0 お気に入り
0 お気に入り
ホーム 日本酒を知る 日本酒の造り方 日本酒の作り方を図解でわかりやすく解説

日本酒の作り方を図解でわかりやすく解説

0
日本酒の作り方を図解でわかりやすく解説

さまざまな味や個性が魅力的な日本酒。美味しく飲むうちに「一体どうやって作るの?」と作り方に疑問を感じたことはないでしょうか。

日本酒は、ほかのお酒の製造工程とは違う、世界でも珍しい手法で作られるお酒です。

そこで今回は、日本酒の作り方をひとつずつわかりやすく解説!日本酒とほかのお酒の発酵メカニズムの違いも紹介します。

身近な食材、お米から日本酒ができるまでの工程を知れば、日本酒がより美味しく興味深いものになりますよ。

※ 家で日本酒をつくるのは酒税法違反です。

第五十四条 第七条第一項又は第八条の規定による製造免許を受けないで、酒類、酒母又はもろみを製造した者は、十年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

(参照元:e-Gov法令検索

1.日本酒と他のお酒の発酵のメカニズムの違い

日本酒は、米と水を主原料に作られるお酒です。日本酒の作り方は、これらの材料からお酒ができる「アルコール発酵」のメカニズムを知るとよりわかりやすくなります。

アルコール発酵とは、微生物のひとつ「酵母(こうぼ)」の働きにより、食品に含まれる「糖分」が「アルコール」と「炭酸ガス」に変化することです。

例えば、ブドウを原料とするワインは、ブドウの糖分に酵母が働きかけることによってアルコール発酵がおこります。

ところが、穀物である米は、デンプンは多く含むものの糖分はほとんど含まれていません。つまり、米にいくら酵母を足してもお酒にはならないのです。

ここで必要となるのが「糖化(とうか)」という工程。

米のデンプンに「糖化酵素(とうかこうそ)」とよばれる物質を加えることで、デンプンとわずかな糖分を分離させ、そこから発酵させよう、というわけです。ちなみに、麦を原料とするビールも同様に、糖化の工程を経て作られます。

ビールは、糖化が完了した原料に酵母を加え、アルコール発酵させます。

一方、日本酒は糖化とアルコール発酵を、タンク内で同時進行させていくのが大きな特徴です。

この仕組みは「並行複発酵(へいこうふくはっこう)」と呼ばれ、日本酒のアルコール度数が高い理由のひとつでもあります。

2.日本酒ができるまでの工程

米と水というシンプルな材料は、以下の工程を経て日本酒へと生まれ変わります。

  1. 精米
  2. 洗米・浸漬(せんまい・しんせき)
  3. 蒸米・放冷(むしまい・ほうれい)
  4. 麹づくり(こうじづくり)
  5. 酒母づくり(しゅぼづくり)
  6. 仕込み(もろみ作り)
  7. 搾り
  8. 濾過
  9. 火入れ
  10. 貯蔵
  11. 調合・割水
  12. 瓶詰め

「麹?酒母?なんのこと?」という日本酒ビギナーでも大丈夫!ここからは、一つひとつの工程をわかりやすく紹介していきます。

2-1.精米(せいまい)

精米

玄米を削り、白米の状態にすることを「精米」といいます。精米の大きな目的は、米の表面にある雑味のもとを取り除くことです。

米の表面には、タンパク質や脂質、ビタミン、ミネラルといった栄養素が含まれています。

食用米では旨味のもととなる栄養素も、日本酒の場合はかえって味に雑味を生んでしまうことも。そのため、日本酒作りでは、より多く米の表面を削る必要があります。

食用米の場合、米を削る度合いは8%程度。一方、日本酒作りでは30%以上削り、白く光る米の中心部分のみを使用するのが一般的です。

精米には竪型精米機(たてがたせいまいき)と呼ばれる見上げるほど大きな精米機が使用されます。

30%以上精米するのにかかる時間は約8時間。60%以上精米する場合は、約48時間もの時間を要するというからすごいですよね。

精米したてのホカホカの温かい米は、専用の袋に詰められ「枯らし」と呼ばれる2~3週間の期間を経て次の工程へと移ります。

2-2.洗米・浸漬(せんまい・しんせき)

