もうすぐひな祭り。小さい女の子のための行事だから自分は関係ない、と思っている人も多いのではないでしょうか。でも歴史を紐解くと、実は男女関係なく無病息災を祈る行事だったのです。そんな行事に欠かせないものの一つが「白酒(しろざけ)」。白酒がどんなお酒か、ひな祭りに白酒を飲む意味などをご紹介します。
ひな祭りに飲まれる「白酒」とは
3月3日は、女の子の成長と幸福を願う「ひな祭り」です。もともとは、中国から奈良時代に伝えられた季節を彩る五節句の一つで、「桃の節句」とも言います。
ひな祭りには、ひな人形や桃の花を飾り、菱餅やひなあられ、白酒などを楽しむ風習がありますが、ここでは、意外に知られていない「白酒(しろざけ)」についてご紹介します。
白酒(しろざけ)とはどんなお酒?
白酒とは、みりんや焼酎などに蒸した米と米麹を混ぜ合わせ、1カ月程度熟成させた後に軽くすりつぶして造った、白く濁った酒のことです。原材料は日本酒と似ていますが、みりんなどを加えているため、酒税法ではリキュール類に分類されています。アルコール分は9~10%程度で、とろみのある口当たりと甘味の強い味わいが特徴です。
ちなみに、白酒という言葉には、読み方が異なり全く違うお酒のことを指すものがあるので注意しましょう。
・白酒(しろき):新嘗祭や大嘗祭のために造られる特別な御神酒で、新米を使って醸造された清酒のこと。
・白酒(はくしゅ):どぶろくなどの白く濁った酒のこと。
・白酒(パイチュウ):中国発祥の穀物を原料とする蒸溜酒で、ブランデーやウィスキーとともに世界三大蒸溜酒のひとつ。白酒という名前ですが、一般的には無色透明です。
ひな祭りに白酒を飲む意味
童謡の「うれしいひなまつり」に、「すこししろざけめされたか あかいおかおのうだいじん」という歌詞があります。古くからひな祭りには白酒が飲まれていたようですが、白酒を飲むようになったのは諸説あります。
桃の節句は、もともとは「上巳(じょうし)の節句」といいます。「上巳」は陰暦3月の最初の巳の日を意味していましたが、魏の時代より3月3日になったと言われています。
古代中国では、上巳の節句に水辺で身体を清めて厄災を払い、宴会を催していました。この時に、人形とともに厄災を川に流す「流し雛」が行われており、これが今の雛人形のルーツと考えられています。
上巳の節句で厄災を払うためにもう一つされていたのが、桃の花を酒に浸した「桃花酒」です。古代中国では、桃は邪気を祓い不老長寿を与える仙木とされており、桃の花を酒に入れて飲むことで、健康になると言われていたそうです。この桃花酒に、桃の花がきれいに引き立つ酒として白酒が使われるようになり、今の白酒を飲む風習になっていったと考えられています。
つまり、ひな祭りの起源は無病息災と厄除けを祈る行事であり、白酒も健康を願って飲む酒だったのです。
甘酒やにごり酒で代用も
ひな祭りの時期になると、専用の白酒も発売され始めますが、そのためだけに白酒を買うのもなぁという方は、同じ白い見た目のにごり酒や、子ども用には甘酒で代用するという方法もあります。
子どもの頃ひな祭りに白酒飲んだ、と話す人もいますが、前述の通り、白酒はアルコールを含むお酒なので、子どもは飲むことができません。そのため、白酒のように白い見た目である甘酒がひな祭りで飲まれるようになった、という背景があります。白酒と思っていた人も、きっと甘酒を飲んでいたのでしょう。
また、最近ではひな祭りに合わせて、色々な日本酒も発売されています。白い日本酒というと、にごり酒やどぶろくなどが定番。例えば、先月発売された新商品の「久保田 純米吟醸にごり」は、すっきりとして口当たりがなめらかな飲みやすいにごり酒なのでおすすめです。