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【唎酒師が解説】日本酒の特定名称酒とは?種類や定義について解説!

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【唎酒師が解説】日本酒の特定名称酒とは?種類や定義について解説!

執筆者情報

shiho
お酒とねこでできているライター。日本酒、ウイスキー、ワイン…すべてのお酒をこよなく愛す。酒好きが高じて利酒師免許を取得。 Instagramはこちら https://www.instagram.com/ushinaaa/

監修者

日本酒ラボ編集部
日本酒ラボに携わってから日本酒のおいしさ・奥深さを知り、唎酒師の資格を取得。日本酒ラボを通して、日本酒のおいしさ・楽しさを日本酒にもあまり馴染みがない方にもお伝えしていきます。

特定名称酒(とくていめいしょうしゅ)とは、日本酒を原料や製法で分類したものです。普段見聞きすることの多い「純米酒」や「吟醸酒」などが特定名称酒にあたります。

今回は、特定名称酒の種類や条件などについて解説します。それぞれの意味や違いがわかると、日本酒選びがもっと楽しくなりますよ。

1.日本酒の定義とは

日本酒は、米と米こうじ、水を主原料とするお酒です。酒税法上では「清酒」と呼ばれています。

造ったお酒を日本酒(清酒)として販売するためには、主に以下のような条件をクリアしていなくてはいけません。これは、酒税法第3条第7号によって定められています。

酒税法における清酒の定義
1. 米、米こうじを主原料とするもの
2. 上記の原料を発酵させ、こしたもの
3. アルコール分が22℃未満のもの

2にあるように、日本酒は主原料を発酵させた醪(もろみ)をこして造られます。日本酒造りにおける上槽(じょうそう)にあたる工程です。

醪をこさないお酒は「どぶろく」と呼ばれ、酒税法では「その他の醸造酒」や「濁酒」に分類されます。

また、日本酒造りには植物由来の「醸造アルコール」を用いることがありますが、清酒を名乗るためには使用量に制限が設けられています。

特定名称酒は、これらの基本的な条件をふまえたうえで、さらに細かな規定を満たしたお酒です。製法と原料により、8つの種類に分類されます。

参考:国税庁「酒税法(昭和二十八年法律第六号)」

日本酒 フリー素材

2.特定名称酒とは

特定名称酒は、日本酒を製法や原料で8つに分類したものです。見聞きすることの多い「吟醸酒」や「純米酒」などが特定名称酒にあたります。

2-1.特定名称酒という基準が生まれた歴史的背景

特定名称酒の基準は、1989年(平成元年)に誕生しました。「清酒の製法品質表示基準」のなかに設けられ、1990年(平成2年)から適用されています。

特定名称酒が誕生するまで、日本酒は「級別制度」で分類されていました。

級別制度とは、1943年(昭和18年)から50年近くにわたり運用されていた基準のことです。品質ではなく、納める酒税額の違いにより「特級」「一級」「二級」と分類されていました。

一方、消費者側は「特級や一級の酒ほどおいしい」という認識をもっていました。このズレを解消すべく登場したのが、特定名称酒の基準です。

特定名称酒の誕生により、二級酒のなかにもおいしい日本酒が存在することが世間に認知されていきます。やがて、これまで二級酒中心だった地方の酒蔵の酒も注目が集まり、各地の地酒が人気を集めていきました。

2-2.特定名称酒は8つに分類される

特定名称酒は、使用原料と精米歩合により、以下の8つの種類に分類されます。

特定名称 使用原料 精米歩合 香味等の要件
吟醸酒 米、米こうじ、醸造アルコール 60%以下 吟醸造り、固有の香味、色沢が良好
大吟醸酒 米、米こうじ、醸造アルコール 50%以下 吟醸造り、固有の香味、色沢が特に良好
純米酒 米、米こうじ 香味、色沢が良好
純米吟醸酒 米、米こうじ 60%以下 吟醸造り、固有の香味、色沢が良好
純米大吟醸酒 米、米こうじ 50%以下 吟醸造り、固有の香味、色沢が特に良好
特別純米酒 米、米こうじ 60%以下または特別な製造方法(要説明表示) 香味、色沢が特に良好
本醸造酒 米、米こうじ、醸造アルコール 70%以下 香味、色沢が良好
特別本醸造酒 米、米こうじ、醸造アルコール 60%以下または特別な製造方法(要説明表示) 香味、色沢が特に良好

