今回は、岐阜県中津川市で明治初めに四代目山田三千助さんが蔵の権利を買って酒造りを始めたことで「三千櫻」と名付けられた三千櫻酒造です。ですが、築100年を超える酒蔵老朽化と温暖化による冷却作業の困難化を理由に昨年10月、北海道上川郡東川町に蔵ごと引っ越すという前代未聞の出来事がありました。「磐城壽」のように東日本大震災で移転したところはありましたが、老朽化で全移転というのは聞いたことがありませんね。
上川郡といえば、同じように地方創生で設立された「上川大雪酒造」がありますが、こちらは上川町にあります。同じ大雪山系のふもとに広がる町で米どころでもありますから「上川大雪」の成功が東川町に影響を与えたのかもしれませんね。
その三千櫻酒造の移転第一弾がこちらです。
「三千櫻 純米大吟醸 彗星45直汲」
北海道JAひがしかわ産彗星100%使用で45%精米です。なめらかな口当たりに、まず酸味を感じました。少したつとほのかな吟醸香と旨味が広がってきます。後口はスッキリです。同じ北海道の酒米「きたしずく」の「三千櫻」は呑んだことがあり、雄町の系列なので甘味が感じられましたが「彗星」は八反錦系列の「吟風」の流れを汲んでいるので、どちらかといえばスッキリ系なイメージです。岐阜県のときの水は超軟水、この東川町は中硬水ということで、米の溶け方や発酵の仕方が違うので、それもポイントになりますね。
三千櫻酒造の山田蔵元杜氏は「愛山の魔術師」と呼ばれるほど、数多くの「愛山酒」を仕込んできましたが、これからもチャレンジしていただきたいです。もちろん地元のために「彗星」「きたしずく」も期待しております。