0 お気に入り
0 お気に入り
ホーム 日本酒を知る 無濾過生原酒の先駆けとなった日本酒「飛露喜」の種類や味わいを解説!

無濾過生原酒の先駆けとなった日本酒「飛露喜」の種類や味わいを解説!

0
無濾過生原酒の先駆けとなった日本酒「飛露喜」の種類や味わいを解説!

執筆者情報

shiho
お酒とねこでできているライター。日本酒、ウイスキー、ワイン…すべてのお酒をこよなく愛す。酒好きが高じて利酒師免許を取得。 Instagramはこちら https://www.instagram.com/ushinaaa/

「飛露喜(ひろき)」は、高い人気を誇る福島県の日本酒です。製造量が少ないことから、入手が難しいお酒としても知られています。

醸造元の廣木酒造は公式ホームページを持たないことから、美味しいと耳にしつつ、どんなお酒かわからないということも多いかもしれません。

そこで今回は、飛露喜について徹底解説!飛露喜誕生の歴史や、各銘柄の特徴を紹介します。

1.「飛露喜」とは?

「飛露喜(ひろき)」は福島県の廣木酒造が造る日本酒です。「廣木」にあてた酒銘「飛露喜」には、「喜びの露(酒)がほとばしる」という意味が込められています。

「いつ、何度飲んでも変わらない味」をポリシーに造られる飛露喜は、味の安定性に優れたお酒。2012年には「SAKE COMPETITON」純米酒部門で1位を受賞するなど、数々の受賞歴を誇ります。

今では入手が難しい飛露喜を造る廣木酒造も、かつては廃業の危機を迎えた時期がありました。

復活のきっかけとなった「無濾過生原酒(むろかなまげんしゅ)」は、飛露喜の人気とともに一躍話題のジャンルに。そのため、飛露喜は無濾過生原酒の先駆けとしても知られています。

1-1.醸造元は「廣木酒造」

醸造元の「廣木酒造」は、福島県の会津地方に位置する酒蔵です。一時は廃業をも覚悟した時期がありながら、飛露喜誕生とともに復活を遂げた蔵でもあります。

現在の蔵元杜氏、9代目・廣木健司氏が蔵を受け継いだのは、1997年(平成9年)のこと。経営難だった蔵の立て直しに取り掛かる矢先、先代が58歳の若さで急逝されます。

元サラリーマンだった9代目にとっては、酒の流通ルートも酒造りのいろはもわからない状態。

一時は廃業をも覚悟する中、蔵の苦境がテレビ放映されると放送を見た有力酒販店から「蔵を応援したいから酒を送ってほしい」と連絡が入ります。

しかし、実際に廣木酒造のお酒を口にした酒販店の感想は「この味では勝負できない」というものでした。当時の蔵の味は、あくまでも新潟の人気銘柄を意識したものだったのです。

翌年、廣木氏は自分が本当に納得した無濾過生原酒を再び酒販店へ送付。確かな酒質が評価され販売が始まると、無濾過生原酒ブームも後押しし、飛露喜は一躍人気銘柄へと躍り出ます。

思いがけぬ売れ行きに、当時はラベルまで印刷する余裕がなく「飛露喜」の字は9代目の母が手書きしていたそう。

その後はさらなる酒質の向上を求め、加熱処理をした「火入れ酒」の製造にも取り組むなど、廣木酒造はさらなる躍進を続けています。

1-2.無濾過生原酒の先駆け

無濾過生原酒は、お酒を濾す「ろ過」、加熱をする「火入れ」、水でアルコール度数や味を調整する「加水」をしていないお酒です。まさに、搾りたてそのままのフレッシュな味わいが活きた日本酒といえます。

飛露喜が誕生した当時、火入れをしない無濾過生原酒はまだめずらしい存在だったとか。現在は各蔵から無濾過生原酒が登場し、多くの日本酒ファンを惹きつけています。

日本酒は火入れをするものという、酒造りの常識をくつがえした飛露喜。しっかりとした旨味とクリアな味わいを兼ね備えた飛露喜は、当時はまだ経験が浅く、常識に縛られなかった9代目だからこそ生み出せたお酒といえるかもしれません。

2.飛露喜の種類【定番酒】

飛露喜には、無濾過生原酒をはじめとする4つの定番酒があります。いずれも一升瓶(1800ml)での販売が中心です。

2-1.飛露喜 特別純米 無濾過 生原酒

飛露喜はじまりの1本となる無濾過生原酒。人気の高さから、酒販店に入荷してもすぐに売り切れとなる銘柄です。艶やかな甘みとコク、旨味と共に弾けるのはフレッシュな香り。飛露喜の魅力を存分に味わえる定番酒です。