洗米

「洗米」の目的は、米の表面についた糠(ぬか)や米くずを洗い流すことです。洗い流す間も水分は吸収されていくため、作業時は細心の注意を払わなくてはいけません。

「浸漬」は、洗った米に水分を吸わせる作業です。その後の麹(こうじ)のできを決める重要な作業だといわれています。

米が水分を吸っていく速度は、その日の気温や湿度、水温などによってさまざま。最適な時間を見極めるため、蔵人はストップウォッチで浸漬時間を計測することもあります。

その後、米やお酒の種類に合わせた状態まで水を切ったら準備は完了!いよいよ米を蒸す工程へと移ります。

2-3.蒸米・放冷(むしまい・ほうれい)

蒸米

米を蒸す最大の目的は、麹菌(こうじきん)の作用を受けやすい状態に米を変化させることです。

かちかちの生米よりも、加熱してやわらかくなった米のほうがその後の工程で溶けやすくなります。

理想の蒸し加減は「外硬内軟(がいこうないなん)」と呼ばれる、外は硬く内側がやわらかい状態。蒸米を手のひらサイズに丸めた「ひねり餅」を作り、手の感触で蒸し加減を確認することもあります。

蒸しあがった米は、一定の温度まで冷ましていきます。これは「放冷」と呼ばれ、自然冷却のほかファンで冷やすなど、蔵によって手法はさまざまです。

できあがった蒸米は、この後の麹、酒母(しゅぼ)、醪(もろみ)づくりすべてに使用します。

2-4.麹づくり(こうじづくり)

麹づくり

蒸米を使い、米麹(こめこうじ)を作ります。米麹とは、蒸米に麹菌を繁殖させたもの。この工程は「製麹(せいぎく)」とも呼ばれます。

前述したように、米をアルコール発酵させるには、まず「糖化」しなくてはいけません。製麹は、そのために欠かせない作業です。

製麹にかかる期間は、約2日間。麹菌を繁殖させるため、麹室(こうじむろ)と呼ばれる高温多湿の環境で以下の作業をおこないます。

引き込み

34~36℃になった蒸米を麹室に運び、温度を均一にさせるために布をかけて休ませます。布団をかぶった蒸米が眠っているような状態です。

種付け/床もみ(とこもみ)

眠っていた蒸米を崩し、床(とこ)と呼ばれる台一面に広げます。その上に、麹菌の胞子をぱらぱらと振りかける作業が「種付け」です。その後、胞子がまんべんなく行き渡るように混ぜ込む「床もみ」と呼ばれる作業に移ります。

切り返し

数時間から半日後、硬くなった米をほぐす「切り返し」をおこないます。切り返した米はひとつにまとめ、再度布で包んで休ませます。

盛り

切り返し後、数時間から半日すると、米にぽつぽつと白い斑点が浮かび上がります。そのままにすると温度が上がりすぎてしまうため、木箱に蒸米を小分けする「盛り」をおこないます。

仲仕事

数時間後、木箱の蒸米が熱くなりすぎないよう、まんべんなく混ぜてから均一の厚さに広げます。

仕舞仕事(しまいしごと)

仲仕事から数時間たつと、38~39℃まで蒸米の温度が上昇します。仕舞仕事は、蒸米の温度を均一にし、余分な水分を蒸発させるための作業です。広げた蒸米にうずのような溝を作り、表面積を大きくします。

出麹(でこうじ)

麹の温度を下げるため、麹室から木箱を運び出す作業です。できあがった米麹は「酒母づくり」と「もろみ作り」に使うものに分けられます。日本酒作りに欠かせない米麹のできあがりです!

2-5.酒母つくり(しゅぼつくり)

酒母つくり

ここまでの工程で、日本酒作りに必要な「米」と「米麹」が揃ったことになります。ただ、これだけでは日本酒はできあがりません。この2つをお酒へと変えるために欠かせないのが、お酒の母と書く「酒母(しゅぼ)」です。

酒母は、蒸米と米麹、水を入れたタンクに「酵母(こうぼ)」と「乳酸」を加えて作ります。

酵母は、アルコール発酵を促す成分です。酵母はほかの微生物より弱いものの、酸性に強いという特性があります。

乳酸は、タンク内を酸性に保つために投入するアイテム。ほかの微生物は酸性に弱いため、タンク内に乳酸を入れれば酵母が活動しやすい環境になるというわけです。

不用な微生物が入り込まないよう、高温多湿の麹室とは違い、酒母づくりはひんやりとした酒母室でおこなわれます。

2-6.仕込み(もろみ作り)

