青森県は、日本酒ファンに支持される「田酒」に「豊盃」、フルーティーな香りの「陸奥八仙」と数々の銘酒が造られている地域です。熱燗で美味しい辛口酒も揃います。
今回は、青森の日本酒の魅力を解説!日本酒ビギナーがおさえておきたい、おすすめ銘柄も紹介します。「青森ではどんな日本酒が造られているの?」と気になる方はぜひチェックしてみてください。
目次
1.青森で日本酒を醸す酒蔵
青森県は、県土の67%を森林が占める自然豊かな地域です。山々から流れる雪解け水は自然のフィルターをくぐり抜け、酒造りに欠かせない清らかな水へと生まれ変わります。
古くから酒米の開発が盛んで、酒造りに適した上質な米が栽培されていることも大きな特徴です。県内の各蔵では、青森の自然の恵みを活かした酒造りが行われています。
1-1.西田酒造店
代表銘柄は、田の酒と書いて「田酒(でんしゅ)」。創業1878年(明治11年)の蔵では、職人の手仕事による丁寧な酒造りが続けられています。
原料米にこだわり、幻の酒米といわれた“古城錦”の復活にも着手。“仕事は楽しみながら”という蔵の雰囲気が垣間見えるSNSにも注目です。
1-2.八戸酒造
日本海へと流れ込む新井田川沿いに建つ八戸酒造。有形文化財に登録されている建造物は、今もなお大正時代の風情を醸し出しています。
創業銘柄「陸奥男山(むつおとこやま)」は、明治時代から地元の人々に愛されてきました。平成入りに誕生したフルーティーな香りの「陸奥八仙(むつはっせん)」は、陸奥男山に並ぶ定番酒としてその名が知られています。
1-3.鳩正宗
青森県の内陸部、十和田市に位置する酒蔵です。「鳩正宗」の名は、昭和初期に蔵の神棚に棲みついた一羽の白鳩を守り神としたことに由来しています。
かつては南部杜氏が仕込みに参加していたものの、2004年(平成16年)からは十和田の蔵人のみで酒造りをスタート。以来、代々受け継がれてきた歴史と現代技術の融合により上質な酒が生み出されています。
1-4.三浦酒造
5代目蔵元となる兄弟を筆頭に、家族と地元の人々が切り盛りする小さな酒蔵です。酒米「豊盃米(ほうはいまい)」を使用する全国唯一の蔵でもあります。
原料米の多くは、地元農家が丹精込めて栽培したものです。仕込み水には井戸から湧き出る岩木山の伏流水を使い、ほっと心が和む味わい深い酒を醸し続けています。
1-5.桃川
発祥は江戸時代の自家用醸造という歴史深い酒蔵です。屋号である「桃川」は、仕込み水に百石川(ももいしがわ)の伏流水を使用したことに由来しています。
蔵のキャッチフレーズは“いい酒は朝が知っている”。大切な人と美味しいお酒を酌み交わし、翌朝に気持ちいい目覚めが迎えられるようにとの想いと共に、蔵では丁寧な酒造りが行われています。
1-6.松緑酒造
桜の名所でもある弘前城の城下町に建つ松緑酒造。江戸時代には、酒造りに欠かせない「酒母(しゅぼ)」造りを生業として栄えていました。
日本酒製造は1904年(明治37年)にスタート。青森から世界へ羽ばたく酒を目指し、地元で愛される「松緑」をはじめとする豊富なラインナップを取り揃える酒蔵です。
1-7.八戸酒類
創業は江戸時代後期の1786年(天明6年)。初代の橋本八右衛門(はちうえもん)は、呉服商で身をたてていた人物でした。
9代続く蔵の杜氏を務めるのは、もともと日本酒を飲むのが大好きだったという上井杜氏。酒造りに適した冷涼な環境のもと、地元の良質な米と地下から汲み上げる自然水、伝統技法で生まれる日本酒は各界で高く評価されています。
2.青森で作られている酒造好適米
酒造好適米(しゅぞうこうてきまい)とは、酒造りに適した特性をもつ米のことです。通称「酒米(さかまい)」と呼ばれ、各県では地域の特性を活かした品種が開発されています。
