日本が誇る文化の茶道と日本酒。実は茶道に日本酒が欠かせないもの、というのは意外に知られていないかもしれません。どんな場面で日本酒が関わるのか、茶道の基礎知識から日本酒が欠かせない理由までご紹介します。
日本の伝統文化に親しむ
11月3日は「文化の日」です。
自由と平和を愛し、文化をすすめる祝日として定められており、この日には文化勲章の親授式が行われるほか、文化や芸術にまつわるイベントも多く開催されます。
日本の伝統文化といえば色々ありますが、その中でも「三道」と呼ばれるものがあり、茶道、華道、書道です。書道は学校で習ったことはあっても、茶道や華道はきちんと習ったことがないという人も多いかと思います。
そんな茶道に、実は日本酒が欠かせないもの、というのは意外に知られていないかもしれません。今回は、茶道と日本酒の深い関係をご紹介します。
茶道の基礎知識
薄茶と濃茶
一般的に広く知られているのは薄茶ですが、茶道においては濃茶の方が重要なおもてなしとされています。
飲み方も異なり、薄茶は一人一椀ずつ点てますが、濃茶は一椀に人数分の濃茶を点て、まわし飲みがされてきました。最近ではコロナ禍で、濃茶も一人一椀ずつ飲む形も取り入れられています。
茶事と茶会
茶事は少人数をお招きして行いますが、茶会は大勢をお招きして行うこともあります。
茶道と日本酒の深い関係
しかし、茶事において、日本酒は欠かせない存在なのです。茶事の流れを見てみましょう。
茶事の流れ
①待合
茶事に招かれたお客は、茶室に入る前に寄付(よりつき)と呼ぶ部屋に入り、衣服を整えるなど準備をします。また、半東の振舞う白湯をいただきます。
②席入り
つくばいで手と口を清めた後、にじり口から茶室に入ります。茶室に入ったら、床の間の掛け軸と花入れのお花を拝見し、その後炉と釜を拝見します。
③初座(しょざ)
茶事の前半部分で、懐石、主菓子が出されます。
④中立(なかだち)
懐石と主菓子が終わった後、いったんお庭での休憩をはさみます。
⑤後座(ござ)
茶事の後半部分で、中立の後茶室に戻り、濃茶、薄茶が出されます。
このように、茶事はだいたい3~4時間程度かかる壮大なおもてなしなのです。そして、この茶事の主役は、あくまで濃茶です。初座でもてなす懐石や主菓子は、濃茶をより美味しく楽しんでもらうための前座なのです。
懐石で日本酒を酌み交わす理由とは
茶事の中で日本酒が登場するのは、初座の懐石です。
懐石は、まず折敷(おしき)というお盆に、飯碗、汁碗、向付(むこうづけ)を載せたものをお出しします。これに合わせて、亭主がお客に日本酒をふるまうのです。盃を載せたお盆とお銚子を持ってお客の前に座り、お酌をしながらお客と会話します。さらに椀盛、焼物、海のものと山のものを盛った八寸などが提供されます。
盃のやりとりの一つに、「千鳥の盃」と呼ばれる形があります。八寸が出た後、亭主がお客にお酒を注ぐと、お客からも一献注いでいただくという、亭主とお客が~お互いに盃を酌み交わしていきます。これは、その交互に注ぎあうさまが千鳥の歩き方に似ていることよりそのように呼ばれるようになったと言われています。
また、濃茶の前に懐石や日本酒をいただくのはもう一つ理由があります。濃茶は非常に抹茶の味わいが濃く、抹茶は覚醒作用が強いので、空腹のまま濃茶をいただくと刺激が強いと言われています。そのため、懐石でお腹をほどよく満たし、日本酒でほどよく緊張がほぐれることで、濃茶を最高の状態で味わうことができるのです。
このように、日本酒は亭主とお客の心を通わすため、そして濃茶を最高に美味しく味わうために、茶事で重要な役割を担っているのです。
日本の文化を改めて体験を
文化の日は、そんな日本の文化を改めて体験してみてはいかがですか?