仕込み

いよいよ日本酒作りも最終段階。蒸米・米麹・酒母と「糖化」と「アルコール発酵」に必要な材料が揃いました。

この3つを混ぜてできた液体を「醪(もろみ)」と呼びます。もろみ作りは、アルコール発酵を進めていく作業です。

とはいえ、これらの材料は一度に全部混ぜるわけではありません。材料の投入は、4日間で3回に分けておこなわれます。江戸時代から続く「三段仕込み」と呼ばれる製法です。

すべての材料を合わせたあとは、3週間から5週間かけてアルコール発酵を進めていきます。このときのポイントとなるのが温度管理。お酒の種類に合わせ、醪はおよそ15℃前後、または10℃以下に保たれます。

発酵が進んだ醪の表面は、ふわふわと真っ白な泡に包まれた状態。泡が消え、液体化してきたらできあがりの合図です。数日から1週間後に「搾り」の段階へと移ります。

2-7.搾り

搾り

アルコール発酵が完了した醪は、白くにごった状態。搾りやろ過などの工程を進めることで、わたしたちが目にする透き通った日本酒ができあがります。

上槽(じょうそう)

醪が入った袋を絞り、固形物の酒粕(さけかす)と液体に分離させる作業です。槽(ふね)と呼ばれる大きな長方形の器具を使用するものや、醪を入れた袋を吊り下げるもの、自動圧搾機を使うものなど、さまざまな手法があります。

滓引き(おりびき)

搾った液体は、滓(おり)と呼ばれる米粒や麹などの固形物が残った状態です。液体をタンクに入れて滓を沈殿させ、澄んだ部分だけを抽出する作業を「滓引き」といいます。

2-8.濾過(ろか)

濾過

滓引きしたお酒の固形物をさらに除去し、色や香りの調整をおこなう作業です。通常の日本酒作りでは「濾過」は2回おこないます。

1回目の濾過の目的は、残った固形物や酵母を除去することです。フィルターのついた機械を使うほか、粉末状の活性炭を投入する場合もあります。

2-9.火入れ

火入れ

「火入れ」とは、お酒を60~65℃の温度で加熱殺菌することです。濾過と同様に、火入れも2回おこないます。味や色、香りの変化を防ぐことが火入れの目的です。

2-10.貯蔵

貯蔵

火入れ後のお酒は、タンクで貯蔵します。貯蔵温度はお酒の種類によって異なり、15℃前後、または5℃から10℃が主流です。

2-11.調合・割水

調合・割水

貯蔵後のお酒は、タンクごとの酒質を一定にするため調合(ブレンド)されます。その後、アルコール度数と香りのバランスを調整するため、仕込み水と呼ばれる水を加えます。

2-12.瓶詰め

瓶詰め

加水によってアルコール度数15~16%に調整したお酒は、2回目の濾過と火入れをおこない瓶詰めします。近年は、瓶に詰めてから火入れをおこなう「瓶火入れ」という手法もあります。

これらの工程を終えれば、いよいよ出荷!各酒販店への流通経路を経て、わたしたちのもとに美味しい日本酒が届けられます。

3.製造工程で変わる日本酒の味わい

日本酒は、製造工程の違いでさまざまな味わいに変化します。「生酒?新酒?なんのこと?」という日本酒にありがちな疑問も、違いがわかればスッキリ解決しますよ。

3-1.火入れの回数・タイミングで変わる生酒、生貯蔵酒、生詰め酒

日本酒は、火入れの回数によって次のように呼び名が変わります。

呼び名 1回目の火入れ 2回目の火入れ
生酒(なまざけ) なし なし
生貯蔵酒 なし あり
生詰め酒 あり なし

火入れを1度もしない生のお酒は、生酒(なまざけ、またはきざけ、なましゅ)と呼びます。味わいはフレッシュでジューシー。なかには、シュワシュワとした微発砲感が感じられるのものもあります。

火入れをせず、生のまま貯蔵したものは「生貯蔵酒」。1度火入れをし、そのまま瓶詰したものが「生詰め酒」というわけです。

3-2.蔵で貯蔵されずに出荷する「新酒」

「新酒」は、貯蔵をせずにすぐに出荷される日本酒です。明確な定義はないものの、冬から春にかけて登場するその年のお酒が新酒と呼ばれています。

同じ蔵、同じ銘柄のお酒であっても、その年によって少しずつ味わいは違うもの。新酒が登場する12月から3月は、日本酒ファンにとって待ち遠しいシーズンといえるかもしれませんね。

まとめ

日本酒は古くは弥生時代から存在し、平安時代には現在に近い製法が誕生していたといわれています。

お米を原料に、微生物の力を借りながら作る日本酒は、日本が大切にしてきた伝統文化のひとつ。日本酒の作り方に想いを馳せると、いつものお酒もより美味しく感じられそうですね。