おすすめの日本酒を探す際に、使用されている酒米を参考にするのも日本酒の選び方の一つです。
日本酒の名前やラベルに書かれている「雄町(おまち)」とは、酒米の品種のことです。栽培の難しい雄町は、かつては幻の酒米といわれていました。
今でも人気は高く「オマチスト」と呼ばれるファンも存在するほど。今回は、酒米雄町の特徴や魅力とあわせ、おすすめ銘柄20選を紹介します!
目次
1.雄町はどんな酒米?
雄町(おまち)は岡山県を中心に栽培されている酒米です。栽培が難しく、収穫量の少ない雄町はかつて「幻の酒米」と呼ばれていました。
雄町を使った日本酒の人気は高く「オマチスト」と呼ばれるファンを生み出すほど。まずは、雄町の特徴や魅力について深掘りしていきましょう。
1-1.雄町という酒米について
雄町が誕生したのは1859年(安政6年)のこと。岡山県の岸本甚造(きしもとじんぞう)が、現在の鳥取県にあたる伯耆国(ほうきのくに)の大山(だいせん)に参拝した際、持ち帰った稲穂を品種改良したのがはじまりです。現在も、全生産量の約95%が岡山県で生産されています。
雄町は「山田錦(やまだにしき)」や「五百万石(ごひゃくまんごく)」といった、有名な酒米のルーツとなる品種。もっとも古い歴史を持つ酒米といわれています。
大粒で心白が大きい
心白(しんぱく)とは、米粒の中心部分に白く濁って見える部分のことです。雄町は米粒自体が大きく、心白もより大きく表れます。
心白が大きな酒米は精米時にくずれやすく、米の外側を大きく削る「高精白」には向かないといわれています。雄町も同様に、高精白で仕上げるのが難しい品種です。
やわらかく醪に溶けやすい
雄町はやわらかく、醪(もろみ)に溶けやすいのが特徴です。酒造りに欠かせない麹菌(こうじきん)が繁殖しやすく、濃醇な香りを生み出します。
背が高く栽培が難しい
雄町の稲は背が高く、大きなものは140cm以上に育ちます。コシヒカリのような食用米の稲が100cm前後であることを考えると、その高さがよくわかりますよね。
稲穂の粒も大きな雄町は、倒れやすく栽培が難しいといわれる品種です。収穫量も少ないことから、1970年代は生産量が激減していました。
平成に入ると岡山県で復活栽培が開始されます。各農家の努力で生産量は復活し、現在は全国各地の酒蔵が雄町を原材料とした日本酒を製造しています。
1-2.雄町は2つのグループにわかれる
雄町は、品種改良の有無によって大きく2つのグループにわけられます。
・純雄町系
・交配品種系
純雄町系は、岡山県の「備前雄町(びぜんおまち)」「赤磐雄町(あかいわおまち)」のように、地域の名前が付くグループ。広島県の「比婆雄町(ひばおまち)」、兵庫県の「兵庫雄町」もそのひとつです。ほかの品種が混ざらない、各地で進化をとげた雄町になります。
交配品種系は、雄町とほかの品種をかけあわせて品種改良したものです。「改良雄町」や「広島雄町」、「こいおまち」などが該当します。ラベルに雄町の文字を見つけたら、ぜひあわせてチェックしてみてくださいね。
1-3.雄町で造られた日本酒の味わい
雄町を使った日本酒は、芳醇タイプや辛口タイプなど、さまざまな表情を見せるのが特徴です。それだけに、造り手の技量が反映されやすい「蔵泣かせ」「杜氏泣かせ」の酒米だといわれています。
そんな雄町の大きな魅力は、米の旨味をしっかりと感じられる日本酒に仕上がること。高精白が難しいぶん、米本来の旨味を活かした飲みごたえのある酒質を楽しめます。
2.雄町で造られた日本酒のおすすめ20選
ここからは、雄町で造られたおすすめ日本酒20選を紹介します!どれも酒蔵のこだわりと技術が生み出す銘酒ばかり。「雄町で造る日本酒ってどんなお酒?」と興味がわいたら、ぜひ一度試してみてくださいね。
2-1.石鎚 純米吟醸 雄町 袋吊りしずく酒 R2BY
岡山県産の雄町を50%まで精米して仕込んだ日本酒です。「これぞ雄町の日本酒」という力強い味わいを楽しめます。
「袋吊り」とは、醪(もろみ)を入れた袋を吊るし、一滴ずつこぼれるしずくを集める製法のこと。嫌味のない澄んだ香りと、ふくよかな旨味が際立つ1本です。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
2-2.雨後の月 BLACKMOON 火入れ
上質な酒米、岡山県産の「赤磐雄町」を100%使用。芳醇な香りが際立つ純米大吟醸です。
「雨後の月(うごのつき)」は日本酒ファンからも人気の高い広島県の地酒。「ブラックムーン」と名付けられた1本は、雨後の月らしい凛とした味わいのなかに、雄町のボリューミーな旨味が活きています。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
2-3.田光 純米吟醸 雄町 瓶火入れ
