「ひやおろし」は、秋口に店頭に並び始める日本酒です。春先に搾り、ひと夏寝かせたひやおろしは、芳醇でまろやかな味わいにあふれています。
今回は、ひやおろしの語源や特徴、おすすめの飲み方についてくわしく解説!秋限定の味わい、ひやおろしの魅力をたっぷりとお伝えします。
目次
1.ひやおろしとは?
「ひやおろし」は、涼しくなってきた秋口に各蔵から出荷される日本酒です。日本酒ファンにとっては、秋の風物詩といえるお酒かもしれません。
ひやおろしの大きな特徴は、1度だけ加熱処理をし、ひと夏寝かせたお酒であること。
日本酒は、秋から翌年春先の寒いシーズンに造られるのが一般的です。シーズン中に搾られたお酒は、貯蔵前と瓶に詰める前、2回にわけて「火入れ」と呼ばれる加熱処理がほどこされます。
一方、ひやおろしの火入れは、貯蔵前の1度だけ。その後はタンクのなかでひと夏を過ごし出荷の時を待ちます。ひやろおしが出荷されるのは、タンク内のお酒と外気温が同じになったタイミングです。
1度だけしか火入れをしないひやおろしの製法は「生詰め(なまづめ)」と呼ばれています。
2.ひやおろしの語源
ひやおろしの「ひや」は、冷たいお酒ではなく、常温の「ひや」を意味しています。
前述したように、ひやおろしを出荷するのはタンク内と外気温が同じくらいになった頃。「常温で卸す」ことから「ひやおろし」というわけです。
ひやおろしは江戸時代には誕生していましたが、当時は保存が効かないことから広くは流通せず、蔵に近い人しか飲めない貴重品だったそう。
現在のように「秋の日本酒=ひやおろし」のイメージができあがったのは、今から約30年前のこと。
卸売業を営む株式会社岡永(日本名門酒会)が、秋の限定品として商品展開したことがきっかけだといわれています。
また、およそ半年の熟成を経て酒質が向上したお酒は「秋あがり」。反対に、熟成がうまくいかなかったお酒は「秋落ち」と呼ばれることもあります。
3.ひやおろしの味わいの特徴
ひやおろしは、1度だけ火入れをする「生詰め」のお酒だとお話しました。一般的に、2度火入れをした日本酒は、口当たりなめらかなお酒になるといわれています。
1度だけ火入れをしているひやおろしは、フレッシュな味わいが特徴。と同時に、一定期間熟成させることで、生酒の荒々しさがまろやかな風味へと変化しています。
みずみずしく奥行きのある味わいは、ひやおろしの大きな魅力といえるでしょう。
4.ひやおろしのおすすめの飲み方
秋しか飲めないお酒、ひやおろし。季節が進むほど味が深まるひやおろしは、販売時期によってさまざまな飲み方を楽しめます。
つめたく冷やして、または燗でと、ぜひ季節ならではの味わいを堪能してみてください。
4-1.よく冷やして、生詰めの爽やかな味わいを楽しむ
9月頃に出回るひやおろしは、キリッと冷やして味わうのがおすすめです。スッキリとしたキレが際立ち、生詰めならではの爽やかな味わいを楽しめます。暑さが残る季節は氷を入れ、オンザロックにしても美味しいですよ。
4-2.燗でひやおろしのコクを楽しむ
秋が深まる10月頃のひやおろしは、ぬる燗で楽しむのがおすすめです。この時期のひやおろしは味と香りのバランスに優れ、適度に温めるとより一層まろやかな味わいを堪能できます。脂の乗り始めたサンマとの相性もばつぐんです。
また、晩秋旨酒(ばんしゅううまざけ)とも呼ばれる11月のひやおろしは、旨味がさらに増した芳醇タイプ。熱燗にしても味のバランスが崩れず、料理とともに美味しく味わえます。
ぜひ、きのこ類や焼き銀杏(ぎんなん)、ジビエ料理など、秋の味覚とのペアリングを楽しんでみてください。
まとめ
ひやおろしは、日本の四季が造り上げるお酒です。日本酒好きにとっては、年に1度だけの秋の贅沢といえるかもしれません。
秋のお酒、ひやおろしは秋の味覚との相性もばつぐん。飲食店や酒販店で「ひやおろし」の文字を見つけたら、ぜひ秋の訪れを感じながらその味わいを堪能してみてください。