今回は「ワンカップシリーズ」第5弾、新潟県長岡市で1897(明治30)年創業のお福酒造「お福正宗 槽垂原酒 オフクカップ」です。
お福酒造について
創業者は岸五郎という方で、当初は岸五郎商店という名称でしたが、1949(昭和24)年にお福酒造となりました。ところで、この岸五郎さんが現在の日本酒造りに非常に貢献されているのです。
岸五郎さんは、明治25年7月に東京工業学校(現東京工業大学)を卒業後、明治26年に埼玉県久喜町の荒井伊兵衛酒造場で醸造実習しながら醸造用水加工や酵母の培養についての研究を続け、その集大成として明治27年、酒造りの専門書「醸海拾玉(じょうかいしゅうぎょく)」を発刊。
この「醸海拾玉」は当時、杜氏の勘に頼っていた酒造りを化学的見地から説いた酒造り教本で、特に醸造用水の加工研究は、軟水による酒造りをいち早く可能にしました。
また、初めて酒母製造に乳酸を添加応用し、これが醸造界の大発明といわれ現代酒造りの基本となっている「速醸もと(そくじょうもと)」として全国の酒蔵で使用されるようになったということです。
そう、現在では酒造りの主流になっている乳酸を添加する方法を考え出した人だったんです。結果的に生酛造りが減ってしまったということになりますが、当時、日本酒の生産量は爆発的に増えたのではないでしょうか。「お福正宗」はその「速醸もと」を一貫して採用し、主に地元長岡市の契約農家で作られた米を使用して醸されています。
「お福正宗 槽垂原酒 オフクカップ」
国産米100%使用で精米歩合は不明、醸造アルコール添加でアルコール度数は19度と高いです。カップには「濃厚辛口」とありますが、若干甘めです。アル添なので後口はスッキリ目ですが、キレキレな感じではありません。越後湯沢から上野までの間にこれを2本空けたらちょうどいい気分ということになりそうです。お試しあれ。