三重県の酒蔵「早川酒造」で家族3人の手仕事のもと生まれる日本酒「田光(たびか)」。特約店限定ブランドでありながら、全国へとその名を広める人気銘柄です。
岡山県産雄町と自社酵母で仕込むお酒は蔵の人気商品。やさしい米の旨味がじんわりと口の中に広がります。雄町の味わいがキラリと光る、燗酒にしても美味しい日本酒です。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
2-4.山形正宗 藍(あい)
高精米が難しいといわれる雄町を40%まで磨いた日本酒です。さらに、手間ひまかかる「生酛づくり(きもとづくり)」と呼ばれる伝統製法で造られています。
吟醸酒でありながら、香りはあくまでもおだやか。ぬる燗にすると繊細で奥深い味わいが引き立ちます。蔵のこだわりが詰まった限定品は、日本酒好きな方への贈り物にもおすすめです。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
2-5.澤屋まつもと 守破離 雄町
「守破離(しゅはり)」は酒米の育つ産地、個性へのこだわりから生まれる日本酒です。主に兵庫県産の山田錦を中心にさまざまな銘柄が造られています。
山田錦の親でもある雄町を使った純米吟醸は、ボリュームがありつつキレのある味わい。スッキリと洗練された香りと旨味、酸味のハーモニーを堪能できます。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
2-6.モダン仙禽 雄町 火入
栃木県の日本酒「仙禽(せんきん)」のモダンシリーズは、甘みと酸味が特徴的な銘柄です。口に含むと米の旨味がジュワッと広がっていきます。
モダン雄町も、まるみがありつつフレッシュ感が残る味わいが印象的。白桃のようなさわやかな香りも楽しめます。ほどよく冷やし、ワイングラスで味わうのがおすすめです。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
2-7.白隠正宗 純米吟醸 生もと 雄町
手間ひまかかる生酛づくり(きもとづくり)で仕込んだ日本酒です。雄町らしいしっかりとした米の旨味、生酛由来のクリーミーな味わいを楽しめます。
「白隠正宗(はくいんまさむね)」らしいキレの良さもあり、飲み飽きすることがありません。好みの食事、気の合う仲間と一緒にゆったり楽しみたくなる銘柄です。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
2-8.貴 純米吟醸 雄町50
岡山県産雄町を100%使用した純米吟醸です。米の旨味が活きた、しっかりとした飲みごたえを楽しめます。
ボリューム感ある味わいは、肉料理との相性ばつぐん。ぬる燗にして、少しの味の濃いおつまみと合わせるのもおすすめです。酒米雄町の魅力をたっぷりと堪能できます。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
2-9.出羽桜 純米吟醸 雄町
山形県の「出羽桜(でわざくら)」は香り豊かな吟醸造りで知られる銘柄です。雄町を山形酵母で仕込んだお酒は、上品で華やかな香りを楽しめます。
冷やでも燗酒でも美味しいこともうれしいポイント。ぬる燗してお猪口に注げば、雄町のやさしい香りがふわりと広がります。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
2-10.会津娘 純米吟醸 雄町
福島県の「高橋庄作酒造店」が造る年に1度の限定商品です。岡山県産雄町を使用し、ふっくらとした濃醇な味わいを生み出しています。
香りは甘く、完熟したメロンのよう。ほのかな苦みと酸味が後口をキリッと引き締めます。冷やしすぎず、常温からぬる燗の温度帯で楽しむのがおすすめです。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
2-11.鳳凰美田 純米吟醸 雄町 大地 火入
「鳳凰美田(ほうおうびでん)」は華やかな香りが人気の栃木の日本酒です。赤磐雄町で仕込んだ純米吟醸は、雄町ファンのみならず鳳凰美田ファンからも人気を集めています。
口当たりは実になめらか。雄町ならではの旨味が広がったかと思うと、スーッと喉元に流れていきます。これぞ鳳凰美田というフルーティーな香りも楽しめる1本です。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
2-12.ゆきの美人 純米吟醸 雄町 火入
秋田の地酒「ゆきの美人」は、マンションの1階というめずらしい立地で造られています。温度に左右されることなく、年間通してフレッシュな味わいを実現する銘柄です。
