日本酒の「冷酒」と「冷や」。字面はよく似ていますが、実は違う温度帯のお酒です。具体的にどう違うの?と飲食店のオーダー時に迷うこともあるのではないでしょうか。
そこで今回は、冷酒と冷やの違いについて解説!具体的な温度帯やおすすめの料理、酒器などもご紹介します。それぞれの違いを知れば、日本酒をもっと美味しく自由に楽しめるようになりますよ。
目次
1.日本酒の「冷酒」と「冷や」の違いは温度
日本酒の「冷酒(れいしゅ)」と「冷や(ひや)」の違いは、温度です。冷酒はつめたく冷やしたお酒。冷やは、常温のお酒を意味します。
飲食店などで冷たい日本酒が飲みたくて「冷やをください」と注文したはずが、冷えていないお酒がでてきたら?
もしかしたら、それは「冷や=常温」だったからかもしれません。まずは、それぞれの違いをしっかり確認していきましょう。
1-1.「冷酒」は冷やした日本酒
「冷酒」は、つめたく冷やした日本酒のことです。例えば、酒販店などで冷蔵庫に入っているお酒は、すべて冷酒の状態で販売されていることになります。飲食店でも、冷酒と書かれている場合、提供されるのは冷たいお酒です。
また、日本酒には加熱処理をしていない「生酒(なまざけ・きざけ)」と呼ばれるタイプがあります。鮮度が持ち味の生酒は、冷蔵保管し冷酒で味わうのが一般的です。
1-2.「冷や」は常温の日本酒
「冷や」は、常温の日本酒で「冷や酒(ひやざけ)」と呼ばれることもあります。常温のお酒を冷やと呼ぶのは、冷蔵庫がなかった時代の名残です。当時のお酒は常温か燗酒かの2タイプしかなく、温かい「燗酒」以外のお酒はすべて「冷や」と呼ばれていました。
常温といっても、夏と冬では温度はまったく異なります。そのため、冷やはその時期にあわせた日本酒本来の味わいを楽しめることが特徴です。
2.日本酒の温度帯ごとの呼び方
日本酒の呼び方は大きく3つ。こちらで紹介している「冷酒」と「冷や」、そして「燗酒」にわかれます。
さらに、冷酒と燗酒は、温度帯ごとの呼び方が存在するのが日本酒のおもしろいところ。飲食店で冷酒を頼むときも、「雪冷えでお願いします」と伝えればぐっと日本酒通な雰囲気になりますよ。
2-1.冷酒の温度別の呼び方
雪冷え(ゆきびえ)
雪のように冷えていることを意味する雪冷えの温度は5℃。香りは抑えられ、シャープな味わいが引き立ちます。
花冷え(はなびえ)
花冷えは、花もつめたく冷える10℃前後の温度帯です。また、春先の寒の戻りを意味する言葉としても用いられます。
涼冷え(すずびえ)
涼やかなつめたさを意味する涼冷えは、15℃前後。華やかな香りとともに、スッキリとした飲み口を楽しめる温度帯です。
2-2.燗酒の温度別の呼び方
日向燗(ひなたかん)
ぽかぽかとした日向をイメージさせる日向燗は、30℃前後の日本酒です。燗酒のなかでもいちばん低い温度帯で、お酒本来の味、香りとともにやわらかな旨味を楽しめます。
人肌燗(ひとはだかん)
人肌燗は、35℃前後の温度帯です。唇に当てたとき「ちょっとぬるいかな」と感じる温度で、まろやかな米の旨味が口のなかでゆっくりと広がります。
ぬる燗
燗酒というと「ぬる燗」をイメージする人も多いのではないでしょうか。実はこのぬる燗、「ぬるい」と言いつつ温度は40℃前後。口にしたとき、やや熱さを感じる温度帯です。
上燗(じょうかん)
ぬる燗の次に熱いのが、45℃前後の上燗です。唇に触れると、しっかりと熱さが感じられます。温もりとともに、お酒のキレ味も楽しめますよ。
熱燗(あつかん)
