日本酒を飲むときによく目にする、青色の二重丸が印象的な白いおちょこ。これは「蛇の目(じゃのめ)」模様と呼ばれお酒の色を見極めるのに適しており、きき酒に使われるものです。本記事では、おちょこに蛇の目が描かれるようになった理由や、蛇の目のおちょこを使ったきき酒のやり方などを紹介します。
蛇の目のおちょことは
蛇の目の由来
おちょこに蛇の目が描かれるようになった理由
では、その蛇の目がなぜおちょこの定番模様になったのでしょう。一般的に、蛇の目のおちょこと言えば、白い器に青色で蛇の目が描かれているのが一般的です。これには、日本酒の色を引き立たせる効果があると言われています。
日本酒は一見すると透明に見えますが、実際には少し黄味がかった色をしています。その理由としては、日本酒の原料となる米の成分や、糖とアミノ酸が引き起こす反応によるものとされており、熟成が進むとともに色味が強くなっていきます。
その色味を引き立たせるのが黄色の反対色である青色です。日本酒の色味や透明度をわかりやすく見せるための演出として、蛇の目のおちょこが使われるようになったのです。
蛇の目のおちょこのサイズ
同じ蛇の目模様のおちょこでも、いろいろなサイズがあります。通常、市販されているものや居酒屋でよく使われているのは三勺(約54ml)や、五勺(約90ml)のサイズがほとんどですが、中には八勺(約144ml)やもっと大きい「ぐい呑み」と呼ばれるサイズもあります。
一方、酒蔵で杜氏が使っているのは一合(180ml)のお酒が入る「本唎猪口(ほんききちょこ)」と呼ばれるものです。一般に使用されている蛇の目おちょこは機械で模様を描いていることが多いのですが、本唎猪口は職人が手書きで蛇の目を描いています。また、最近ではガラス製のグラスに蛇の目が描かれたものも登場しています。
家庭で日本酒を楽しむときも、好みのサイズの蛇の目おちょこを選んでみるとよいでしょう。
蛇の目で楽しむきき酒の世界
「きき酒」とは
きき酒には、大きく分けて2つ種類があります。ひとつめは、酒造りに携わるプロフェッショナルが行う「利き酒」です。杜氏を始めとする酒蔵の人達が、自分達の造った日本酒が一定のクオリティをクリアしているかをチェックするために行います。また日本酒の鑑評会などのコンテストで、お酒の味や技術面を評価する場合にも利き酒を行います。
プロが行う利き酒とは異なるもうひとつが、一般ユーザーがお酒の香りや味を楽しむ「きき酒」です。
本記事では一般ユーザーが行うお酒の楽しみ方を「きき酒」と表記し、これよりご紹介していきます。日本酒を飲み比べながら、自分の好みの香りや味のお酒を見つけて楽しみましょう。
きき酒のポイントは「色」「香り」「味」
ではさっそくきき酒のやり方を紹介します。まずおちょこにお酒を八分目ほど注ぎます。そして「色」「香り」「味」の3つのポイントに沿ってチェックしていきましょう。きき酒ができると、自分好みの日本酒を探す時に役立ちます。きき酒をおこなう際には、お酒の香りの邪魔にならないよう、香りの強い化粧品や香水の使用は控えましょう。
利き酒の大会などではお酒を口に少し含み、その後に吐き出しますが、一般的に日本酒を楽しみながら行う場合にはそのまま飲んで大丈夫。のどごしや余韻もまるごと味わいましょう
きき酒のやり方① 目で「色」を調べる
おちょこに日本酒を注いだら、まずお酒の色や透明度を見ます。現在の日本酒は、雑味を取り除くために行われるろ過により、色味も取り除かれて無色に近いものが多いです。しかし、本来の日本酒は黄色や緑色を含んだような色味をしています。
きき酒を行う時には蛇の目の青色や白色の部分と、その境界線に目をこらして、お酒の色味を確認しましょう。一般的に黄色や褐色のお酒は熟成が進んでおり、どっしりとした飲み口でコクのある味わい、青みがかった透明度の高いお酒は若く、雑味が少なくクリアな味わいを想像できます。また、淡黄色の光沢があり、少し青味がかかって見える様子は「青冴え」と呼ばれ、良いお酒とされます。
さらに、微炭酸のものは液体中に気泡を確認できたり、生酒やにごり酒は注いだときにトロリとした粘り気が感じられたりと、色以外の状態も確認できるでしょう。粘り気が強いお酒には、エキスや糖分が多く溶け込んでおり、複雑な味わいを感じられます。
日本酒の色を表現する言葉としては、透明、混濁、テリ、黄金色、琥珀色などがあります。ワインと同じように、クリスタルやトパーズといった宝石の色に例えることもありますが、自分なりの言葉で色を表現してみるのもきき酒の楽しさです。
きき酒のやり方② 鼻で「香り」を調べる
続いて、日本酒の香りを調べます。おちょこに鼻をゆっくり近づけて、香りをかぎます。これをきき酒では「香りを利く」と言います。
お酒の香りは食べ物や花などの植物で表現され、一般的に良い香りと言われるのは吟醸香や、果実香と言われるりんごやバナナ、メロンなどの果物の香りです。そのほか、ロースト香、スパイスや乳製品のような香りなどの表現の仕方もあります。また香りには強弱もあります。微かに、ほのかに、はっきりとした、強い印象のといった表現を用いることが多いようです。
鼻で香りを確認したら、次はすするようにして少量のお酒を含み、口の中全体に行き渡らせます。ここで口の中に広がる香りを感じます。
香りの表現に決まりはないので、感じたままの言葉で表現してみましょう。
きき酒のやり方③ 口で「味」を調べる
最後に、口で味を調べます。舌は、場所によって強く感じる味が違うため、舌全体にお酒を乗せてバランスよくお酒の味をみます。そして、飲み込んでのどごしを味わいましょう。
日本酒からは、主に甘味、酸味、苦味、旨味を感じることができます。まず口に含んだ瞬間の印象を表現します。サラッとした、とろみのある、角がある、穏やかなどの言葉で表現できます。
続いて、口の中に広がる味わいの印象を表現します。甘味、酸味、旨味の印象やバランスを感じてみてください。甘味はまろやか、爽やか、すっきり、ほのかなどの表し方や、広がるような、落ち着いたという言葉でも表現できます。酸味には、シャープやすっきりとしたという表現が一般的です。旨味は深みがある、芳醇などと表現されることが多いようです。
最後はのどごしを調べます。キレがある、余韻が残ったなどの表現があります。きき酒は、飲み込んだあとののどごしもしっかり味わいましょう。
3つのポイントでお酒の味を表現してみよう!
一般的によく使われる、おいしいお酒の味を表現する「フルーティーで飲みやすい」というフレーズがあります。これをきき酒のポイント「色」「香り」「味わい」に沿って、表現してみましょう。
例えば「透明感があり、リンゴのような爽やかな香りとほどよい甘味があり、飲み口はクリアですっきりしている」や「澄んでいて、メロンのような豊かな吟醸香で、軽やかな味わい」などの表現を使うと、より味を的確に伝える表現となります。