雄町を100%使用した純米吟醸も、やさしくジューシーな味わい。米の旨味とおだやかな香り、酸味が絶妙にマッチしています。冷やしすぎず、常温やぬる燗でまろやかな美味しさをお楽しみください。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
2-13.麓井 生もと 純米吟醸 雄町 生
岡山県産雄町を使い、生酛造りで仕上げた日本酒です。火入れと呼ばれる加熱処理をせず、生の状態で瓶詰めしています。
加水調整もしていない生酒は、フレッシュで力強い味わい。しぼりたての濃醇な旨味がジュワッと口の中に広がります。飲みごたえのある雄町の魅力を存分に感じられる銘柄です。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
2-14.不動 純米吟醸 雄町 生原酒
備前雄町を使い、じっくりと低温発酵させた日本酒です。搾ったあとは、約6ヶ月もの間静かに熟成させています。
雄町由来の重厚な旨味がありつつ、口当たりはまろやか。火入れをしていない生酒ならではのジューシーな味わいも活きています。開栓後、少しずつ増していく旨味やコクの変化を楽しむのもおすすめです。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
2-15.醸し人九平次 純米大吟醸 自社栽培赤磐雄町 協田(きょうでん)
「協田(きょうでん)」の名の通り、岡山県の農家とともに協力し、育てた雄町で生まれたお酒です。兵庫県でも山田錦の自社栽培をおこなう蔵は、2014年に岡山県に蔵人を派遣。地元農家の指導のもと米作りを学び、2015年から9反の田を任される運びとなりました。
グレープフルーツのような酸味と甘みが際立つ味わいは、これぞ九平次といった印象。精米が難しい雄町を40%まで磨き上げ、辛口白ワインを思わせるシャープな美味しさを生み出しています。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
2-16.賀茂金秀 純米大吟醸 雄町13 瓶火入れ
加水をしていない原酒でありながら、アルコール度数は13%。しっかりと旨味がありつつ、日本酒初心者でも飲みやすい純米大吟醸です。
火入れと呼ばれる加熱処理をほどこしたお酒は、舌触りなめらか。フルーティーな香りはワイングラスに注いで楽しむのもおすすめです。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
2-17.くどき上手 純米大吟醸 備前雄町44%
精米の難しい雄町を44%まで磨いて仕込んだ日本酒です。純米大吟醸ならではの、華やかでフルーティーな香りが際立ちます。
酸味は控えめ、甘みとコクがありつつ後味はスーッときれいに引いていきます。特約店のなかでも限られた店舗のみ扱うプレミアム商品のため、見つけた際はぜひ一度お試しください。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
2-18.加茂錦 荷札酒 純米大吟醸 備前雄町 生
雄町を使用して仕込み、ろ過や火入れ、加水をせずに仕上げた日本酒です。日本酒ファンからも評判の荷札酒シリーズの1本になります。
第一印象はきわめてフレッシュでジューシー。シュワシュワッとした微発泡感も感じられます。飲み進めると雄町らしい豊かな味わいが広がり、ついついもう1杯とグラスが進む美味しさです。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
2-19.満寿泉 純米吟醸 雄町 Limeted Edition 火入
LIMITED EDITIONは「満寿泉(ますいずみ)」の酒販店限定シリーズです。春には生酒、秋には火入れをしたお酒が販売されています。
使用しているのは岡山県産の雄町です。ギュッと濃縮された甘みと旨味、酸味が活きた味わいに仕上がっています。常温からぬる燗でやわらかな味わいを楽しむのがおすすめです。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
2-20.赤武 AKABU 純米吟醸 雄町
岩手県の人気蔵「赤武(あかぶ)酒造」が手がける雄町を使った日本酒です。赤武らしいフルーティーな香り、キレの良さを堪能できます。
雄町由来のしっかりした旨味がありつつ、後口はあくまでもシャープ。杜氏が目指す「軽快さに深みのある味わい」を堪能できます。人気の高さも納得のコストパフォーマンスに優れた1本です。
(出典元:IMADEYA ONLINE STORE)
まとめ
雄町は山田錦や五百万石といった人気酒米のルーツとなる品種です。古来から続く日本酒の美味しさを知るために最適な酒米といえるかもしれません。
ふくよかな味わいを基調に、雄町が生み出す日本酒の個性は蔵によってさまざま。ぜひ、雄町をキーワードにお気に入りの1本を見つけてみてはいかがでしょうか。