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稲をくぐり抜けた水。東洋美人を解説!

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稲をくぐり抜けた水。東洋美人を解説!

多くの日本酒ファンを魅了するお酒、「東洋美人(とうようびじん)」。個性的なネーミングが忘れられず「どんな日本酒なんだろう?」と気になることもあるのではないでしょうか。日本酒は種類が多いだけに「どれを選べばいいの?」と迷ってしまうこともありますよね。

そこで今回は、山口県から世界へとその名が知られる「東洋美人」についてご紹介します!日本酒を飲みなれない方を意識して造られたお酒のため、日本酒ビギナーもぜひ参考にしてくださいね。

1.日本酒の東洋美人とは

「東洋美人(とうようびじん)」は、山口県の澄川酒造場(すみかわしゅぞうじょう)が造る日本酒です。米の丸みと甘み、旨味にあふれ、澄み切った清らかな味わいは「稲をくぐりぬけた水」とも呼ばれています。

1-1.東洋美人の名前の由来

東洋美人という名は、初代が亡き妻を想い名付けたといわれています。初代の想いとともに、蔵の伝統は現代まで受け継がれてきました。

2016年(平成28年)には「東洋美人 純米大吟醸 壱番纏(いちばんまとい)」が日露首脳会談の夕食酒として振る舞われます。さらにはJALファーストクラスの提供酒として採用されるなど、国内から世界へとその名が知られる日本酒です。

1-2.「0杯から1杯へ」を目標に造られる、初心者にもおすすめの銘柄

東洋美人は「0杯から1杯へ」を目標に造られるお酒です。蔵元は「日本酒ファンのすそ野を広げたい」という想いから、2007年(平成19年)に全国各地の蔵元、酒販店とともに「和醸和楽(わじょうわらく)」を結成。まだ美味しい日本酒を飲んだことがない人に最初の1杯を提供しようと、さまざまな活動に取り組んでいます。

また、東洋美人は日本人のDNAに響く、米の旨味にあふれる味わいが魅力。香りも華やかでフルーティーと、日本酒初心者にもおすすめの銘柄です。

2.東洋美人を造る「澄川酒造場」とは?

澄川酒造場は、1921年(大正10年)に創業した酒蔵です。蔵のある山口県の中小川は、萩市の中心部から30kmほど離れた島根県との県境近く。すぐ近くを田万川が流れ、裏山からは豊富な石清水が湧きだします。

山口の小さな蔵から世界へと羽ばたくお酒を手がけたのは、4代目蔵元「澄川宜史(たかふみ)」氏。思いもよらぬ大災害を乗り越え、現在も地域に根差した酒造りを続けています。

2-1.「命を削る酒造り」に邁進、4代目「澄川宜史」氏

蔵が転換期を迎えるのは、4代目「澄川宜史」氏が蔵元杜氏に就任してからのこと。東京農業大学に在学していた宜史氏は、3年時の現場実習で高木酒造の「高木顕統(あきつな)」氏のもとを訪れます。

顕統氏は「幻の酒」とも呼ばれるプレミア酒「十四代」を誕生させた人物。端麗辛口ブームまっただなかの日本酒業界に芳醇旨口という新たなジャンルを生み出し、一躍脚光を集めていました。

宜史氏は顕統氏の技術力はもちろん、厳しい経営を立て直そうとする「命を削る酒造り」に感銘を受けます。

大学卒業後すぐに蔵へ戻ると、同じく経営状態が厳しかった澄川酒造場の変革に挑戦。「良い米で良い酒を造らないと、地方の酒蔵は生き残っていけない」と、地元農家とともに酒米「山田錦」の栽培を開始します。

当時は販路拡大のため、夜行バスを貸し切って東京へと日本酒を運び、各飲食店を回り歩いたそう。やがて東洋美人の美味しさは口コミで広がり、東京から全国へと多くのファンを生み出しました。

2-2.自然災害を乗り越え奇跡の再開へ

2013年(平成25年)7月28日、山口県を未曾有の大災害が襲います。集中豪雨により、蔵の目の前を流れる田万川が氾濫。冷蔵庫で貯蔵していた1万本以上の東洋美人が水に流されてしまったのです。

あたりは一面がれきや土砂であふれ、蒸し器などの機械も使用できなくなるなど一時は廃業をも危ぶまれる事態でした。

ところが、事態を聞きつけた全国の仲間約1,500人が現地へと集結。炎天下のなか復旧作業を続け、被災からわずか5カ月で仕込みを再開する運びとなったのです。

同志たちの熱い想い、酒造りをできる喜びを胸に、翌年1月には「原点」と名付けた日本酒を発売。5月には原点から一歩前進したことを意味する「東洋美人 ippo(一歩)」が誕生しました。