※こうじ米の使用割合はすべて15%以上
※参考:国税庁「清酒の製法品質表示基準」の概要」

分類のポイント①使用原料

上記の図にあるように、「純米」と名の付く特定名称酒は米と米こうじを主原料に造られます。

一方、「吟醸酒」や「本醸造酒」は、醸造アルコールを使用していることが特徴です。

醸造アルコールは、糖蜜やとうもろこしを原料とする純度の高いアルコールです。醸造アルコールを用いた日本酒は、キリッとしたドライな味わいに仕上がります。

また、醸造アルコールには吟醸香(ぎんじょうこう・ぎんじょうか)と呼ばれる華やかな香りを引き出す働きがあります。吟醸酒に醸造アルコールが用いられるのもそのためです。

醸造アルコールについてはこちらの記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

日本酒に「醸造アルコール」を入れる理由とは?醸造アルコール添加に悪いイメージがついてしまった理由も解説!

反対に、米と米こうじのみで造られる純米酒は香りがおだやかで、ふくよかなコクのあるタイプが多くみられます。

お米

分類のポイント②精米歩合

精米歩合とは、米粒の外側を削ったあと、残った割合を示す数値のことです。酒造りに使う前の米は、ぬかや胚芽が残った玄米の状態。表面には、タンパク質や脂質などの栄養素が含まれています。

炊いて食べる際には旨味のもととなるこれらの栄養素も、酒造りでは雑味の原因となってしまいます。そのため、炊飯用の米が外側を8%ほど削るのに対し、日本酒用の米は30%以上削るのが一般的です。

精米歩合についてはこちらの記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

日本酒の精米歩合について詳しく解説!精米歩合が高い=良いお酒?

精米歩合17%まで削られたお米
精米歩合17%まで削られたお米

2-3.特別純米酒・特別本醸造酒の特別の意味

特別純米酒や特別本醸造酒の「特別」には、さまざまな意味があります。

基準に「60%以下または特別な製造方法(要説明表示)」とあるように、精米歩合60%以下だったとしても、特別な製造方法を用いていれば特定名称酒を名乗ることが可能です。

酒米・山田錦を100%原料に使用していたり、自社の他の日本酒に比べ、麹を倍量使用していたりと特別の基準はさまざまです。ただし、何が特別なのかはラベルにきちんと記載する必要があります。

2-4.特定名称酒の規定に該当しない「普通酒」

特定名称酒の規定に該当しない日本酒は「普通酒(ふつうしゅ)」と呼ばれます。「レギュラー酒」「一般酒」と呼ばれることもありますが、これらの名称がラベルに記載されることはありません。

国税庁の調査によると、特定名称酒の割合は、日本酒製造量全体の約43%です。一方、普通酒の割合は約56%と、製造量の半数以上を普通酒が占めていることになります。

普通酒だから手間ひまがかかっていないの?というと、必ずしもそんなことはありません。

例えば、喜多酒造の「喜楽長 上撰」は、地元で愛され続ける普通酒です。他のお酒と同様、手間ひまかけた味わいは心をほっと和ませてくれます。

さらに、八海醸造の「清酒 八海山」は、吟醸酒のように原料米を60%まで精米しています。180ml容量から販売されるなど、気軽に上質な味わいを楽しめることが魅力です。

スーパーやコンビニには、特定名称酒に該当しない普通酒が数多く並んでいます。コストパフォーマンスに優れた商品のなかから、自分好みの1本を見つけるのも楽しいですよ。

参考:国税庁「清酒の製造状況等について」

まとめ

米と米こうじを主原料に、発酵した醪をこすことで造られるお酒「日本酒」。そのなかでも、さまざまな基準をクリアしたものが特定名称酒を名乗ることができます。

香り高い吟醸酒にコクのある純米酒など、特定名称酒の個性を知れば日本酒選びの幅が広がります。日々の食卓に寄り添う普通酒の味わいも魅力的です。特定名称酒の情報を参考に、ぜひ日本酒を自由に楽しんでみてくださいね。