査がスタートすると、日本酒を口に含み転がす音が、緊迫した空気のなか静かに響き始めました。
およそ50分をかけ「純米吟醸部門」94銘柄のテイスティングが終了。
30分の休憩をはさむころには、テーブルにテイスティング後の瓶がずらりと並び、部屋に日本酒の香りが立ち込めていました。
「この部屋にずっと居ると、それだけで酔ってきそうでしょう?」
休憩の合間にそう声をかけてくれたのは、“究極の食中酒”で知られる「伯楽星」の醸造元「新澤醸造店」代表・新澤 巖夫氏です。
審査員の集中力に驚いていると告げると「はじめと終わりとで審査する側のコンディションに差があってはならないんです。審査の公平性を保つためにも」そう教えてくれました。
審査員が評価するポイントは次の2つ。お米でできたお酒らしい香りや味わいから逸脱していないかを問う「清酒としての品格」、そして飲んで楽しむお酒として優れているかを問う「飲用酒としての適性」です。さらに、各酒ごとに詳細なコメントを記していきます。
休憩の後、残りの純米吟醸酒、「SUPER PREMIUM部門」と続きこの日の審査は終了。後日、集計結果をもとに「SAKE COMPETITION 2023」各部門の1位が決定します。
「SAKE COMPETITION 2023」審査員インタビュー
「以前と比べ、ずいぶんとレベルが高くなっているのを感じました」
審査後そう語ってくれたのは「SAKE COMPETITION 2023」審査員、「司牡丹酒造株式会社」杜氏・浅野 徹 氏です。
「今年のような着席スタイルだと、通常の利き酒のように気になる酒をもう一度チェックすることはできません。それだけに、1つひとつの酒に集中して向き合う必要があります。今回はスタッフの方々のおかげで従来と変わらないコンディションで審査に臨めました」
司牡丹は、現在放送中の朝の連続テレビ小説の舞台、高知県にある酒蔵です。新型コロナウイルスの規制緩和もあり、蔵には活気が戻りつつあるといいます。
「この3年はお酒が売れない、造れないと気持ちが沈んでばかりでした。最近は観光客の方もいらっしゃったりと嬉しい気持ちです。飲食店も賑わいを見せ、レギュラー酒の出荷量も安定してきました。なにより街に人が居るというのは、やはりいいものですね」
浅野氏は、2019年に続き審査員を務めている人物です。「点数を付けるのが難しかった」という言葉に、コロナ禍も歩みを止めなかった各蔵の姿を思わずにいられません。
「BtoCの加速もあり、この3年間で日本酒のジャンルは大きく広がりました。おもしろみのある味、味幅のあるお酒が多くなった印象です」
そのうえで「SAKE COMPETITION」では技術力が厳しく審査されるのだと「新澤醸造店」代表・新澤 巖夫氏は続けます。
「コンマひとつの醸造のミスを、“個性”という言葉で片付けないのがこのコンペティションの厳しさであり質の高さです。めったに品評会に出ることのない『十四代』も参加するなど、業界のプロフェッショナルが価値あると認めるコンペティション。同業者として身が引き締まる思いですね」
新澤氏によると、近年は新しいことへのチャレンジに意欲的な蔵も多いそう。
「全国を自由に行き来できるようになったことで、意見交換、情報交換が活発になり造り手の闘志がさらに燃えるようなステージになってきたと感じます。日本酒初心者の方にも、ぜひ地元のお酒を口にし、その魅力を知ってほしい。日本酒の醸造技術はどの蔵も本当に向上していますから」
順位に関わらず、決審会に並ぶ銘柄はすべてハイレベルと造り手の新澤氏は語ります。
最後に、日本酒を販売する側として「SAKE COMPETITION」への想いを教えてくれたのは、運営元でもある「はせがわ酒店」代表・長谷川 浩一氏です。
全国の酒蔵への案内状送付からはじまり、膨大な数の出品酒の管理、当日の運営と「SAKE COMPETITION」の成功は、はせがわ酒店の存在なしでは語れません。
多くのコストを要してでもコンペティションを続ける理由は、「消費者が本当に美味しい日本酒に巡り会えるよう、新しい基準を示したい」という品評会の理念にあるといいます。
「だからこそ、出品条件は“市販されている日本酒”に限定しています。ときにはうちが扱わない銘柄が上位にくることもあるんですよ。とにかく毎回ガチンコ、一発勝負というわけです」
将来的には、全国すべての日本酒を審査する品評会になれば、と更なる意気込みを見せる長谷川氏。さらに「日本酒ほどコストパフォーマンスに優れたお酒はほかにはない」と語ります。
「良い日本酒は高い、と言われる日本酒ビギナーもいらっしゃいますが、それは違います。1本1,000円台で10,000円並みの味を楽しめる。そんなお酒に数多く出会えるのが日本酒というジャンルです。コンペティションでは順位が付きますが、自分にとっての1番が必ずしも1位のお酒とは限らない。ぜひバラエティ豊かな銘柄のなかから自分に合ったものを見つけてみてください」
日本酒を販売する側、醸造する側、そして日本酒に携わる方々の想いをのせた「SAKE COMPETITION 2023」は、5月11日(木)にすべての審査が終了。
6月14日(水)、ザ・ペニンシュラ東京にて最終結果の発表および表彰式が開催される予定です。
「SAKE COMPETITION 2023」
https://sakecompetition.com/index.html