飛露喜 特別純米 無濾過 生原酒

(出典元:松仙

2-2.飛露喜 特別純米 生詰

「生詰(なまづめ)」とは、1度だけ加熱処理をしたお酒のこと。無濾過生原酒からスタートした飛露喜が、年間通して安定した酒質を提供できるようにと研究を重ねた銘柄です。飲み頃になるまで熟成させてから出荷するため、落ち着いた品のある旨味を堪能できます。

特別純米 生詰

(出典元:松仙

2-3.飛露喜 吟醸 生詰

一粒の米をより多く削り、低温でじっくり熟成させる「吟醸(ぎんじょう)造り」の日本酒です。吟醸香(ぎんじょうこう)と呼ばれる、おだやかな香りが広がります。飛露喜らしいコクとともに、スッキリとした飲み口を楽しめる1本です。

飛露喜 吟醸 生詰

(出典元:松仙

2-4.飛露喜 純米吟醸 生詰 黒ラベル

銀色の飛露喜の文字が光る黒ラベルは、定番酒のなかの最高峰。こだわりの酒米、山田錦と五百万石(ごひゃくまんごく)を使用し、吟醸造りで仕上げています。香りは繊細でクリアな味わい。後口にしっとりと飛露喜らしい旨味が広がります。

飛露喜 純米吟醸 生詰 黒ラベル

(出典元:松仙

3.飛露喜の種類【限定酒】

飛露喜では、冬に販売する新酒や酒米違いで仕込むお酒のほか、4合瓶(720ml)で販売する限定酒があります。不定期販売される銘柄も多く、飛露喜のなかでも特にレアなお酒といえるでしょう。

3-1.飛露喜 特別純米 かすみ酒

「特別純米 かすみ酒」は冬の限定商品です。シーズン中に蔵が初めてしぼった新酒になります。シュワッとした微発泡感と心地よい苦味、酸味は新酒ならでは。飛露喜ファンが心待ちにする人気商品です。

飛露喜 特別純米 かすみ酒

(出典元:楽天市場

3-2.飛露喜 純米吟醸 愛山 本生

酒米のダイヤモンドとも呼ばれる「愛山(あいやま)」を使用。飛露喜のなかでも特に希少性の高い銘柄です。愛山が生み出す濃醇な旨味、上品な香りと甘みが際立ちます。

飛露喜 純米吟醸 愛山 本生

(出典元:松仙

3-3.飛露喜 純米吟醸 雄町 生詰

「雄町(おまち)」は芳醇でコクのあるお酒を生む酒米です。雄町を原料に吟醸造りで仕込み、1度だけ火入れをした飛露喜はふくよかな味わいが特徴。廣木酒造の酒米へのこだわりが体現された1本です。

3-4.飛露喜 純米吟醸 山田錦

酒米の王様と呼ばれる山田錦のなかでも、特に最高峰といわれる兵庫県特A地区で育った酒米を使用。バナナのように甘く、まろやかな香りが広がる飛露喜です。飲み飽きせず、食事と一緒にするすると飲み進められます。

3-5.飛露喜 純米大吟醸

兵庫県産の山田錦を小さくなるまで磨き、米の中心部分のみを贅沢に使用したお酒です。金字と稲の穂がきらりと光る飛露喜は、四合瓶の数量限定品。計算された清らかな味わいに、ついつい1杯、また1杯とグラスが進みます。

飛露喜 純米大吟醸

(出典:矢島酒店

3-6.飛露喜 純米吟醸 山田穂

「山田穂(やまだほ・やまだぼ)」は山田錦の母系統にあたる酒米です。「純米吟醸 山田穂」には、山田錦も絶妙なバランスで使用されています。口を近づけるとほんのり感じるのは、フルーティーな香り。独特の苦みや渋味、酸味が心地よい1本です。

飛露喜 純米吟醸 山田穂

(出典:矢島酒店

3-7.飛露喜 特選純吟

「飛露喜 特選純吟」も四合瓶で販売されている商品です。開栓すると広がるのは上品で心地よい香り。濃醇でありながら、後口はスッキリ引いていく味のバランスに優れています。

まとめ

福島から全国へとその名を広め、今では多くの日本酒ファンに愛されているお酒「飛露喜」。その誕生の歴史を知ると、飛露喜の味わいがより一層奥深く感じられるのではないでしょうか。飲食店や酒販店で飛露喜を見つけたら、ぜひ酒蔵の熱い想いを感じつつ、その美味しさに酔いしれてみてくださいね。