青森県を代表する酒米のひとつが「華吹雪(はなふぶき)」です。粒が大きく栽培しやすいことから、全国でも高い生産量を誇ります。米の旨味に満ちた味わいを生み出し、純米酒に使用されることが多い品種です。
また「華想い(はなおもい)」は、青森県の酒米の王様と称される品質の良さが特徴です。精米時に割れづらく、原料に小さく削った米を使用する吟醸酒に適しています。
さらに、青森県内では2018年(平成30年)に「吟烏帽⼦(ぎんえぼし)」の利用がスタート。冷害に強い吟烏帽⼦は県内各地で栽培でき、青森の地酒の可能性をさらに広げるきっかけとなりました。
3.青森の日本酒おすすめ14選
ここからは青森のおすすめ日本酒14選をご紹介!地元をはじめ全国の日本酒ファンに愛される銘柄が揃いました。青森を訪れた際はもちろん、酒販店や飲食店で出会った際はぜひチェックしてみてください。
1.田酒(でんしゅ)
田の酒「田酒」は、醸造アルコールや醸造用糖類などを使用しない旨口の純米酒です。商品化までに3年の月日を費やし、1974年(昭和49年)に誕生しました。
なかでも華想いを原料とした「純米大吟醸 百四拾 田酒」は、洗練された香りと味わいが特徴的な1本です。後口はすっきりとキレ良く、飲み進めるほどに米の旨味が体に染み渡ります。
(出典元:若松屋酒店)
2.陸奥八仙(むつはっせん)
八戸酒造で1998年(平成10年)に誕生したブランドです。その名は中国の故事、酔八仙(八人のお酒の仙人の物語)に由来します。飲む人に酒仙の境地で酒を楽しんでもらいたいという、蔵の思いが込められた日本酒です。
フルーツを思わせる香りは心地よく、日本酒ビギナーでも親しみやすい味わいが魅力です。なかでも「陸奥八仙 ピンクラベル 吟醸(火入)」は、メロンのように甘い香りと芳醇な味わいを楽しめます。
(出典元:八戸酒造)
3.豊盃(ほうはい)
全国で唯一の使用となる豊盃米をメインに醸される日本酒です。上質な米と蔵の井戸から湧き出る伏流水、蔵元家族や地元の人々の手により、唯一無二の個性が生み出されています。
蔵のスタンダードとなる「豊盃 純米吟醸 豊盃米」は、酒米のもつ繊細な甘みと香りが光る1本。青森の自然が生み出す美味しさを心行くまで堪能できます。
(出典元:くるみや)
4.鳩正宗(はとまさむね)
蔵の名を冠した「鳩正宗」は、小さく磨いた青森県産の酒米で造られる日本酒です。なかでも「吟麗 純米大吟醸 中取り」は、青森県の酒米の王様といわれる華想いを原料としています。
精米歩合は40%と、米の中心部分のみを贅沢に使用していることも特徴です。さらに、お酒を搾ったときに特に質が良いとされる、中取り部分のみが瓶詰めされています。香りと味わいともに品よく、贈答用にもおすすめの1本です。
(出典元:鳩正宗株式会社)
5.桃川(ももかわ)
「桃川」の魅力は、芳醇な旨味とまろやかな口当たりです。ラベルには、桃川をこよなく愛したという酒好きの画家・小杉放菴の文字が記されています。
おすすめは、酒米・華想いを使用した「桃川 大吟醸純米 華想い」です。2021年のインターナショナル・ワイン・チャレンジでは、純米大吟醸の部で金賞に輝きました。グラスに注ぐと華やかな香りがふわっと広がり、清らかな飲み口を堪能できます。
(出典元:桃川オンラインショップ)
6.善知鳥(うとう)
「田酒」を醸す西田酒造店の青森限定商品です。原料には、酒米の王様といわれる山田錦を使用。人工的な圧力をかけずにゆっくりと搾った酒のなかでも、質の良い中取り部分のみが瓶詰めされています。
洋梨を思わせる上品な香りの後には、しっとりと奥深い余韻が広がります。青森を代表する貴重な鳥「善知鳥」の名の通り、希少性を感じさせる贅沢な1本です。
(出典元:矢島酒店)
7.喜久泉(きくいずみ)
