“発酵食”という共通点を持つ「パン」と「日本酒」。しかし、一緒に食するイメージを持つ人は少ないのではないでしょうか。しかし、「日本酒とパンの相性は良い」とパンラボ研究員・池田浩明さんは語ります。そこで、なぜ日本酒とパンが合うのか。その理由とともに『久保田』にマッチするパンを、池田さんに伝授していただきました。
池田浩明さんプロフィール
日本酒とパンが合うワケ
でも実はパンと一緒に嗜むことで、日本酒のポテンシャルをさらに楽しむことができるというのです――
どちらも発酵食品
「日本酒もパンも“発酵”という過程を経てつくられるもの。合わないわけがないんです」――池田さんはそう語ります。
日本酒は、麹菌が原料の米に含まれるデンプンを糖化し、さらに酵母が糖分をアルコールと炭酸ガスに換えることで生まれます。
パンは生地に加えた酵母が小麦粉に含まれる糖分を食べ、炭酸ガスとアルコールを生成。このガスによりふっくらとした食感を実現します。
つまりは、どちらも「酵母」を使用しているということ。
つまり、一緒に食すると互いの味わいを引き出すことができる。日本酒とパンが合う理由は、酵母という共通点があるからなんです」
日本酒や酒粕を使ったパンもある
また、木村屋総本店の『酒種あんぱん』には酒種酵母菌が使われています。和と洋のクロスオーバーとでもいうのでしょうか。意外に思われるかもしれませんが、日本酒とパンは共生関係にあるといっても過言ではありません」
日本酒に合うパンのタイプとは?
どんな組み合わせを選べば、間違いなく美味しくいただくことができるのでしょうか。辛口・甘口など、日本酒のタイプ別にお聞きしました。
「辛口」とマッチするパンは?
たとえば辛口の日本酒であれば、前菜的なイメージのパンがいいでしょう。中でもおすすめなのが、オリーブののったフォカッチャ。日本酒とオリーブって、なんだか分からないけど合うんですよ」
「甘口」とマッチするパンは?
先に挙げた木村屋総本店の酒種あんぱんなど、菓子パンを合わせるといいんじゃないかな。あとは、バターを使ったふくよかなタイプもおすすめ。日本酒は世界的にも珍しいくらい懐が深く、幅広い食べ物に合うお酒なので、あんこや乳製品とも相性が良いんです」
自分好みを見つけるのも楽しみ方のひとつ
あとは、ちょっとした応用というか連想ゲーム的な発想を働かせれば、まったく合わないなんてことはないと思います。
そうそう。バゲットやカンパーニュなどのシンプルなパンは、どんなタイプの日本酒にも合うので試してほしいですね。これは僕の個人的な分析になりますが、山型食パンは軽やかな辛口に、角型食パンはどっしりとした日本酒に合います。また、加水の多いパンは和食と合わせやすいですし、国産小麦のパンはお米と共通する風味がある。そうしたパンを選んで日本酒と合わせてもいいでしょう。
試すときはぜひ、冷酒や燗酒といったように、日本酒の温度を変えてみてほしいと思います。パンをトーストして食べることがあるように、温度を変えることで味わいは大きく変わりますからね」
久保田×パンのおすすめペアリング
比較的手に入りやすいパンの中から「おすすめのペアリング」を考えてもらいました。
久保田 萬寿 × クリームパン
上品な萬寿の風味と相まって、クリームパンそのものの味わいも格上げされることでしょう。フルーツが入ったデニッシュ・あんぱん・生ハムの入ったパンなんかもハマるはずです」
久保田 純米大吟醸 × カプレーゼサンド
『久保田 純米大吟醸』は、飲み口も香りも舌に残る味わいも、とても”今”っぽいお酒。ワインが合う食べ物であれば絶対に合います。定番のクリームチーズを塗ったベーグルや、意外にメロンパンももマッチすると思いますよ」
久保田 碧寿 × サーモンサンド
『久保田 碧寿』の、山廃仕込みでありながらも軽やかでシャープなのど越しには、絶対にシーフードが合うと思います。なので、ツナサンド・サバサンド・バインミーなどもおすすめ。魚独特のクセを、碧寿のどっしりとした旨味がまろやかにまとめてくれる、そんな組み合わせです」
久保田 千寿 純米吟醸 × カレーパン
また、千寿 純米吟醸は気取らずに飲みたいお酒というイメージがあるので、ハムカツを挟んだコッペパンなどの惣菜パンや、ベーコンエピのような油分の多い食材を使ったパンも合うと思います」
パン呑みなら日本酒も◎
日本酒とパン。酵母でつながる異種格闘技的な世界はいかがでしたか?
日本酒の新たな魅力を発見し、知られざる実力を体感するためにも、ぜひ“日本酒でパン呑み”を楽しんでみてください。
Photo_Kohji Kanatani Interview & Text_Megumi Waguri Edit_Yasushi Shinohara