こんにちは!風香です。
唐突ですが皆さん「麹」ってご存知ですか?
お酒造りには欠かせない酵母のご飯を作るあの麹です。きくつかこらむにもちょくちょく出てきますよね。
じゃあその麹、実は3色あるっていうのはご存知ですか?3種類ではなく、3色っていうのがミソ。今回の風香の小話は意外とカラーバリエーション豊富な麹のお話です。
おさらい!「黄麹」ってなに?
ここで少々麹のおさらいをしておきましょう。
酒造りにおける麹とはデンプン分解酵素(アミラーゼ)を生産するアスペルギルス属に分類される真菌を生やした米を指します。いわゆるコウジカビってやつですね。デンプンをグルコース(単糖)に分解することで酵母のご飯を作るという役割を担っています。
「酒造りにおける」と書いたのは、アミラーゼを作るものだけをコウジカビと呼ぶわけではないからです。ややこしいですね。
簡単に言えばコウジカビ王国の中でアミラーゼをよく作る一族を酒造りに登用している…といった感じです。同じコウジカビでもアフラトキシンのような毒素を作る一族もいたりします。
デンプンをよく分解するコウジカビはAspergillus oryzaeとして単離・研究されています。2006年には日本固有の菌として認定され、以降ニホンコウジカビという通称が世界中で使用されることとなりました。
このコウジカビが黄色~黄緑色に見える胞子を作るので、日本酒造りで用いられる麹は「黄麹」と呼ばれるんですね。
色に秘密あり!「黒麹」と「白麹」のはなし
さて、使用方法でも酒種でもなく「黄」麹と呼ぶあたり、他の色の麹の存在がうかがえますよね。それもそのはず、実は酒造りに使われる麹には他にもカラーバリエーションが存在するんです。その名も「黒麹」と「白麹」!
画像は石川種麹店HPより参照
黒麹は主に泡盛や焼酎造りに使われている麹で、学名はAspergillus luchuensis。通称アワモリコウジカビと呼ばれる黒い胞子を作るコウジカビを使用した麹です。その最大の特徴はグルコース分解酵素以外にクエン酸を生産すること!
コウジカビ王国の中でアミラーゼ一筋で商いをするのが黄麹一族なら、黒麹一族は気麹から暖簾分けしたアミラーゼとクエン酸の2つを武器にする一族みたいな感じです。
日本酒造りにおける酒母の工程では、酵母が一定数増えるまで他の菌に汚染されてしまわないように、乳酸を添加する「速醸」という手法や乳酸菌に乳酸を作ってもらう「生酛」という手法が用いられます。酸性物質によってpHを下げることによって、栄養分でいっぱいの酒母中で活動できる微生物を制限するためです。詳しくはこちらの記事をチェック!
泡盛や焼酎の醸造で黒麹を使用する場合は、黒麹が生産するクエン酸がこの役割を果たします。
アワモリコウジカビの名に冠するように泡盛から単離されたこのカビは、ほかの同属のクロカビなどと非常に形質が似ており、形質の同定や遺伝解析によって明確な差異が確認されたのは比較的最近になります。学術的に解明されたのは最近ですが、黒麹の使用自体は琉球王国時代から現在に至るまで広く使用されている歴史ある菌なんですね。
一方、白麹は黒麹が突然変異したものを単離した変異株です。雰囲気だけで言えば黒麹のアルビノみたいなもんです。こちらも黒麹同様にグルコース分解酵素以外にクエン酸も生産します。
黒麹との違いは胞子の色と、生産されるクエン酸量が若干少ないこと。求める酒質に応じて使い分けられています。
さて、黒麹や白麹は主に泡盛や焼酎の醸造に使用されていると書きましたが、もちろん日本酒造りに使えないわけではありません。
菊の司でも新たな試みがスタートしていて…?
今後の続報にご期待ください!
閑話休題 塩麴ってなんぞや?
ところで皆さん塩麴ってご存知ですか?
スーパーで豆腐売り場の隣くらいに並んでる調味料のあれです。一時期ブームにもなりましたよね。
我が家で塩麴を使う機会は全くなかったので「耐塩性のコウジカビでも使うのかな?」と頓珍漢なことを思っていた時期もありました。全然違いました。
塩麴は塩と麹を混ぜ合わせたものです。古くは山形や秋田、福島で作られていた三五八漬けという塩、米麹、米を3:5:8の割合で混ぜた漬物床がルーツとなっているもよう。
これに漬け込むことで食品中のデンプンやタンパク質が糖やアミノ酸に分解され、旨味が増すんだとか。
それを聞いて思い出しました!酒を絞ると絶対出てくる物…そう、酒粕です。
原料もほぼ変わりませんし、それ単体でも栄養価が高い!酵素もたくさん入ってる!
酒粕は肉類や野菜を漬けることで旨味を増し、チーズを漬ければ程よい風味が付き、料理のアクセントになり、寒い時期に体を温める甘酒にもなります。塩麴もいいけど、酒粕もおすすめですよ!
酒粕に関するアレコレはこちらをチェック!
さて、色によっていろんな違いがある麹のお話、いかがでしたか?
お酒に関する情報といえば米や酵母に注目しがちですが、麹の違いで選んでみるのも面白いかもしれません。微生物学が浸透する以前から人間とともに歩んできたカビ。時に脅威に、時に頼もしくもなる小さな存在に興味を持っていただけたなら幸いです。
それでは今回はこのあたりで。次回もまたよしなに。