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日本酒のラベルに見る「あらばしり」「中取り」「責め」とは?

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日本酒のラベルに見る「あらばしり」「中取り」「責め」とは?

執筆者情報

shiho
お酒とねこでできているライター。日本酒、ウイスキー、ワイン…すべてのお酒をこよなく愛す。酒好きが高じて利酒師免許を取得。 Instagramはこちら https://www.instagram.com/ushinaaa/

日本酒のラベルで「あらばしり」や「中取り」といった文字を見かけたことはないでしょうか?実はこれは、搾ったお酒を採ったタイミングをあらわすもの。わざわざ明記するのは、きちんと理由があるのです!

今回は「あらばしり」や「中取り」、「責め」の特徴について解説します。それぞれの違いを知れば、いつものお酒がより味わい深く美味しいものになりますよ。

1.搾ったお酒を採るタイミングをあらわす「あらばしり」や「中取り」「責め」

「あらばしり」や「中取り」、「責め」という言葉は、搾ったお酒を採るタイミングをあらわしています。

お酒を搾ったとき、最初に出てくる部分が「あらばしり」。次に出てくるのが「中取り」、最後が「責め」と呼ばれる部分です。

あえて名前が付いているのは、採るタイミングによって異なる個性が生まれるから。それぞれの特徴を理解するために、まずは「お酒を搾る」という工程について確認していきましょう!

1-1.そもそも「お酒を搾る」とは?

液体である日本酒は、白くどろどろとした醪(もろみ)を搾ることでできあがります。醪とは、米や米麹、酒母(しゅぼ)、水などをアルコール発酵させたもの。醪を袋に入れてぎゅーっと搾り、袋から染み出た液体を集めたものが日本酒です。

この工程は、「搾り」または「上槽(じょうそう)」と呼ばれ、主な搾り方として次の5つが挙げられます。

  1. 薮田式(やぶたしき)自動圧搾機を用いた搾り
  2. 槽搾り(ふなしぼり・ふねしぼり)
  3. 袋吊り
  4. 遠心分離
  5. 氷結取り®

ここでは、それぞれの方法をかんたんに紹介していきますね。

1.薮田式(やぶたしき)自動圧搾機を用いた搾り

機械の名をとり「ヤブタ式」と呼ばれる代表的な方法です。自動圧搾機は、布状の袋が何枚にも連なるアコーディオンのような形をしています。そこへグーッと両側から圧力を加え、絞り出した液体が日本酒です。搾ったあとの袋には、板状になった酒粕が残ります。

2.槽搾り(ふねしぼり・ふなしぼり)

槽搾りでは、大きな長方形の槽(ふね)を使用します。槽のなかに醪を入れた酒袋をいくつも積み重ね、ゆっくりとお酒を絞り出す方法です。時間はかかるものの、無理な圧力がかからないぶん雑味のない日本酒ができあがります。主に、大吟醸のような繊細な香りを持つお酒に用いられる上槽方法です。

3.袋吊り

袋吊りは、醪を入れた酒袋を吊るし、ぽたぽたとこぼれる液体を集める方法です。ラベルには「雫取り」と書かれることもあります。重力に任せゆっくりとお酒を採るため時間がかかり、採取できる量も決して多くはありません。そのため、袋吊りで採ったお酒の多くは特別な商品として扱われます。

4.遠心分離

遠心分離は、国内でも数少ない上槽方法です。醪を遠心分離機にかけ、液体と固体に分離させていきます。布を使わないため布由来の雑味がなく、圧力をかけないぶん、口当たりなめらかで香り豊かなお酒に仕上がるのが特徴です。

5.氷結取り®

氷結取り® は、「風の森」ブランドで知られる奈良県の油長酒造が特許取得している上槽方法です。醪が発酵しているタンク内で液体と固体とに分離させ、上澄み部分を抽出します。機械や布にまったく触れないため醪に余計なストレスがかからず、雑味のないクリアな酒質が生まれます。

2.「あらばしり」「中取り」「責め」の味わいの違い

前述したように、お酒は採取するタイミングによって「あらばしり」、「中取り」、「責め」の3つの部位にわかれます。それぞれの特徴や味わいについて知れば、お酒選びがもっと楽しくなりますよ。

2-1.フレッシュ感あふれる「あらばしり」

あらばしりは、上槽工程で醪から自然と流れ出る部分です。滓(おり)と呼ばれる固形物が含まれているため、あらばしりは薄く濁っています。そのぶんフレッシュで、香りと味の個性が感じられるお酒です。アルコール度数は若干低く、ピチピチとした微発泡感も楽しめます。

あらばしり

2-2.味と香りのバランスに優れた「中取り」

あらばしりが終わると、透明な中取り部分が出始めます。「中汲み」とも呼ばれる中取りは、もっとも酒質が安定しているといわれる部分です。味と香りのバランスに優れ、品評会の出品酒として採用されることもあります。贈答用の日本酒選びに迷うときや、蔵こだわりの1本を飲みたいというときにおすすめです。

中取り

2-3.アルコール度数高め濃醇な味わい「責め」

責めは、上槽の最後にさらに圧力をかけて搾り出した部分です。あらばしりや中取りに比べ、アルコール度数は高くなります。雑味があり味わいは荒いといわれることから、市場に出回る機会は多くありません。しかし、責めならではの濃醇な味わいも飲み手によっては魅力のひとつとなるでしょう。

まとめ

米と米麹というシンプルな材料から、さまざまな味わいが生まれる日本酒。搾るお酒を採るタイミングによって、さらに味が変化するなんて驚きですよね。

ラベルに「あらばしり」や「中取り」とあるときは、そのことを知って味わってほしいという蔵の想いが込められているということ。ぜひ、それぞれの味の個性を感じながら、日本酒の世界を楽しんでみてください。