寒い時期にぜひおすすめしたいのが、50℃前後の熱燗です。お猪口に注げばふわ~っと湯気がたち、米の香りが広がります。日本酒のキリッとした旨味を楽しみたい方に好まれる温度帯です。
飛びきり燗
55℃をこえる日本酒は、飛びきり燗と呼ばれます。飛び切り熱いから飛び切り燗、と考えるとなんだかおもしろいですよね。熱さにより、アルコールの刺激やお酒の香りはより一層際立ちます。
3.冷やにおすすめの日本酒と楽しみ方
日本酒は、原料や製造方法によってさまざまな種類にわかれます。なかでも、冷やにおすすめの種類は以下の2つです。
- 本醸造酒
- 純米酒
これらのお酒は香りがおだやかで、本醸造酒はスッキリした味わい、純米酒はまろやかな旨味を常温で楽しめます。おすすめの料理とのペアリングや酒器もご紹介していきますね。
3-1.冷やは和食とのペアリングがおすすめ
冷やは和食と相性の良いお酒です。特に、ブリ大根や焼き魚、煮物といった和食の定番とのペアリングがおすすめ。常温のやわらかな旨味が料理に寄り添い、その味わいを引き立ててくれます。本醸造酒や純米酒は燗酒でも美味しく、気分にあわせて温めて楽しめますよ。
3-2.冷やの日本酒におすすめの酒器
冷やの日本酒は、お猪口やぐい呑みで味わうのがおすすめです。お猪口は燗酒にも使われる小さめの酒器。ぐい呑みは、お猪口よりも若干大きなサイズの酒器です。
材質は陶器や磁器などの焼き物が一般的ですが、常温の冷やであればガラス製の酒器でも楽しめます。その日の気分や料理にあわせ、好みの酒器とコーディネートしてみてくださいね。
4.冷酒におすすめの日本酒と楽しみ方
冷酒には、フルーティーな香りを楽しめる以下のような日本酒がおすすめです。
- 吟醸酒
- 大吟醸酒
- 純米吟醸酒
- 純米大吟醸酒
吟醸(ぎんじょう)と付くお酒は華やかな香りが特徴的で、適度に冷やすとクリアな味わいがより引き立ちます。ただし、冷やしすぎると香りが飛んでしまうため気を付けてくださいね。
また、前述したように「生酒」と書いてあるお酒も冷酒がおすすめです。そのほか、アルコール度数が高めの「原酒」は、ロックスタイルにするとぐっと飲みやすくなります。
4-1.冷酒におすすめの料理
クリアな飲み口を楽しめる冷酒には、淡白な味わいの料理がおすすめです。和食であれば、刺身や冷奴、枝豆のようなメニューが良く合います。ロックのようにしっかり冷やしたお酒は、唐揚げやフライドポテトのような揚げ物と合わせても美味しいですよ。
また、スッキリした味わいの冷酒は、カルパッチョや白身魚のムニエル、フレッシュチーズを使ったメニューと好相性。日本酒を飲み慣れないうちは、白ワインにあわせるイメージで料理を選んでみてくださいね。
4-2.冷酒におすすめの酒器
冷酒には、ガラス製の酒器がおすすめです。ひんやりとした温度帯を目や肌で感じられます。
華やかな香りの冷酒は、ぜひワイングラスに注いで味わってみてください。ぽってりとしたグラスの形状が、お酒の香りを包み込んでくれます。ガラス製のグラスは口あたりがスムースで、シャープな飲み口も楽しめますよ。
まとめ
似ているようで実はまったく違う「冷酒」と「冷や」の世界。温度により変わる香りや味わいは、日本酒ならではの魅力です。それぞれの特徴を知っておくと、さらに自由に日本酒の世界を楽しめます。
より美味しく味わうには、料理や酒器にもひと工夫。「今日はお気に入りのぐい吞みで冷やの気分」「今夜は冷酒と冷奴できゅーっと一杯」など、ぜひ思い思いに美味しい日本酒を味わってくださいね。