今回は、愛知県名古屋市で1789(寛政元)年創業の萬乗酒造「醸し人九平次 うすにごり」です。
ずいぶん前ですが「醸し人九平次」は、吟醸酒に醸造アルコールを使用し、オールステンレスで酒を醸すようになった先駆者として有名な「磯自慢」の影響を受け、同様な醸し方をしていたという記憶があります。新潟県の「淡麗辛口」とは違い、アル添によって吟醸香が高くなり、フルーティなスッキリ辛口という味わいはそれまでの日本酒観を変えてくれた銘柄です。しかしながら、2009年からは全商品純米酒となっていますので、アル添はありません。
萬乗酒造について
酒蔵が名古屋市にあるので、仕込水などが大変ではないかと思っていましたが、以前は蔵に湧き出る井戸水を使い、現在は長野県との県境から湧水を汲んでくるということです。「醸造家」を名乗る15代目久野九平治氏は、世界に目を向けていて、フランスのカマルグで作られた米であるマノビを使って日本酒を醸したり、2016年からフランスのモレ・サン・ドニにある自社畑で採れたブドウでワインを醸したりと、さまざまなチャレンジを続けています。米作りも同時に行っていて、兵庫県の黒田庄で山田錦を作り、岡山県で赤磐雄町を地元農家とともに作って日本酒に仕立てています。
「醸し人九平次 うすにごり 黒田庄産 山田錦」
2019年から年一回出荷されている限定の生酒です。名前の通り、黒田庄産山田錦100%使用で精米歩合は最初から明らかにされていません。税込4000円でおつりがくるような値段設定にするために、あえて精米歩合を明かさずに純米酒としているということなのだと思います。
毎年のことながら、うすにごりでグラスの下のほうに炭酸のような気泡があります。少し青りんごのような感じのする柑橘系フルーツの香りに、口に含むと適度なガス感と苦みが先に立ちます。それから控えめな甘味がやってきますが、酸味はあまりなく、後口はスッキリしています。アルコール度数は16度ですが、ジュースのように呑みやすい美味しさです。
幸いなことに3年連続で購入出来ていますが、私が好きな「うすにごり」の中でも上位の味わいです。甘味控えめなのがいいですね。
世界を見据えて酒造りを行っている九平治氏の、さらなるチャレンジを期待したいです。