西田酒造店が創業以来造り続ける銘柄です。「喜久泉」の名には、幾久しく喜びが続くように、という蔵の願いが込められています。
おすすめは「大吟醸 喜久泉」。フルーツを思わせる心地よい香りが広がる一品です。しっかりとした旨味、キレが両立した辛口の味わいを堪能できます。
(出典元:矢島酒店)
8.六根(ろっこん)
松緑酒造が新たな酒造りへの挑戦の意を込めて送るブランドです。サファイア、ルビー、タイガーアイなど個性豊かなラインナップが揃います。
公式のオンラインショップで購入できる「六根 純米大吟醸 華想い」は、青森の酒米と酵母で造られた日本酒です。ラベルには、弘前の春景色を思わせる「花筏(はないかだ)」がデザインされています。香り良く上品な味わいで、記念日の乾杯にもふさわしい一品です。
(出典元:松緑酒造オンラインショップ)
9.如空(じょくう)
南部杜氏の伝統の技が生み出す味わい深い日本酒です。全国新酒鑑評会をはじめとする多くの鑑評会で、輝かしい受賞歴を誇ります。
リーズナブルなレギュラー酒から、米の旨味にあふれる純米酒、香り高い吟醸酒と幅広いラインナップが揃うことも魅力です。お酒を飲むシチュエーションや好みにあわせた1本に出会えます。
(出典元:八戸酒類株式会社)
10.八鶴(はちつる)
協会10号酵母の発祥蔵ともいわれる、八戸酒類の八鶴蔵で造られる日本酒です。協会酵母とは、日本醸造協会が頒布する酵母菌のこと。良質な米と伝統技法で生まれる「八鶴」は、「如空」と共に蔵の歴史を支えています。
おすすめは「八鶴 濃醇超辛純米酒 剛酒」。しっかりとした飲みごたえがありながら、抜群のキレが特徴的な1本です。和食はもちろん、揚げ物や中華のような味の濃い料理とのペアリングを楽しめます。
(出典元:八戸酒類株式会社)
11.陸奥男山(むつおとこやま)
青森の恵みが生み出す米の旨味とともに、スパッとしたキレ味を堪能できる銘柄です。地元で古くから愛されてきた八戸を代表する地酒でもあります。
なかでも「陸奥男山 超辛純米」は、男山らしいキレ味鋭い個性が光るお酒です。冷やはもちろん、常温で、燗酒でと温度による味の変化を楽しめます。
(出典元:八戸酒造株式会社)
12.杉玉(すぎだま)
酒造・桃川の四大ブランドのうちのひとつです。“うまさの杉玉”と称されるように、しっかりとした米の旨味を堪能できます。
香りは穏やかで口当たりやさしく、合わせる料理を選ばないのもうれしいポイントです。「純米酒」は180mlから販売されているため、気軽に老舗蔵の味わいを楽しめます。
(出典元:桃川株式会社)
13.亀吉(かめきち)
青森県黒石市に位置する酒蔵、中村亀吉酒造が醸す日本酒です。大正時代から長きに渡り、青森の地酒として人々に親しまれてきました。
クラシックなラベルに身を包むお酒は、どこか懐かしさを感じさせる佇まい。味わいはまろやかで、しみじみとした美味しさに酔いしれることができます。冷やをはじめ、燗酒にしてゆるりと楽しむのもおすすめです。
(出典元:はただ酒店)
14.ねぶた
青森の夏を彩る祭り「ねぶた」が表現されたキリッとした味わいの日本酒です。「辛口ねぶた」は、全国燗酒コンテスト2018で金賞を受賞。ぬる燗はもちろん、あつあつに温めれば爽快な飲み口がさらに引き立ちます。
ラベルにねぶたがが描かれた「火祭りねぶた生貯蔵酒」は、青森のお土産にもおすすめです。
(出典元:桃川オンラインショップ)
まとめ
青森県では、日本酒好きにはたまらない美味しい日本酒が数多く造られています。日本酒ビギナーでも飲みやすい、すっきりとした味わいの銘柄が揃うことも魅力です。
日本酒選びに迷ったら、産地に着目してみるのもひとつの方法です。青森の豊かな自然を思いながら、その美味しさをぜひ楽しんでください。