日本酒でよく耳にする「甘口」「辛口」という味わいの表現。「具体的に何が違うの?」「甘口・辛口の基準とは?」とふしぎに思う方も多いのではないでしょうか。
甘口・辛口は、日本酒の味わいを示す指標のひとつ。と同時に、人が感じる「甘い」「辛い」という印象には、日本酒のさまざまな要素が関係しています。
そこで今回は、日本酒の「甘口」「辛口」の味わいをくわしく解説!甘辛の指標である「日本酒度」や、甘口・辛口に影響する要素などについて紹介します。
目次
1.日本酒の「甘口」「辛口」とは?
日本酒の味わいを表す「甘口」「辛口」という言葉。
「お酒が辛いってどいうこと?」「甘口のお酒といわれたけど、甘いと思わなかったなぁ」など、疑問に感じたことはないでしょうか。
「日本酒って難しい」といわれる理由のひとつでもある、甘口辛口問題。まずは「甘口」「辛口」の意味合いについてざっくりと理解していきましょう。
1-1.甘口は糖分量の多いお酒
日本酒は、甘味要素のひとつである「糖」を含むお酒です。これは、日本酒が米のデンプンを糖化させて造るお酒であることに由来します。
日本酒は、「糖」をエサに「酵母」がアルコール発酵することでできあがります。この原理は、日本酒に限らずワインやビールといったお酒も同様です。
一般的に日本酒は、この糖分が多いほど「甘口」のお酒に位置付けられます。反対に、糖分が少ないものは「辛口」と呼ばれるお酒です。
1-2.辛口とは「辛さ(Spicy)」ではなく「キレ(Dry)」のこと
「辛口」というと、唐辛子のピリリとした辛さや、塩辛さを思い浮かべることが多いのではないでしょうか。
ところが、日本酒造りには香辛料も塩分も使用されていません。辛味や塩辛さを感じる要素がないのです。
「辛くないのに辛口ってどういうこと?」と疑問に感じるのも当然。
日本酒で使う「辛口」は、ピリリとした辛さ(Spicy)を意味するのではなく、キレのあるドライテイストを表す言葉だからです。
実際には、人が感じる「甘さ」や「キレ味」には、糖分量だけでなくさまざまな要素が関係します。後の章でくわしく解説していきますね。
2.甘口・辛口の指標に使われる「日本酒度」
日本酒の「甘口」「辛口」は、お酒に含まれる糖分量に由来すると前述しました。
この、糖分量を示す数値が「日本酒度」です。日本酒度は「+(プラス)」と「-(マイナス)」で表記され、プラスであるほど辛口、マイナスであるほど甘口のお酒に位置付けられます。
「糖分が多いのに、どうしてマイナス表記なの?」とふしぎに感じることもあるかもしれません。
これは、日本酒度が水との比重をもとに定められていることに関係します。
糖分を含む日本酒は水よりも重たくなるため、水の方が軽いことを示す「-」。反対に、糖分が少ない日本酒は軽く、水の方が重たくなるため「+」表記になるのです。
ただし、ここで注意したいのが、日本酒度はあくまでも甘辛の度合いを示すひとつの目安でしかないということ。
日本酒の甘口・辛口の味わいには、糖分量以外にも、次の章で紹介するさまざまな要素が影響しています。
3.甘口・辛口に影響する5つの要素
日本酒を飲んだ時「甘いな」「辛いな(ドライだな)」と感じる理由には、日本酒度以外にも次の5つの要素が関連しています。
- 香り
- 苦味
- 発泡感
- 酸度
- アミノ酸度
特に、香りや苦み、発泡感は自分の好みを見極めやすい要素のひとつです。「甘口」「辛口」表記のほか、日本酒を選ぶ際の参考にしてみてください。
3-1.香り
フルーティーな香りの日本酒は、糖分量が少なくても甘く感じられることがあります。
白桃やバナナといった果実のような香りが強いほど「甘い」というイメージを持つことが多いでしょう。反対に、香りが控えめでアルコール感が強い日本酒は「辛口」に感じやすい傾向にあります。
3-2.苦味
日本酒の味わいには、甘味や旨味のほか苦味が含まれています。苦味の強さは刺激となって舌に伝わり、糖分量が多くても「辛口」に感じやすいことが特徴です。
一方、苦味や渋味などがなく、なめらかな口当たりの日本酒は「甘口」に感じることが多くなります。
3-3.発泡感
スパークリング日本酒のように、シュワッと発泡感のあるお酒は、のど越し良くドライテイストに感じやすい傾向にあります。
加熱殺菌処理をしておらず、ガス感のある生酒も同様です。シュワシュワとした微発泡感が刺激となり「辛い」「キレがある」と感じる要素のひとつとなるでしょう。
3-4.酸度
「酸度」は、日本酒に含まれる乳酸やコハク酸、リンゴ酸といった有機酸量を表す数値です。
日本酒度が同じお酒の場合、酸度が高いと甘味が打ち消され辛口に感じられます。反対に、酸度が低いお酒は甘くスッキリとした味わいに感じられるのが特徴です。
3-5.アミノ酸度
「アミノ酸度」は、日本酒に旨味やコクを与えるアミノ酸の量を表す数値です。アミノ酸が多く旨味の強い日本酒は、糖分量が少なくても「甘い」と感じられることがあります。
「アラニン」「アルギニン」「グルタミン酸」「アスパラギン酸」をはじめ、日本酒に含まれるアミノ酸はおよそ20種類。旨味や苦味、酸味や渋味が複雑に絡み合い、日本酒の奥深い味わいを生み出す大きな要素となっています。
4.甘口・辛口の感じ方は人それぞれ
日本酒のラベルにある「甘口」「辛口」は、日本酒に含まれる糖分量を表しています。
一方で、飲み手が感じる「甘い」という印象には、前述したように香りや苦味、旨味といったいくつもの要素が関係しているのです。
例えば、日本酒度プラスの「辛口」でフルーティーな香りお酒の場合。飲む人によって次のような捉え方が生まれます。
とってもフルーティーな香り。甘口のお酒だね。
華やかな香り♪ 後口スッキリ辛口タイプね。
そう、つまり「甘口」「辛口」の感じ方は人それぞれということ。日本酒の楽しみ方を広げるには「甘口」「辛口」という言葉にしばられすぎないことがポイントです。
「後口がスッキリした日本酒が好き」「どっしり飲みごたえのあるお酒が好み」「香りが華やかな銘柄が良いな」など、ぜひ思い思いに日本酒の個性を楽しんでみてください。
まとめ
米と米麹を発酵させて造る日本酒は、さまざまな味わいを持つお酒です。特に、近年は甘酸っぱさが際立つお酒や微発泡感のあるお酒など、さまざまなタイプの日本酒が誕生しています。
日本酒選びに迷ったときには、ラベルの「甘口」「辛口」表記も参考のひとつ。難しい考えにとらわれることなく、自由に美味しい日本酒を楽しんでみてください。