米を原料とする日本酒から、なぜフルーティーな香りがするの?と疑問に感じたことはないでしょうか。リンゴやバナナのような香りの正体は、吟醸香と呼ばれるものです。
今回は、日本酒からフルーティーな香りがする理由についてご紹介します。甘い香りのお酒は飲みやすく、日本酒ビギナーにもおすすめです。香りの種類も解説するので、ぜひ日本酒選びの参考にしてくださいね。
目次
1.日本酒のフルーティーな香りの正体「吟醸香」
日本酒から感じるフルーティーな香りは「吟醸香(ぎんじょうこう・ぎんじょうか)」と呼ばれます。リンゴや洋梨、バナナといったフルーツや花などに例えられる香りです。
吟醸香のあるお酒は、和食だけでなくイタリアンやフレンチなどにもよく合います。香りが華やかで、日本酒ビギナーでも飲みやすい銘柄が多いことが特徴です。また、吟醸香は「吟醸造り」と呼ばれる製法によって生まれます。
2.フルーティーな吟醸香が生まれる理由「吟醸造り」
吟醸香は、吟醸造りと呼ばれる製法で生まれます。吟醸造りとは、より小さく削った米を原料に、低温でゆっくりと発酵させる製造方法のことです。
日本酒の主原料である米と米麹は、目に見えない微生物「酵母」の働きによってお酒へと変化します。吟醸香は、酵母がアルコール成分と同時に生成するものです。
- 米を小さく削ること
- 低温でゆっくりと発酵させること
吟醸造りの特徴であるこれらの要素は、酵母の働きに影響し以下のような理由で吟醸香を生み出します。
2-1.米を小さく削る吟醸造り
日本酒の原料となる米は、外側を削ってから使用します。米の表面に含まれる脂質やタンパク質などは、酵母の栄養素となる一方で、多すぎると雑味の原因となり得るからです。
米を削ることは「磨く」とも表現され、その度合いは精米歩合(せいまいぶあい)と呼ばれます。
吟醸造りに用いられるのは、精米歩合60%以下と外側を4割以上削った米です。精米歩合50%以下と、より磨いた米を用いた日本酒は「大吟醸酒」と表示されます。
吟醸造りによって、低栄養かつ低温の環境に置かれた酵母は、通常のアルコールのほかに「高級アルコール」にあたる成分を発生させます。
この高級アルコールが、リンゴや洋梨といったフルーツに例えられる吟醸香の正体です。香り成分は米を磨くほど生まれやすく、大吟醸酒は華やかな香りの銘柄が多く見られます。
2-2.低温でゆっくり発酵させる吟醸造り
低温で長期間発酵させる吟醸造りは、冬の寒い時期におこなうのが一般的です。低温でゆっくりと発酵させることで、酵母が生成した香り成分は蒸発することなく醪(もろみ)にとどまってくれます。
より磨いた米を原料に低温で長期発酵させる大吟醸酒は、コストがかかるぶん高価格帯が主流です。なかでも、米と米麹のみを原料とする「純米大吟醸酒」は、贈答用にも適した銘柄が揃います。
3.フルーティーな香り「吟醸香」の種類
フルーティーな香りの吟醸香は、「サッパリとした香り」と「濃醇な香り」の2タイプにわかれます。これは、香りを生成する成分の違いによるものです。
日本酒を選ぶときは「リンゴみたいな香り」「甘いバナナの香り」など、香りに着目してみるのもおすすめです。自分好みの香りや味をより見つけやすくなりますよ。
3-1.リンゴや洋梨のようなサッパリとした吟醸香
リンゴや洋梨のようなサッパリとした吟醸香は、「カプロン酸エチル」と呼ばれる成分に由来するものです。カプロン酸エチルを含む日本酒は、適度に冷やすと香りがより引き立ちます。香りを包み込むワイングラスで味わうのもおすすめです。
近年は、カプロン酸エチルを生成するさまざまな酵母が開発されています。清酒鑑評会の出品酒に採用されることも多く、フルーティーな香りの代表種といえるでしょう。
3-2.バナナやメロンのような濃醇な吟醸香
バナナやメロンのような濃醇な甘さを思わせる吟醸香は、「酢酸イソアミル」に由来します。伝統的な吟醸香でもある酢酸イソアミルは、「きょうかい9号」や「きょうかい14号」といった古くから存在する酵母によって多く生成されるものです。
酢酸イソアミルを含むお酒は、適度に温めると香りがふくよかに変化します。常温やぬる燗などでゆったりと楽しむお酒におすすめです。
まとめ
フルーティーで華やかな香りのお酒は、日本酒を飲み慣れない方にもおすすめです。より磨いた米を使っているぶん雑味がなく、スッキリとした味わいも楽しめます。
リンゴやバナナなど、香りの違いに着目すれば日本酒選びの幅がより一層広がります。ぜひ、香りも含めた日本酒のさまざまな個性を感じてみてくださいね。