さらに、同年10月には世界最多の出品数を誇る「SAKE COMPETITION 2014」の「Free Style Under 5000」部門でグランプリを受賞。多くの仲間たちの協力と蔵のたゆまぬ努力により、澄川酒造場は完全復活を遂げたのです。

2021年(令和3年)創業100周年を迎えた酒蔵の壁には、被災当時に同志たちが残したメッセージが変わらず残されています。

3.東洋美人の代表的な銘柄

東洋美人は国内外で評価の高い日本酒です。ここからは数々の受賞歴を誇る銘柄、そして蔵の再起につながった銘柄の数々を紹介します。飲食店や酒販店などで見つけた際は、ぜひ手にとってみてくださいね。

3-1.東洋美人 純米大吟醸 壱番纏

地元で栽培された山田錦を40%まで精米。小さく光る酒米でていねいに造り上げた東洋美人の最高峰です。ほどよく冷しグラスに注げば、蔵が目指す華やかでフルーティーな香りがより一層引き立ちます。

評判

2016年の日露首脳会談時、会場となった高級老舗旅館で振る舞われた日本酒です。その味に魅了されたプーチン露大統領は、思わずその銘柄を尋ねたそう。東洋美人のフラッグシップとして名高い銘柄です。

東洋美人 純米大吟醸 壱番纏

(出典元:株式会社澄川酒造場

3-2.東洋美人 ippo 山田錦

「原点」の次に発売された日本酒です。原点から一歩前進したという意味を込め「ippo(一歩)」と名付けられました。先入観にとらわれず、自由にお酒を楽しんでほしいという思いから、あえて純米大吟醸といった特定名称酒を表示せず販売しています。

評判

青リンゴのように甘くさわやかな香り、なめらかな口当たりが際立つ日本酒です。「SAKE COMPETITION」では2017年から3年連続の受賞歴を誇ります。全国の東洋美人ファンがその味に酔いしれたことは言うまでもありません。

東洋美人 ippo 山田錦

(出典元:はせがわ酒店

3-3.東洋美人 地帆紅

「地帆紅(じぱんぐ)」は東洋美人で唯一となる大吟醸酒です。華やかな香りとともに芳醇な旨味が広がり、スッと消えていくキレの良さも感じられます。絶妙な味のバランスが際立つ1本です。

評判

マルコ・ポーロの「東方見聞録」で黄金の島として紹介された「ジパング(日本)」。東洋美人の「地帆紅(じぱんぐ)」もまた、「SAKE COMPETITION 2014」のFree Style Under5000で1位に光輝いた銘柄です。720mlで1,000円台と、圧倒的なコストパフォーマンスも魅力のひとつといえるでしょう。

東洋美人 地帆紅

(出典元:株式会社澄川酒造場

3-4.東洋美人 特吟 純米大吟醸 播州愛山

幻の酒米とも呼ばれる兵庫県播州産の「愛山」を使用。米の甘さがぎゅっと凝縮された1本です。「特吟」の名にふさわしく、金箔ロゴがあしらわれた上質な白い皮袋に包まれています。繊細な味わいの和食はもちろん、洋食とのペアリングもおすすめです。

評判

エレガントかつリッチな味わいは贈答用にもぴったり。ボトルを包み込む皮袋が贅沢な気分を演出してくれます。お酒好きな人へのプレゼントにも喜ばれる逸品です。

東洋美人 特吟 純米大吟醸 播州愛山

(出典元:株式会社澄川酒造場

3-5.東洋美人 限定純米吟醸 醇道一途 山田錦

「原点」「ippo(一歩)」に続く澄川酒造場のニューシリーズです。「醇道一途(じゅんどういちず)」という名は、澄川宜史氏が修行時代、恩師である丹波杜氏「米田幸一」氏から受け継いだ言葉。山田錦をはじめ、月ごとに酒米を変えながら新たな味を生み出しています。

評判

山田錦を使用した純米吟醸は「醇道一途」シリーズの第一弾。熟れたメロンを思わせる芳醇な香りと、フレッシュな旨味が際立ちます。被災を乗り越え、新たな時代へとまっすぐ歩を進める蔵の熱意が込められた1本です。

東洋美人 限定純米吟醸 醇道一途 山田錦

(出典元:株式会社澄川酒造場

まとめ

2021年に創業100年を迎えた蔵が目指すのは、あくまでも実直な王道ともいえる酒造り。4代目澄川宜史氏は「飲む人の記念に残るお酒を造りたい」と語ります。

「0杯から1杯へ」を目標としたフルーティーな香りの東洋美人は、日本酒好きはもちろん、日本酒を飲みなれない方にもおすすめの銘柄。

華やかな香りが舞い上がるグラスを口にすれば、そこには忘れられない美味しい日本酒との出会いが待っているかもしれません。