今回は、佐賀県鹿島市で大正末期創業の富久千代酒造「鍋島 純米吟醸 きたしずく」です。北海道の米を使うのは初めてですかね。
富久千代酒造について
「佐賀県」と言えば、九州の県を挙げろと言われて、なかなか名前が出てこないほうだと思いますが、一人当たりの日本酒消費量でいうと九州ナンバーワン。全国でも13位と15位の東京より上位の酒どころです。ちなみにベスト3は新潟、秋田、石川、ワースト3は鹿児島、沖縄、宮崎。ワーストといってもその分、焼酎や泡盛がありますからね。
そんな佐賀県を代表する銘柄となった「鍋島」ですが、もともと「富久千代」と「泉錦」という銘柄を醸していました。現在の飯盛直喜蔵元杜氏が蔵を継いだ1988年は日本酒業界にとって最も厳しい時代で、唯一無二の商品がなくては生き残れないと感じた飯盛蔵元杜氏が目指した酒が1998年4月に完成。公募で名称を決めることになったのが「鍋島」でした。江戸時代の鍋島藩からきています。以前、ラベルの左に書いてあった三十六萬石も「鍋島三十六萬石」から。また佐賀県は肥前とも呼ばれましたので、肥州という名前を付けている商品もあります。
「鍋島 純米吟醸 きたしずく」
北海道産きたしずく100%使用で50%精米です。佐賀県は酒どころと言いましたが、米どころでもあります。それなのにあえて北海道の米を使うのですから、それくらいいいと思ったのでしょう。
ファーストインプレッションは酸味があってスッキリ。硬い感じで甘味が少なく、苦味で締まっています。基本的な鍋島の味わいに沿った感じですが、きたしずくは硬めの味わいになりがちなので、そのとおりに出来上がっていると思います。
温暖化が進み、だんだんと米が作りにくくなっている環境の中、北海道の米に注目している蔵は増えているのだと思います。その動きは了解しつつ、昔ながらの味が少しでも長く残ってほしいと思います。