杜氏(とうじ)とは、酒造りの最高責任者のことを言います。本記事では杜氏の仕事内容や杜氏に必要なスキル、資格の他、朝日酒造で働く杜氏達のエピソードについて紹介します。杜氏に関する知識や朝日酒造の杜氏の考えを知り、さらに日本酒を楽しみましょう。
杜氏について
杜氏とは
杜氏の由来や歴史
杜氏の仕事内容
蔵元や商品戦略に基づいた酒質を再現する醸造方法の決定や醸造計画の立案から、お米の浸漬時間の見極めやもろみの発酵状態のチェックなど酒造りの工程の要所要所も、杜氏が責任を持って確認します。
また、蔵には多いと十数人の蔵人がいますので、個々の適正を見極めた人員配置や、チームワークを発揮してもらうためのマネジメントなども、杜氏の大事な役割です。
杜氏の元で働く蔵人について
蔵人について
酒米を蒸す担当者のことを「釜屋」、麹造りの担当者のことを「麹屋」と言います。酵母造りの担当者は「酛屋(もとや)」と呼ばれており、もろみを搾る工程の担当者の呼称は「船頭(せんどう)」です。
「酒造」と「酒蔵」の違いとは。働く人々を表す名称についても解説 – KUBOTAYA
杜氏に必要なスキルと資格
杜氏に必要なスキル
国家資格「酒造技能士」について
お酒に関する資格のため、20歳以上であり、実務経験が2年以上である者が受験対象です。1級の場合は、実務経験7年以上、または2級合格後2年以上といった条件をクリアしている必要があります。1級まで取得した杜氏は、特に多くの酒蔵から歓迎されるでしょう。
朝日酒造で働く杜氏達が語るエピソード
朝日蔵 杜氏 山賀基良
朝日蔵の杜氏・山賀基良さんは1985年に朝日酒造の季節雇用蔵人として入社し、1991年に正社員として採用されました。2012年から朝日蔵の杜氏を務めています。
「久保田の酒づくりは、子育てみたいなものです。」
「『久保田だから、あるいは鑑評会に出品用の吟醸酒だから気合いを入れて造ろう』ということは言いますが、杜氏からすると、お酒はみな同じ子どもです。親がそうするように、どの子どももできるだけ理想に近づけていこうと思います。区別はないのです。
では、その理想はどのように求めてゆくべきか。久保田には淡麗辛口の『きれいなお酒』という理想があります。しかし、巷の家庭の食卓を見渡してみると、食中酒として缶チューハイなどの甘いお酒が愉しまれていることも目にします。杜氏としては、このような現代の食とお酒の関係性も見つつ、理想の味を模索したいと思うものです。
久保田の理想を守るべきか、世の中の理想を久保田で実現するべきか、迷うことは多くあります。このときにアドバイスをくれるのは、久保田のかつての親、つまり先代の杜氏です。もう引退していますが、近くに住んでいるものですから、折に触れて『あの味で良いのか?』と、おっかない時もありますが(笑)、気付きを与えてくれます。久保田は限りなく高い理想を実現するお酒。その味は今の杜氏、そして先代の杜氏を含めた、久保田の親がみんなで子育てをすることで生まれているんだな、と気付かされる瞬間ですね」
常に進化する美味しさを求めて 杜氏が語る「久保田 萬寿」のあくなき追求 – KUBOTAYA
松籟蔵 杜氏 大橋良策
松籟蔵の杜氏・大橋良策さんは1989年、朝日酒造に入社し、2016年夏より松籟蔵の杜氏になりました。大橋杜氏の苦労エピソードを紹介します。
「数字だけでは酒はつくれない。美味しさは、いつも探さないといけない。」
「かつて『雲を喰むような味を造れ』と言われたことがあります。困りました(笑)。そうした抽象的な指示を翻訳し、会社に求められ、売れる酒をつくることが、杜氏ほか製造部の使命でした。それに比べれば、設備の整った現在は、個人の技術が酒の品質に及ぼす影響は少なくなったのかもしれません。細かな数値でコントロールし評価できるようになり、酒造りは幾分、安定的なものになりました。
しかし、どうしようもなく人の力でしか判断ができない世界があることを私は経験から知っています。進歩した技術が教えてくれたことは、数字だけでは酒は造れないということだったのかもしれません。呑んだ後の、味のふくらみがゆっくりと残る余韻。今も結局、頭の中にある、美味しい酒の夢を、手探りで追いかけていることには変わりはないのです」